2022年10月26日に発表された、SBテクノロジー株式会社2023年3月期第2四半期決算説明の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:SBテクノロジー株式会社 代表取締役社長CEO 阿多親市 氏

決算サマリ

阿多親市氏(以下、阿多):みなさま、こんにちは。本日はお忙しい中、私どもの上半期の決算説明会にご参加いただきまして、誠にありがとうございます。それでは、さっそく始めていきたいと思います。

本日は、業績の概況、中期経営計画の進捗について私からご説明します。まず、業績の概況です。

決算サマリとしては、売上高・営業利益など全指標で、上半期過去最高を更新することができました。今回の第4次中期経営計画で「利益率の改善」という目標を掲げ、より付加価値の高い案件へのリソースシフトが徐々に行われています。

受注の状況は、昨年同時期と比べると自治体情報セキュリティクラウドの反動減があり、第2四半期受注高は前期比42億円の減少となりました。こちらについても、後ほどグラフを用いてご説明します。第2四半期末の受注残高は過去最高を更新しています。

通期の見通しについては、当初掲げた通期業績予想の売上高が700億円、営業利益が54億円です。こちらは計画どおりに進捗する見込みです。

連結PL(4-9月)

連結P/Lです。売上高は317億600万円で、昨年から1.2パーセントの増収となりました。営業利益も22億7,000万円で、昨年から2.9パーセントの増益です。経常利益以下はスライドをご覧のとおりです。

マーケット別売上・売上総利益

マーケット別の売上ならびに売上総利益です。今期から売上総利益を開示しています。グラフのオレンジ色の部分は個人で、ノートンライフロック社ならびにフォントワークス社がここに当たります。売上高は昨年同様の20億円、売上総利益は12.6億円で昨年の13.1億円に比べて減益となりました。

ノートンライフロック社との契約変更の影響で、今後数年かけて多くの部分がノートンライフロック社との直接契約に巻き取られていきます。今期業績への利益影響は3億円から4億円と考えていますが、その影響が後ろ倒しになり、第3四半期から大きくなってくるのではないかと考えています。

グラフの緑色部分の公共関連については、農林水産省向けのプロジェクトや自治体情報セキュリティクラウドの運用で売上高が伸長しています。しかし、8月8日に起きた自治体情報セキュリティクラウドの障害への対応コストが発生し、残念ながら売上総利益は売上高ほどは伸びていません。

グラフの水色部分はエンタープライズ領域で、増収増益となりました。売上高が2億円ほど伸びていますが、これは本日決算発表したサイバートラスト社の伸びが大きく、単体の売上高はそれほど伸びていません。

中身をどのように入れ替えていくかは後ほどご説明しますが、特に低採算なライセンス販売から撤退し、利益率の改善を行っています。売上総利益は昨年の32.5億円から36.9億円と、売上高が伸びていないわりには利益が伸びていることがおわかりいただけると思います。

グラフのピンク色部分の通信事業については、私どもの親会社であるソフトバンク株式会社となります。こちらは11億円ほど減収しました。ただし、この中のベンダーマネジメント案件から徐々に高付加価値な領域にシフトしています。

減収ではありますが効率化が進んで利益率が改善していることが、売上総利益からおわかりいただけると思います。

営業利益の増減要因

営業利益の増減要因です。増収効果はわずかですが、0.8億円です。加えて、売上総利益率が1.6ポイント改善し、損失引当金が減少しているため、4.9億円の収益性の改善ができました。販管費は人件費と営業活動等のコストが5.1億円の増加となり、結果として営業利益は22.7億円となりました。

【単体】受注高 / 受注残高(個人向け除く)

先ほどお伝えした受注高についてです。公共案件では昨年の第2四半期は49億円の受注高でしたが、東北6県と新潟県の情報セキュリティクラウドの受注があったためです。2022年第2四半期は10億円と昨年比で反動減がありますが、今期自治体情報セキュリティクラウドの案件は埼玉県と山口県からの受注をし、こちらは第1四半期に計上しており、第2四半期の受注高には入っていません。

第2四半期末時点での受注残高は、公共案件が147億円、エンタープライズ案件が88億円と伸びています。通信事業案件は42億円と減少していますが、第2四半期としては過去最高の受注残高となりました。

業績見通し

業績の見通しです。現在の進捗度合いは、売上高が45パーセント、営業利益が42パーセントです。下期でのノートンライフロック社の契約変更の影響がどのように出てくるかが読み切れないところではありますが、営業利益54億円を達成していきたいと考えています。

第4次中期経営計画

中期経営計画について、2022年度から2024年度に向けた取り組みとその進捗をご説明します。少しわかりやすく整理してみました。まだ油断はできませんが、コロナ禍が徐々に明けてきました。その上で、DXの流れは止まらず、どんどん進んでいくと考えています。

お客さまはクラウド化を行い、DXに取り組んでいますが、「DXの自走化」という言葉をご説明したいと思います。「自分で走る」とは、今まではSIerに説明してきちんと動くようにアプリケーションを作ってもらっていましたが、顧客自身でどんどん開発していくかたちになってくるということです。

まだ紙でいろいろな申し込みを受けている中で、その作業の流れを一番よく知っているのは、自治体で言いますと職員の方々、エンタープライズで言いますと顧客接点を持っている方々です。

紙では通るものが、システムでは1箇所でも間違えると通らないことがあります。作業の流れを熟知している方にシステムを作ってもらうことが一番ですが、難しいためここを解決することが当社の役割の1つになると思っています。

2024年頃には、データ活用がより活発になるのではないかと思います。そして、お客さまのグループ会社や取引先、サプライチェーンの企業にそれを展開していこうという流れになり、結果としてお客さまの競争力が強化されていきます。

私どもの第4次中期経営計画において、まずDX推進のためのコンサルティング支援ができる人財を教育していきます。メリットやどのように進めていけばよいかを伝えられる人財です。加えて、ITリテラシー教育の支援を提供していきます。

最終的にデータ活用を行わないと、情報化社会はなかなか実現できません。DXを自走化していくために、職員や社員、フロントエンドの方々がノーコード・ローコードで構築できるアプリケーションプラットフォームが必要になってきます。

画面上でアイコンをクリックして落とし、その間に矢印を書いていくだけで1つのアプリケーションが完成するようなプラットフォームを提供していくということです。集めたデジタルデータは、正しいルートに則ってたまっていくデータですから、クラウド上のツールをフルに活用して分析などを行っていただきたいと考えています。

自社の中の分析ができてきて、ビジネスの機会がさらに欲しいといった場合には、同業他社の場合は難しいですが、自分たちと同じようなお客さまをターゲットにした別の業種の方々とマッチングできます。

「A社のお客さまは、B社の製品も買っているのではないか?」という場合です。名前や住所、連絡先といった個人情報を外の会社に出すことは許されていませんが、ざっくりとした年齢層やどのようなものを買っているかというデータを使います。

例えば、ユーザーの70パーセントが被っているのであれば、A社の製品をB社のユーザーにプロモーションしてクロス販売していくことができます。ピンポイントで個人のお客さまへアプローチすることは許されていませんが、顧客全体に対して広告を展開したとしても、7割もターゲットと合っているという状況が生まれるのです。

逆に言いますと、10パーセントしか合っていない場合はマッチングの意味がないことがわかります。世の中には自社製品を10パーセントしか扱っていない人たちがたくさんいるという白地を発見することにもなると思います。

これから進んでいくプライバシーテックについては、ヨーロッパのGDPRという厳しい法律やカリフォルニア州での法律を守りながら、データを活用していくところにつなげていきたいと思います。そして、それらを支えていくのがセキュリティになります。

セキュリティをしっかり守り、またプライバシーに対するルールもしっかり守れた上でないと、データの活用は難しいです。セキュリティ対策はこれから始める人にとっては非常にハードルが高く、高コストになってきますが、私どもが12県と405の自治体に提供している自治体情報セキュリティクラウドのモデルはすべての自治体で使えます。

人口100万人の市や数千人の町もあり、当然予算は違います。ただし、同じクオリティで同じサービスが受けられます。もちろん使う人数などで最終的に支払うコストは違ってきますが、私どもは今までそのようなサービスへの昇華を行ってきました。

自走化の成功例として、農林水産省の共通申請については、私どもの関連会社が延べ3,600名の農林水産省の職員の方々に作り方を教え、3,000を超える電子申請を私どものプラットフォーム上でほぼすべて職員の手で作り上げました。

また、自治体情報セキュリティクラウドのように、5年前に入れて去年で終了したものなどがありますが、今は要件が非常に増えています。コンピュータは10年で100倍くらい性能が上がると言われており、5年で10倍上がっているわけです。

ですから、新たなセキュリティの問題が起きてしまいます。これは不注意などではなく、そのようなところを狙っている人たちから守らなければいけないということです。

ですので、最新のものを入れ、最新の情報を適用していかなければいけませんが、小さな会社ではできません。しかし、今回のようなサービス化によってみなさまが享受できます。

お客さまからは、「企業グループの中全部のセキュリティをやってほしい」と言われることがあります。コストについては社員数や売上、トランザクションで割るなどいろいろな考え方がありますが、それでグループ全体が守れますし、「素材を提供してくれているサプライチェーンも含めてチェックしてもらわないと、製造ラインが止まり困る」というようなケースもあります。

このようなサービスへの昇華を私どもは行っていきたいと思っています。また、当社が提供していないさまざまなサービスがここに乗ってくるわけですが、セキュリティの基盤上にないものは、社内で勝手に使ってはいけないというルールに進んでいきます。

もちろん、お客さまのデータも勝手に使ってはいけません。それらをきちんと捉えていくことが、私どもの第4次中期経営計画の大きな柱になっています。

利益率向上に向けた顧客別の取り組み状況

毎年、売上高と営業利益の目標を掲げています。2024年度の営業利益80億円、営業利益率9パーセントという目標に向けた土台作りを行っていかなければいけません。今期の初めに社員でキックオフし、それぞれの重点テーマを決めました。

通信では高付加価値業務にフォーカスし、利益率を上げていきます。加えて、品質をさらに上げることにより、手戻りのないようにしていくことが目標です。

エンタープライズではDXの推進企業にフォーカスし、さらに深耕を図る方針です。グループやサプライチェーン企業を集めたセキュリティ対策も支援していきます。

公共では、自治体関連ビジネスの展開を挙げています。セキュリティはできたものの、いまだに紙での申込書が使われています。これを農林水産省の電子申請のノウハウでどんどん自走化できるようにしていきたいと思っています。

通信向けビジネス

通信向けビジネスでは、「ベンダーマネジメント案件」というソフトバンク向けのプロジェクトをこの3年間で増やしてきました。それぞれの部署が持つ開発案件・運用案件について、ベンダーマネジメントの依頼があり、その対価としてこの3年間は標準化を進めてきました。

あらかた標準化が終わったと思うものについては、昨年度より徐々に返しています。そして、ベンダーマネジメントから高付加価値で新しい分野の開発に徐々にシフトしています。

スライド右側に「成長に向けたサイクルを構築中」と記載しましたが、新しいアプローチの仕方・手法を勉強していただき、進めていくことで、売上総利益率が一時は11.9パーセントまで下がり、全体の利益率が厳しくなりました。

しかし、折れ線グラフのとおり、第2四半期は16.8パーセントまで向上しています。今期から来期にかけて、さらに進めていかなければいけないと考えています。

クラウドへの注力

私どもは比較的早い約10年前に、クラウドのインテグレーションやクラウド上におけるいろいろなサービスを始めています。最初はコミュニケーションインフラがクラウドに取って代わり、どんどん新しいものになっていき、そこにグループウェアが加わってデータが貯まってきました。

今後は、サプライチェーンマネジメントやCRMが入ってきます。あるいは、基幹のシステムが小分けされ、クラウドサービスをどんどん使えるようになっていくと見ています。

私どもはこの10年で、1,000社を超えるエンタープライズのお客さまのクラウド環境を構築し、運用してきました。しかし、コミュニケーションインフラで止まってしまい、まだクラウドに移す気はないというお客さまももちろんいます。その場合、毎年ライセンスを仕入れて販売していましたが、取引額は数億円単位でも非常に低粗利です。

スライドの「これまで」に記載したとおり、しばらくクラウドに移行しないC社・D社は、他社からライセンスを購入するよう促しました。現在はスライドの「これから」の部分のように、クラウド活用に意欲的なお客さまにフォーカスした深耕を行っています。

ライセンスのビジネスは、上期だけでも数億円単位縮小しました。結果として利益を向上させることができています。

セキュリティビジネスの展開

セキュリティビジネスでは、セキュリティ監視運用センターであるSOC(セキュリティオペレーションセンター)の大幅な拡充を行いました。延床面積や座席数は約2倍の規模にし、人員も増加しています。

こちらでいろいろな脅威に対して監視や解析を行います。また、復旧までワンストップで進めていけるように、エンジニアをそろえ、サービス化する方針です。

今までは、顧客企業1社1社に対する業務として、それなりの規模のセキュリティ監視・運用を行ってきました。顧客は、グループ企業やサプライチェーン企業などそれほど規模の大きくない会社も抱えています。

どこにセキュリティリスクがあるかは、実際のところはわかりません。会社と会社の間に切れ目ができ、パスワードなどをもう一度入力しなければいけないなど、さまざまな問題も起きています。

「認証だけで入りたい」「同じセキュリティの仕組みでないと安心できない」といったニーズに対し、セキュリティのサービスを提供したいと思っている次第です。

セキュリティ事業の進捗

セキュリティ事業の進捗状況です。2019年度の上半期の売上高は、18億5,000万円でした。棒グラフのグレーの部分が自治体情報セキュリティクラウドで、4県分の売上だと思います。

水色の部分はエンタープライズ向けセキュリティで、エンタープライズのお客さま1社1社に対してカスタマイズしたソリューションをお届けしています。

紫色の部分は運用で、MSS(マネージドセキュリティサービス)です。年々積み上がってきており、3年前は半年でわずか1億1,000万円でしたが、今は4億2,300万円に増えています。

自治体情報セキュリティクラウドは、本年度から9県分に増えています。来年4月から12県に増加するため、伸びはさらに広がっていくと思います。

エンタープライズ向けセキュリティは、企業の要件に合うものを最新かつ最高の技術で積み上げていくものです。熟練した人材が数多く必要なため、売上を増やすのはどうしても難しくなります。そのため、今後はMSSをどんどん伸ばしていきたいと考えています。3年後に発表する数字は桁が違っていると私は考えています。

自治体向けサービス

自治体向けサービスは、セキュリティクラウドだけで終わりではありません。現在ご提案しているのは、端末などEDRの監視といったオプションサービスです。今一番引き合いがあるのは、リモートワークのためのリモートデスクトップです。当社としては多くの自治体にご利用いただけるよう活動していきます。

また、その他に狙っているのはスライド右側の「業務効率化のための自治体向けサービス展開」です。今はパソコンやスマートフォンから申込みができ、いかにもデジタル化が進んだかのように見えますが、マイナンバーのいわゆる住基ネットのところにはつながりません。

役所では申込書をプリントアウトし、クローズドのネットワークに入っているパソコンでもう1回打ち直すということが非常に多く見られます。この手間をなくすためには、セキュリティの準備が必要になります。ただし、そのようなかたちにならないと、DXは進まないと思います。

このような自治体向けのサービスは、1つの市町で1,000種類を超えています。今は紙だから回っていますが、システム化するにはワークフローを1,000個作らなければいけません。それを実現するのが、すでにお伝えした自走化であり、セキュリティクラウドのサービスとしてのセキュアなプラットフォームです。

その上で、私どものツールや世の中にある他のツールなど、私どもがセキュリティ上問題ないと思えるものを使っていただき、自治体の住民向けのサービスをデジタル化していく提案を行っていきます。

デジタル化するのは職員のみなさまです。他の市町でも同じようなものがあれば、それをできるだけ使うようにすることを進めていきたいと思っています。

政府は2025年にはこのようなデジタルガバメントの仕組みを成立させたいと言っています。私どもも2024年までの中期経営計画を推進していき、早く多くの割合で自走できるように支援していきたい考えです。

第4次中期経営計画 / FY24 経営指標

今後はお客さま向け、あるいはジャンル向けに、新しいDXをよりサポートしていけるように中期経営計画を進めていく方針です。

中期経営計画の経営指標は、営業利益80億円、営業利益率9パーセント台、クラウド・セキュリティ&サービスで売上高500億円超を掲げています。この達成に向け、6分の1が済んだところです。より加速化して進めていくため、ぜひご支援をよろしくお願いいたします。

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