2017年2月7日、東京・馬喰町。古くからの繊維問屋街に、あるホテルがオープンした。
「ファーストキャビン日本橋よこやま町」。かつてこの場所にあった繊維問屋のビルをリノベーションして開業した。事業会社はロンド・スポーツ。同社からホテルの運営を委託されたのはファーストキャビンだ。
ファーストキャビンの来海(きまち)忠男社長は開業に際し「観光客、地方からのビジネス客だけでなく地域の方にも活用してもらい、街の活性化につながれば」と語った。
コンセプトは「コンパクト&ラクジュアリー」
ファーストキャビンの各ホテルは旅館業法上の「簡易宿所」に相当する。カプセルホテルや民宿などと同様の位置づけだ。宿泊すると、飛行機のファーストクラスをイメージした「キャビン」と呼ばれる区画が1人あたり1区画割り当てられる。
簡単な仕切りのみで洗面・トイレが共用とはいえ「コンパクト&ラクジュアリー」をコンセプトとしているだけに、一般的なビジネスホテルのシングルルームと大きな差は感じられない。キャビンはファーストクラスとビジネスクラスの2種類。宿泊料金はファーストクラスキャビンで5,600円~6,800円、ビジネスクラスキャビンで4,600円~5,800円となっている。
このキャビンは同社が独自に開発したユニット式になっており、企画・設計・工事の工数を最小限にすることができる。熊本地震の際には被災地にキャビンを設置、被災者の仮設住居としての役割を果たしたという。ちなみに100キャビンの場合、工事期間は最短3カ月。初期投資も3億円程度に抑えられることが特徴的だ。
鉄道会社と続々コラボ。双方の思惑が合致!?
羽田空港や秋葉原の施設が話題になったのはつい最近のことに感じられるが、ファーストキャビンの事業開始は2008年。第1号施設の開業は2009年の大阪・難波だ。ここ数年は年間1、2施設のペースで開業してきたが、2017年は日本橋よこやま町も含め、一気に5施設がオープンし、2017年度中に20施設までグループホテルが拡大するという。
この急展開を支える1つの柱が鉄道会社とのコラボレーションだ。
2017年4月には、京阪電気鉄道グループの京阪不動産が東京・京橋に新たに建設するビルに直営の「ファーストキャビン京橋」を開業する。JR西日本とは2017年2月に共同で新会社を設立、今後新ブランドを立ち上げて事業を進める方針だ。
また、阪急阪神ホールディングスグループの阪神電気鉄道とはフランチャイズ契約を結んだ。阪神電鉄は2017年秋に大阪市内に第1号施設を開業後、2025年までに6施設以上の開業を目指すとしている。また、2018年3月には京福電鉄の嵐山駅に直結したビルにも直営での出店が決まっている。
コラボレーションは関西の鉄道会社だけに留まらない。「関東の鉄道会社ともいくつか協議が進んでいる」と来海社長は話す。2022年までに国内外100施設の開業を目指すファーストキャビンとインバウンド需要を取り込みたい鉄道会社、それぞれの思惑が一致した格好といえる。
「ファーストキャビンはインバウンド時代の新たなインフラになるのではないか」、来海社長は意気込みを隠さない。やや大胆な青写真にも思えるが、今後他業種とのコラボレーションが進めば、さまざまな場所に短工期で開業できるメリットもあり、決して不可能とも言い切れないだろう。
ブランドイメージを確立し飛躍を遂げられるのか。ファーストキャビンの次の一手に注目したい。
LIMO編集部