3. 貯蓄2000万円あれば、老後資金として十分か

ではここからは、貯蓄2000万円は老後資金として十分かを考えていきます。「老後2000万円問題」というキーワードが思い浮かぶ方も多いかと思いますので、その金額の算出の根拠を見ていきましょう。

老後2000万円問題のモデルケースは、金融審議会 市場ワーキンググループ報告書「高齢社会における資産形成管理」より夫65歳以上、妻60歳以上の無職の高齢夫婦世帯でした。

同資料内の「第21回市場ワーキンググループ 厚生労働省資料」によれば、この世帯の毎月の収支は、以下の通りです。

  • 収入:約20万9198円
  • 支出:約26万3718万円

このモデルケースの収入から支出を差し引くと、赤字分が月約5.5万円になることから、この赤字分を年間計算し、老後が約30年間続いたと仮定した計算式が以下の通りとなります。

5.5万円×12ヶ月×30年=1980万円

こうして、2000万円という金額が算出されています。

ではここからは、老後2000万円問題の落とし穴と言われる3つの注意点を見ていきます。

まず1つ目の注意点は、住居費用です。

老後2000万円問題の支出の内訳を確認していくと、住居費用が1万3656円という設定になっていることがわかります。

持ち家の方で住宅ローンの支払いが終わっていることを考えればそうおかしくはない金額ですが、賃貸で考えると住居費用はまかなえないでしょう。

老後も賃貸を予定されている方は、老後2000万円のご準備に上乗せして、老後の賃貸費用の準備が別途必要になるということが分かります。

2つ目の注意点は、モデルケースの支出が約26万3718万円という点です。

生命保険文化センターの「生活保障に関する調査」(令和元年度)では、ゆとりのある老後生活費は平均36.1万円という結果になっています。

老後の生活について、どのような老後を過ごしたいかというのは人それぞれですが、ゆとりのある老後を過ごしたいという方は、支出26万円の想定では足りないということがあるでしょう。

老後の生活費については、一度老後の必要資金を計算してみることをおすすめします。

3つ目の注意点は、介護費用が含まれていないという点です。

「周りの人に迷惑をかけたくない」という思いから、自分で介護費用を準備をされている方も最近は増えてきています。その場合は、介護費用分も上乗せする必要がありますね。

50代でまだ十分な貯蓄が準備できていないという方も、すでに2000万円は準備できているという方も、いくらの老後資金があれば足りるのか、一度計算するとよいでしょう。