4月15日は「遺言の日」

4月15日は「遺言の日」です。ご存知でしたか? これは、「良(4)い、遺言(15)」ということで、近畿弁護士会連合会が1998年に記念行事を開催したことが始まりです。その後、2007年度から日本弁護士連合会の主催行事が行われています。

他にもまだある“遺言の日”、遺言の重要性が注目を集める

一方、公益財団法人日本財団は昨年12月、1月5日を「遺言の日」として日本記念日協会に登録したことを発表しました。これは、遺言に関する正しい理解と、人生の最期について大切な人と話し合ってもらうことを目的に、遺言(15)の語呂合わせと、正月で家族が集まる1月5日が適当と考えたようです。

さらに、11月15日を「いい遺言の日」と制定しているのが、金融業界です。これは、2006年にりそな銀行が制定したものですが、11月22日(いい夫婦の日)までの1週間を「夫婦の遺言週間」と定めるなど、遺言に関する啓蒙活動を広げています。

こうなると“一体、どれが本当の「遺言の日」なんだぁ!”と、星一徹のような「ちゃぶ台返し」をやりたくなってしまいます。

ただ、どの団体や業界も遺言の重要性を説いていることは共通しています。実際、近年になって、遺言の重要性や必要性は非常に注目されています。

遺言とは“財産の活用法を定めた意思表示”

ところで、「遺言」とは何でしょうか?

広義の意味においては、故人が生前に自らの死後のために遺した言葉や文章を指すと言われますが、現在では民法上の制度に鑑みて「自分が生涯をかけて築き、かつ守ってきた大切な財産を、最も有効・有意義に活用してもらうために行う、遺言者の意思表示です」(出所:日本公証人連合会)とされています。

なお、ここから先は「遺言=遺言書を残す」とします。

残した財産は「相続」によって引き継がれる

全ての人は、いつか必ず最期を迎えます。そして、ほとんどの場合、何らかの財産(注:負債を含む)を残します。そして、その財産は「相続」という手続きにより、法定相続人(妻子など)に受け継がれていきます。

その際、残した財産は民法で定められた「法定相続分」に沿って分割されるのが基本です。これを「遺産分割」と言います。

遺産相続トラブルは少なくない、法定相続は形骸化しつつある?

ところが、この遺産分割はなかなかスムーズには行かず、親族間でトラブルになることが少なくありません。

たとえば、“私は老後の世話をしたからもっと多いはずだ”、“自宅をもらえる約束をしていた”など、相続人の主張が対立して、民法で定めた「法定相続分」が形骸化しつつあります。

それがエスカレートすると、親族間で訴訟になったり、最悪の場合は殺人事件になったりします。

何とも醜いものですが、血を分けた親族でも、お金にかかわるトラブルは後を絶ちません。しかし、お金が絡むときれいごとでは済まされない、これが現実なのです。故人が嘆き悲しんでいる姿が思い浮かんできます。

増大の一途を辿る相続のトラブル

直近の統計データではありませんが、「平成24年度司法統計」(最高裁判所)によると、家庭裁判所への相続関係の相談件数は、 この10年で約1.9倍に増加しているようです(平成24年は約17万5千件)。また、遺産分割事件の件数(家事調停・審判) も、この10年で約1.4倍に増加しています(同1万5,300件)。

その後、平成27年から相続税に係る基礎控除額が減額されたことなどを勘案すると、こうした遺産相続トラブルはさらに増加していることが容易に推察されましょう。

遺言は厳格に定められた様式の“文章”でなければならない

そこで、前述したように、自らが生前に遺産分割の内容や方法を、法律で定められた様式に従って、文章として残しておくのが遺言です。

ここで重要な点は、“法律で定められた様式”であること、および“文章にする”という2点です。録音テープや動画は全て無効ですし、原則的にメールも無効です。ましてや、口約束など論外なのです。

最優先されるのが遺言だが、一定の制約はある

最大のポイントは、前出の民法で定められた「法定相続」よりも、「遺言」が優先されることです。最優先されるのが遺言です。

もちろん、最優先と言っても、一定の制約があります。たとえば、妻子を残して亡くなった夫が“財産は全て愛人に渡してくれ”という遺言を残していた場合、残った家族はたまったものではありません。

そのため、法定相続人(この場合なら妻子)には「遺留分」という最低限度の相続分が認められていますので、減殺請求することで確保することができます。ただ、こうした極端な場合を除けば、原則、遺言が最優先されることになっています。

遺言を残すことを真剣に考える必要がある

ほとんどの人は、自分がいつ最期を迎えるかわかりませんが、ある日突然やってくる可能性があります。その時に、残された家族が醜い遺産争いをしないように、遺言書を残すことは真剣に考える価値があると言えましょう。

特に、何らかの事情により、正式な婚姻関係にない配偶者がいる方(いわゆる内縁関係)は、遺言書を残すことは必要不可欠と考えられます。

遺言書は、その様式が厳格に定められていますが、代表的な「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」は、比較的簡単な手続きで作成できます。実は、民法では、満15歳以上なら誰でも遺言書を作成できることになっています。

いつ訪れるかわからない自らの最期に備えて、そして、無用な遺産相続争いを避けるためにも、改めて遺言の重要性を考えてみたいものです。

LIMO編集部