米国の金利上昇による家計への悪影響はないのか
2017年5月24日の米国市場では、S&P500種株価指数が5日続伸となり史上最高値を更新しています。同日に発表された連邦公開市場委員会(FOMC)の5月議事録が、米金融政策の正常化(引締め)が穏やかに進む可能性を示唆する内容であったことなどが好感されたようです。
今回のFOMC議事録では、大部分の当局者はもう一段の利上げが「近く適切になる」と判断しており、最近、一部で見られる景気減速が一過性のものであるという見方を変えていません。このため、6月の利上げはほぼ確実視されています。
とはいえ、以下の記事にあるように、米自動車業界が金利の上昇、自動車ローン遅延率の上昇、在庫の増加の3重苦の状態にあることには留意したいと思います。
また、5月24日の日本経済新聞で報じられているように、米国の家計の借金が学生ローン、自動車ローン、クレジットカードローンを中心に増加し、すでに2008年の金融危機時の最高水準を上回ってきたことにも注意が必要であると思われます。
もちろん、対GDP比で見た水準は、まだ金融危機時の水準を下回っていることや、絶対額でも住宅ローンはまだ金融危機時を下回った水準にあることから過度な懸念は不要であると考えられます。ただ、利上げは米国の家計にマイナス影響をもたらし、GDPの最大構成要素である消費に悪い影響を与える可能性があることは頭の片隅に入れておきましょう。
出所:雲行きの怪しい米経済、自動車版サブプライム問題への懸念も(投信1)
割安圏にある日本株
今回のFOMC議事録は、6月の利上げ期待を変更するような内容ではなかったものの、その後の金融引き締めについては穏やかに進められる可能性が読み取れるものでした。このため、発表後はやや円高となりました。
とはいえ、米国景気が急激な利上げにより腰折れとなるリスクも後退することになるため、日本株にとってもそれほど悪い話ではないということになりそうです。実際、25日の日経平均は、寄り付きは安く始まったものの、その後は値を戻しています。
また、以下の記事にあるように日本企業の業績は堅調であり、会社予想に基づいた日経平均の予想PERは約14倍と、近年のPERレンジ14-17倍で見ると下限に近い水準にあります。このため、なかなか実現しない日経平均2万円についても、まだ期待を持ち続けてもよいのではないかと思われます。
出所:業績拡大続く 日経平均PERは14倍まで低下(楽天証券)
今、どこに注目すべきか
では、こうした局面では、どのような視点で銘柄選別を行うべきでしょうか。その1つのアイデアとしては、中長期で見て伸びる産業に注目するという株式投資の王道を選択することが考えられます。その理由は、経済は順調であるとしても、短期のサイクルではピークが近づいていると思われるからでもあります。
以下の記事によると、最近の米国のビジネススクールの学生は、ウォール街(投資銀行)には目をくれず、ネット系企業への就職人気が高いとのことです。そのこと自体にはあまり驚きはないものの、そのネット系のなかでも注目度が高いのが、グーグルではなくアマゾンであるという点です。
その理由は、両社が主戦場とする対象市場の拡大ポテンシャルの違い(グーグルは広告市場、アマゾンは小売市場)であるということです。よって、この記事の筆者はアマゾンを投資対象として注目しています。
この見方が当たるかどうかはともかく、「長期的に伸びる産業や企業はどこか」という視点を持ちながら銘柄選別を行うことが長期投資では基本であり、重要なポイントです。みなさんも、目先の金利動向に一喜一憂するだけではなく、身の回りの話から伸びそうな業界、企業を探してみてはいかがでしょうか。
LIMO編集部