個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)が節税効果で人気となっています。口座を開設したきっかけは節税効果であっても、せっかくなのでこれを機に上手に運用してしっかりとお金を増やしたいと考え始めた方も少なくないのではないでしょうか。

とはいえ、運用を始めるためには何に投資するのかを決める必要があります。その際、投資信託選びで重要視されている指標としてシャープレシオがあります。そこで今回は、シャープレシオのポイントや落とし穴を整理し、賢く利用するための方法を紹介します。

シャープレシオはリスク調整後のリターンを比較する便利なツール

iDeCoでの運用を前提とした場合、元本変動型であれば主な投資先は投資信託となりますが(参考:『iDeCo(個人型確定拠出年金)の節税効果がすごい!iDeCo完全攻略ガイド』)、数ある投資信託のパフォーマンスを比較する際に重用されているのがシャープレシオと呼ばれる指標です。

シャープレシオとは運用の効率性を測る指標のことで、効率性はリスクとリターンによって計算されます。具体的には超過リターンをリスクで除した値となることから、シャープレシオは“リスク調整後のリターン”の指標ともみなされています。

超過リターンとは、リターンから無リスク資産のリターンを引いた値です。通常、無リスク資産のリターンには短期国債の利回りが適用されます。リスクとは、リターンの振れの大きさのことで、マーケットではボラティリティ(変動率)、統計用語では標準偏差とそれぞれ呼ばれていますが、いずれも同じ意味です。

簡単な例を挙げると、超過リターンが10%、リスクも10%だとシャープレシオは1.0となります。シャープレシオが大きいほどリスク1単位に対しての超過リターンが大きくなり、より効率的とみなされます。

超過リターンが15%でもリスクが20%だとシャープレシオは0.75に低下し、リスクの割りにリターンが小さい投資となります。超過リターンが12%、リスクが10%ならシープレシオは1.2に上昇し、より効率的な投資となります。

このように、シャープレシオを見ればリスクとリターンの異なる投資信託を簡単に比較することができますので、便利なツールとして幅広く利用されています。

シャープレシオの落とし穴

シャープレシオは人気の高い指標ですが、万能というわけではありません。

まず、シャープレシオは一定ではありません。過去の高い数値が将来を保証しているわけではありませんし、推計期間によって数値が変化します。

また、シャープレシオの計算には正規分布が仮定されていますが、実際の相場が正規分布に従っているとは限りません。特に、オプション取引を含む金融派生商品(デリバティブ)や時価評価の難しい不動産、流動性の低いプライベート・エクイティなどへの投資が含まれている場合、シャープレシオは過大評価されている可能性があります。

やや専門的な話しになりますが、積極的にリスクを取るアクティブ型の投資信託はリスクが過少評価されることでシャープレシオが高くなる傾向にあるかもしれないということです。

限界を理解し、複数の指標を見比べよう

シャープレシオは便利なツールですが、限界もありますので、まずはその限界を理解して利用することが大切です。

リスクとリターンはコインの裏表であり、高いリターンを得るためにはより多くのリスクを取る必要があります。高いリターンにもかかわらず、リスクが小さい場合、すなわちシャープレシオが極端に高い場合には、投資信託の中身を確認することをお勧めします。

また、5年、10年といった長期間で見ても安定して高い効率性を維持してきたのかどうかも重要です。可能であれば、ある程度長い期間の運用実績のある投資信託を選び、特定の期間だけではなく、シャープレシオがどのように推移してきたかを確認するとよいでしょう。

シャープレシオのみで投資判断すると思わぬ結果を招く恐れもありますので、複数の指標を合わせて参照することも有用です。たとえば、高値から安値までの下落率のことをドローダウンと呼びますが、過去のドローダウンの大きさもリスク指標として参考になります。

また、シャープレシオでは他の資産との連動性は考慮されません。一般に、相関が低いほど分散効果が大きく、リスクを軽減すると考えられていますので、相関係数も合わせてチェックし、バランスのとれた投資を目指すとよいでしょう。

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LIMO編集部