同じものでも見る角度によって異なる
最近「トリバゴ」というホテル予約サイトのテレビCMを多く目にします。
CMには何種類かあるようですが、そのうちの1つに、「同じ部屋、でも、予約サイトによって料金が違う」というフレーズのものがありました。同じホテルの同じ部屋、同じ日の予約なのに、どの予約サイトを経由するかによって料金が大きく違うので、「トリバゴ」で比較してから予約しませんか、ということを伝える内容になっています。
ホテル予約であれば、料金が違うだけかもしれません。ですが、この「同じ部屋、でも、料金が違う」というフレーズを、「同じもの、でも、角度によって見え方が違う」と置きかえて一般的な話にしてみると、示唆に富むフレーズのように聞こえてきます。
日経平均20,000円の大台? ドル建てで見る外国人投資家には関係ない話
日本の株式市場の状況は、日本のほとんどのメディア報道では、日経平均株価で伝えます。つい数日前まで、「20,000円の大台まであと少し」といったように報道されていました(実際、5月16日には場中で19,998.49円までいきました)。
ここで2010年以降の日経平均株価指数の推移(毎月末、2017年のみ5月16日の終値)を図にして見てみました。
20,000円に乗せるかどうかに注目が集まり、手前の19,998.49円まで上昇した5月16日の円建ての終値は、19,919.82円でした。確かに数字の切りがいい20,000円に乗せるかどうかは、円建てで見る投資家にとっては、一つの目安にはなるでしょう。
しかし、今や日本の株式市場の参加者として、外国人投資家が大きな存在感を示しています。彼らは、円建てではなく、自国通貨建てで市場を見ています。5月16日、ドル建てでの終値は176.11ドルであり、ドル建てで見る限り、「20,000円」という節目はまったく関係ありません。
次に、過去の株価水準との関係を見てみます。円建てでは、2015年につけた高値に到達するには、まだ3%超の上昇が必要です。一方、ドル建てでは、既に2010年以来の最高値を更新し続けている状況にあります。
また、5月16日終値の、2016年12月末からの上昇率は円建てで4.2%、ドル建てで7.7%、ユーロ建てで2.1%となっていました。
同じ日経平均株価指数なのに、為替を考慮するだけで、見える風景がかなり違います。そして、この違いが各投資家の投資判断に少なからず影響を与えます。
為替の動向とあわせて考えるだけでも、変化への対応力が増す
さて、5月17日になり、いわゆる「ロシアゲート」と言われるトランプ政権に関する疑惑に注目が集まり、日経平均は19,553.86円(5月18日終値)まで下落しました。一方、ドル建てで見ると、円建てでの日経平均の下落を為替レートの変動が和らげ、最高値から若干下がった程度にとどまっています。
疑惑報道でも日本株は強いという考え方もできますし、最高値更新水準だから(利益確定が入って)売られやすいという考え方もできます。円建てでは十分に下がっても、ドル建てではまだ下げが十分でないと考えれば、買いを入れるのはもう少し待とうというシナリオを構築することもできます。
一般的に、考えられうるシナリオを多く想定しておくほど、急激な変化に対する対応力は高くなります。円建てだけでなく、ドル建てだとどう見えるのか、といった視点を加えるだけでも、考え方に厚みが増します。今のような変動の激しい時ほど、見る角度をいろいろ変えながら、複数の視点をあわせ持って対処していきたいものです。