このところ毎年のように日本人からノーベル賞受賞者が出ます。それも物理学賞、化学賞、生理学・医学賞といった、いわゆる「理系」の領域で受賞しているのは、日本の基礎研究の底力が垣間見える結果と言えるのではないでしょうか。

今回はノーベル賞という最高峰の栄誉を与えられた研究を基盤とする事業や、ノーベル賞に関連した事業を行っている企業を中心に取り上げていきたいと思います。ノーベル賞受賞直後はマスコミに多く取り上げられるのが常ですが、重要なのは長期的に業績が拡大しているかどうかです。それでは早速見ていくことにしましょう。

日本人のノーベル賞受賞者(2000年以降)

まず初めに、2000年以降の日本人ノーベル賞受賞者を簡単に振り返ってみましょう(敬称略)。

  • 2000年:白川英樹(化学賞)
  • 2001年:野衣良治(化学賞)
  • 2002年:小柴昌俊(物理学賞)、田中耕一(化学賞)
  • 2008年:南部陽一郎(物理学賞)、小林誠(物理学賞)、益川敏英(物理学賞)、下村脩(化学賞)
  • 2010年:根岸栄一(化学賞)、鈴木章(化学賞)
  • 2012年:山中伸弥(生理学・医学賞)
  • 2014年:赤崎勇(物理学賞)、天野浩(物理学賞)、中村修二(物理学賞)
  • 2015年:梶田隆章(物理学賞)
  • 2016年:大隅良典(生理学・医学賞)

注:南部陽一郎氏は受賞時は米国籍、中村修二氏は現在米国籍を取得。

こうして見てみると、2014年以降は3年連続の受賞です。日本の「理系」がいかに世界の先端を走る研究をしてきたのかがわかります。

ノーベル賞の内容と企業の事業が直結している銘柄とは

こうした日本人が関わってきた研究がノーベル賞として評価されること自体称賛に値しますが、加えて事業に直結あるいは関係している研究もあります。これもまた社会貢献の度合いが大きいと言えます。

たとえば野衣良治氏の研究では、高砂香料工業(4914)が不斉合成法によるl -メントールの工業化に成功しています注1。また、小柴昌俊氏のニュートリノの研究には浜松ホトニクス(6965)の光電子増倍管注2が寄与しています。

さらに、田中耕一氏は検査機器メーカー・島津製作所(7701)の研究者として、質量分析のための「ソフトレーザー脱離イオン化法」を開発しています注3

今回はこのうち以下の2銘柄について、現在の業績や株価がどうなっているのかを見ていくことにしましょう。

注1:高砂香料 企業情報
注2:浜松ホトニクス「20インチ光電子増倍管開発ストーリー」
注3:島津製作所「ノーベル賞と質量分析 10の質問」

高砂香料工業

高砂香料工業は、社名の通り香料を主体に製造および販売をするメーカーです。皆さんにもなじみ深い飲料水やお菓子などに加えられる香料です。

ただ、一口に香料といっても大きく2つに分けることができます。1つはフレーバー、もう1つはフレグランスです。何が違うのかというと、フレーバーは食品香料で、フレグランスは非食品(たとえば香水や化粧品、トイレタリーなど)に使われるものです注4

同社は香料事業だけではなく、不斉合成技術、均一性触媒、フロー連続技術などによりファインケミカル事業も展開しています。また、同社の事業地域は日本だけではなく、米国、欧州、アジアなど世界中に広がります。

では、業績はどうでしょうか。過去5年間、経常利益で見るとブレはありますが、一度も当期純利益での赤字はありません。また、総資産に対する純資産も2016年3月期では47%と、比較的健全な状況と言えるのではないでしょうか。

株価は過去5年間、2,000円を下回る水準から足元(2017年3月2日終値)では3,650円へと上昇しています。

注4:長谷川香料「フレーバーとフレグランス」

浜松ホトニクス

浜松ホトニクスを一言で説明するのは難しいですが、「光」を扱う技術、すなわち光技術を核とした技術企業と言えます。

その事業は電子管事業、光半導体事業、画像計測機器事業という3つのセグメントに分かれています。浜松ホトニクスが製造するデバイスは非常に多様な製品に使われているのですが、身近な機器ではX線CTやPET、歯科用X線などが有名です。

同社は「光の可能性の追求」というテーマの中で、立体ディスプレイのためのレーザーやレーザー核融合といった非常にチャレンジングな目標を持っています。その他、今後到来するIoT社会でのセンサーネットワークなども事業機会にしたいと考えているようです。

さて、浜松ホトニクスの業績はどうでしょうか。過去5年間、業績の多少のブレは見られますが、高収益率を維持しています。また、過去5年間で当期純利益の赤字はありません。総資産に対する純資産の比率は2016年9月期で78%と、非常に堅固な財務体質と言えるでしょう。

株価は過去5年間で1,500円前後から3,370円(2017年3月2日終値)と、倍以上に上昇しています。

その他ノーベル賞関連銘柄:LEDやiPSはどうか

今回取り上げたテーマ以外に注目しておくべきは、まずはLEDではないでしょうか。関連銘柄としては豊田合成(7282)、スタンレー電気(6923)などがあり、いずれも株価は堅調に上昇しています。

また、やはり皆さんが大きな期待を持っているのはiPS細胞ではないかと思います。まだ大きく業績に貢献するレベルではありませんが、武田薬品工業(4502)、大日本住友製薬(4506)、富士フィルムホールディングス(4901)などがすでにiPSに積極的で、研究所設立や関連企業の買収などを行っています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。こうして見てくると、研究と実業が結びつくことでさらに難しいテーマに取り組める企業が増えそうですね。こうした技術企業は今後も要注目です。

参考記事

>>再生医療関連産業の動向、有力な市場とその関連企業を探る(Longine)

 

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青山 諭志