ホンハイはシャープ株の持分約1%の売却を検討
2017年3月3日の株式市場では、鴻海精密工業(以下、ホンハイ)がグループで66%保有しているシャープ(6753)の株式のうち約1%の売却を検討中であるという日経の報道が話題になりました。
東証1部復帰の条件には、「流通株式比率が上場株券等35%以上」というものがありますが、現状では上述の通りホンハイグループが66%を保有しているため、流通株式比率は34%に留まります。このため、わずか1%ですが、売却が必要とされるのです。
なお、東証のルールでは、2部から1部への指定替えを行うためには流通株比率以外にも様々な条件を課しています。具体的には以下のような条件です。
- 株主数(2,200人以上)
- 流通株式数(2万単位以上)
- 流通株式時価総額(20億円以上)
- 売買高(申請日の属する月の前の月以前3カ月間およびその前の3カ月間の月平均売買高が200単位以上)
- 純資産額の額が10億円以上
- 最近2年間の経常利益の合計5億円以上あるいは時価総額が500億円以上(最近1 年間における売上高が100 億円未満である場合を除く)
- 最近5年間の有価証券報告書等に「虚偽記載」なし
とはいえ、これらの条件は既におおむねクリアされてきていますので、今回報じられた1%の持ち株売却が実現すれば、東証1部復帰の実現性は一段と高まると考えられます。
ちなみに、シャープは現時点では公式には「遅くとも2018年度(2019年3月期)までに東証1部に復帰を目指す」とコメントしています。
ただ、最近では業績の上方修正を発表するなど、経営再建が計画以上に進展しているため、今回のニュースが発表される以前から東証1部復帰を前倒しする準備を進めていることが伝えられていました。
「8」へのこだわりからホンハイは66%を保有
ところで、ここで多くの方は、なぜホンハイは2016年8月にシャープへの出資を行った時点で、東証1部への復帰を見越して65%未満に出資比率を押さえなかったのだろうという素朴な疑問をお持ちではないでしょうか。
そこで思い出していたきたいのが、昨年8月に増資が行われたときに印象的であった、ホンハイの「8」という数字へのこだわりです。
実際に、当時のシャープのホンハイを割当先とする増資のスキームについて振り返ってみましょう。
まず、普通株式による第3者割当増資については、発行価格は1株88円、発行新株式数は32.8億株数、調達総額約は2,888億円でした。
また、同時に種類株も発行しており、発行価格は8,800円、発行新株式数は1,136万株、総額発行は約1,000億円でした。
これを合計すると、ホンハイによる出資額は約3,888億円でした。
このように、たくさんの「8」という数字が見られますが、この背景には中国圏における「8」という数字への強い思い入れがあるとされています。中国語の8には「発展」などの意味もあり、非常に縁起が良い数字だとされているためです。
ゲン担ぎは大成功
では、ゲン担ぎの結果はどうだったのでしょうか。
昨年8月に1株88円で出資したシャープの普通株は、3月3日の終値は344円と約4倍に上昇しています。また、総額では2,888億円の出資額が、直近では1兆1,326億円となり約8,428億円の含み益を得ています。
まさに、見事な大成功ですね。
なお、今後ホンハイが売却する1%のシャープ株は、株式数では約0.5億株、現在の株価では約170億円となります。そこには、「8」という数字は見られませんが、既に十分なリターンは得ているため今回はゲン担ぎの必要はないでしょう。
それよりも、今後はホンハイとともにシャープの経営改革が一段と加速するかを注視していきたいと思います。
和泉 美治