2022年11月14日に発表された、セーフィー株式会社2022年12月期第3四半期決算説明の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:セーフィー株式会社 代表取締役CEO 佐渡島隆平 氏
セーフィー株式会社 取締役 経営管理本部長 兼 CFO 古田哲晴 氏
2022年12月期第3四半期決算説明会
佐渡島隆平氏(以下、佐渡島):みなさま、こんにちは。本日は決算説明会をお聞きいただき、ありがとうございます。いろいろなDXで活用いただく事例が増えてきましたので、今回のQonQでも成長を示すことができ始めています。そのあたりも含めて、お聞きいただければと思います。
では、決算の部分についてCFOの古田からご説明します。
KPI ハイライト
古田哲晴氏(以下、古田):KPIのハイライトから順を追ってご説明します。まず、「Safie GO(セーフィー ゴー)」「Safie Pocket(セーフィー ポケット)」が回復基調になったことにより、ARRは69億円、課金カメラ台数は17.1万台まで進捗しています。
課金カメラ台数の商流別の内訳についてです。特定卸商流は解約率の低減に伴い、順調に進捗しています。その他卸商流は、大手パートナー企業を通じた導入が進んだことにより、堅調に推移しています。直販商流はやや伸び悩みの傾向はありますが、全体としての増加は見られます。
Safie GO/Pocketを中心とする商流については、ゼネコン、サブコン、製造業向けの導入が進み、パートナー企業にて大型案件の導入も進んでいる状況です。
ARR及び課金カメラ台数の推移
こちらのスライドは、先ほどご説明したARR及び課金カメラ台数の推移をグラフで表したものです。ARRについては、前年同期比32.4パーセント増になり、69億円を超えました。課金カメラ台数は、前年同期比24.4パーセント増で、17.1万台に到達しました。
商流別課金カメラ台数の推移
商流別の課金カメラ台数の推移です。全体として力強い成長を見せていますが、その中でも前四半期に比べて、特定卸商流、その他卸商流、Safie GO/Pocket商流に力強い成長が見られます。
ARPC(カメラ1台あたりの単価)の推移
カメラ1台あたりの平均単価の推移については、前四半期と大きな変化はなく、若干改善している程度です。こちらは、先ほどの商流別の推移の構成があまり変わっていないことに起因しているものです。
ARRと課金カメラ台数の構成
解約率の動向です。1年前の決算発表の際は特定卸商流での解約率は高水準にありましたが、解約率は1年かけて順調に低減し続け、現在では2.7パーセントまで低下しています。その他卸商流、直販商流も低水準の解約率で推移しており、いずれの商流も問題ない状況です。
2022年12月期第3四半期(連結会計期間)ハイライト
業績面のハイライトです。売上高は23億円と、前年同期比で0.7パーセント改善しており、四半期推移においては、増収トレンドに回帰しています。スポット収益は、課金カメラ台数の増加に伴い、増収トレンドへ好転しました。リカーリング収益についても、Safie GO/Pocketの進捗に伴い成長している状況です。
この結果、売上総利益率は48.7パーセントとなり、前年同期比で7.7ポイント改善しました。リカーリング粗利率は、コスト低減効果により改善しています。スポット粗利率は、大型案件の減少により、全体として価格をディスカウントすることが少なくなり、粗利率の改善という結果につながりました。
販管費は、広告宣伝費を主因としてS&M(セールス&マーケティング)のコストが増加し、当四半期の営業損失は2億8,100万円となっています。
また、セーフィーベンチャーズという投資子会社を設立しました。こちらは完全子会社となるため、四半期の開示においても連結決算へ移行しています。ただ、こちらは単体及び連結決算への業績に差異はないため、2022年度の通期業績予想に対する変更はありません。
売上高の推移
売上高の推移です。先ほどお伝えしたように、四半期の売上高は23億円となっており、スポット収益は課金カメラ台数の増加に伴い、増収トレンドへ回帰しています。リカーリング収益は、Safie GO/Pocketの導入が牽引し、増加している状況です。
売上高構成比およびスポット/リカーリング粗利率推移
売上高の構成比率について、パートナー経由の比率は60パーセント前後と、これまでのトレンドと同じような推移です。また、リカーリングの比率についても72パーセントと、前四半期と同水準となっています。
リカーリング、スポット収益それぞれの粗利率についてです。リカーリング収益の粗利率は微増で、コスト低減効果による改善が多少見られます。スポット収益の粗利率についても同じくやや改善という状況となっています。
売上総利益の推移
リカーリング、スポットの粗利率の結果を反映した、全社としての売上総利益は11億2,300万円となりました。前四半期に比べて大幅に増加しており、売上総利益率でも48.7パーセントと多少の改善を見せています。また前年同期と比べると、大幅な改善を見せており、リカーリング収益の成長により売上総利益率が大幅に改善している状況です。
販売費及び一般管理費の推移
販管費については、前四半期よりやや増加している状況です。テレビCMの実施を主要因として、S&Mのコストが前四半期比で増加しています。一方で、外注費に一時的な減少があったため、R&D(リサーチ&デベロップメント)の費用が前四半期比でやや減少している状況です。
営業利益の推移
営業損益の推移です。ご説明した粗利及び販管費の推移の結果、当第3四半期においては、2億8,100万円の営業損失となっています。
成長戦略のテーマ:現場DX
佐渡島:事業の進捗アップデートについてご説明します。以前から一貫して、「現場DX」として、「あらゆる産業の現場をDX(デジタル・トランスフォーメーション)する」をビジネスコンセプトに、しっかりと営業活動を推進しています。
事業進捗アップデート
今後、課金カメラの台数の増加を推進し、クラウドカメラ市場のシェア拡大を目指します。新製品「Safie One(セーフィー ワン)」も発表しております。
クラウドカメラを使った現場DXの5ステップ
お客さまごとにデジタル・トランスフォーメーションをしていく中で、アプリケーションでしっかり単価をとっていく取り組みが徐々に始まった状態になっています。引き続き、さまざまな業界にある程度の台数を提供するという目線は変わっていません。
お客さまからすると、「映像を活用してDXする」といきなり言っても、わからないというのが現状です。お客さまの変化として、以前より「防犯」には非常に強い需要がありましたが、さらに遠隔で仕事ができるというビジネス面での需要も追加されてきたと思います。
今後、クラウドカメラ、遠隔業務を一般的にする業務ツールとしていくことに注力し、AIやアプリケーションによって、さらなるアップセルを叶えていきたいと考えています。
業界全体でデジタル・トランスフォーメーションを推進し、生産性向上に役に立つというところに、大きなTAMがあります。現在、まだまだ「防犯」「遠隔」という範囲までを主にカバーしていますが、ようやく他のシステムとつながるところまで進んできたとご認識いただければと思います。
戸建ての品質管理を遠隔で実施
具体的な事例をご紹介します。ゼネコンの大型工事物件において遠隔検査が当たり前になっており、ようやくハウスメーカーや小型の建設現場の案件でも遠隔業務への切り替えが進んでいます。
また、検査員と実際の現場がコミュニケーションを取り合い、エビデンスを残しながら仕事を進めることが徐々に当たり前になってきました。業界の横展開が徐々に広がってきているとご認識いただければと思います。
レジ混雑状況をSafieとのシステム連携で見える化
小売業界の中で、DX推進に成功している会社を表彰する「DX大賞」で大賞をとられたグッデイさんの事例です。
グッデイさんは九州でホームセンターを運営しており、新店舗には我々のカメラが標準で搭載されています。Googleのツールやデータ分析ツール「Tableau(タブロー)」等を使用して、業務の末端にまでiPadやタブレットを活用しながら、生産性向上を進めていらっしゃいます。
クラウドのレジスターと組み、POSレジの人数通過率がしきい値を超えると映像で指示を表示し、お客さまの待ち時間を減少させています。また、その時々の需要に合った商品がレジ前に出ているかを映像で確認し指示出しに繋げることが、当たり前のように行われています。少人数での生産性を上げていますので、このような大型店舗でも活用が広がってきています。
現在のマーケットでは大型店舗で広がるところから、徐々に小型化または無人店舗化といった潜在的なところまで顕在化し始めています。
店舗の無人化に向け顔認証入退室サービスを活用
小売・サービス業界では、高いクオリティのサービスを提供することが求められています。しかし、日本の労働生産人口が大きく減少していく中で、店舗を無人化していく流れが出てきていると考えています。
オールドルーキーサウナさんは、サウナを無人運営しており、1店舗目から我々のカメラを使用して、無人店舗のトライアルを行っていただきました。店舗の増加に伴い、我々の顔認証入退室管理システムと会員アプリをAPIで連携することで、完全に無人で店舗運営ができるようになりました。
お客さまがサウナのご利用でお困りの時なども、スピーカーを使用してご案内するかたちで、無人店舗の運営が実現しています。
このように、無人店舗のオープンが確実に行えるようになっているため、同様の事例がスケールしていくかたちで広がっていくと思います。そこにDXが標準搭載されていくかたちで、我々のビジネスもしっかりと根付いていくのではないかと考えています。
店舗内の来店客数や滞留者数を可視化
「Safie One」は発売したばかりではありますが、エッジAIを、店舗のマーケテイングに活用するところからスタートしています。
前回の説明会でご紹介したベルクさんと同様の事例で、横浜のショッピングモールにおいて、各エリアでのピークタイムの滞留者数、レジ待ち人数など、主力商品のコーナー等での可視化にご活用いただいていました。
このように、DXが少しずつ進んできています。我々も定量化を進め、店舗の省人力化や売上向上のツールとして活用いただくために、さまざまな横展開ができるようにチャレンジしているところです。
経営基盤強化にむけた取組の状況
決算発表の中で、「経営基盤強化に向け、どういった経営課題がありますか?」「それに対して、どういうことをやっていますか?」という点は、常にコミュニケーションさせていただいています。
やはりエンタープライズ大型導入案件の獲得が重要であり、さらにそれをリピートオーダーにつなげていくことが求められます。しかし、エンタープライズのお客さまに現場で導入いただいても、意思決定者の方には「セーフィーってどんな会社かわからない」となってしまうと非常にもったいないです。
そこで、意思決定者の5割くらいにセーフィーのことを知っていただくことを目標に、継続的にテレビCMを出稿しています。進めていく中で、徐々に認知度が上がっていくと考えています。
また、インバウンドセールスにおいては、防犯カメラ需要に対する即時対応として、ご希望の方にすぐ提供することも非常に重要になるため、即時対応できるチームを組成しました。
さらに、エンタープライズのお客さまにしっかりとコンサルティングして、その業務をDXまで導いていき、セールスイネーブルメントを強化することで、お客さまの満足をしっかりと得ることができると考えています。
また、プロダクトのラインナップとして、小売業界と建設業界という、まったく違うTAMに対してお客さまの需要があるため、業界ごとにソリューションパッケージを組み立てる必要があります。このようなプロダクトを適時投入しながら、ハードウェアだけでなく、ソフトウェアもセットで新しいプロダクトを展開することにより、お客さまのDXを加速することが重要になってきています。
2年くらいかけてエッジAI搭載のカメラをローンチできたため、ここに新たなアプリケーションを付け加えていることで、お客さまのタイムリーな課題に応えていく体制がようやく整ってきたと思っています。
エンジニアの採用には、我々だけでなく、他のいろいろなスタートアップでも採用が難しいという課題を聞いています。お客さまの課題に向き合って解決できるよう、若手を採用して教育していくところから、エンジニアの教育基盤や採用基盤を整えていくことを継続課題として進めているところです。
また、既存のお客さまへの継続的な価値提供というところでは、リテンションや不用意な返却・解約がないよう、しっかりとデータで見て、オンボーディングしていくことが求められています。そちらをしっかりと進めているところです。
データドリブンな事業運営を更に追求
SaaS企業ですので、お客さまがどのような状態かというコンディションは常に見させていただいています。しかし、より徹底的に可視化していくことで、自分たちだけがエンタープライズに販売するのではなく、弊社の売上の6割程度を占めるパートナー企業がエンタープライズにアプローチし、さらに大きなTAMに早くアプローチできることも非常に重要になります。
そのようなデータドリブンな部分をパートナーと共有化することは事前のリスク管理にもなりますので、さらなるアップセルも共通で行うことで、よりデータドリブンな事業運営が可能となります。
STEP4(映像×AI)以降の市場拡大にむけて
このように、さまざまなコンディションやお客さまの課題がわかってくると、お客さま自身がアプリケーションを利用して自分たちの経営課題をきちんと解決したいと思うようになります。このような社会実装を大規模に行うことは難しいという課題がありましたが、エッジAIが自動化・高速化・個別化を行い、プラットフォーム上でも開発できる環境を提供します。
そして、エッジAIの特徴を活かしたリアルタイムな解析や、非常に低コストなサービスのローンチなどのサービスを次々に出せるよう、ハードウェアからソフトウェアへの基盤を強化しています。
これまでもサーバーシステムでAIを動かすことはできていました。しかし、お客さまのコストにミートした、もしくはデータ収集をより簡単に行うことを考えると、エッジAIでしっかりとできることも求められてきています。そのため、市場拡大に向けてようやくプラットフォームの強化に対する投資を始めています。
プラットフォームバリュー強化にむけた取組み
先ほど古田からもご紹介したとおり、我々はセーフィーベンチャーズを設立しました。我々には映像プラットフォームという確固たるデータ顧客基盤、開発環境がありますが、AIをより開発しやすくする基盤であるMLOpsや、AIを簡単に作るための制作基盤であるアノテーションなどについては、まだまだ知見などが足りていないと考えています。それらを自分たちだけで実現するよりは、投資を行って時間を買うことが求められています。
そこで、エッジAIやMLOpsに非常に強い会社であるAWLさんや、FastLabelさんに投資を行い、アノテーションやさまざまなAIを生み出しやすい環境を作っています。その周辺にアプリケーションがたくさん根付くかたちを考えているため、映像プラットフォームの強化を念頭に投資を行い、仲間作りとしてアプリケーション領域にも徐々に投資していこうと考えています。
アプリマーケットのインフラとなる解析プラットフォームを構築中
このように、我々の映像データが市場からどんどんと集まってきています。その集まったデータを、お客さまの目線にあったアプリケーションやソリューションにきちんと変えていくことが求められています。そのため、セーフィーの解析プラットフォームを強化し、人が行っていた行為をアプリケーションに変え、DXを実現していくことに投資しています。
よりスピーディーにAIを社会実装することや、映像をベースにアプリケーションを作成するといったことが可能になると、非常に大きなTAMにアプローチできることになります。また、グローバルで見ても非常に優位なポジションを築けます。そのためにも、現在投資を加速しています。
空間接続ソリューション「窓」への投資
アプリケーションの事例として1つご紹介します。ソニーグループさんでは「音声と映像で感動を届ける」ということをミッションの1つとしています。そのソニーグループさんがR&Dに20年くらいかけたアプリケーションがあります。それは、空間同士がまるでその場にいるようにつながりあっているという、リアリティをもったコミュニケーションツールであり、デジタルサイネージや「どこでもドア」が開きっぱなしになっているようなツールです。このソニーグループさんとともに、我々も出資を行い、一緒に商流を作るための新たなプログラムが走っています。
例えば、建設現場だけでなく、ビルの中に入るためのいろいろなオプションやサービスをパッケージ化し、より大きな社会実装を行うために投資を行っています。そこで新しい体験や価値をソリューションに変えることができると思います。
まとめ
このように、さまざまな投資を行いつつ、足元ではパートナー企業とともに「DXの5ステップ」をきちんと共有化していきます。そして、パートナー企業とともにエンタープライズのお客さまを拡げ、TAMや売上の向上を目指します。
経営基盤の強化については、今後きちんとキャッシュフローを稼ぎながら再投資し続けることが求められます。その中で、映像を活用するにはさまざまなデバイスが必要となり、さらにAIのアプリケーションが必要になると考えています。
そのため、バランスのよい投資を行うことでキャッシュフローを最大化し、投資をさらに最大化して好循環を回し続けることが求められています。この継続性が非常に大事だと考えます。
また、参入障壁を築くことができれば、より安定した収益基盤を作ることができます。そのため、キャッシュフローで稼ぐことを念頭に、投資などを継続することによって「映像から未来を作る」というビジョンを達成したいと考えています。
本日はこのようなかたちで決算発表をさせていただきました。ありがとうございました。
質疑応答:営業体制の再構築について
質問者:営業体制の再構築について進捗状況を教えてください。ビジネスユニットが3つあったと思いますが、それぞれのユニットで進捗状況や手応えなどが変わってくると思いますので、ユニットごとの状況を教えてください。
佐渡島:我々のビジネスユニットには、小売業・サービス業、建設業・製造インフラ、そして新たなチャレンジとして、オフィスビルの中に設備として入っていくスマートビルティングという3つがあります。
各ユニットの営業体制の強化は継続的に行っています。特に小売業・サービス業については、今回大きな進捗がありました。新しい商材となるエッジAI搭載カメラの「Safie One」をローンチすることで、今までクラウドカメラだけではなかなか攻めきれなかった、スーパーマーケットや大手ショッピングモールに対して商材を売り込むことができました。「ローカルで録画しているものをクラウドにします」というようなこれまでの商談から「より賢くなります」といった商談ができるようになったため、非常に手応えを感じています。
さまざまなeコマースやショップで買っていただくということも当然ありますが、エンタープライズへのアプローチについて、ようやく大きな武器を手に入れたと考えています。来期もエンタープライズへのセールスを強化していこうと考えています。
また、建設業・製造インフラについては、いろいろな業界で「行って帰って」という仕事をよりデジタル化しましょう、という流れが大きくなっています。ゼネコンでは、遠隔臨場という「国の仕事を遠隔で行うためにカメラを使いましょう」といった流れになっています。このように、インフラ・製造業界でも非常に手応えを感じています。
建設現場でカメラをレンタルすると、どうしても短期間での利用が繰り返されます。しかし、大手のインフラや製造現場に入ることができれば、よりロングタームなLTVを稼ぐことが実現可能になるため、横展開や深掘りをしっかり行いたいと考えています。特にパートナーの商流で手応えを感じ始めています。
また、スマートビルディングについては完全に新しいチャレンジですので、まだまだ業績のインパクトはありません。しかし、今回の「窓」のように新しい商材を投入しながら、設備の中に入ってビル全体やオフィスをDXすることについては、ビルの建設等を考えると、ロングタームで長いLTVをベースにしたサービスをしっかりと投入させていくチャレンジになると思います。そのため、実際に売上が上がってくるのは3年先くらいを見込んでいます。
一方、オフィスを遠隔で機動的に運営したいといったニーズもあります。顔認証で入退場ができる「Safie Entrance2(セーフィー エントランス ツー)」といったサービスがありますので、そのようなサービスで短期的にきちんと稼ぎながら、長期のLTVを目指していくことが求められていると考えています。現在、需要を見つけ始めており、その両方ができる体制を作っているのですが、業績への寄与にはもう少し時間がかかると思います。
質問者:補足でお願いします。直販が中心になりますが、お客さまにきちんと訴求して販売することについての進捗や手応えはいかがでしょうか? 過去1年間の直販チャネルの伸び悩みが気になっています。お客さまにきちんとサービスを訴求して販売を行うことも再強化するとのことでしたが、手応えを教えてください。
佐渡島:セールスイネーブルメントへの対応については、「Safie One」を中心にコンサルティングチームをスタートしています。大きな案件はいくつかあるのですが、もう一度きちんと軌道に乗せることが求められると思っています。
これまで、どこよりも早く、コストも比較的手頃に、また使いやすいサービスとしてクラウドカメラを出しており、きちんとお客さまをつかめていました。そのため、さらにお客さまの懐に飛び込んでDXを実現することができていなかった点が反省点としてあります。
そこに新しい商材が整ったことにより、直販でしっかりと踏み込んで入っていける体制ができました。また、採用を含めて非常に優秀な営業メンバーが育っていますので、ここはパートナーの商流に頼らず、もう一度自分たちで成長曲線を描けるようにしたいと考えています。現在、成長戦略を全体で取るのではなく、一つひとつの商流ごとに積み上げていますので、この点については来期以降にきちんと伸ばせると考えています。
質疑応答:卸商流のモメンタム回復と利益の見通しについて
質問者:卸商流のモメンタムが回復しています。特定卸商流も、その他卸商流も、しっかりリカーリング性のあるお客さまを獲得していると理解していますが、いかがでしょうか?
また、利益の見通しについて、短期的な話になりますが、営業利益の通期計画と第3四半期の累計の差分を取ると、第4四半期に赤字幅が拡大すると試算できます。この背景について教えてください。
佐渡島:特定卸商流ならびにその他卸商流のリカーリング拡大については、数字で見ても解約率が低下しており、ARRもしっかり伸ばせています。社内でも一つひとつ見直しをかけていきますが、その他商流についても伸びしろが築けてきていると思います。
何度かお伝えしたとおり、パートナーと一緒に大型の案件にチャレンジすることができるようになってきましたので、そのような意味では、リカーリングの収益を積み上げていけると考えて運営しています。利益の見通しについては古田からお答えします。
古田:現時点では通期の見通しを変更する予定はありません。ご推察のとおり、金額としては第4四半期に赤字幅が拡大する可能性は十分あると見ています。
第2四半期、第3四半期と同様に、もともと行っていた認知度拡大の取り組みの関係で、マス広告やセールスマーケティングのコスト拡大、大型の開発案件のための外注費など、さまざまな先行投資を予定しています。そのため、第4四半期については、現状よりも減少する見込みはありません。
今後は粗利の増加などを見極めながら、最終的な着地を考えていくことになるかと思っていますが、現時点では業績の修正は考えておらず、赤字幅が拡大する可能性も十分あるという状況です。
質疑応答:テレビ広告の投資効果について
質問者:今回はテレビ広告にしっかり投資をしていますが、投資効果はどのように測っていますか? 投資の効果はすでに出ていると思いますか?
佐渡島:従前からお話ししているとおり、我々はテレビCMだけに頼ろうとはまったく思っていません。現在念頭にあるのは、DXを実現するために意思決定をしていただける、当社が関係するようなビジネスに寄与している方への認知率を約5割まで持っていくことです。こちらを中長期的な目標として施策を行っています。
今回、「Safie One」を発表したり、テレビCMを打ったりすることによって、我々の念頭にある意思決定者の認知率を定期的に測っていますが、ある程度改善しており、10ポイント近い伸びもあります。これはCMだけで得られた効果であるとは見ていませんが、「売上対広告宣伝費10パーセント」というクライテリアを守りつつ、意思決定者への認知率5割の達成に向けて定期的にCMを上げ続けていくことで、広告の効果をしっかり見ていきます。
CMという観点で見れば、どちらかというと主な目的はしっかり認知をしてもらうことです。我々の責務は今回のCM1本で効果を得ることではなく、継続的に行い続けることによって、しっかりとその効果をコミットメントして実現していくことですので、そこにしっかりと取り組んでいきたいと考えています。
質問者:認知率50パーセントが中長期的な目標ということですが、現状の数字はどれくらいですか?
佐渡島:現状の数字は開示しておりません。しかし、徐々に上がってきてはいますので、今後、継続的にCMを上げていけば、2年から3年で50パーセントに持っていけるのではないかと思い、投資を続けています。
質疑応答:ビジネスユニットによるベネフィットの出現について
質問者:ビジネスユニットのオンボーディング組織の取り組みについて先ほど言及がありましたが、第3四半期の時点で、それによるベネフィットは経営に反映されていますか? まだ反映されていないとすると、いつ頃出てくると思われるか教えてください。
佐渡島:例えば、住宅業界で新しい事例ができ、それが横展開してきている、とご紹介したことがあります。この場合は、住宅業界に特化したコンサルティングのプロセスをしっかり取ってお客さまに提案し、お客さまと伴走して取り組むことによって、大手の住宅メーカーや中小の住宅メーカーの、意識の高いアーリーアダプター層に対してしっかりとコンサルティング提案ができます。それによって収益を獲得できています。そのため、ここは短期的に見ても十分、割に合う成果を上げつつあると考えています。
例えば、映像を使って仕事のやり方を変えていくことは、本社の人にとっては当たり前だと思うかもしれません。しかし、支店や現場に行くと「なぜそんなことをしないといけないのか」となってしまいます。したがって、「なぜ行うのか」という理由からしっかりとコンサルティングする必要があります。
また、非常に厳格に費用対効果を問われる方々も多くいらっしゃいますので、しっかりと現場に向き合い、このようなアプローチを行っていくことによって、十分、短期的にも収益化し始めてきています。
本来は、数字を使用して「ここが伸びています」ということをお示しできるのが好ましいものの、まだそこまでは達成できていないと思っています。しかし、お客さまの課題にしっかりと向き合っていける組織づくりは徐々に始まっていると考えていただければと思います。
質疑応答:課金カメラ契約台数の増加ペースについて
質問者:この四半期は、課金カメラ台数を1万3,000台ほど増やせましたが、これは一過性ですか? または、このペースは今後も維持できると思いますか?
佐渡島:前回、前々回の決算では、特定卸商流などで一定の反動があったのですが、その点を精緻に見直し、当社も反省してその伸び率をしっかりと見ていくことにより、このような達成ができています。
そのため、商流ごとに、SMB層、ミドル層、エンタープライズのお客さまの伸び率をしっかりと追いかけています。我々の目指しているTAMやSAMの部分はそれほど変化がないと考えていますし、シェアも決して低くなっているわけではありません。
この結果を見る限り、社会のニーズは非常にあると考えています。その深掘りをしっかりと行い、このモメンタムを今以上に伸ばしていきたいという思いがあります。
セールス等の体制も整い、その実力がようやくついてきたと考えています。そのため、一過性ではなく、これを継続したいという意志を持って運営しています。
質疑応答:スポット収益の増収について
司会者:「スポット収益が前四半期ベースで増収している理由について解説してください」というご質問です。
古田:こちらについては、特に大型の案件があったというわけではなく、いろいろな細かい案件の積み重ねで各商流が順調に成長したことが理由です。特に今回は、全体の台数の増加でもけん引していたパートナー経営の部分や、「Safie Pocket」関連で地道に増えてきたという状況です。
ただし、昨年に比べるとスポット収益としてはまだまだ金額が小さいところです。大きく成長したというよりは少し持ち直したというところですので、今後さらなる成長が期待できる分野だと思っています。
質疑応答:大型案件獲得のボトルネックについて
司会者:「大型案件獲得のボトルネックについて教えてください。特にセキュリティレベルについて、ボトルネックになっていますか?」というご質問です。
佐渡島:ご覧のとおり、小売のトップの会社やインフラ企業、公共にまで少しずつ台数が入ってきていますので、セキュリティがネックになって入らないということは基本的にはなくなってきていると考えています。
しかし、大型の案件であればあるほど、お客さまも慎重な意志決定をされますので、そこに対し、私どもとしてはしっかりとコストでお応えすることも必要です。また、お客さまのベネフィットでいえば、例えば「人の働き方を減らして高い付加価値を」提供していく必要もあります。
そのため、PoCを含めて立証してお客さまに満足いただける点を、その翌期、また翌々期に増やしていくことが求められます。そこを丁寧に行うことが非常に必要とされていると考えています。
セキュリティの問題で入らないということはほぼなくなってきていますし、当社でも「Safie Manager(セーフィー マネージャー)」というツールや、エンタープライズのお客さま向けに、非常に高度なセキュリティ設計ができるようなマネジメントツールを裏側で展開していたりもしています。
2段階認証は当然ですが、SAML認証や、もう少し高いレベルの認証をお客さまにご提案することもできています。これは当社だけができていることですので、セキュリティレベルは創業以来非常に高く、お客さまのニーズにしっかり応えていくことを実践しています。そのため、これで応えられていないということは、まったくないと考えています。
質疑応答:来期の見通しについて
司会者:「気が早いですが、営業体制の改善進捗を踏まえた来期の見通しについて教えてください」というご質問です。
佐渡島:私どもとしては、パートナー企業が、引き続きこれだけ多く売ってくれていることを非常にメリットに感じています。やはり、どうお客さまの解像度を高くして売っていくか、また、それをどうパートナー企業に展開していくかというところは、社内にまだ課題があると考えています。したがって、来期に向けた組織づくりを今まさに行っています。
先ほどからお話ししていますが、我々は今までは、誰よりも早く、誰よりも高性能なプロダクトをリーズナブルな価格でご提供することで、ここまでの成長が得られたと思っています。しかし、ここからは各業界のお客さまに踏み込んだご提案をすることによって、エンタープライズのお客さまが一緒に伸びていくというかたちを取るべきだと考えています。
そのようなエンタープライズセールスを、来期以降もさらに強化していくことが重要ですし、その成功事例の横展開をパートナー企業と一緒に行っていくことで、さらなる伸びしろがあると考えています。そして、それに準じた採用活動やセールス・イネーブルメントというセールスの教育改革を行っていきたいと考えています。
お客さまから見れば、自分たちのセオリーに応じた教育を行っていくことが求められているため、そのようなところを地道に行っていくことで、エンタープライズを強化して営業成績を伸ばしていきたいと考えています。
質疑応答:来期の成長ペースについて
質問者:来期にカメラのスポット収益は伸びると思いますか? また、ARRも来期は伸びると思いますか? 成長のペースは加速するイメージですか?
佐渡島:加速させるという決意を持って実行していこうと考えています。スポット収益、ARRともに、これ以上のペースで伸長させたいという強い意志を持って実践しています。
また、お客さまに応えられるかがポイントになります。我々としては、足元のお客さまをしっかりと攻略し、リピートオーダーを稼ぐこと、そして未来のお客さま、未来の業界に対して、新しいチャレンジに取り組んでいくことが大事です。手綱を緩めずに、しっかりと成長率を伸ばしていきたいと考えています。
佐渡島氏からのご挨拶
みなさま、本日は長い時間お付き合いいただきまして、ありがとうございます。来期以降の経営計画等も現在策定していますので、株主のみなさまとともに共有しながら、我々の成長を一緒になって担っていただければと思っています。本日はお忙しい中、お時間をいただきまして、ありがとうございました。