計画比で大幅な上振れでの着地となった2017年3月期決算
大型連休前の2017年4月28日にシャープ(6753)が発表した2017年3月期決算は、売上高は2月17日時点の会社予想にインラインでしたが、営業利益は会社計画474億円に対して624億円と大幅な上振れでの着地となりました。
1年前の2016年3月期実績が▲1619億円の大幅な赤字であったことを勘案すると、まさにV字型の回復を達成したことになり、ホンハイ主導での構造改革が順調に進展していることが読み取れます。
新年度予想は開示されず
一方、注目の2018年3月期予想については、事業環境・リスクを勘案し、現在策定中とされ、5月26日に開催予定の中期経営計画説明会で公表するとされました。
現時点での営業利益の市場コンセンサス予想は、前期実績比+20%増の750億円となっています。今後の株価を考えるうえでは、このコンセンサス予想が上昇するのか、あるいは下落するのかがカギとなると考えられるため、まずは、直近の四半期(1-3月期)の動向を振り返りながら、そのことを考えてみたいと思います。
2017年3月期第4四半期(1-3月期)は全てのセグメントが黒字に
第4四半期の実績は、売上高が前年同期比+8%増と2015年3月期第1四半期以来、11四半期ぶりに増収に転じていました。また、営業利益は435億円(前年同期は▲1,329億円の赤字)、純利益は162億円(同▲1,476億円の赤字)と第2四半期に続き黒字を計上し、前年同期比でも大きく改善していました。
また、セグメント別営業利益も、ビジネスソリューション(複写機など)を除くと全てのセグメントが前年同期比で増益となっていました。
一方、営業利益率も、IoT通信(携帯電話)や健康・環境システム(エアコン、冷蔵庫など)は、いずれも12%超となり、エネルギーソリューション(太陽電池)にいたっては50%に達していました。一方、ディスプレイデバイス(液晶及び液晶テレビ)は3%に留まりましたが、2四半期連続で黒字を確保していました。
このように、第4四半期の実績からは、特定の分野にだけ依存するのではなく、幅広い事業でバランスよく利益
を確保する姿にシャープが転換しつつあることが読み取れます。
2018年3月期のコンセンサス予想は切り上がるのか
では、第4四半期実績から、2018年3月期の営業利益の水準はどの程度になると推察されるでしょうか
仮に、この水準が新年度の全ての四半期で続くとすると年間の営業利益は1,740億円(435億円の4倍)とコンセンサスを1,000億円近く上回ることになります。
もちろん、第4四半期に149億円の営業利益を計上したエネルギーソリューションには材料調達の見直しに伴う一時的な利益が含まれている可能性があることや、退職給付に関する負債の費用処理の変更で55億円の利益の押し上げ効果があったこと、新年度は人員増や賞与の増額による固定費増が予想されこと、などを考慮すると単純に4倍するのは楽観的過ぎることになります。
とはいえ、一方で特定の分野にだけ依存するのではなく、幅広い事業でバランスよく利益を確保する姿にシャープが転換しつつあることも事実です。このため、今後、コンセンサス予想が切りあがる可能性も十分に考えられます。
いずれにせよ、5月26日に発表される新年度の会社予想に注目していきたいと思います。
和泉 美治