4月13日は「喫茶店の日」
4月13日は「喫茶店の日」です。ご存知でしたか? 総務省統計局のホームページによると、この「喫茶店の日」は、今から129年前の明治21年(1888年)4月13日に、東京・上野に日本初の喫茶店「可否茶館」が開業したことに由来するとなっています。
なお、同HPでは喫茶店のことを、『「喫茶(きっさ)」とは、もともとは鎌倉時代(源実朝の時代)に中国から伝わったお茶を飲用し効用をたしなむ習慣や作法をさす言葉だったそうですが、今は「喫茶店」と聞いて皆さんが思い浮かべるようにコーヒーや紅茶などの飲み物、お菓子や軽食を出す飲食店のことです』と紹介しています。
喫茶店の業態や位置付けが大きく変わってきた
しかし、人々の生活様式や消費行動が大きく変わる中で、喫茶店の位置付けも大きく変わってきているのではないでしょうか。
まず、1970年代には歌謡曲名や歌詞で頻繁に使われた「喫茶店」という言葉が、死語になりつつあると言ったら言い過ぎでしょうか。既に、“コーヒー屋さん”や“コーヒーショップ”という一般抽象的な言葉を使う時代は過ぎ、“スタバ”とか“ドトール”といったチェーン店名を使うのが普通になっているような気もします。
駅前にある喫茶店のコーヒー代が不動産価格の指標だった時代も
一昔前、喫茶店のコーヒー料金(1杯)は重要な経済指標と言われたものです。というのは、駅前にある喫茶店のコーヒー代が、その地域の不動産価格を表していたと考えられたためです。実際、不動産バブルだった1980年代後半は、コーヒー代の値上げも激しかったことを覚えている人も多いのではないでしょうか。
しかし、現在では、駅前の一等地でも人口減少が進む地域でも、この20年間で急成長してきたスタバやドトールといったチェーン店では同じ価格で提供されています。これは、昔では考えられなかったことなのです。
日本国内の喫茶店の数は33年間で▲55%の大幅減少
ところで、日本国内における喫茶店の数はどうなっているのでしょうか?
全日本コーヒー協会の統計資料によると、喫茶店の「事業所数」は、1981年の15万4,630をピークに減り続けており、直近の2014年は6万9,983と7万割れになりました。33年間で▲55%減となったわけです。
過去のデータが毎年あるわけではありませんが、1975年に9万2,137、1966年に2万7,026だったこと等から、7万割れは約43年ぶりと推察されます。それから2年が経った現在(2016年末)では、さらに減っている可能性もあるでしょう。
また、喫茶店の従業員数は、同じく1981年の57万6千人をピークに、2014年は33万9千人に減少しました。しかし、事業所数より減少ペースが緩やかであることから、喫茶店の大型化(マス・マーチャンダイジング化)を見ることができます。
コーヒーチェーン店は拡大が続いている
一方、前述したコーヒーチェーン店は今も拡大が続いています。1997年末にわずか18店舗だったスタバは現在1,249店舗、ドトールは1988年の約200店舗が現在は約1,350店舗(注:ドトール以外のブランド含む)へと増加しています。タリーズや上島珈琲なども成長が続いている模様です。
ということは、単純に考えると、漸減が続く喫茶店の多くは、昔ながらのいわゆる“純喫茶”タイプということが容易に推測できます。確かに、そういう喫茶店を見る機会が少なくなりました。しかし、若年世代にとっては、チェーン店を始めとする今の喫茶スタイルが当たり前なのかもしれません。
コンビニやファストフードも競合相手になってきた
昔ながらの純喫茶店が苦境に追い込まれた大きな理由の1つは、こうした手頃な価格で急成長してきたチェーン店との競争でしょう。しかし、それ以外にも、コンビニやファストフード店によるコーヒーの商品力向上や価格低下などがあるのは明らかです。
静かな音楽が流れる中で、備え付けの新聞や雑誌を読んで自分自身の時間を満喫できる、昔ながらの喫茶店に未来はないのでしょうか。
国内のコーヒー市場は成長中、2016年も4年連続過去最高を更新
いやいや、そんなことはありません。まず、やや意外かもしれませんが、日本国内のコーヒー消費量は拡大し続けており、2016年も4年連続で過去最高を更新しました。2016年の消費量47万2千トン(生豆換算)は、緑茶の6倍超、紅茶の約30倍に上っています(注:緑茶と紅茶の2016年数値は2015年までの実績を基に筆者推定)。
特に、近年では緑茶の衰退が著しく、統計を見る限り、緑茶需要がコーヒーにシフトしていることが伺えます。
昔ながらの喫茶店の新たな取り組みに期待
もちろん、家や職場でコーヒーを飲む需要が高まったこともあります。それを含めて、人口減少が始まったにもかかわらず、今も日本のコーヒー市場は成長市場なのです。昔ながらのレトロな喫茶店が、今後復活できるチャンスがないと簡単に考えるのは間違いでしょう。
客数回復に向けた喫茶店の新たな取り組みに期待しながら、「喫茶店の日」にはぜひ、外でコーヒーを嗜みたいものです。
LIMO編集部