2022年11月10日に発表された、株式会社ディジタルメディアプロフェッショナル2023年3月期第2四半期決算説明の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:株式会社ディジタルメディアプロフェッショナル 代表取締役会長CEO 山本達夫 氏
株式会社ディジタルメディアプロフェッショナル 代表取締役社長COO 大澤剛 氏

目次

大澤剛氏(以下、大澤):社長の大澤でございます。本日は、株式会社ディジタルメディアプロフェッショナルの2023年3月期第2四半期決算説明会にご参加いただきありがとうございます。

本日のアジェンダです。まず、2023年3⽉期第2四半期決算、取り組みと成果、2023年3⽉期通期業績予想について私からご説明します。その後、⼭本が当社の先進テクノロジーについて、動画を交えてご紹介します。

会社概要

2023年3⽉期第2四半期の決算、取り組みと成果についてお話しする前に、当社の概要と強みについて簡単にご説明します。

当社は2002年7月に⼤学発のスタートアップとして発足以来、グラフィックス技術を核にして事業を行い、任天堂のゲーム機へGPU IPが採用される、アミューズメント市場向けに2D/3DグラフィックスLSIを投入するなどの大きな成果を出してきました。

近年は、アルゴリズム・ソフトウエアからハードウエア、ならびにエッジからクラウドにわたる一貫した開発体制、製品、サービスの提供を強みとし、お客さまや社会のシリアスな課題の解決に貢献しています。

2023年3月期 第2四半期 - 業績ハイライト

2023年3⽉期第2四半期のハイライトからお話しします。売上高は前年同期比34パーセントアップで、第2四半期累計としては過去最高を達成し、損失は前年同期から改善しました。

また、プロフェッショナルサービス事業、ロボティクス分野を除き、事業別/分野別売上高は伸長もしくは堅調に推移しました。ロボティクス分野のプロフェッショナルサービス事業は、第3四半期以降に回復を予定しています。

2023年3月期 第2四半期決算ハイライト - 損益計算書

続いて、PLの概要です。主に製品事業の売上増により、売上高は9億2,500万円、前年同期比2億3,400万円の増収、増収率は34.0パーセントとなりました。

営業損失は1億200万円となり、前年同期から700万円の改善となりました。為替差益の計上もあり、経常損失は9,400万円、親会社株主に帰属する四半期純損失は9,500万円となり、ともに前年同期比から1,400万円改善しました。

2023年3月期 第2四半期決算ハイライト - 事業/分野別売上高

事業別/分野別の売上高です。まず、事業別です。IPコアライセンス事業は6,700万円で、前年同期並みとなりました。AI初期ライセンスは減少したものの、デジタル機器向けAI/GPU IPランニングロイヤリティ収⼊、およびセーフティ分野のリカーリング収益が拡大しました。

製品事業は、主に量産向けのグラフィックス半導体「RS1」の売上が大きく伸⻑したことにより、7億9,800万円と前年同期比59パーセントの⼤幅増収となりました。その他、業務用車両の周辺監視用途ZIA C3キット、Cambrianビジョンシステムの売上を計上しました。

プロフェッショナルサービス事業は、セーフティ、ロボティクス、アミューズメント分野の受託開発サービスの売上を計上したものの、ロボティクス分野顧客の研究開発が過渡期にあり、⼀時的に案件が減少したことを主要因として5,900万円となり、前年同期⽐50パーセントの減収となりました。

続いて、分野別の売上高です。セーフティ分野ではリカーリング収益に加えて、業務用車両の周辺監視用途ZIA C3キットの売上を計上したことにより4,900万円となり、前年同期比9パーセントの増収となりました。

ロボティクス分野はIPコアライセンス、Cambrianビジョンシステム等の製品事業において売上を計上したものの、前述したとおり、顧客の研究開発が過渡期にありプロフェッショナルサービス事業が減少したことにより3,100万円となり、前年同期比71パーセントの減収となりました。

アミューズメント分野は「RS1」の⼤型受注に対応した量産出荷により7億8,900万円となり、前年同期比58パーセントの増収となりました。

その他の分野はデジタル機器向けAI/GPUランニングロイヤリティが好調に推移し5,500万円となり、前年同期比34パーセントの増収となりました。

2023年3月期 第2四半期決算ハイライト - 貸借対照表

第2四半期末のBSです。資産合計は34億8,500万円で、前年度末から1,300万円増加しました。

主に、事業拡大に伴う売掛⾦および契約資産が1億9,800万円、たな卸資産が4,600万円それぞれ増加したこと、加えて投資有価証券が1億9,900万円、その他無形固定資産が2,300万円それぞれ減少したことによるものです。

負債は4億8,000万円で、前年度末から1億400万円増加しました。これは主に、事業拡大に伴って買掛金が1億2,200万円増加したことによるものです。

純資産は30億400万円で、前年度末から9,000万円減少しました。これは主に、親会社株主に帰属する四半期純損失計上により利益剰余⾦が9,000万円減少したことによるものです。

この結果、⾃⼰資本比率は86.2パーセントとなりました。引き続き、運転資金や研究開発体制の充実に向けた投資資⾦を⼗分に確保しています。

2023年3月期 第2四半期 注力分野の取り組みと成果 ロボティクス分野

2023年3⽉期第2四半期の注力分野の主な取り組みと成果についてお話しします。まず、ロボティクス分野ではロボット導入効果の高い産業、具体的には製造業や運輸業等へのリーチを広げること、DMPロボティクスポートフォリオの競争優位性を発揮でき、付加価値の取れる領域・技術にフォーカスすることに取り組んでいます。

自社技術の磨き込み、フォーカスについては、大阪市のサポートにより複合商業施設であるATC(アジア太平洋トレードセンター)での実証実験において、「ZIA SLAM (ZIA MOVE)」の機能・ロバストネス向上を実現しました。

また、⼈とピッキングロボットの協働をサポートするデジタル安全柵「DMP Robot Safety」、ロボットピッキングの成否判定を行う「DMP Picking Check」を開発し、名古屋ロボデックス展でデモンストレーションを⾏いました。デジタル安全柵は、物理的な安全柵と比較して圧倒的なコストパフォーマンスを発揮します。

協働ロボットアームの目となるCambrianビジョンシステムビジネスについては、精度、速度、ピッキング対象の広範さ、外乱光環境下における安定性等の強みが評価され、⾃動車業界中心に製造業での採⽤、高確度商談が拡⼤しています。他社製品では認識できないものを認識、ピッキングできることが、ポジティブな驚きをもってお客さまに受け止められています。

⾼付加価値の追求については、まず、AMR(Autonomous Mobile Robot、自律走行ロボット)とロボットピッキングを組み合わせた先端AMRを開発し、名古屋ロボデックス展でデモンストレーションを⾏いました。工場内で付加価値を生まない部品搬送の完全⾃動化を支援します。

また、顧客のロボティクス機器にインストールした当社のソフトウエアについて、1台あたり⽉額いくらというかたちのサブスクリプション収益の計上を開始しました。金額としてはまだ⼩さいですが、セーフティ分野と同様にスケールさせ、⾼収益化を図っていきます。

2023年3月期 第2四半期 注力分野の取り組みと成果 セーフティ分野

セーフティ分野では新規IPコアライセンス、リカーリングビジネス、プロフェッショナルサービスの提供により安定成⻑を⽬指すこと、安全運転支援からより広範なセーフティ分野に事業拡張することに取り組んでいます。

まずは、既存のお客さまに当社の強みであるエッジからクラウドまでの⼀貫サポートを継続するとともに、新規のお客様のPoC案件を獲得しました。これをスケールさせることを目指しています。

リカーリングビジネスについては、サブスクリプション収益を安定的に計上していますが、ランニングロイヤリティについては半導体不足の影響もあり、足元ではお客さまのドライブレコーダーの出荷台数が想定を下回り、当社の収益も計画に届いていません。

ただし第3四半期以降には、OTA(Over-the-Air)を活⽤することにより、エンドユーザー⾞両にすでに搭載されている何⼗万台ものドライブレコーダーに当社のソフトウエアを実装する、いわゆるインストールベースのランニングロイヤリティの収⼊拡大が予定されています。

より広範なセーフティ分野への事業拡張については、業務⽤⾞両の周辺監視向けZIA C3キットを量産出荷しました。また、スマートシティに関連したエッジカメラを活⽤した⼈流、交通量調査のPoC案件に進捗がありました。この分野は、⾃治体や道路管理者向けのデータ販売といった、スケールすると非常におもしろいビジネスになると考えています。

2023年3月期 第2四半期 注力分野の取り組みと成果 アミューズメント/その他分野

その他の取り組みと成果です。まず、アミューズメント分野では⼤型受注に対応した「RS1」の量産出荷を継続しています。

市況については、半導体・部材不足が機器の⽣産に⼀定の影響を与えているものの、ゲーム性が向上したパチスロ6.5号機は好調です。さらには、こちらもゲーム性が向上するスマートパチスロ、スマートパチンコの市場導⼊もそれぞれ11⽉、来年1⽉に予定されています。

AI/GPU IP分野では、当社AI/GPU IPを搭載したお客さまのデジタル機器の累計出荷が1億5,000万台に到達しました。その半分強は任天堂の3DS向けですが、デジカメ、監視カメラ、OA機器、テレビ等への搭載は続いており、今期は新規採⽤、ライセンス更新等で前年同期を上回る好調を維持しています。

また、TV REGZA 4Kテレビに採⽤されたAIプロセッサーIP「ZIA DV720」のロイヤリティ収⼊を第2四半期に計上開始しました。テカナリエ社が機器を分解しチップ解析、チップセット分析、システム解析、トレンド調査、素材分析を行った「テカナリエレポート」に、HISENSE社とREGZA社が共同開発したテレビ⽤イメージプロセッサHV8107に「ZIA DV720」が採⽤されている記事が掲載されました。世界シェア⾸位級のHISENSE社のテレビを含め、搭載機種の拡⼤の機会もあり、大いに期待しているところです。

2023年3月期 通期業績予想

進行期の2023年3⽉期の通期連結業績予想については、5⽉13⽇に公表した予想に変更はありません。第2四半期累計の通期予想に対する売上⾼進捗率は39パーセントに留まっていますが、第3四半期以降はIPコアライセンス、製品、プロフェッショナルサービス事業が伸長する見込みです。

分野別では、これまでお話ししたとおり、セーフティ分野ではOTAによるロイヤリティ収⼊の拡⼤、プロフェッショナルサービス収⼊の拡大を⾒込んでいます。ロボティクス分野ではCambrian製品売上の拡⼤、低速自律運転向けプロフェッショナルサービス事業の拡大を⾒込んでいます。アミューズメント分野では画像処理半導体「RS1」の量産出荷を継続していきます。その他分野では、新規採⽤デジタル機器向けのAI/GPUランニングロイヤリティの拡大を⾒込んでいます。

中期経営計画としては、2024年3⽉度は売上高25億円、営業利益2億円というターゲットに向けて、着実に重点施策を実⾏していきます。

以上をもちまして、私のパートを終わります。ご清聴ありがとうございました。

AIとコンピュータビジョン ビジネスの機が熟す

山本達夫氏(以下、山本):山本でございます。まず、本日はご出席いただき誠にありがとうございます。それでは、DMPの先進テクノロジーについてお話しします。

当社が事業を行っているAIとビジョンコンピュータ分野については、さまざまな要因が並行して進行しています。それを融合することにより、今後幅広く実用的に展開される技術になってきたと考えています。

まず、ディープラーニングです。これまでは特定の問題を解決するためには、それぞれ別々のアルゴリズムあるいはソフトウエアを開発しなければならず、低コストで課題を解決することがなかなかできなかったのですが、ディープラーニングにより、それが可能になりました。

また、ディープラーニングによってビッグデータ、すなわち大量のデータを効率よく処理し学習させることが可能になり、データが活用できるようになりました。

ハードウエアという観点においても、大量のデータやアルゴリズムを効率よく処理するハードウエアが出てきており、当社も創業以来手掛けているGPUを使ったブレイクスルーが可能になりました。また、新たにAI専用のプロセッサーが出てきており、当社もその1社なのですが、それにより広くディープラーニングが展開できる状況になっています。

クラウドコンピューティングに関しては、これまで、例えばリアルタイム性を求めるような重要なアプリケーションでは、エッジコンピューティング、すなわち事象に近いデバイス上で処理する必要がありました。

しかし、クラウドコンピューティングの発達により、大量のデータを高速ネットワークを通じて処理できるようになったことで、このようなシステムの開発が非常に楽になり、メンテナンスやOTA等によるアップグレードが容易に行えるようになってきました。

また、莫大な資本が人とテクノロジーに投資されたことによって、この分野の開発イノベーションが加速していると言えます。

これらの要因が合わさった結果、現実の問題解決にAIやビジュアルコンピューティングが使えるようになり、非常にユニークで膨大なビジネス機会がもたらされていると思います。

実社会の問題を大規模に解決

こちらはAIビジュアルコンピューティングを使ったアプリケーションの例です。家庭、自動車、農業、医療、リテール、建築現場、交通、ごみ処理に至るまで、さまざまな社会課題を解決できるようになりました。

スライド上段の左から2番目の画像は、食料の消費の無駄を解析するシステムです。実際にヨーロッパでコマーシャルベースに乗っているのですが、レストランやホテルで捨てられる食料を解析して、無駄な消費をなくすことにつなげるというものです。

このような、食糧危機、高齢化、人手不足、環境災害、パンデミックなどさまざまな社会課題を、AIとビジュアルコンピューティングによって大規模なかたちで解決できるようになり、同時に経済的な利益も生み出せるようになってきたと考えています。

DMPの強み - ドメイン最適化を可能にする技術

当社がこの分野に取り組むにあたり、我々DMPの強みを活かしていくわけですが、その強みとはAIとコンピュータビジョン、画像処理を組み合わせることによって最適解をご提供できることです。

さらに、アルゴリズム、ソフトウエア、ハードウエアのフルスタックの開発が可能です。当社がGPUという非常に難しい技術に取り組んできたその過程と、段階的に画像処理やAIを手掛けてきた点、さらにアルゴリズム、ソフト、ハードと一貫して開発できるような体制を作ってきたことが、非常に強いベースになっています。

例えば、お客さまの特定の課題を今のAIで解決できる部分は全体の3分の1程度です。残りの3分の2は画像処理等の従来技術を使わなければならず、これらを最適に組み合わせないとソリューションは作れません。これができるベンダーは、グローバルベースで見ても少ないと思っていますので、当社はそこに大きな強みを持っています。

また、エッジとクラウドによるリアルタイム性と処理能力のバランスという観点に関しては、当社は早い時期からエッジコンピューティングに取り組んできました。例えば、ZIA SAFEなど安全運転支援向けのシステムでは、エッジとクラウド両方でさまざまな機能を最適に配置できるような仕組みを取っています。

安全運転支援においては、ドライバーの状態の監視や、レーンの逸脱や正面衝突の検出などさまざまな機能を提供しています。例えばドライバーの監視状況はエッジ側とクラウド側のどちらでも処理できるため、こちらはアプリケーションに合わせて行うことができます。また、正面衝突やレーンの逸脱など、リアルタイム性が求められるものはエッジ側で処理します。

さらに、事故に関するヒヤリハット解析等の機能も提供していますが、こちらは処理量が非常に多いためクラウド側で行うというように、アプリケーションに合わせて適材適所で機能を分散させられるところも、重要なポイントの1つになると思います。

また、省電力、高性能システムを可能にする各種ハードウエアIPの開発技術、最適化技術も当社は持っています。

このようなGPUの開発に裏付けられた、段階的に積み上げてきたAI、画像処理の技術をフルスタックで幅広い製品やサービスを通じて提供することで、いわゆる汎用的な技術というよりはお客さまのドメイン、あるいは我々のターゲットとするドメインへの最適化を実現することができるというのが重要であり、当社の強みだと考えています。

重点取り組み事項

このようなことを踏まえて現在取り組んでいるのが、アミューズメント事業における付加価値の増大です。こちらは「RS1」という非常に高い競争優位性を持つグラフィックスのプロセッサーでビジネスを展開していますが、さらに周辺技術も取り込むかたちで付加価値を増大させていきたいと考えています。

次世代のAIプロセッサーに関しては、先ほど「ZIA DV720」がテレビに採用されたとお伝えしましたが、テレビやカメラのお客さまもいらっしゃるため、今までの量産実績をバネに、現在のDV720やDV740といった、DV700シリーズの性能をはるかに超える新しいプロセッサーを開発しています。それを使って新分野でライセンスを拡大していきたいと考えています。

注力しているロボティックス事業においては、自律運転、「ZIA MOVE」、ピッキングなどのビジネスを推進していくと同時に、これらを組み合わせて新しい価値を生み出していきたいと考えています。

セーフティ事業においても、適用分野をインフラストラクチャーやスマートシティなどに広く拡大させていくことと、継続的な提供価値の向上を目指し、OTA等を通じてアップグレードの提供などを行っていきたいと思っています。

センサー技術も我々にとって重要な分野であるため、こちらも次の成長のステージに向けて新しいセンサー技術の開発に取り組み、業界をリードしていきます。また、当社のような技術系の会社、量産レベルの製品を扱う会社にとっての1丁目1番地である品質と開発プロセスの継続的改善は引き続き行っていきます。

DMP注力分野

それらを踏まえ、現在当社の注力している分野は3つあります。アミューズメント、ロボティクス、セーフティという分野ですが、これら3つはそれぞれ異なる分野のように見えて、その基盤となっている技術は共通のものです。

すなわち、GPU、省電力のIP技術、コンピュータビジョン、クラウドとエッジのコンピューティング、さらにAIという共通の基盤を使い、例えばアミューズメントのGPUを作るなど、2Dと3Dを組み合わせたオンリーワンのグラフィックスプロセッサーとして非常に強い競争力を持つ技術を作り出しています。

ロボティクスの分野は、スライド左下にAI推論プロセッサーIPとカメラモジュールの画像がありますが、このようなロボットの目となり脳となる部分を我々自身が開発し、さらにそれを適用する産業ロボットやドローン、ウィールチェア、ピッキングロボット、あるいはそれらを融合したような新しいロボットを実現させ、ライセンスや最終製品まで含めてお客さまに提供していきます。

セーフティの分野では、安全運転支援システムとして、現在はDMS/ADASを展開しています。JVCケンウッド、デンソーテン、住友三井オートサービスのように、デバイスを作るメーカーや、自動車業界でサービスを提供するお客さま、あるいはリースや保険業界のお客さまに向けてこのシステムを提供しています。

さらに、これをインフラストラクチャー、交通、ロボティクスなどの分野に拡大し、クラウドも含めてサービスを提供していきます。

AIがTVの表現力に新時代を切り開く

当社のAIが実際に使われている例を1つご紹介します。先ほどお伝えしましたが、当社の「ZIA DV720」がREGZAに搭載され、今年の5月に発売開始となっています。

ご存じのように、REGZA社は中国のHISENSE社の子会社で、2社を合わせたシェアは世界で2位、日本では1位であり、この業界では非常に強いお客さまです。テレビ放送だけでなく、インターネット上のあらゆるコンテンツを再生するデバイス上でAIが使われることにより、さまざまな新しいことができるようになります。

スライド左上の画像は、シーンの遠近の判別によるフォーカスです。AIがコンテンツの中身を判断し、それに合わせて、例えばこの場合では人物側にフォーカスを当て、背景側のフォーカスをぼかして非常に遠近感のある画像を作り出すことができます。

左下の画像は、映っているコンテンツに合わせて肌の表現を変えています。また、ネット上のコンテンツでは、ネットのスピードや帯域によってノイズが出たり、バンディングノイズという縞模様のノイズが出たりしますが、右上の例ではAIが判断して、自動的に超解像という技術を使って画像をスムーズにしています。

あるいは、さまざまなノイズ低減を行うなど、表示デバイスの表現力に新時代を切り開くために、当社のAI技術が活用されています。

Cambrian Vision System

「Cambrian Vision System」はピッキングロボットの目となるビジョンシステムで、当社が昨年から独占販売権を持って販売しています。

従来の大量生産型の生産ラインから、現在は少量多品種のフレキシブルな生産ライン、あるいはセルの生産ラインにシフトし、そのようなところで協働ロボットが人と一緒に作業しながら、ロボットに関しては24時間稼働してさまざまな作業をこなしています。

この分野では、ヨーロッパ系のロボットメーカーが圧倒的に強く、例えばユニバーサルロボットというロボットメーカーがあります。これまでコンピュータ制御で動いていたロボットのアームにカメラを装着することにより、複雑な作業を非常に効率よくハイスピードで行うことができるようになっており、このシステムを我々が提供しています。現在ではユニバーサルロボット以外の主要ロボットメーカーや日本の主要ロボットメーカーも、当社を通じてCambrian社でインテグレーションしています。

特徴としては、非常に多様な部品に対応していることです。透明の部品や光沢のある金属など幅広い種類の部品を扱うことができ、おそらくCambrian社以外のシステムでは現在ほぼできない状況です。また、従来のものに比べて5分の1程度の2日から3日でセットアップが可能になりました。認識時間も非常に短いサイクルで作業がこなせるようになります。

また、さまざまな外乱光の影響を受けず、いろいろな条件下で安定して動くことができます。正確性という観点では、1ミリ以下の精度で部品を検出・ピックアップすることが可能です。

Cambrian Vision System

Cambrian Vision Systemを使った作業例としては、ケーブル・コネクターの挿入、アセンブリーや溶接、検査などがあります。

こちらについてはビデオでご紹介したいと思います。

(動画流れる)

こちらは、透明な部品や表面が黒い部品など、通常ならば非常に扱いにくいものをピッキングしている映像になります。さらにライトで光を当てているため非常に悪い条件ですが、安定してピッキングできます。これは非常に特徴的な点です。

次に、コネクター挿入です。コネクター挿入のような単純作業は、製造現場では、実は非常に大きな部分を占めており、ロボットによる自動化は重要な課題として、お客さまのご要望が非常に多い分野です。こちらも非常に器用にコネクターを挿入することができるため、例えばUSBコネクターのような小さいものでも挿入することが可能です。

続いてキッティング作業です。アセンブリーの前工程として、いろいろな部品をキッティングしています。

そして、実際のアセンブリーです。部品の組み立て、コネクター挿入以外にも、さまざまな部品の組み立てに使うことができます。

ZIA SAFEのインフラ、ロボティクスへの展開

次に「ZIA SAFE」です。当社の安全運転支援システムのソフトウェアの統合プラットフォームで、自動車業界を中心としてお客さまにお使いいただいています。

これを、例えばインフラや交通に活用します。スライド右上の画像は、鉄道車両における人物の危険行動解析のアプリケーションです。また、右下のロボティクス分野では、デジタル安全柵を手掛けています。協働ロボットが人間と同じスペースで作業する時に、AIカメラで人とロボットを骨格で判断し、その干渉を防ぐためのアラームを出すといったシステムを作ることができます。

このような、さまざまな分野への展開が考えられますので、今あるプラットフォームを最大限に活用して、ビジネスを拡大していきたいと考えています。

スマート街路灯 - スマートシティ実現に向けた取り組み

また、センサーに関しては、現在フランスのPropheseeという会社とイベントベースセンサーに取り組んでいます。スライドの例は、当社とレスターホールディングス、Propheseeの3社で開発した、スマート街路灯というものです。

Propheseeのイベントベースセンサーの特徴についてご説明します。通常のセンサーは常に画像を出力するのに対して、イベントベースセンサーは何か変化が起きた時だけ画像を出すというものです。人間の網膜や脳の動きを模倣しており、いわゆるニューロモルフィックセンサーという、非常に進んだ技術です。

これを使うことによって、非常に暗い場所でも画像が撮れるほか、ハイスピードな動きを追跡できます。さらに、電力使用量が低いという特徴もあり、これを使うことでスマートシティ等で24時間、人と車の動きを解析するような仕組みの提供を3社共同で行っています。

DMP技術の結集 - 先端AMR

当社の技術の結集と言ってよいと思いますが、先端のAMR、Autonomous Mobile Robotというもので、実際に自分で移動できるロボットです。こちらにピッキング技術を組み合わせることで、動いて物を取るなどのいろいろな作業ができるようになります。ある意味、次世代のロボットの姿だと思っているのですが、ここにDMPの技術を用いることで、「見る」「走る」「つかむ」といった動作ができます。

「見る」については、DMPの画像処理技術、カメラやAIの技術を使います。「走る」に関しては「ZIA MOVE」という当社の自律走行技術を用い、「つかむ」においては「Cambrian Vision System」を使います。

また、「つながる」という点では、現在ソフトバンクと協業して、このロボットの環境を5Gでネットワークにつなぎ、クラウドからいろいろなことができることに取り組んでいます。さらに、「安全に」このようなロボットを使うために、当社の「ZIA SAFE」のセーフティ技術を使っていきます。

スライド左下に「再現する」とありますが、こちらにはDMPの3D技術を使います。最近ではデジタルツインとよく言われていますが、このようなロボットや、ロボットを含めた環境を仮想空間上に構築します。これによって、ロボットシステムの開発、テスト、検証、あるいは問題が起きた時の対処が、仮想空間上でできるようなシステムを構築していきたいと考えています。

2022年10月26日から28日まで名古屋で開催された「ロボ デックス」という展示会で、実際に動くモデルのデモンストレーションを行いました。そちらの映像をご覧ください。

(動画流れる)

こちらは「ZIA MOVE」という当社の自律走行システムを使ったAMRのロボットが動いて、その上に乗ったCambrianのピッキングロボットが、トレーの中に置かれている物の中からボルトをピッキングするというシステムです。

さらに、ピッキングしたものを別の場所に運んでキッティングしたり、プレーシングといって下ろしたりすることができます。これを当社とCambrian社、ソフトバンク、iRooBOという3社と1団体で作り上げています。

当社は、グラフィックスLSIで築いた競争優位性を他の分野でも実現すべく、今後も努力していく所存です。ご清聴ありがとうございました。

質疑応答:先端AMR完成品の販売について

司会者:「先端AMRというお話がありましたが、完成品を販売する計画はあるのでしょうか?」というご質問です。

大澤:完成品を販売するということも、当然、選択肢の中には入っています。ただし、当社だけでできるかというと、なかなかできないと思っており、やはりパートナーとの協業が必要だと考えています。

現実的な解としては、お客さまの要望に合わせ、自律運転やピッキングに関連した要素技術に、製品・サービスを組み合わせて提供するところかと考えています。

山本:例えば、自動搬送ロボットを開発しているお客さまといっしょに、その用途に向けたロボットの開発や、必要な技術のご提供を行います。さらに、プロフェッショナルサービスでインテグレーションまで、いっしょにさせていただくということが想定されます。

それ以外にも、ピッキングロボットそのものの販売や、あるいは当社が開発しているカメラモジュール等を販売するといったかたちで、ライセンスに加えて、ハードウェア製品の販売のための投資を行っていきたいと考えています。

質疑応答:プロフェッショナルサービスのリスクについて

司会者:「ロボティクス分野のプロフェッショナルサービスで、顧客の研究開発が過渡期にあるという説明がありましたが、どのような意味でしょうか?」というご質問です。

大澤:PoCや研究開発をお客さまが行っている中で、それに対して当社に「プロフェッショナルサービス(開発受託サービス)を提供してください」というお話があります。

PoCが終わった時に、本格的な開発にいくのか、それともいったん中断して新しいテーマを見つけるのかというところは、そのPoC自体の成否だけではなく、お客さまのいろいろな事情によって変わってくるというところがあります。

そのような意味では、当社が受注したPoC案件でも、お客さまがそのような選択をされたことで、一時的に顧客案件が減少しているとご理解いただければと思います。できるだけカスタマーベースを広げるというところが、リスクの軽減につながるのではないかと考えています。

質疑応答:セーフティやロボティクス分野の拡大方法について

司会者:「売上としては、アミューズメント分野への依存度が高く、注力分野であるセーフティやロボティクス分野の売上が小さくなっています。これをどうやって拡大していくのでしょうか?」というご質問です。

大澤:アミューズメント分野に「RS1」を投入していますが、こちらで安定的な収入を獲得して、それをAI分野、例えばロボティクスやセーフティ分野に投資して、そちらを成長させていくというのが当社の考え方です。

セーフティやロボティクス分野を拡大させるために、カスタマーベースを広げることに加えて、リードカスタマー案件にフォーカスして、スケールさせていきたいと思っています。

利益という点で言いますと、中期経営計画の中でKPIとして出していますが、利益率の高いIPコアライセンス事業の額、もしくは率を伸ばしていきます。そのようなことも考えながら、カスタマーベースの拡大とリードカスタマーとの協業をより深めていくことで、注力分野をより伸ばしていきたいと考えています。

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