国民生活センターが仮想通貨購入のトラブルに注意を喚起

国民生活センターは2017年3月30日、「知人からの勧誘、セミナーでの勧誘による仮想通貨の購入トラブルにご注意―『必ず儲もうかる』という言葉は信じないで!―」という文書を発表しました。

インターネットを通じて電子的に取引される、いわゆる仮想通貨(ビットコイン)の購入などにおけるトラブルが増加しており、PIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)によると仮想通貨に関する相談は、2014年度は194件でしたが、2016年度は 634件となっているそうです。

同文書では、「5倍以上の価格になる」、「半年で価格が3倍になる」、「1日1%の利息がつく」と言われて仮想通貨を購入したが、業者が買い取り(出金)に応じてくれないといったトラブル例が紹介されています。

常識的に考えれば、そんなにおいしい話はないとわかるはずですが、ニュースなどで「大手家電量販店の○○社がビットコインでの決済を開始」といった記事を見ると、「ビットコインはこれから伸びる」というイメージを持ちやすいのも確かです。

ビットコインはあくまでも「ブロックチェーン」の利用形態の一つ

インターネットやスマートフォンなどの普及にともない、ビットコインはこれからますます成長することが予想されます。ただ、誤解してはならないのは、それにより特定の「○○コイン」の価格が将来にわたり上昇するとは限らないことです。

その理由は、ビットコインを支える技術である「ブロックチェーン」の仕組みを理解するとわかります。ブロックチェーンは、「分散型台帳技術」と呼ばれることもあります。複数の取引データのかたまり(ブロック)ごとに、鎖のようにつながった(共有された)台帳(データベース)に記録をする仕組みです。

オープンなネットワーク上で台帳を管理することにより、それが「本物」であるという信頼性が担保されるわけです。ビットコインはブロックチェーンを利用して通貨としての機能を実現しているだけです。

ブロックチェーンを利用できるのは通貨だけとは限りません。「本物」であることを担保することで、不動産の登記簿にも使えます。絵画や宝石などが「本物」であることが証明されれば、所有権の管理や移転が容易になります。動画や音楽などを「海賊版」から守ることもできます。

また、商社などでは貿易に必要な書類のやりとりを、ブロックチェーンを使って行う実験を始めています。

まずは仮想通貨交換業の登録業者かどうかの確認を

ビットコインの購入を勧める業者は「日本のメガバンクもビットコインに関心を持っている。『○○コイン』を発行する企業と提携して実験も始めている(だから、○○コインの価格が上がる)」といったことを話す例があります。

実験が始まっているのは事実ですが、実際には、これもブロックチェーンの話で、ビットコインに知見のある企業のインフラや銀行間の送金などのノウハウを活用するのが狙いです。

ですから、「○○コイン」の需要の増減には直接関係がありません。むしろ、全国銀行協会の全銀システムなどで実際に活用する際にはおそらく新しいビットコインが誕生するのではないでしょうか。

ちなみに、2017年4月1日の改正資金決済法の施行により、仮想通貨交換業者の登録がなければ、国内で資金決済法上の仮想通貨と法定通貨との交換サービスを行うことができなくなりました。

ビットコインの購入を勧める業者の中には、会員が他の会員を紹介すると報酬を出すところもあります。これは「無限連鎖講の防止に関する法律(いわゆるネズミ講防止法)」に抵触している恐れがあります。

仮想通貨交換業者の登録ではもちろん、利用者財産の分別管理義務などが課せられることになります。そのため、顧客から預かった資金の中から販売報酬を出すといったことは今後許されなくなります。

ビットコインの購入を勧められたら、仮想通貨交換業の登録業者かどうかを確認しましょう。登録業者だから必ず安心というわけではありませんが、少なくとも「出金できない」というリスクは減らすことができます。

ただし、現時点で登録業者数はゼロです。経過措置により「4月1日から起算して6か月間は、仮想通貨交換業を行うことができる」とされています。

6か月後に、多数の業者が「都合により取引停止、経営者の所在も不明」といったことにならないか心配です。どうしても仮想通貨に投資したい人は、6か月後(10月以降)に様子を見てからでも遅くはないでしょう。

下原 一晃