強まる映画とゲームの存在感

こうした中、映画事業の存在感は大きくなってきました。

売上高の規模としてはゲーム事業やEP&S事業などにまだ及ばないものの、利益の伸びは顕著です。

また、主力のゲーム事業も足元で大きな動きを見せました。

幸か不幸かコロナ禍を背景に在宅時間が増えた中、もともとのeスポーツブームも相まって、ゲーム市場は世界的に拡大しました。

そうした中、ソニーは2022年2月1日、米国の独立系ゲーム開発会社であるBungie, Inc.(バンジー)の全株式を取得すると発表しました。

買収金額は合計で36億米ドル(約4140億円)としており、この金額はソニーが保有するキャッシュの2割超に及びます。

これだけの金額を投じるだけに、ソニーのゲーム事業に対する強い積極性が見て取れます。

摩擦拡大で第2の「モノ言う株主」現れるか

ここへ来て、「モノ言う株主」の存在も気になってくるのではないでしょうか。

ソニーというと、過去には米アクティビストファンドのサード・ポイントと「半導体事業の分離」を巡ってひと悶着あった経緯があります。

サード・ポイントはソニーに対して半導体事業の売却を勧める株主提案を出していましたが、結局ソニーはこれを飲まず、結局サード・ポイントはソニー株式を売却しました。

これには、半導体事業が抱える「高い事業リスク」が背景にありました。

半導体事業は一般的に、巨額な投資資金が必要とされる一方、シリコンサイクルと呼ばれる業界独特の波があり、キャッシュフローが予測しづらいという大きなリスクがあります。

このリスクは、「負債が調達しづらい」といった財務面にも影響を及ぼしてきます。

そしてこれは、程度の違いはあれ、ゲーム事業や映画事業にも共通するのではないでしょうか。

ゲームや映画は流行り・廃れがあり、作品がヒットするか予想しづらいという性質があります。

この点は、半導体事業と同様、キャッシュフローが安定しないということになると考えられます。

まして、ゲーム事業では直近で4000億円超のM&A計画もリリースされており、財務動向はさらに読みづらくなるのではないでしょうか。

ゲームや映画、半導体など、キャッシュフローの読みづらい事業を複数抱えている状況になるので、今後サード・ポイントに次ぐ第2の「モノ言う株主」も出てくるかもしれません。