2022年8月27日にログミーFinance主催で行われた、第40回 個人投資家向けIRセミナー Zoom ウェビナーの第2部・ワンダープラネット株式会社の講演の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:ワンダープラネット株式会社 取締役CFO 佐藤彰紀 氏
元・ファンドマネージャー/元・ディーラー 坂本慎太郎(Bコミ) 氏
経済アナリスト/経営コンサルタント 増井麻里子 氏
第40回 個人投資家向けIRセミナー
佐藤彰紀氏(以下、佐藤):ワンダープラネット株式会社取締役CFOの佐藤と申します。本日は貴重なお時間を頂戴しまして、ありがとうございます。
「ワンダープラネット」という当社の名前を初めて聞いたという方もいらっしゃると思いますので、冒頭で当社の概要を簡単にご説明します。当社は名古屋を本社に創業し、海外展開を強みとしたスマホゲームを主力事業に、昨年6月に現グロース市場に上場しました。
現在、新規タイトル開発方針として、新たなチャレンジである「全世界同時配信・同時運営」に注力して取り組んでいます。そのタイトルの1つとして、2022年7月に自社オリジナルIPタイトル「アリスフィクション」をリリースし、また、新規事業領域としてはブロックチェーンゲームへの参入を準備中です。
当社の株は、よくも悪くも事業のニュースフローに出来高を伴って反響をいただいています。本日は、そのような点を含め、直近動向までご説明できればと思っています。よろしくお願いいたします。
自己紹介
佐藤:簡単に自己紹介をさせていただきます。私自身は現任となってまもなく7年になります。その前は、新卒で大和総研のセルサイドアナリストからキャリアを始めた後、グループ本社の経営企画や投資銀行側のアナリストを経て、私も名古屋出身で縁があって、地元に戻って今の仕事に就いています。
会社概要
佐藤:コーポレートサマリーです。ワンダープラネットは名古屋と東京の2拠点で、従業員数は2022年5月末時点で206名の会社です。
沿革
佐藤:沿革として、プロダクトの現在までの流れを中心にご紹介します。2012年9月に会社設立、そこから3年間はなかなかヒットタイトルに恵まれない苦しい期間でしたが、そこを乗り越えて、代表タイトルの1つである「クラッシュフィーバー」の日本版が2015年7月にリリースされ、ようやく事業が軌道に乗り始めました。その後、2016年に繁体字版、グローバル版と同タイトルの海外展開を進めていきました。
そこから3年後の2018年3月に、「ジャンプチ ヒーローズ」を日本版からリリースし、2019年6月には繁体字版もリリースしました。
2020年9月には新たな取り組みとして、当社が「この素晴らしい世界に祝福を!ファンタスティックデイズ」の繁体字圏の配信を担当させていただいてリリースしています。
その後、2021年6月に東証マザーズに上場、2022年7月には新たなチャレンジとして、「アリスフィクション」の「全世界同時配信・同時運営」を開始しました。
経営陣
佐藤:経営陣は常勤取締役が5名、スライド左から順番に代表取締役社長CEOの常川、開発のトップである取締役CPOの鷲見、海外展開のトップである取締役CGOの久手堅、そして私、最後に取締役会長の石川です。
また社外取締役として、スクウェア・エニックス代表を務めていた和田氏と、元ユナイテッド取締役の手嶋氏の2名に入っていただき、7名の経営陣となっています。
創業ストーリー
佐藤:創業ストーリーを読み上げます。「2012年、ゲームメーカーやスタートアップの存在が希少な街、名古屋に、私たちは産声をあげました。ゲームづくり未経験の開発者たちが集い、夢と情熱だけを頼りに、何度も失敗や危機を乗り越えながら、一歩一歩、着実に成長してきました。そんな私たちの社名は、Worldwide / Nagoya / Developer / Play / Amazing / Networkを組み合わせた造語、WonderPlanet。創業からの想いを初志貫徹すべく、世界中へ、名古屋から生まれた開発チームが、遊びごころあふれる驚きとワクワクを、広げていく。そんな想いがこめられています。」
坂本慎太郎氏(以下、坂本):名古屋の会社ということですが、創業のきっかけがあったら教えてください。
佐藤:先ほどご紹介した代表の常川が名古屋出身で、彼自身は東京で起業もし、その会社を順調に経営していた頃、ふと地元名古屋を見て、名古屋にはゲームメーカーやスタートアップが当時非常に少ないことに気づき、自分が地元に戻って再び起業し、上場した先も成長し続けていく会社を作ることができれば、大義があるのではないかと決心し、当社の創業に至ったと聞いています。
ミッション
佐藤:当社のミッションは「楽しいね!を、世界中の日常へ。」です。短いフレーズの中にもいろいろな意味が込められています。
「楽しい」がエンターテイメント、「ね!」が友だちや家族とコミュニケーションを共有することを意味しています。そして「世界中」へグローバルに展開し、我々のサービスを特別な時間ではなくて、日常にお届けするという意味で、「日常へ。」というミッションを掲げています。
ビジネスモデル
佐藤:ビジネスモデルについてご説明します。基本的に、アウトラインはスマホゲーム、アプリを開発している会社と同じです。消費者には日本、海外ともに、主に「Apple」や「Google」を通して我々のサービスをお届けしています。
開発運営側では、ワンダープラネットでほぼ完結するタイトルもありますが、協業案件であれば、例えばパブリッシャー側にゲーム会社等が入ったり、もしくは版権所有者とパートナーとして一緒にゲームを作ることもあります。
坂本:ゲームによって違うと思いますが、外注については、協力会社にどのくらい依頼していますか?
佐藤:人的リソースはワンダープラネットのみで完結することが理想ではありますが、開発フェーズの段階や運営状況により、リソースが一時的に増減することがあるため、スポットの対応は協力会社の協力を仰ぎながら進めています。協業案件であれば、協業先の協力もあります。現状、当社のトータルの人的リソースにおいては、およそ3割くらいを外部に委託しているイメージになります。
坂本:それは少なく感じますね。
佐藤:各社、会社方針やタイトルごとの状況や特性で異なってくると思いますが、当社の現状では、平均的に、それくらい外部の力を借りている状況です。
坂本:人員については、そのような意味で「現状、3割くらい外注のリソースが取れれば、人的リソースは足りている」ということですね。
今までのパートナー実績
佐藤:パートナー実績についてご説明します。当社は協業案件も実績を重ねてきており、例えば、現在、LINEと集英社、海外版ではSumzapと協業しています。
過去にはスクウェア・エニックスのタイトルの海外版を担当したり、ゲームではありませんでしたが、ジャニーズアイランドと一緒に開発したりと、協業実績を重ねてきています。
坂本:さまざまな業態・パートナーとの実績がありますが、お仕事の始まり方として、持ち込まれることが多いのか、それとも御社が営業することが多いのでしょうか?
佐藤:協業については、基本的にお声がけいただくことが多いです。まず自社オリジナルIPタイトルの「クラッシュフィーバー」において、日本、海外ともに長期運営の実績があり、また後ほどご紹介する「ジャンプチ ヒーローズ」など協業案件の実績も重ねてきたことを見ていただいて、有り難くもお声がけいただけることが増えてきたのではと思います。
坂本:サイバーエージェント出身の経営陣もいるため、そちらからのお仕事もありますか?
佐藤:個人的なつながりで、カジュアルな会話から検討につながる可能性はありますが、会社間ですので、当社でもしっかりと役務分担や収支計画、契約内容などを吟味の上で判断することになります。
クラッシュフィーバー
佐藤:ここからは各代表タイトルの概要をご説明します。まず自社オリジナルIPタイトル「クラッシュフィーバー」についてです。日本版は7周年を終え、8年目に入ったところです。海外版の運営も運営7年目に入っており、日本、海外とも自社オリジナルIPタイトルでロングヒットを続けられている点が本タイトルの特徴だと思っています。
増井麻里子氏(以下、増井):ジャンルに「ブッ壊し!ポップ☆RPG」とありますが、これはどのようなものですか?
佐藤:開発時の企画の中で決めたものになります。当社の開発思想で、先ほどミッションでもお話ししたとおり、「日常の隙間時間にサクサク遊んでいただける」ことを非常に重視しています。
この「クラッシュフィーバー」はパズルゲームではありますが、そのような隙間時間の中でゲームプレイを通して、爽快感やBGMの世界観を感じていただきたいと思い、「ブッ壊し!ポップ☆RPG」という打ち出し方に至ったと聞いています。
ジャンプチ ヒーローズ
佐藤:「ジャンプチ ヒーローズ」は、週刊少年ジャンプの創刊50周年記念タイトルとして、LINE、集英社と当社の3社で協業しているタイトルです。
特徴として、ジャンプの歴代IPキャラクターたちが登場するゲームで、2019年12月にモバイルゲームにおける漫画キャラクターの登場数が世界最多と認定されました。その後もキャラクター数は増えており、2022年7月に世界最多数を更新しました。
このファン繁体字版
佐藤:「この素晴らしい世界に祝福を!ファンタスティックデイズ」の繁体字版についてです。こちらは、海外展開を強みとする当社の新しい取り組みとして、2020年に当タイトルの繁体字圏、具体的には台湾、香港、マカオを対象に、開発から運営、マーケティングまで一貫して任せていただいています。
坂本:「この素晴らしい世界に祝福を!ファンタスティックデイズ」は、どのようなゲームでしょうか? また、海外が強みというお話でしたが、御社は海外向けも担当しているかたちですか?
佐藤:オリジナルはKADOKAWAのIPをサイバーエージェントの子会社Sumzapが日本版を運営しているRPGのスマホゲームで、当社はそのタイトルの繁体字圏の運営を担当させていただいているかたちとなります。
主要タイトル概要
佐藤:主要タイトルの概要についてお話します。我々のこれまでの事業展開は、まず起点として「クラッシュフィーバー」「ジャンプチ ヒーローズ」のように、日本版の自社開発と運営からとなります。
その後、次の段階として海外展開に入ります。「クラッシュフィーバー」でまず繁体字版から始まり、その後言語圏を広げていきました。
一方で課題もあり、例えば日本版が運営先行したり、言語圏ごとに当社の運営チームが分かれて非効率な部分が生じてしまうこともありました。
そのような課題を経験した上で、「アリスフィクション」では1つのチームで開発運営を行い、世界同時の運営スケジュールという新たなチャレンジをしています。
坂本:現状と課題も教えていただきましたが、海外展開を自社で運営される上で、御社がすべて行うことは難しいと思いますが、その対応について教えてください。また、言語対応を自社で行うことはかなり難しいと思いますが、その人員体制や難しい部分なども教えていただけたらと思います。
佐藤:我々のこれまでの経験から、単純な翻訳だけでは現地ユーザーの評価を得ることが難しいことがわかっていたため、しっかりとその地域の文化に合うようなローカライズやプロモーションを意識しています。
その他、日本以外の季節行事として、例えば旧正月などが各国で存在するため、そのような季節性も踏まえることが非常に重要だと考えています。
当社にはユーザーニーズを把握するために各国の出身者も社内におり、加えてアウトソースも活用しながら、チーム体制として開発から運営、マーケティングまで一貫した対応に取り組んでいます。
世界のゲーム市場と当社が目指す主な事業領域
佐藤:中長期の成長戦略についてご説明します。我々がどのような市場で戦っているかと言いますと、世界のゲーム市場は現時点で約21兆円と依然として拡大している中で、我々が目指すべき市場は、世界のモバイル向けゲーム市場9.1兆円で、そのうち日本のモバイル向けゲームの市場規模は1.3兆円となっています。
日本以外のモバイル向けゲーム市場は約7兆円以上ありますので、そのシェアをどれだけ取れるかが重要となっており、我々は事業の戦い方の1つの考え方として、「全世界同時配信・同時運営」に現在フォーカスしています。
またゲーム市場内では、メタバースやNFT、ブロックチェーンゲームなどの新規事業領域が出てきていますので、我々はその中でブロックチェーンゲームに注目し、参入準備を進めています。
坂本:今後も他社開発の海外運営を行っていくのでしょうか?
佐藤:他社の大事なタイトルをお任せいただくことになりますので、当社の企業価値向上に資するタイトルになるか慎重に判断の上で検討していきたいと考えています。
坂本:新規タイトルの方針として「全世界同時配信・同時運営」にフォーカスしているとのことですが、国内とグローバルでは評価を受けるゲームが若干違うと思います。グローバルにシフトしていく中で、ゲームを作る上での鉄板ジャンルは日本とは違うのでしょうか?
佐藤:スマホゲーム業界の流れとして、日本のセールスランキングを見ても、外資のゲームが上位に入ることがかなり多くなってきました。最近の傾向で、国の垣根はなくなってきていると捉えています。
おっしゃるとおり、今まで日本市場で高い評価を受ける鉄板ジャンルはありますが、一方で最近の傾向として日本人に外資のゲームが普通に受け入れられ、グローバルデベロッパーが出すタイトルが世界同時運営され、そのタイトルたちが日本でも上位のセールスランキングに入ってきていますので、いかにそのようなタイトルを生み出すかを考える必要があります。
我々が注力している「全世界同時配信・同時運営」は、既に成功しているグローバルデベロッパーもあります。我々もそれに倣い、キャッチアップし、市場シェアの拡大をできたらと考えています。
事業成長に向けた組織体制対応
佐藤:我々の組織対応についてです。日本側の開発から運営は名古屋側のメンバーが担当し、海外展開に関しては主に東京で現地出身の外国人も居るメンバーで対応しています。
また当社では、エンジニアやデザイナーなどの技術戦略を会社横断で対応するため、昨年に「EDMO」という組織を立ち上げました。また、ブロックチェーンゲームへの参入準備などの新規事業は経営企画室が担当するという組織体制となっています。
増井:名古屋と東京にスタジオがあるとのことですが、人数的にはどちらのほうが多いのでしょうか? また、名古屋のほうが同業他社が少ない感じがしますが、人材が採用しやすいということはありますか?
佐藤:現時点で社員数は206名ですが、内訳は名古屋が141名、東京が65名ですので、名古屋の方が大きな組織となっています。また、おっしゃるとおり、人材採用の観点では名古屋の方が採用競合が少ないエリアとなっています。当社は地元名古屋で一定程度の認知をいただけているため採用活動がしやすいことに加え、定着率も高くなっています。
成長戦略の注力分野と概要
佐藤:現在の注力分野と概要についてです。先ほどお伝えしたとおり、「全世界同時配信・同時運営」のタイトルの開発にフォーカスしており、2022年7月には「アリスフィクション」の配信が始まりました。また、後ほどご説明しますが、コンシューマー系ゲーム開発会社と共同で新規タイトルを開発中です。
さらに、新規事業領域としてブロックチェーンゲームへの参入を準備中です。こちらも後ほどご説明しますが、当社のシンガポール子会社WPBCがGame Changer社とグローバルエリアにおけるブロックチェーンゲームの共同事業に関する基本合意書を締結しました。
①「アリフィ」タイトル概要
佐藤:「アリスフィクション」についてご説明します。先月、日本・英語圏・繁体字圏・韓国・その他グローバル主要エリアで同時リリースを開始した当社オリジナルIPタイトルです。
新しいチャレンジですので、短期的にはリリース以降の運営状況で課題も起きています。しかし、我々の中長期的な企業成長においては非常に大事な一歩となっていますので、今後もタイトルの進捗を見守っていただければと思います。
坂本:「アリスフィクション」は「ヤミツキ光速パズルRPG」とのことですが、どのようなゲームでしょうか? また、サービス開始後の登録者数の状況について教えてください。
佐藤:ジャンルはパズルRPGゲームとなりますが、日常の中で遊んでもらえることや隙間時間にサクサク遊んでもらえるという、当社が大事にしてきた開発思想に沿ったものとなっています。ゲームの舞台は仮想空間の世界となっています。
リリースから1ヶ月ほど経過し、これまで発生した不具合などにつきましては、ユーザーのみなさまに大変ご迷惑をおかけしました。順次修正対応を進めておリ、現在において多数のエラーは既に解消しています。ダウンロード数・ユーザー数は着実に増加してきていますので、今後もみなさまのご期待に添えるタイトルとなるよう取り組んでいきます。
②共同事業新規タイトルの概要
佐藤:現在、コンシューマー系ゲーム開発会社と「全世界同時配信・同時運営」のタイトルを開発中です。具体的な内容は現在お伝えすることができませんが、世界的ヒットゲーム開発の実績を持つパートナーと長期運営型のスマホゲームを開発しており、当社がパブリッシャーを担います。こちらのフォローアップについては、今後公表できるタイミングで随時公表させていただく予定です。
③ブロックチェーンゲームの共同事業の概要
佐藤:ブロックチェーンゲームの概要についてです。Game Changer社という協業先がWeb3ゲームプラットフォームのサービスを開始する予定です。ユーザーは複数のゲームで共通して使える独自の通貨である「GCトークン」を使用することで、我々のゲーム以外でも、NFTの入手などを行うことができるというものです。
ユーザーはゲームプレイを通じて「GCトークン」を獲得することができ、「Play-and-Earn」のゲーム体験の実現を目指していきます。また「GCトークン」は今後海外においてIEO(取引所を介した上場)を予定します。
当社はそのGame Changer社とパートナーシップを締結する初期タイトルとしてグローバルエリアにおけるブロックチェーンゲームの提供を予定しています。また「GCトークン」のアロケーションを受けます。こちらのフォローアップについても、公表できるタイミングで随時公表させていただく予定です。
坂本:ブロックチェーンを用いたゲームによって、運営側には今まで以上の収益チャンスが生まれるのではないかと思っています。もし、そのようなチャンスが生まれるとしたら、どの部分に生まれるのでしょうか?
佐藤:スマホゲームのユーザーと今お話ししたブロックチェーンゲームのユーザーは、ユーザー属性が異なっている部分が大きいと見ています。我々のようなスマホゲームのデベロッパーが参入する上で、この新たなユーザー開拓はビジネスチャンスになり得るかもしれないと考えています。
経営の目指す姿
佐藤:経営の目指す姿、視座についてです。我々は当然グロースを最優先に、当面は年間営業利益100億円を実現する経営にしっかり集中したいと考えています。そのために、注力分野である「全世界同時配信・同時運営」を中心に、複数の大型ヒットタイトルの開発に努めていきます。
坂本:年間営業利益100億円を実現する経営について、他社の状況を見ていると、大ヒットタイトルをリリースすることによってその実現は可能だと思いますが、御社は大ヒットタイトルを1本作る方針なのか、それとも複数タイトルで積み上げていく方針なのか、どちらでしょうか? 年間営業利益100億円までのビジョンを教えてください。
佐藤:スライドに記載のとおり、「全世界同時配信・同時運営」を中心に複数の大型ヒットタイトルの開発に努め、しっかり収益を積み上げることで、年間営業利益100億円を目指していければと考えています。
PL推移(単体、5ヵ年)
佐藤:業績面についてです。スライドには5ヶ年のPLの推移を記載しています。売上高は30億円前後で推移し、直近では35億8,500万円となりました。営業利益は2020年8月期に黒字化し、3億円前後で推移しています。
BS推移(単体、5ヵ年)
佐藤:バランスシートです。当社はアプリ・ゲームの新規開発投資をソフトウェア資産に計上しない会計方針を採用している会社となりますので、非常にライトなバランスシートになっています。
参考:開発運営費を都度費用計上
佐藤:先ほどお話ししたとおり、当社は会計上、アプリ・ゲームの新規開発費用をPLに期間費用として計上しています。特に今期のように「アリスフィクション」の開発がリリース直前の時などにはどうしてもPLに先行して投資費用が入ってしまいますので、一時的に見え方が悪くなってしまいます。
一方で、リリース後に、当社ではタイトルクローズ時の減損や、償却負担が発生しません。長い目で見れば会計処理の違いによる影響はニュートラルに均されますが、各社によって会計方針が異なり、その違いで短期的なPLの見え方に影響があることを補足させていただきました。
CF推移(単体)
佐藤:キャッシュフローの推移についてはスライドをご覧ください。
2022年8月期 業績予想
佐藤:2022年8月期の業績予想についてです。直近、期初に計画した予想レンジから変更ありませんが、売上高は42億円から48億円、営業利益は開発投資などを計画しながらもマイナス2億円から2億円を目指しています。
2022年8月期 業績予想 根拠
佐藤:業績予想の根拠についてです。売上高は、主要タイトル「クラッシュフィーバー」「ジャンプチ ヒーローズ」「この素晴らしい世界に祝福を!ファンタスティックデイズ」において横ばいから減収減益を想定しています。
「アリスフィクション」のリリースは第4四半期となる6月から8月の期間に見込んでいましたので、その売上も想定に含んでいます。また、予想をレンジにした背景としては各タイトルにおける変動要素を勘案して、好調時と減衰時に分けて設定しました。
費用面としては、「アリスフィクション」の開発費とリリースに伴う広告宣伝費の増加を見込んでいます。一部売上や利益に連動して発生する変動費を除いて、その他は固定額で算定をし、スポットでの費用は特段発生していません。前期は税効果で大きな動きがありましたが、今期はそのような特殊要因は見込んでいません。
増井:リリース前の広告はどのようなところに出していたのでしょうか?
佐藤:基本的に国内外ともに各種SNSやアプリ上のオンライン広告を中心に展開しています。
既存タイトル利益 vs 新規開発投資等
佐藤:スライドには、今お伝えした業績予想をブレイクダウンしたものを記載しています。既存タイトルでの利益と新規開発の費用を分けて見てみると、前々期と前期に既存タイトルが6億円台の利益を出した中で、新規開発費は4億円弱となっています。今期は新規開発費が8億2,000万円と計画しており、既存タイトルの利益でどこまで吸収できるかということになります。
2022年8月期 4Q進捗見込み
佐藤:第4四半期の進捗見込みについてです。まず、「アリスフィクション」のリリースに伴う売上貢献とプロモーション強化をともに想定しています。
また、「クラッシュフィーバー」は7月に「7周年イベント」を実施し、「ジャンプチ ヒーローズ」は6月に「2,000万DLイベント」を実施しました。大きな動向としてはこのような状況です。
会社全体の各年度平均MAUの推移
佐藤:ミッションに紐づくKPIとして、我々のサービスをプレイしていただけるユーザー数を非常に大事にしています。そのため、毎月MAUを開示しています。
直近では100万人前後となっており、7月からは「アリスフィクション」のユーザーも加算されています。
株価推移
佐藤:我々の上場来の株価推移で、冒頭にお話しした補足となります。我々の株価および出来高は、よくも悪くも事業のニュースフローによる反響があると認識しています。
これまでのトレンドでは、昨秋のサイバーエージェントなどと協業している「テクノロイドユニゾンハート」のリリースを公表した時に、出来高および株価が大きく動きました。今年4月の第2四半期決算発表の時には、コンシューマ系ゲーム開発会社との協業開始、またブロックチェーンゲーム参入準備のためシンガポール子会社を設立すると発表した時に出来高が伴いました。
直近では、7月の第3四半期決算発表にてGame Changer社との基本合意書の締結を発表した時にも出来高が伴っています。
当社の利益分配の方針について
佐藤:当社の利益分配の方針についてです。我々はグロース銘柄となりますので、事業活動による利益は次の事業成長に最優先で投資していきたいと考えています。
一方で、株主還元や役職員へのインセンティブにもしっかり継続的に取り組んでいきたいと考えており、それぞれ経常利益の10パーセントを目安にしています。株主還元は配当や自己株式の消却、また賞与をはじめとするインセンティブにしっかり取り組み、すべてのステークホルダーのみなさまとともに会社の成長を目指したいと考えています。
株主構成
佐藤:株主構成です。当社は経営陣が約3分の1の株式を保有しており、その他大きいところでは個人投資家の方に多く保有していただいています。
経営陣(常勤取締役)の株式保有意向
佐藤:当社の経営陣(常勤取締役)の株式保有意向です。当社経営陣は創業、参画のタイミングから現時点まで、ストックオプションなどを含む自社株式の保有数を維持継続しており、今後も在任中の保有を維持継続する意向です。背景としては、我々も株主さまと同じ目線で企業価値向上に努めていきたいという思いがあります。
坂本:回答しにくい質問かもしれないのですが、プライム市場に鞍替え可能になった場合もこの保有株式数を減らさず、時価総額の増加分で成長を目指すという考えでよいのでしょうか?
佐藤:今後も基本的にはこの方針が変わることはありません。当社経営陣は在任中の保有を維持継続し、株主さまと同じ目線で企業価値を伸ばしていきたいと考えています。
開示方針
佐藤:開示方針です。上場後、なるべく発信頻度を上げることに注力してきており、まず決算説明会を各四半期決算ごとに開催し、後日、当社のIRサイト上に決算説明動画と質疑応答要旨を掲載しています。
また、KPIであるMAUの状況を毎月上旬に開示するようにしました。その開示には、加えて日々のお問い合わせに対しての回答を載せたり、開発進捗やコーポレートトピックなどをお伝えしたりと、毎月1回以上の適切かつタイムリーな開示に努めていきます。
IRスケジュールとお問い合わせ先
佐藤:IRスケジュールとお問い合わせ先です。我々は8月決算ですので通期の決算発表は10月で、11月には定時株主総会があり、その後は1月、4月、7月に四半期決算発表があるというサイクルです。
お問い合わせ先としては、会社のホームページに「IRに関するお問い合わせ」を用意していますので、そちらからお願いします。
私からの説明は以上です。ご清聴ありがとうございました。引き続き、企業価値向上に努めていきます。
質疑応答:ゲームキャラクターの版権ビジネスの位置づけについて
坂本:「ゲームから派生したキャラクターの版権ビジネスはいかがですか? 事業の一分野として位置づけられますか?」というご質問です。御社は自社開発ができますので、そのあたりの展開について教えてください。
佐藤:ゲーム内で人気のあるキャラクター等の物販への展開をどのように考えているかというご質問かと思います。我々が一番大事にすべきはゲームで遊んでいただいているユーザーだと思っていますので、まずはそのユーザーのみなさまのニーズにしっかりとお応えしていくことが最も重要であると考えています。
過去には、「クラッシュフィーバー」で、コロナ禍以前はオフラインイベントの来場者限定のグッズを用意したり、公式ファンブックを販売したりしてユーザーに喜んでいただきました。業績には直接的ではないかもしれませんが、このようにゲームユーザーにいかに喜んでもらえるかという観点を大切にしています。
質疑応答:経営企画室における新規事業について
坂本:「経営企画室における新規事業とはどのようなものですか? ゲームとは違う分野のものなのでしょうか?」というご質問です。
佐藤:経営企画室で現在準備している新規事業は何かのご質問と思います。スライドの青枠の中に記載している経営企画室の「新規事業」において、現在は先ほどお話ししたブロックチェーンゲームの参入準備を行っています。我々の中核事業はあくまでスマホゲームの開発運営です。一方で、新規事業領域へのチャレンジを経営企画室が中心となって行う役割分担をしています。
質疑応答:「ヤミツキ光速パズルRPG」の目標について
坂本:「『ヤミツキ光速パズルRPG』は、最終的にどのくらいのユーザーに利用されると推測していますか?」というご質問です。回答が非常に難しいと思いますが、販売目標があるのか、またダウンロード数やユーザー数の目標など、イメージを教えてください。
佐藤:「アリスフィクション」のユーザー数のポテンシャルはどこまであるのかといった主旨のご質問かと思います。「クラッシュフィーバー」、「ジャンプチヒーローズ」は、特に日本と繁体字圏のユーザーから大変好評いただいているタイトルとなっています。
しかし、グローバルの市場規模は大きく、例えば市場規模の大きい、北米を中心とした英語圏や韓国でのユーザー獲得はまだこれからと思っています。今回の「アリスフィクション」では、これまで好評いただいてきた日本や繁体字圏に加えて、英語圏や韓国などの新市場をいかに開拓できるかがチャレンジだと思っています。
坂本:英語圏の難しさというのはどこにあるのですか?
佐藤:英語圏と一括りでいっても、その対象の人口は多く、文化も多様です。ゲームユーザーはスマホだけではありませんので、例えば欧米では「PlayStation」のような家庭用ゲーム機がより好まれてプレイされていると思います。
一方で、「クラッシュフィーバー」を通して、日本のゲーム、IPに興味を持って喜んでプレイしていただけるユーザーも一定数居られることを認識していますので、我々のゲームで喜んでくれる方がいるのであれば、しっかりそのニーズにお応えして、楽しんでいただきたいと思っています。
増井:やはり車社会のような事情もあるのですか?
佐藤:日本のように電車移動の隙間時間が多くはないこともあるでしょうし、欧米では家も広いため、大きなモニターで家庭用ゲーム機を用いて楽しみたいニーズをお持ちの方がより多いだろうとは思います。
質疑応答:年間営業利益100億円の目標達成時期について
坂本:「営業利益の年間目標100億円を実現する経営について、達成時期のイメージがあれば教えてください」というご質問です。
佐藤:営業利益の年間目標100億円を実現する経営に対するご質問ですが、こちらは当社がどのような視座で経営を行っているのかという内容になります。そのため、ブレイクダウンして「このタイミングで達成する」とスケジュール的なものはお伝えできませんが、我々がこのような経営目線を持ってしっかりと事業に取り組んでいるところを見ていただければと思っています。
坂本:「全世界同時配信・同時運営」を中心に複数の大型ヒットタイトルの開発に取り組み、利益を積み上げていくということですね。
質疑応答:協業企業との関係と事業の進め方について
坂本:「協力パートナーが1社、2社と撤退しても事業継続に支障がないような仕組みができているのでしょうか?」というご質問です。
佐藤:今までの協業実績の中で、すでに撤退した協業先との関係性などを気にされてのご質問かと思います。そこは会社間の今後の関係性にもかかわるため、そのコミュニケーションは非常に大事にしてきました。
過去に撤退しても「新しいタイトルを一緒にやりませんか?」とまたお声がけいただくこともあります。協業を始める前に撤退基準を決めておくことも大事ですし、また今後の収支想定などを双方でしっかりコミュニケーションをとった上で、撤退基準にあたっていたり、双方にとって今後投資回収が見込めないのであれば撤退を検討するように、合理的なコミュニケーションにも努めています。
坂本:これだけの作品がある中で、過去に撤退したタイトルもあったということで、その際に「またやりましょう」というような話をするということですね。
質疑応答:他社が手放すタイトルを運営することについて
坂本:よくあることですが、他社が撤退しようとするタイトルを運営することについて、どのように思われますか?
佐藤:当社の企業価値にどこまで資するのかで検討とは思います。しかし、現実的には、当社もリソースが限られている中で、当社への利益寄与の数字が見合うタイトルであることは、なかなか難しいだろうとはイメージしています。
坂本:運営委託をしているとだいたい試算できますが、いきなり運営を行うのはなかなかハードルが高いということですね。
他社タイトルをローカライズするような、海外展開のお手伝いをするビジネスを広げていく構想はありますか?
佐藤:まずは経済条件と他社タイトルの現在の運営状況などを吟味し、当社の投資が我々にとっても大きなチャンスだと見込めるかで判断になると思います。
坂本:そこはおそらく御社の強みだと思うのですが、実現すればおもしろいと思います。もし他社からこのようなオファーを受ける場合は、定額の保守料や運営料をいただくのか、インセンティブをいただくのか、どちらの可能性があるのでしょうか?
佐藤:当社の過去実績では、当社が開発投資や広告費などのリスクを取る代わりにレベニューシェアなどのリターンもなるべく多くいただく条件が多いです。
坂本:やはりタイトルを吟味して、受けるか受けないかを決めないといけないということですね。
佐藤:定額のレベニューシェアをいただく経済条件では、業績の安定性は増しますが、一方である程度収益の限界が見えてしまうため、経済条件はさまざまなケースがあり得ますが、当社では想定リターンを重要視しての判断になっていくと思います。
坂本:リソースも使いますし、御社でローカライズされる方のリソースもありますよね。その人員は現状足りていますか?
佐藤:現在は200名強の従業員がいますが、基本的には既存運営タイトルか新規開発タイトルのどこかに所属しているためリソースに余裕があるわけではなく、また新規案件を始める際はチーム組成において社内の再配置や新規採用も絡んでくるため、その影響まで含めて数字が合うかをしっかり検討していきます。