2022年9月9日に公開された、株式会社共和電業2022年12月期第2四半期決算説明の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:株式会社共和電業 代表取締役社長 田中義一 氏

会社概要

田中義一氏:みなさま、こんにちは。共和電業代表取締役社長の田中でございます。本日はお忙しい中、弊社決算説明をご視聴いただき誠にありがとうございます。

本日は、当社の会社概要、2022年12月期第2四半期決算の概要と今期の見通し、そして、今期よりスタートした中期経営計画「KYOWA New Vision 75」についてご説明します。

はじめに、当社の概要です。当社は東京都調布市にあり、1949年に設立し、今年で創立73年を迎えました。プライム市場に上場しており、連結子会社として国内6社・海外3社があります。

グループ会社・事業系統図

当社グループの概要です。山形共和電業では当社の主力製品である「ひずみゲージ」や各種センサを、甲府共和電業では測定器や記録器などを製造しています。共和計測では試験装置や検査装置などの設計・製造のほか、ニューテックとともに各種計測機器の設置やデータ収集・データ解析などの計測コンサル業務を行っています。

共和サービスセンターでは当社製品の修理・校正・点検・トレーサビリティや校正証明書の発行を、タマヤ計測システムではダムの堤体観測機器や気象環境観測機器などの設計・製造販売を行っています。当社グループでは、グループ会社で製造した製品やサービスを、当社を通じて販売するかたちで事業を行っています。

当社の製品・サービス領域

当社の製品と事業についてご説明します。当社は1951年に日本で最初に「ひずみゲージ」を製品化し、以来70年以上にわたり日本におけるひずみゲージのパイオニアとして、ひずみゲージをコアとした応力計測機器や、ひずみゲージをセンシング素子に用いた各種センサのほか、さまざまな用途に向けた計測機器・ソフトウェアなどを開発し、生産・販売を続けています。

また、これらの多種多様な製品を組み合わせた計測システムをトータルソリューションとしてお客さまに提案し、提供しています。さらに、計測機器の設置や現地における計測業務、計測結果の解析も提供しています。

そして、お客さまに信頼性の高い計測や計測機器を提供するため、製品の点検・修理、国際基準に則した認定校正事業をはじめとした校正業務、各種セミナーなどの事業にも力を入れています。

ひずみゲージとその応用

当社のコア技術である「ひずみゲージ」について簡単にご説明します。ひずみゲージは、さまざまな機能を持った一種の抵抗素子で、その大きさは1ミリメートル以下のものから数センチメートルのものまであります。

ひずみゲージを測定対象物に貼り付けることで、外からの力が対象物に加わった時に生じる目に見えないほどのわずかな変形、すなわち「ひずみ」を電気信号として測定します。ひずみゲージは、一般的な環境下で使用するものから、950度までの高温下や水素環境下で使用できるものもあります。

ひずみゲージと、応力・ひずみ測定

ひずみゲージによってひずみが計測される対象物は、携帯電話の基板やその基板上の半導体部品などの小さなものから、家電製品、車、飛行機、さらには橋梁や風力発電タワーなどの巨大構造物まで多岐にわたり、いずれも私たちの生活に欠かせないものばかりです。

これらの計測は「応力・ひずみ計測」と呼ばれています。さまざまな対象物に外から力が加わった時の変形量を計測することで、ひずみから応力を計算で求め、そこからモノの強度・安全性を把握することにより、製品や構造物の信頼性確保につながります。

ひずみゲージを用いた各種センサ

ひずみゲージはセンサの検出素子としても用いられ、当社ではひずみゲージとともに、荷重計や圧力計、加速度計、変位計、トルク計などの各種センサの開発・製造・販売も行っています。また、汎用センサだけでなく、お客さまのご要望に応じて特殊な形状・仕様のセンサの設計・製作も行っています。

当社の測定器ラインナップ

ひずみゲージや各種センサは測定器に接続し、検知した物理量の変化を測定・記録します。そのため、当社では計測対象物や計測環境に応じて、ひずみ測定器、データロガー、シグナルコンディショナ、無線計測機器、計測・解析ソフトウェアを幅広くラインナップしています。

このように、小さな工業製品から大型の社会インフラ構造物に至るまで、さまざまな計測対象に応じた各種センサや計測機器・計測システムを提供することで、社会と暮らしの安全を支え、安心できる未来づくりに貢献しています。

主要事業分野

当社の事業分野についてご説明します。自動車試験分野は、実車衝突安全試験計測、車体の強度試験計測など、新車開発や先行開発において幅広く使用されるほか、生産ラインにおける品質評価計測などにも用いられています。

運輸・交通インフラ分野では、鉄道車両開発、高速道路料金所などにおける車両重量計測、鉄道や道路における安全監視、航空宇宙分野における機体の強度計測などに当社製品が用いられています。

工業計測分野では、工場の生産ラインにおける荷重や圧入などの力計測や、材料の強度試験計測など、幅広い分野で当社製品が使用されています。

環境・防災・エネルギー分野では、ダム堤体における傾向監視をはじめ、地すべり観測、トンネル掘削、海洋埋め立て、都市土木工事における傾向監視や風力発電タワーの安全監視などに当社の製品や計測技術が活用されています。

売上高・営業利益推移

2022年12月期第2四半期決算の概要についてご説明します。受注高は、前年同期に受注した高速道路向けの設置型車両重量計に代わる大型受注が当期はなく減少しましたが、企業の設備投資需要が回復傾向にあり、この大型受注の影響を除くと、全体として増加しています。

連結売上高は67億8,400万円と、前年同期比約3パーセントの減収となりました。主に電子部品などの調達難に伴う生産リードタイムの長期化の影響により、汎用品の売上が減少したことによるものです。

一方、受注残は前年同期と比べ約4億円増加していることから、下期以降の業績に寄与できるように確実な納期対応を図っていきます。海外売上も、中国のロックダウンや欧州の大型案件の減少により減収となりました。

営業利益については原価率が改善しましたが、販管費が増加し、4億100万円と前年同期に比べ約12パーセントの減益となりました。

収益の増減内訳

収益の内訳です。営業利益は、製品販売における割引率の抑制や減価償却費などの固定費負担の減少により原価率が低下し、1億4,100万円の増益となりました。しかし、展示会をはじめとした積極的な営業活動に伴い販管費が増加し、売上高の減少と販管費の増加で1億9,700万円の減益となり、差し引きで5,600万円の減益となりました。

経常利益は、営業外損益で為替差益など1,900万円の収益がありましたが、前年同期に比べ3,600万円減益の5億400万円となりました。当期純利益は保有株式の見直しに伴う株式売却益がありましたが、前年同期に比べ2,400万円減益の3億5,700万円となりました。

主要事業分野の売上高

主要事業分野別の売上状況です。自動車試験分野と工業計測分野では、部品入手難の影響により汎用品の売上が落ち込み、自動車試験分野では約14パーセント、工業計測分野は約8パーセントの減収となりました。

運輸・交通インフラ分野は、高速道路向けの設置型車両重量計の竣工が減少しましたが、鉄道車両の熱検知システムをはじめとした鉄道分野で挽回し、前期並みの結果となりました。

環境・防災・エネルギー分野は、ダムの堤体観測装置の更新需要が堅調に推移した結果、約15パーセントの増収となりました。

主要な海外地域別の売上高

海外の地域別の売上状況です。前期は中国の景気が好調で売上が大きく伸びましたが、当期はロックダウンにより営業活動に制約を受け、約15パーセントの減収となりました。

タイは、前期とほぼ同水準で推移しており、主要顧客の研究開発などの動きもコロナ禍から回復傾向にあります。アメリカも前期と同水準で推移しています。

欧州は工業計測分野の売上が増加したものの、自動車向け高温用ゲージの大口案件が減少したことにより、約18パーセントの減収となりました。また、ウクライナ情勢によるコスト高の影響により研究開発費の縮小の動きもみられるため、下期以降のリスクとして認識しています。

通期業績予想

今期の見通しについてご説明します。通期の連結業績予想は当初の計画どおりで、変更はありません。受注残が4億3,200万円増加しているため、受注残案件の確実な納期対応を図るとともに、好調な国内設備投資需要を背景にさらなる受注確保に取り組み、計画の達成を目指していきます。

リスクとなる部品調達難に対しては、引き続き関連部門で連携し、早期手配や代替品の提案などによって確実な売上対応を進めていきます。利益については概ね計画どおりに推移しているため、引き続き原価低減に努めていきます。

また、すでに当社のホームページでご案内していますが、材料費や調達物流コストが高騰しているため、10月よりひずみゲージをはじめとした一部製品の価格改定を実施します。

中期経営計画 KYOWA New Vision 経営ビジョン

今年からスタートした中期経営計画「KYOWA New Vision 75」についてご説明します。コロナ禍による事業活動の変化や、サステナビリティに対する社会の関心の高まりなどに対応するため、今年を初年度とする新たな中期経営計画を策定しました。

新しい中長期経営計画の取り組み期間は2022年から2027年の6年間とし、前半の3年間を「成長に向けた基礎固め」を行う期間と位置づけ、社内の意識改革と、経営管理をはじめ、開発・販売・生産などすべての業務体系で見直しを行います。

そして、自律的で協力し合える組織風土と心理的安全性の高い社内環境を醸成し、競争力の強化・生産性の向上を図ることで収益力の向上に取り組んでいきます。

中期経営計画の策定にあたっては、社員が会社の目指す方向性を常に意識し、行動することができるように整理しました。「社是・信条」は、当社グループで働くすべての人の行動規範・心構えとなるものであることから、経営としての解釈・考え方を「KYOWA WAY」とともに冊子にまとめ、昨年1月にグループで働く全社員に配布しました。

また、これまでの企業理念・企業ビジョンを見直し、自社の存在意義と社会への貢献のあり方について「経営ビジョン」として再定義しました。そして、経営ビジョン実現のため、中期経営計画で取り組む施策を6つのミッションと基本戦略として明示しました。

中期経営計画 KYOWA New Vision 計数目標

中期経営計画における計数目標です。今回の中期計画における計数目標では収益力の強化に向けた取り組みを推進していくこととし、売上拡大に向けた新分野開拓は、2025年以降の3年間で取り組んでいきます。

売上目標は、安定成長をはかるという考えから2027年の目標を190億円、中間期となる2024年の目標を163億円と設定しました。既存製品の新たな用途開発や計測事例の水平展開、インフラ構造物の維持管理における需要拡大、継続取引顧客数の増加、海外販売力の強化により、目標達成に取り組んでいきます。

収益面では2027年の営業利益率の目標を10.0パーセント、ROEを8.0パーセント以上、中間期となる2024年は営業利益率を8.2パーセント、ROEを5.2パーセントと定めました。

中期経営計画 KYOWA New Vision ミッションと基本戦略

中期経営計画で掲げたミッションと基本戦略をご説明します。経営ビジョンとして掲げた「計測を通じ、お客様と共に社会と人の安全を実現し、安心な未来をつくる」ため、当社が計測器メーカーとして社会やお客さまへ向けて行うべき4つのミッションと、それらを実現していくための基盤となる2つのミッションを定めました。

計測器メーカーとして社会やお客さまへ向けて行うべきミッションは、「魅力ある製品・サービスを提供する」「確かな計測技術を磨き続ける」「新しい計測のカタチを提供する」「お客様ごとに配慮の行き届いた製品・サービスを提供する」ことです。

そして、これらを実現するための社内基盤づくりとして、「社員の働きがいを向上し続ける」「時代に合うIT環境を再構築する」ことを定めました。

これら6つを中期経営計画で取り組むミッションとしています。このミッションの実現に向け、具体的に取り組むべき施策に関する4つの基本戦略を設定し、確実に実行していくことで、持続的な成長と企業価値向上につなげていきます。

中期経営計画 KYOWA New Vision 基本戦略①

それぞれの基本戦略についてご説明します。「計測事業のさらなる拡充」として、「環境・防災・エネルギー分野」「道路交通インフラ分野」事業の拡充に取り組んでいきます。

ダムや高速道路・鉄道などの大型構造物の施工管理や健全性評価・維持管理において、計測ソリューションを提供できることが当社の強みです。2030年におけるエネルギー需給の見通しでは、水力発電への依存度が高くなっており、ダムの維持管理は今後も続くと考えられるため、対応力の強化を図っていきます。

洋上風力発電についても、昨年納入した秋田沖の洋上風力発電施設向けの気象観測機器や、タワーの維持管理システムの実績をもとに、今後設置が予定されている洋上風力発電施設に対する販売を強化し、再生可能エネルギー分野への製品提供により、社会貢献に努めていきます。

また、コンプライアンス意識の高まりなどにより、計測の基準とも言える計量器の精度を国際的に証明するニーズが年々増加しています。計測器メーカーとしてこれらの需要に応えるべく、ISO/IEC17025認定試験所としての校正受託事業の拡充に取り組んでいきます。

中期経営計画 KYOWA New Vision 基本戦略②

「デジタルを活用した販売力の強化」についてです。継続的な成長のためには顧客数の増加が課題と認識しており、継続取引ができていないお客さまに対する発信力を強化し、販売拡大を図っていきます。

リピート需要の創出、特定のお客さま向け製品や、お客さまの発想による製品の利用方法に関する事例紹介などによる水平展開を推進し、市場の裾野を広げることで売上の拡大を図っていきます。

お客さまの状況に応じた販売方法・情報発信を行うため、主要取引先や特注品については対面営業を基本とし、少額取引先や汎用品販売については、ホームページなどを活用した積極的な情報発信を行うとともに、お客さまからの問い合わせに対応するフォローアップ体制の充実を図っていきます。

国内においては、EV開発が急速に進む自動車の衝突試験分野への取り組みとして、高電圧対応製品の提供を行っていきます。

中期経営計画 KYOWA New Vision 基本戦略③

「変革を促す組織基盤の強化」として、ITの活用推進により、業務の最適化・効率化に向けた業務システムの再構築に取り組むことで、収益力の向上を図っていきます。また、自社のモノづくりの特性に最適な生産のあり方を実現するため、生産プロセスの全体最適化と効率化を両立させることで、さらなる高度化を目指していきます。

今年1月に技術部門の再編成を行い、汎用製品について商品企画・設計開発から市場導入に至る組織機能を一本化するとともに、開発者の役割と責任・権限を見直し、魅力的な製品・サービスの提供と開発スピードの向上を図っています。

特注品については、センサ・測定器・システム製品開発機能を集約し、お客さまの多様なニーズにタイムリーに応える体制へ見直しを行うことで、対応力の強化を図っていきます。

そして、組織の潜在能力を引き出し変革を起こすべく、2020年から「自律と協働」に関する社内セミナーを継続的に実施しています。これにより、自律的で協力し合える組織風土と心理的安全性の高い社内環境づくりを推進し、チームとしての機能発揮の向上に取り組んでいきます。

また、クロス・ファンクショナル・チームによる組織横断活動により、全社的視点でさまざまな経営課題を抽出し、課題解決に取り組んでいきます。

中期経営計画 KYOWA New Vision 基本戦略④

「ESGへの取り組み」としては、今年1月にCSR推進室を立ち上げ、サステナビリティ基本方針の策定やその方針に基づくマテリアリティの特定を進めています。環境に関する取り組みとして、太陽光発電設備や省エネ対応型生産設備の導入など、脱炭素社会の実現に向けた施策・目標を策定中です。

社会や人に関する取り組みとして、社員の働きがいを高め、多様化した働き方の実現に向け、社員と会社がともに成長できる自律的で活発な企業風土の醸成や、働きやすい人事制度の再構築に取り組んでいきます。

ガバナンスに関する取り組みとしては、取締役会の多様性確保と機能の発揮に向けた各種取り組みなど、プライム市場が求めるより高い水準のガバナンス確保に向け、より一層の充実を図っていきます。

企業価値の向上に向けた取り組み

企業価値の向上への取り組みについてご説明します。当社はプライム市場の上場維持基準に対し、流通株式時価総額と1日の平均売買代金の2項目について基準を満たしていません。

基準の適合に向けては、継続的成長と収益力を上げることで企業価値の向上を図り、株主還元につなげていくことが重要だと考えています。今回の中期経営計画期間である2022年から2024年の3年間では、配当性向50パーセントを基本方針として取り組んでいきます。

流通株式の増加、1日当たりの売買高の増加については、中間配当の導入や政策保有株式の見直しにより、流通性を高める取り組みを進めていきます。

今回の決算説明のような動画配信などの新たな取り組みも進め、当社の取り組みがより多くの投資家のみなさまの目に触れる機会を創出するとともに、事業についてより深くご理解いただける説明を心掛けていきます。

半導体センサの基礎研究への投資

半導体センサの基礎研究への投資についてご説明します。新しいセンサデバイスへの開発投資として、2019年度に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の戦略的エネルギー技術革新プログラムの助成事業に採用された「ミニマルファブ」の装置を、昨年末に甲府共和電業内に設置しました。今後、新センサの開発に向けた研究設備として活用していきます。

以上で、私からのご説明を終わります。中期経営計画の各施策を確実に実行することで企業価値向上に引き続き取り組んでいきますので、何卒ご支援賜りますよう、よろしくお願いいたします。ご視聴ありがとうございました。

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