この記事の読みどころ

  •  NEC(6701)は2017年1月30日に大幅な業績下方修正を発表しました。その要因は多岐にわたりますが、既存事業と新規事業両方の売上未達が主因となっています。
  •  今回の下方修正により、2019年3月期を最終年度とする中期計画も未達の可能性が高まっています。
  •  同社の業績不振の主因は新規事業創出の遅れによるところが大きいため、3年間という短期の予算に縛られず、長期的な目線で失敗を許容しながら新規事業を創出することが求められると思われます。

問題は予算の未達ではなく、予算に縛られすぎて活力を失っていること

NECは2017年1月30日に2017年3月期の大幅な業績下方修正を発表しました。具体的には、売上高が2兆6,800億円(従来予想2兆8,800億円)、営業利益は300億円(同1,000億円)へ大幅に下方修正されています。

営業利益の前回予想比で▲700億円の下方修正の要因は、宇宙事業の採算性悪化、サーバーの価格競争激化、保守サービスの収益性悪化等と多岐にわたります。

会社側は、下振れのうち不採算案件の発生が50億円程度、構造改革費用の計上が60億円程度、偶発損失引当金の繰入が80億程度の下方修正要因だとしています。よって、残りの約500億円は既存事業と新規事業の売上未達によるものであることになります。

同社は今年度から国際財務報告基準(IFRS)へ移行しているため、日本会計基準では特別損益とされる項目が営業利益段階で反映されることには注意が必要です。とはいえ、本業の悪化が相当程度を占めていることが上述の修正要因の内訳から読み取れます。

また、同社は2016年4月に発表した2018中期計画で、最終年度である2019年3月期には売上高3兆円、営業利益1,500億円の目標を掲げています。ただ、初年度の大幅な未達により、この達成が危うくなっているという印象は否めません。

ちなみに、同社は3年ごとに中期計画を発表していますが、2012および2015中期計画の過去2回、最終年度の目標がいずれも未達で終わっています。

2015中期計画については、最終年度の2016年3月期の実績は売上高が2.82兆円(計画3.2兆円)、営業利益は1,073億円(同1,500億円)に留まっています。

ここでは、テレコムキャリアとスマートエネルギー関連の未達が足を引っ張っていましたが、会社側からは「市場への過度な期待と実行力の不足」が問題点として指摘されていました。

今回の下方修正を見ると、2015中期計画の問題点は依然として解消されずに残っているという印象は免れません。

とはいえ、今のNECに何を望むかと問われれば、筆者が言えることは「あごを上げて前を向き元気をだそう」の一言に尽きます。

というのは、中計の連続的な未達は確かに懸念すべきではあるものの、同社の問題は予算を達成できないことにあるのではなく、予算に縛られすぎて活力が失われている可能性があると見られるからです。

もはや、アメリカのエネルギー事業を除くと赤字を継続的に計上しているような大きな課題事業は見当たりません。そのため、リストラという外科手術での収益の大幅な改善も見込みにくいものがあります。

よって、既存事業の陳腐化を大きくカバーできるだけの新規事業を創出していくためには、3年間という短期の予算に縛られずに、じっくりと腰を据えて新規事業の創出に取り組んでいくかどうかが重要であると考えられます。

幸い、バランスシートについては年金積立不足がオンバランス化されたIFRS移行後でも自己資本比率は約30%、ネットDEレシオも比較的健全な状態にあります。つまり、上記のような取り組みを行えるだけの余力は、東芝などの不振企業に比べるとまだ十分に残っているでしょう。

ちなみに、同社の新野隆代表取締役執⾏役員社⻑兼CEOは、2016年4月に開催された2018中期計画の説明会で「チャレンジして失敗を許す文化を作ろうとしていますが、まだ十分ではありません」と述べています。

今後、長期的な視点で新規事業の創出を行っていけるのか、それを行うためのカルチャーがNECに生み出されるかに注目しつつ、「失敗を許す文化」を目指す姿勢が今回の下方修正後も継続されることを望みたいと思います。

本稿は「個人投資家のための金融経済メディアLongine(ロンジン)」の記事のダイジェスト版です。全文は以下からどうぞ(有料記事)。
>>NEC(6701)がチャレンジして失敗をしても許す文化を作れるかに注目したい

 

LIMO編集部