2022年10月12日に発表された、株式会社ヒト・コミュニケーションズ・ホールディングス2022年8月期決算説明の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:株式会社ヒト・コミュニケーションズ・ホールディングス 代表取締役社長グループCEO 安井豊明 氏
株式会社ヒト・コミュニケーションズ・ホールディングス 取締役CFO 福原直通 氏

2022年8月期決算説明

安井豊明氏(以下、安井):株式会社ヒト・コミュニケーションズ・ホールディングス代表取締役社長兼グループCEOの安井豊明と申します。平素より格別のご高配を賜り、誠にありがとうございます。それでは、2022年8月期決算説明会を始めさせていただきます。よろしくお願いいたします。

本日の決算説明は、ヒト・コミュニケーションズ・グループの概要、2022年8月期決算概要、2023年8月期計画概要、サステナビリティ経営の順で進めていきます。

ヒトコムグループとは

「ヒト・コミュニケーションズ・グループはどのような企業グループなのか?」と言いますと、「販売・営業・サービス分野を中核とした『営業支援企業グループ』」です。マーケティング分野の本格的アウトソーシング時代を切り拓きたいという強い思いで創業しました。

事業テーマは「人と人との接点そのすべてをビジネスフィールドとして、常にお客様の笑顔と満足を追求し、明るく活力ある社会の創出に貢献する」です。この思いのもとで事業展開しています。

ヒトコムグループ存在価値

当社グループは「世の中の解決すべき課題に向き合い、営業支援を通じて『無限のつながり』を生み出す企業」を目指しています。

例えば、商品と人、人とサービスなどのあらゆるモノとコトから、無数のつながり、いわば絆を生み出し、その絆が細かな網目となることにより「誰ひとり取りこぼしのない『絆』社会の創造と貢献」を実現することを当社グループの存在価値としています。

ヒトコムグループ体制図

それを実現するためのグループ体制についてです。私たちは持株会社制を採用しており、持株会社を含め全15社で営業支援企業グループとしての体制を構築しています。

上場しているのは私がグループCEOを務めるヒト・コミュニケーションズ・ホールディングスです。そして、「ヒト力」を活用した営業支援を展開する事業会社であるヒト・コミュニケーションズと、EC運営支援を行うBBFを中核2社と捉え、グループを構成しています。

まず、人材を活用した営業支援についてです。ヒューマン営業支援として、販売系営業支援、インバウンドやツーリズム・スポーツなどの機能を持つ5社と、ファッションホールセールの機能を持つ2社があります。特に、今期はグループ全体でインバウンド関連事業の復活を期待しています。

デジタル営業支援としては、今年8月にグローバル営業支援機能を持つワークシフト・ソリューションズが新たにグループに加わりました。これにより、国内企業の海外での営業支援や当社グループの海外展開の足がかりを築くだけでなく、人が出張や移動することなく海外での業務のやり取りを行えるため、社内外の脱炭素の貢献に資すると期待しています。

その他にも、インサイドセールスやアバターオンライン接客、ライブコマースなどの機能を持つ全5社で構成されています。

これらの15社で、ヒューマンとデジタルの営業支援のリソースを掛け合わせたオムニチャネル営業支援体制を構築しながら、経営環境や営業支援ニーズの変化に対応し、さらなる成長を目指しています。

2022年8月期 決算ハイライト

2022年8月期の決算概要についてご説明します。まず、2022年8月期の決算ハイライトです。全体としては、新型コロナウイルスの感染拡大により都心部の人流が抑制され、いわゆる都市型の営業支援のニーズが減退し、サービス、小売などの幅広い分野で厳しい状況となりました。

その中で、民需が徐々に回復に向けた動きを見せた分野もあります。ツーリズム・スポーツのスポーツ分野では、プロ野球やJリーグなどの各種スポーツの観客数上限撤廃に伴い、受託する業務が増え、事業が拡大しました。

パブリック分野、物流分野、家電分野などでも明るい兆しが見え、今期に向けた事前かつ入念な準備を行っています。また、新型コロナウイルス対策関連業務で全国自治体などから次々に要請を受け、特に空港での水際対策やワクチン接種会場の運営などが拡大し、業績を大きく牽引しました。

一方、販売系営業支援セクターの通信モバイル分野で政府主導の料金の引き下げなどの流れを受け、業務が一部縮小しました。

また、記憶に新しいと思いますが、ホールセールセクターでは2021年8月期に『鬼滅の刃』などのライセンスを活用した業務が絶好調だったこともあり、昨年との比較において縮小しました。加えて、ゼロコロナ政策など中国でのサプライチェーンの不安定さから収益面でも影響を受けました。

しかし、当社グループの充実した事業ポートフォリオや、これまでに培った業務の運営能力などによりこれらの悪影響をカバーし、売上高は641億3,000万円、営業利益は57億3,900万円と、昨年実績を2桁上回る過去最高の増収増益となりました。

なお、総額売上では948億3,200万円と、前身のヒト・コミュニケーションズを含めた過去最高の売上高となり、設立以来26期連続の増収を達成しています。

2022年8月期 損益計算書

福原直通氏:ヒト・コミュニケーションズ・ホールディングス、取締役CFOの福原直通です。よろしくお願いいたします。

それでは、2022年8月期決算の詳細についてご説明します。売上高は641億3,000万円で昨年対比114.2パーセント、総額売上高は948億3,200万円と前身のヒト・コミュニケーションズを含め過去最高の売上高となりました。売上総利益は152億2,700万円、昨年対比114.8パーセントとなっています。

当社の経営上、重要視している指標の1つは利益率であり、その中でも特に粗利率を最重要視しています。当初、新型コロナウイルス対策関連業務はその緊急性の高さから競合他社とのコンペなども少なく、利益率が高い事業となっていました。

しかし、その後は重症患者数が徐々に減少したことに伴い、運営方法も変化したことからコンペなども増加し、期末に向けて利益率は低下しながら推移しました。一方で、前期後半は民需が一部回復し、新型コロナウイルス対策関連業務と入れ替わり、構成を変更しながらコントロールすることで、前年より高い粗利率である23.7パーセントで着地しました。

販管費は積極的な広告費投下や売上増加に伴う費用の増加があり、94億8,700万円で昨年対比111.9パーセントとなりましたが、販管費率は14.8パーセントと、管理強化と効率化が奏功し、前年より低い水準となりました。

その結果、営業利益は57億3,900万円で昨年対比119.9パーセント、営業利益率は9.0パーセントとなりました。経常利益は57億5,900万円で昨年対比112.4パーセント、最終利益は32億2,700万円で昨年対比116.3パーセントとなりました。売上総利益、営業利益、経常利益、最終利益は昨年対比で2桁増加し、いずれも過去最高益となりました。

2022年8月期 売上高詳細

2022年8月期の売上高詳細についてご説明します。スライド左側の表がセグメント別売上高、右側の表がセクター別売上高で、2021年8月期と2022年8月期で比較しています。

連結売上高が全体で増加した理由として、セクター別では、パブリック分野で新型コロナウイルス対策関連業務において関係性が強化され、多くの地方自治体との取引開設によりビジネスが拡大し、プラス5億6,900万円となりました。

コールセンター分野では主にセールスロボティクス事業でプラス2億3,600万円となり、その他においてもプラス101億4,700万円と、新型コロナウイルス対策関連業務でビジネスが拡大しました。

セグメント別では、アウトソーシング業務がプラス81億300万円と大きく寄与し、新型コロナウイルス対策関連業務、パブリック分野、コールセンター分野、家電分野などのビジネスが拡大しました。また、人材派遣業務においてもプラス11億2,900万円と、新型コロナウイルス対策関連業務に加え、スポーツ分野、物流分野のビジネスが拡大しました。

一方で、左側の表のEC・TC支援事業は右側の表のデジタル営業支援に含まれますが、巣ごもり需要を背景に好調であった2021年8月期実績との比較では減収となりました。

また、両方の表に示されているホールセール事業は、2021年8月期に『鬼滅の刃』などのライセンス活用を背景に好調だった実績との比較になる点に加え、ゼロコロナ政策など中国での不安定な生産体制の影響を受けました。

さらに、右側の表の販売系営業支援では通信モバイル分野で政府主導の通信料金引き下げを背景に厳しい事業環境下にあり、一部クライアントからの受託規模の縮小が発生しました。

一方で、今期に向けて2022年8月期に立ち上がりはじめた物流分野や今期の都心部への人流回帰によるインバウンド復活に向けた家電分野などの販売・サービス分野、さらにはエンターテインメント分野などでもビジネスの拡大を見込んでいます。

加えて、右側の表のツーリズム・スポーツのスポーツ分野では、両方の期に影響しているオリンピック・パラリンピックの事業を除くと、プロ野球やJリーグなどの各種スポーツの観客数上限撤廃に伴い受託業務が増加しました。ツーリズム分野でも国内旅行を中心とした需要が少しずつ戻り、明るい兆候が見えてきています。

このように、2022年8月期は好調と不調のビジネスが混在しながらも業績が大きく拡大するとともに、2023年8月期のポストコロナを想定した事前準備に力を注いだ期となりました。

2023年8月期 売上高・営業利益(計画)

安井:2023年8月期の計画概要についてご説明します。まず、今期の計画のハイライトです。売上高は590億円、営業利益は47億円を計画しています。

新型コロナウイルス対策関連業務が大きく牽引した前期との比較では減収減益となるものの、新型コロナウイルス対策関連業務を除いた売上高は542億8,000万円、営業利益は38億3,000万円と、実質的には増収増益となります。また、新型コロナウイルスの感染拡大が影響する前の2019年8月期の業績と比較しても増収増益となります。

しかし、今期の新型コロナウイルス対策関連業務は業績に与えるインパクトが非常に大きいです。今期の計画は、政府や自治体の予算などを含め、新型コロナウイルスの動向に左右されて非常に読みづらいため、来年度の4月以降はほぼゼロと、保守的に計画しています。

この業務が拡大すると売上構成に変化が生じることは事実ですので、各四半期の資料などで状況を逐次開示・報告しながら進めていきたいと思っています。

2022年8月期 振り返り

前期の振り返りについてご説明します。1年前の想定では、前期の第1四半期は新型コロナウイルスの影響を色濃く受けるものの、第2四半期には民需が徐々に戻り、そのまま期末にかけて大きく回復していく姿を描いていました。

しかし、現実にはオミクロン株によるまん延拡大が第1四半期終盤から発生し、下期にも影響が続くという想定外の流れになりました。具体的には、都市部への人流回復が鈍化し、特に都市型営業支援ニーズが減退したこと、また期待していたインバウンドやスポーツMICEが本格的な後退局面に移行したことなどの悪影響を受けています。

下期には急激な円安の進行、エネルギー原料の高騰などマクロ経済の環境が大きく変化し、上期後半からホールセール事業の収益面で影響が顕在化しています。一方、下期後半にはスポーツや国内旅行など、一部の領域で回復の兆しが見えています。スポーツでは入場制限などが緩和され、足元では非常に追い風になっています。

また、訪日外国人の入国が緩和されることに伴い、2023年8月期のインバウンド回復を見越した準備に着手しており、来期に掛けて期待しているところです。新型コロナウイルス対策関連業務については、上期から引き続き事業運営力をフルに活かすかたちで想定以上に拡大し、業績を牽引しています。

当初想定していたコロナショックからの回復は後退したものの、当社グループとしては充実した事業ポートフォリオを構築・発展させながら、過去最高の業績を計上しました。

コロナ対策関連業務

新型コロナウイルス対策関連業務についてあらためてご説明します。自治体を中心に全国各地から次々と社会的要請を受け、防護服を着用して高熱の患者さまのお世話をするなど、現場スタッフは危険と隣り合わせになりながら業務を遂行してくれました。

空港の水際対策では、主要な国際空港である羽田・成田・セントレア・関空・福岡など計7ヶ所で業務を受託・支援し、今期も当面継続される予定です。また、大規模接種会場の運営支援では約30会場で業務を受託しました。これらの業務支援により、新型コロナウイルス感染拡大の抑制や入国の早期化に寄与したものと自負しています。

当社グループはこの業務を社会貢献の1つと考え受託してきました。大規模接種会場の運営など徐々に事業規模が拡大してきましたが、当社グループが持つ「イベント運営ノウハウ」「接客能力の高さ」「地方自治体入札資格」など、さまざまなシナジーを発揮できたことから要請が多く寄せられたのだと思っています。

結果として、前期全体を通じて新型コロナウイルス対策関連業務が業績を大きく牽引しました。

2023年8月期 損益計算書(計画)

今期の損益計算書についてです。売上高は次のスライドでご説明するため割愛します。売上総利益は138億6,500万円、粗利率は23.5パーセント、販管費は91億6,500万円、販管費率は15.5パーセントです。

今期の計画は、新型コロナウイルス対策関連事業を来年度の4月以降はほぼ見込んでいないため、全体として保守的な計画になっています。また、粗利率、販管費率ともに前期よりもやや減退する計画となっているため、今まで以上にコントロールや効率化を図り、収益改善に取り組みながら経営を進めていきます。

その結果、営業利益は47億円、経常利益は47億2,000万円、最終利益は26億5,000万円を計画しています。

2023年8月期 売上高詳細(計画)

2023年8月期の売上高の詳細をご説明します。左の表がセグメント別売上高、右の表がセクター別売上高です。前期に増加した新型コロナウイルス対策関連業務は感染拡大が落ち着くことで減収となりますが、その中でも増加する事業をスライドに青字で示しています。計画としてはコロナ禍が収束に向かう中で、その他の業務を推進していくかたちです。

セクター別では、デジタル営業支援、販売系営業支援、ツーリズム・スポーツ、インバウンド、パブリック、コールセンター、ホールセールでそれぞれ増収を計画しています。人材を使ったヒューマン営業支援では、インバウンド、ツーリズム、スポーツMICE、ホールセールが復活事業として大きく伸長しました。また、前期から活動を開始した物流分野では、さらなる事業拡大を見込んで業績を牽引するかたちとなっています。

現在、DXの営業支援として力を入れているデジタル営業支援については、前期にグループに加わったワークシフト・ソリューションズの海外向け業務受託により、今後の海外事業への足がかりを築きたいと思っています。

また、EC運営支援のBBF、セールスロボティクスのインサイドセールス、アバターオンライン接客やライブコマースなど、各領域で強いニーズを背景に既存事業を拡大しながら、それぞれ新たな領域に進出することを計画しています。具体的な取組みについては、後ほどご説明します。

2023年8月期 配当予想

配当については、前期配当を5円増配し年間30円に修正することを8月17日に発表しました。今期の配当は、過去最高益であった前期の年間配当30円からさらに1円増配し、年間31円と予想しています。配当性向は20.9%となり、株主のみなさまへの配当による貢献を継続していきます。

当社の前身であるヒト・コミュニーケーションズを含め、2011年の上場以来、12期連続の増配となります。今後も業績と合わせて株主のみなさまへの還元を経営の中核におきながら取り組んでいきたいと思います。

2023年8月期 強化する取組み概要

2023年8月期に強化する取組みの概要についてご説明します。まずポストコロナの復活事業の強化として、入場制限などの制約を受けたスポーツMICEに関しては、入場制限もなくなり、再び観客であふれる場面が復活してくると考えています。当社の事業も正常化し増加していくため、ここを復活の業務として強化していきたいと思います。

長期にわたり非常に厳しい環境にあったインバウンド・ツーリズムについても徹底した準備を進め、海外のお客さまへの対応力を強化していきたいと思います。

また、『鬼滅の刃』が終わり、前期はサプライチェーンの乱れからホールセール分野が非常に厳しかったブランチ・アウトの事業ですが、今期は新規のライセンスなどの活用も含め、新たな試みなども含めて強化を図っていきたいと思います。また、輸出の強化も考えています。

パブリック分野については、新型コロナウイルス対策関連事業を通じて自治体との取引が相当開拓できたため、今後も新たな自治体のニーズに対応していきたいと考えています。

2つ目は、デジタル営業支援のさらなる強化です。メタバース領域におけるNFTの活用や、新商材のアバターを活用しながら新たなEC領域として運営支援に取り組んでいきます。また、これまで取り組んできたインサイドセールスのさらなる強化を図ります。

海外向け業務では、ワークシフト・ソリューションズがこの度グループインしましたので、そちらを中心に取り組んでいきます。加えて、アバターオンライン接客をさらに強化し、遠隔地の非接触の営業ツールとしてお客さまに使ってもらえるように、生産性向上を図っていきます。ライブコマースについても同様に取組みを強化していきます。

3つ目に、前期より新規に取り組んでいる物流分野において、本格的な拡大路線に入っていきたいと考えています。

取組みトピックス①:インバウンド&ツーリズム

トピックスとして、今期の強化ポイントを詳しくご説明します。まずインバウンド・ツーリズムについて、海外からのお客さまの受け入れはコロナ禍により非常に制限されてきましたが、いよいよ復活に向けて動き出します。

インバウンド消費の復活に向けた活動展開として、通訳案内士などの添乗員を我々は最大規模で抱えているため、フル活動となればかなり大きな業績になると思います。また、国内の旅行プランを企画・運営し、海外の旅行会社に購入してもらうランドオペレーティングが復活してくると大きな収入となります。

その他、クルーズ船の復活や空港でのレンタカーの受付、送迎カウンターなども大きな需要が寄せられると思います。インバウンド復活に向けての動きが始まる中で、自治体によるインバウンドの状況調査の相談もたくさん受けており、こちらもお役に立てるように自治体と相談しながら進めています。

空港や駅、観光地などのさまざまな場所で土産物・免税店、観光案内所、インフォメーションが機能してきますので、インバウンド需要については今期一番の目玉として復活が待たれるところです。

取組みトピックス②:ECサイト運営支援

EC事業の受託事業を行うBBFのECサイト運営支援について、新たな試みをご紹介します。昨今は消費者による回遊がリアル店舗、ECサイトに加えてメタバース上にも急速に広がっていることから、今期はメタバース上での事業展開にチャレンジしていきます。

特にNFTやアバターとの親和性の高さから、新たな商材での事業拡大として、コンテンツビジネスへの参入や当社グループであるUsideUのアバターを活用したオンライン接客など、販売拡大の可能性を追求しながらチャレンジングな活動を展開していきます。

取組みトピックス③:アバターオンライン接客 ライブコマース

UsideUのアバターオンライン接客とモフリのライブコマースについてご説明します。アバターオンライン接客について、非接触と売り場やサービスの生産性向上を軸にオンラインに切り替えていきます。通常であれば10人の人材が接客していたものを、遠隔で安全に1対複数の関係で対応できるようになります。

CMなどの効果もあり、多くのお客さまからオンライン接客の機能、テクノロジーを活用したサービスを行っていきたいという声が寄せられています。当社としてもオンライン接客のニーズの高さに驚いている部分もありますが、多様なニーズに応えるべく、さまざまなクリエイティブな使い方も提案しています。

他社に先んじて、グループ会社のセールスロボティクスの中にアバター接客センターを設置して準備してきました。オンラインツールだけではなく、裏側にいる接客についてもヒューマン営業支援に強い当社の潜在能力を活かすかたちで対応しています。

これから期待できる分野であるライブコマースについても、通常のECではファッションを中心にSNSを活用したWebマーケティングの機能を強化するかたちでサービスをさらに発展させ、ライブコマースの有効性をマーケットに訴えていきたいと思います。

取組みトピックス④:海外向け業務受託

直近にグループインしたワークシフト・ソリューションズの海外向け業務受託についてご説明します。国内ではオンライン花盛りとなっていますが、中小企業も含めて海外業務が課題となっており、大手企業でも脱炭素の流れや生産性を上げるという意味ではコロナ禍での出張や海外対応が非常に重荷となっています。

ワークシフト・ソリューションズは210ヶ国、13万人の各専門分野のフリーランスと契約しています。こちらをマッチングサイトでマッチングをさせ、数々の海外向け業務を受託していこうという活動です。当社グループにジョインし、当社の資本力やネットワークを活用しながら、社会貢献を含む海外業務を将来的に拡大していく取組みとなっています。

取組みトピックス⑤:インサイドセールス

セールスロボティクスのインサイドセールスについてです。コロナ禍の環境においては、非対面での営業活動が多く、キーマンが出勤していなかったり、連絡がなかなかつながらなかったりと、非常に苦労してきました。非対面・非接触の自由な働き方のニーズは継続すると想定している一方で、最近はお客さまとの接点も非常に濃くなってきました。

また、インサイドセールス市場で拡大が見込まれる分野も出てきています。今までの手足や体を使うフィールド営業からオンラインでの営業に切り替え、効率化・生産性向上を目指して取り組みたいという事業ニーズが非常に高まっており、相談が多く寄せられています。

既存領域のインサイドセールス実務支援については、これまで以上に成長の加速度を高めるために、引き続き当グループの営業網を活用しながらサポートしていき、事業を拡大していきます。

新規領域への活用としては、インサイドセールスの体制構築支援として、先ほどお伝えした生産性向上支援を行い、コンサルティングのように対応していくことに取り組んでいきたいと考えています。

「インサイドセールスを導入したものの機能していない。なかなかうまくいかない」という声に対応するかたちで、新たなステージとしてコンサルティングを進めながら、インサイドセールスの世界を広めていきたいと考えています。

取組みトピックス⑥:物流分野

物流分野についてです。物流分野への進出は前期から実施しており、小売業やメーカーなどが主要なクライアントです。倉庫も含めて物流分野は当社との親和性が高いと判断し、遅まきながらこの分野に参入しました。

まず、人材不足のニーズへ対応するため、スライドの図の赤枠に記載している出荷業務への支援を最優先で行いました。その間にさまざまな業種との接点を持つことができ、クライアント数の増加や1施設あたりの受注量の増加とともに、数多くの課題にも直面しました。

一方で、当社グループでは充実した事業ポートフォリオに加え、さまざまな事業分野での経験を活かせるため、今期は特に出荷業務に加えて、より上流域にある受入業務やDX化を見据えたシステムセンターでの支援を実施し、事業拡大を加速させる予定です。

取組みトピックス⑦:スポーツMICE

スポーツMICEについてご説明します。当社はスポーツ分野を事業の中核に据え、ラグビーワールドカップや、前期にはオリンピックの支援などに活動を広げてきました。加えて、いろいろな局面でブランディングの強化も図ってきました。

当社の社名をスポーツの試合やテレビなどで見かけた方もいるのではないかと思います。当社のブランドやこれまでに培ったノウハウを総合的に活かすかたちで、プロスポーツの世界に大きく入っていきたいと思い、前期より強化を図っています。

特に、プロ野球の日本野球機構(NPB)やサッカーのJリーグ、ラグビーのリーグワンといったプロリーグのチームでの活動を強化しているところです。

プロスポーツのビジネス上の課題はファン作りやチケット販売・MD・ボランティアの強化、スポンサーに対する魅力あるチーム作り、営業強化などが挙げられます。単に作業を受託するのではなく、ソフトの部分からファン作りに協力・支援することで、地域密着のプロチームの経営にも協力し、事業を拡大していきたいと考えています。

取組みトピックス⑧:ホールセール

ブランチ・アウトの事業であるホールセールの取組みについてご説明します。前々期は爆発的なヒットを記録した『鬼滅の刃』という作品がありましたが、前期はその部分が減退したためやむなく減収となりました。生産体制も含めて大幅な見直しを行う必要があり、中国中心のサプライチェーンも見直していかなければならないと考えています。

ブランチ・アウトは、多種にわたるコンテンツの権利ビジネスに長らく取り組んできたノウハウを持っていますので、今後新たに取り組みたい活動についてご説明します。

まず、これまで行ってきたライセンスの活用を、衣料品だけではなく、雑貨などの商材に展開することで事業の拡大を図りたいと考えています。

また、新規にグループインした海外事業のワークシフト・ソリューションズでは、東南アジアや欧米などにフリーランスを活用した営業網を作り、有力なライセンスを活用したアイテムの販路を海外に拡大していく戦略を進めていきたいと考えています。

当面は続く見込みである円安を踏まえ、今までは輸入して開発を行い、国内で販売していたものについて、一部は輸出のチャネルを強化し、さらなる事業拡大を図っていきたいと思います。

BBFとブランチ・アウトで運営している自社サイト「HICUL(ハイカル)」では、前期までのテスト段階において消費者のニーズの高さが確認できました。この部分については商品の充実を図りながら、さらに独自の直販を進め、事業拡大に努めていきたいと考えています。

当社グループのESG活動

最後に、サステナビリティ経営についてご説明します。前期よりサステナビリティ経営に関連するESG活動についてあらためて意識を高め、取り組んでいます。

まず、前期の実績です。環境面では、TCFDのフレームワークに基づく評価・分析に着手しました。環境保全については、沖縄県の国頭村森林公園の指定管理を受託したり、東京都の奥多摩町にある交流宿泊体験施設の指定管理を受託し、管理業務を行っています。

空港での事業として、一村一品の空港展の指定管理を行いました。発展途上国のプロダクトを紹介し、みなさまに買ってもらうというもので、環境に配慮した事業活動を行いました。

社会面については、先ほどからお伝えしているとおり新型コロナウイルス対策関連業務を実施し、大変危険な部分もありますが、感染拡大対策に広く取り組んできました。また、後ほどご説明しますが、新たな取組みとして介護を行う方々のケアという意味で、海外で非常に盛んに行われているレスパイトツーリズム事業に参入しています。

スポーツ支援の観点からは、ラグビーのリーグワンの初年度の立ち上げ時のオフィシャルスポンサーとして事業の確立に協力しています。また、来年に控えた「ラグビーワールドカップ2023フランス大会」に向けて、男子日本代表のオフィシャルスポンサーとして支援を行っています。

企業統治としては、報酬委員会など設置し、ガバナンスの強化に努めています。

2023年8月期の取組みについてご説明します。まず、サステナビリティ委員会を設置し、本格的な取組みを開始していきます。

環境面では、TCFDのフレームワークに基づく情報開示を的確に行っていきます。モビリティ分野では、シェアリングカー事業で受託している業務について積極的に支援の拡大を行っていきます。

また、新たにグループインしたワークシフト・ソリューションズを活用し、海外出張を効率化して減少することで、温室効果ガスの削減に貢献していきたいと思っています。

企業統治については、指名委員会や特別委員会を設置していきます。中期経営計画も検討し、まとめていきます。さらに統合報告書も検討して作成し、発表するところまで着実に取り組んでいきたいと考えています。

レスパイトツーリズム事業について

今お伝えした取組みの中から、レスパイトツーリズム事業をピックアップしてご説明します。「介護する人は息抜きもできず大変だ」と言われているとおり、国内では介護する方にフォーカスした対策やサービスが非常に遅れているのが実情です。

そこで当社は山口市や湯田温泉の観光協同組合などと協力することにより、介護する人を主体に、関係するヒト・地域が元気になることを目指して、新たな「レスパイト×ツーリズム」の事業を推進していきます。

当社グループは観光事業に関わる人材やサービスを保有しています。これらに加えて、組織や事業の運営力を活かしながら、社会貢献度の高いレスパイト事業の定着を図っていく努力を湯田温泉から始めていこうという試みです。

「介護・福祉の課題解決×地方創生の課題解決×当社グループリソースの活用」ということに積極的に取り組み、成功に導きたいと思います。これを足掛かりに、少しずつ全国に広げていければと考えています。

脱炭素社会に向けた当社グループの取組み~TCFDフレームワークに基づく情報開示~

国内の喫緊の課題である脱炭素社会に向けた当社グループの取組みについてご説明します。この取組みについては、私自身が意識改革を行い、フルコミットしています。

気候変動への基本的な考え方として、持続的な社会の実現および当社グループの持続的な企業価値創出に向けてマテリアリティを特定し、企業戦略や中期経営計画の検討に組み込み、事業活動に反映させていこうと考えています。

さらに、カーボンニュートラルの実現に向けて、バリューチェーン全体での脱炭素化を実現するため、事業機会や新規事業の検討を行い、事業を推進していきます。このような考え方と事業がシンクロするように推進していくために、理想に向けてがんばっていきたいと思っています。

また、気候変動による情報開示としてTCFDフレームワークに基づき、スコープ1、スコープ2だけではなくスコープ3についても算定し、今後はバリューチェーン全体の情報を開示していきます。

TCFDフレームワークに基づく情報開示(速報版)

TCFDに基づく情報開示について、速報版をご紹介します。当社グループ全体でのCO2排出量は、2021年8月期実績の合計が3,913トン、前期の推計の合計が4,165トンと若干増加しているものの、おおむね4,000トンの水準にあると言えます。

前期の内容を見ると、スコープ1に該当する自社排出している炭素とスコープ2に該当する間接的に排出している炭素は合わせて1,708トンで、前期からプラス約200トンとなっています。一方、スコープ3に該当する第3者であるサプライチェーンからの炭素の排出量は2,457トンで、前期からプラス約50トンとなりました。

さらに、前期の推計値をブレイクダウンし比率の順に並べると、通勤による排出が54パーセントと最も高くなっています。これは、従業員やスタッフなどの全社員が対象となっています。電気・ガソリン等が41パーセント、出張が3パーセント、ブランチ・アウトの中国での製造などを含む上流物流が2パーセントに分類されています。

したがって、比率の高い通勤と、この2期間で増加しているスコープ1とスコープ2に分類される電気・ガソリン等が課題の1つであると捉えています。

なお、事業におけるカーボンクレジットの参入や導入も含め、今期はさまざまな検討と実施を行う予定です。現在は前期の実績を集計しているため、確定次第あらためて情報の開示を行っていきます。

安井氏からのご挨拶

前期決算、今期計画、サステナビリティ経営について、非常に多岐にわたる内容をお伝えしました。当社はポストコロナにおける経済や産業の発展に向け、全社一丸となって事業の成⻑と社会への貢献に尽力していく所存です。引き続き、変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。

以上で、2022年8月期の決算説明を終了いたします。⻑時間のご清聴ありがとうございました。

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