DeNA(2432)は、新規事業としてメディア運営を中心とするキュレーションプラットフォーム事業に注力していました。しかし、著作権問題などに端を発した不祥事で、結果的に全キュレーションサイトの閉鎖にまで追い込まれています。
また、キュレーションサイト問題が表面化するにつれ、株価も大きく下落。2017年に入り小康状態を保っていたものの、その後も株価は冴えないままです。
今、DeNAは創業者の南場智子氏が再び代表取締役に復帰し、立て直しを図ろうとしています。南場氏の下で信頼を回復し、再び成長路線への道を進むことができるのでしょうか。
キュレーション問題発覚後、DeNAの株価は下落トレンドに
昨年11月にWelqを始めとするDeNAのキュレーションサイト問題が一気に噴出しましたが、最終的には同社がキュレーションサイト閉鎖を決断し、問題は沈静化の方向へと向かいました。このキュレーションプラットフォーム事業は、同社期待の成長事業として位置付けられていました。
DeNAの株価は9月8日に3,955円を付けた後、この問題が大きくなるにつれ下落トレンド入りとなりました。11月末にキュレーションサイトを閉鎖して以降も下落が続き、2月1日に2,251円という安値を付けた後、いったんレンジ相場に入っています。
今後2,251円付近で株価が反転するか、それとも下値をブレイクしてさらに下落が続くのか、重要なポイントに差しかかっています。
創業者の南場智子氏が代表取締役に復帰
今回の問題を機に、DeNAはそれまで取締役として一歩下がった立場で経営に関与していた創業者の南場智子氏が、3月13日付で代表取締役に復帰することを発表。コンプライアンスや管理体制を強化しながら、守安功社長(代表取締役)との二人三脚で今後のDeNAの経営が行われることとなりました。
しかしながら、株価は南場氏の復帰にはほとんど反応することはありませんでした。
成長企業かどうか、ここからが正念場のDeNA
DeNAといえば、成長著しいベンチャー企業というイメージがありますが、決算数字で見ると、既にDeNAの成長は過去のものとなっています。同社の過去5期分の売上高・営業利益の推移は下記の通りです(有価証券報告書より抜粋)。
2012年3月期 売上高1,465億円、営業利益603億円
2013年3月期 売上高2,025億円、営業利益768億円
2014年3月期 売上高1,81,3億円、営業利益532億円
2015年3月期 売上高1,42,4億円、営業利益248億円
2016年3月期 売上高1,437億円、営業利益198億円
4、5年前は600~700億円あった営業利益は2016年3月期には約200億円にまで減少。売上高こそ2012年3月期並みの水準を維持していますが、利益水準は以前のDeNAと比べると3分の1程度という状態となっています。
ガラケーのゲームコンテンツで成功したDeNAでしたが、その後はゲーム事業以外に全社の利益を牽引する成長事業を見出すことができず、売上高・利益ともに徐々に後退する状況となっています。
そこで、M&Aで参入したキュレーションプラットフォーム事業に大きな期待を寄せ、多額の投資を行って成長を追求しましたが、結局は同社の信頼失墜という高い勉強代を支払う結果となってしまいました。
DeNAはどの事業で成長しようとしているのか
現在、既に成長を開始している事業があるのであれば、その事業を中心に再成長のシナリオも描きやすくなります。しかし、2016年3月期末時点では、キュレーション事業を除くと軌道に乗りつつある成長事業はありません。
自動運転技術の開発を行う等、将来のビジネスの種まきは行われていますが、足元の2、3年先の成長を支えるビジネスの種が育っているとは言い難い状況です。
また、任天堂との提携は、共同開発の「スーパーマリオラン」が期待ほどの成果を上げることができず、現状は攻め手を探しあぐねているといったところです。
事業を育てるのには相応の時間が必要となります。現状のDeNAの事業状況を見た時、創業者の南場氏が代表取締役に復帰したとはいえ、即効性のある成長を期待するのは難しいかもしれません。
まとめ:時間がかかるとしても再度の成長を期待したい
DeNA創業者である南場氏の代表取締役復帰は、今後の同社の成長にとってプラスに働く可能性が高いと考えられます。しかし、再度の成長を果たすためには、相応の時間がかかる状況とも考えられます。
女性経営者として一代でDeNAを育て上げ、プロ野球球団を保有するまでの会社にした南場氏。同社の再成長には時間がかかるかもしれませんが、その経営手腕を活かして再度の成長そして株価の上昇を期待したいと思います。
LIMO編集部