2021年12月18日にログミーFinance主催で行われた、第29回 個人投資家向けIRセミナー Zoom ウェビナー 第4部・ヤマハ発動機株式会社の講演の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:ヤマハ発動機株式会社 執行役員 企画・財務本部本部長 野田武男 氏
元ファンドマネージャー/元ディーラー 坂本慎太郎(Bコミ) 氏
タレント/ナレーター 飯村美樹 氏
売上構成 (2020年12月期)
野田武男氏(以下、野田):それでは、ヤマハ発動機のご説明をさせていただきます。最初に会社概要です。こちらに2020年12月期の売上構成を示しています。連結売上高は1兆4,713億円です。
スライド左のグラフは地域別の割合です。当社は海外売上比率が90パーセント、日本が10パーセント、海外ではアジアが一番多く、次に北米、欧州、その他のような売上構成となっています。
スライド右の事業別では、二輪車を中心としたランドモビリティ事業が60パーセント強、続いてマリン事業、ロボティクス事業、金融サービス事業、その他という構成です。
坂本慎太郎 氏(以下、坂本):ヤマハ発動機株式会社と、証券コード7951のヤマハ株式会社との関係はどのようなものなのでしょうか?
野田:ヤマハ株式会社は、もともと日本楽器製造株式会社の名前で1897年に設立されました。当社は、そのヤマハ株式会社の二輪車部門として最初に創立され、1955年にヤマハ発動機株式会社として分離・独立し、設立されました。そのため、現在は分離してはいますが、当社はヤマハ株式会社の子会社からスタートし、ヤマハのブランドをずっと共有している関係です。
飯村美樹氏(以下、飯村):私は楽器もバイクも全部ヤマハにものすごい額を使っています。
坂本:ヤマハ党なのですね。バイクは何に乗っているのですか?
飯村:SRに乗っています。
坂本:なるほど。
野田:ありがとうございます。
飯村:SRに乗りたくて免許を取りました。そのような人はおそらく多いと思います。
Withコロナ Afterコロナ
野田:新型コロナウイルス拡大の影響で、2020年の前半は売上が非常に減少したのですが、後半からは、スライドのとおり、特に米国、欧州、日本などの先進国で、アウトドアレジャーやパーソナルモビリティ用の二輪車、電動自転車の需要が増加し、現在は工場もフル操業しています。
坂本:御社は発動機を中心にさまざまなモノを作られていますが、地域別売上に戻ると、新興国の比率がかなり大きくなっています。いつ頃から新興国に取り組み始めたのか、また、新興国ビジネスが初期と現在でどの程度変わったか教えてください。
野田:最初に進出したのはメキシコです。1950年代末期から1960年代にかけて進出し、その頃から新興国、アジア向けのビジネスを手がけていますが、やはり二輪車、小型船外機などが中心です。
業績の推移
野田:業績の推移を簡単に説明します。当社は2007年に過去最高の売上高1兆7,567億円を計上しましたが、リーマンショック後は売上・利益ともにかなり減少しました。2012年以降、特にアジアを中心に順調に回復し、今期の予想としては、売上高1兆8,000億円、営業利益1,720億円と、過去最高の売上・営業利益達成の見込みです。
株主様への還元
野田:株主様への還元については、私どもは安定的かつ継続的な配当を維持し、連結配当性向30パーセントを目安としています。今年の11月には当社初の自己株式取得を発表し、今後もキャッシュフローの状況を見ながら、機動的に自己株式取得を実施していきます。
1株あたりの配当は、リーマンショック後の2年間は無配となりましたが、その後は業績の回復とともに順調に配当金を増やしており、2021年の予想では1株あたり100円の配当を計画しています。
飯村:Withコロナ、Afterコロナで、バイクも教習所の予約が取れないレベルまで人気があったようですが、スライド左下の「ATV(All-Terrain Vehicle)」は四輪の何という種類ですか?
野田:こちらはATVではなく、レジャー・スポーツ走行から農作業などの業務に至るまで、幅広く使用される自動車に類似した操縦系を持つ「ROV(レクリエーショナル・オフハイウェイ・ビークル)」です。このモデルは2人乗りだと思いますが、このような荒地、荒野、いわゆるオフロードを走る専用の乗り物です。
飯村:オフロード車の二輪はサーキットなどで見かけて、私も2回ほど行ったことがありますが、このような四輪で自由に走れる場所はあるのですか?
野田:日本では一部クローズドの地域で走れる場所があるとは聞いていますが、それほど多くはないと思います。やはり一番メインは北米です。アメリカ、カナダなど、まさにこの写真の風景のようなところでオフロードドライブが盛んです。
飯村:値段はどのくらいでしょうか?
野田:この写真の商品ですと数万ドル、日本円で200万円から300万円くらいのモデルです。普及帯でもっと小型では数十万円くらいからあります。
飯村:中央下の「TRICITY」も、この前輪に2つタイヤが付いているのを見た時は衝撃的でした。これは欧州では四輪免許でも乗ることができるようですが、日本や北米ではいかがでしょうか?
野田:国によって規制が違い、おっしゃるとおり欧州では四輪免許で乗れますが、日本では現時点では残念ながら二輪免許が必要です。
飯村:後ろに2輪付いている「トライク」は普通免許で乗れますよね?
野田:はい、普通免許で乗れます。車輪と車輪の間の距離によってレギュレーションが違ってきます。
マリン事業①
野田:当社の事業活動の概要をご説明します。みなさまには二輪車のイメージが強いと思いますが、実はマリン事業も活発に行っており、中でも特にこのスライド写真のような船外機、プレジャーボート、水上オートバイなどを中心に扱っています。
マリン事業②
野田:業績は右側の棒グラフで示していますが、今年は売上が約4,000億円、営業利益が780億円と予想しています。特に船外機は世界的にもかなりシェアが高く、1位、2位を争うポジションです。非常に高い信頼性を評価いただいており、ブランド力も強いため、マリン事業では営業利益率15パーセント以上と高い収益性を維持しています。
マリン事業 ~ 米欧 市場のトレンド~
野田:このマリン事業の中心は船外機なのですが、スライド右上の写真でわかるように、大型の船外機にV8エンジンで、4リッター、5リッターほどあるものを4つ載せています。これは北米の例ですが、このような大型のものから、写真のような小型ボートに小型船外機を1基付けるなどの使われ方もしています。特に最近は、北米、欧州で大型船外機の需要が非常に伸長しています。
スライド左下に2010年から2021年の見通しを載せています。当社は100馬力以上の船外機を大型、200馬力以上を超大型と呼んでいますが、100馬力以上の船外機の需要が非常に大きく伸長しているのがおわかりいただけると思います。
マリンCASE戦略
野田:今、四輪では「CASE戦略」とよく言われていますが、当社のマリン領域でも「Connected」「Autonomous」「Shared」「Electric」への取り組みに注力しています。
「Connected」では、スマートフォンと繋げて船やエンジンの状態がわかるようになること、「Autonomous」では自動運転を目指しています。スライド右上の写真は新しい操船システムで、右のジョイスティック型の操作部分を使って、前進後進やその場での回転操作が自由自在にできるシステムをすでに販売しています。
「Shared」については、当社は日本国内で会員制ボートのシェアリング「Sea-Style」を運営していますが、現在こちらの入会が非常に増えています。ボート免許取得の受講者も増えており、日本でもボートレジャーが普及してきていると実感しています。
坂本:僕もいつも船の免許が欲しいと思いながらも、海図がちょっとハードルが高いと感じているのですが、近いうちに取りたいです。
野田:現在は2日、3日ほどで免許取得までできるため、ぜひ楽しんでいただきたいと思います。
坂本:御社はマリン事業でかなりの利益率を誇っていますが、コロナ禍のアウトドアブームで需要が旺盛だったとか、または高価格帯が中心のためマージンが取りやすい、同業他社が少ない、ブランド戦略が奏功しているなど、考えられる理由を教えていただけたらと思います。
野田:おっしゃっていただいたとおり、もともと当社は全世界でも1位か2位くらいのマーケットシェアがあります。この船外機は船に付けるエンジンの部分で、比較的単価も高い商品です。高い信頼性を評価いただいており、ヤマハを指名買いしてくださるお客さまやボートビルダーさまも多くいらっしゃるおかげで、比較的高価格帯の商品でもかなりの利益率を維持しています。
ランドモビリティ事業①
野田:続いてランドモビリティ事業です。スライドの写真のとおり、二輪車はスポーツタイプとスクーター、四輪バギーは写真左下の商品を「ROV(レクリエーショナル・オフハイウェイ・ビークル)」と呼んでいます。右下は電動アシスト自転車です。当社ではこのような商品を扱う事業をランドモビリティ事業と呼びます。
ランドモビリティ事業②
野田:中でも特に二輪車事業が当社の祖業であるため、会社創立以来の基幹事業として展開しています。
業績の推移は右側グラフのとおりです。今年は合計で約1兆1,500億円の売上、営業利益は約600億円を予想しており、今後も基幹事業として経営効率・商品競争力を高め、安定した事業を行っていきたいと考えています。
二輪車事業 ~ 新興国市場 プレミアム戦略推進~
野田:二輪車事業の中でも、特にASEANでかなりの存在感があり、スライド左上の円グラフが示すとおり、ASEAN総需要約1,000万台のうち、当社が20パーセント程度のマーケットシェアを占めています。
右上のグラフは、ASEANの上位中間層を狙った、当社ではプレミアム戦略と呼んでいるセグメントの状況です。従来、アジアでは排気量100ccくらいの廉価タイプのスクーターが多かったのですが、最近は中間層の方がかなり増え、商品も日本とあまり変わらなくなってきています。
日本でも販売しているモデルをASEANの国でも選んでいただいており、排気量150ccくらいの商品が中心になってきています。現地では値段が高いほうであるため、我々もこのようなところはかなり力を入れて進めています。
スライド左下のグラフは、過去5年間の当社の低価格モデルと高価格モデルの販売比率を示しています。ここ2年から3年は高価格帯モデルが半分以上を占める状況で、当社の二輪車事業を継続的、安定的に進める原動力になっています。
坂本:どのくらいの価格から高価格帯モデルになるのですか?
野田:排気量でいくと150cc以上、現地で30万円くらいからのもので、日本でも一般的に販売されている商品です。当社で言いますと「NMAX155」のような商品が、ASEAN、特にインドネシア、タイなどで非常に売れています。また、タイではSRも販売しているのですが、実はこれがかなりの人気商品となりました。もうお客さまの好みが日本と変わらなくなり、価格帯の高いものも次々と売れるようになっています。
飯村:125ccなどの半端な排気量の商品が人気というイメージがあったのですが、ASEAN諸国の免許の規格はどのようになっているのですか?
野田:国によって相当違いますが、ほとんどの国では二輪免許1種類だけですべて乗れます。
飯村:それでも、今までは少ない排気量のものが人気だったのですよね?
野田:そのとおりです。値段の安さもありますが、ASEANでは交通渋滞が相当ひどい国が多く、やはり機動性の高いモデル、小型の商品が好まれるということはありました。
飯村:なるほど。大型では横からシュッと入れないですからね。
野田:おっしゃるとおりです。
坂本:ASEANでは新型コロナウイルス感染者が非常に多く、景気停滞がかなり懸念されているところですが、その中でもプレミアム商品が売れているということは、コロナ禍でも売れ筋が変わらなかったのでしょうか?
野田:確かにコロナ禍では販売店が閉店するなど、当社の売上もだいぶ減少しましたが、お客さまの嗜好はそれほど変わりませんでした。やはり比較的高い商品の人気が非常に高く、引き続き高い評価をいただいています。
ロボティクス事業
野田:続いてロボティクス事業です。これは当社の事業の中では変わり種なのですが、扱っている商品は、スライド左の四角い箱のような「サーフェスマウンター(表面実装機)」と呼んでいるもので、半導体の小さなチップを基板の上にどんどん置いていく機械です。中央はいわゆる産業用ロボットで、物をつかんで動かすなどの動作をするもの、一番右は産業用無人ヘリコプターで、日本では農薬散布などに使っている小型の無人ヘリコプターです。
ロボティクス事業 ~表面実装機~
野田:先ほどもお伝えしたとおり、この表面実装機は半導体チップを基板の上に置いていくのですが、そこにはいろいろな工程があります。左下にその工程を載せていますが、まず、はんだを印刷して基板に塗っていきます。
その後、小さなチップをつかんで基板の決まった場所に載せ、熱処理をして最後に検査するような一連の流れがありますが、当社はそこに印刷機、ディスペンサー、マウンター、検査機とすべての商品を提供しています。
さまざまな商品を選んでいただき、基板の印刷から検査まで一気通貫で提供できるのが当社の強みと考えています。右側に業績の推移をグラフにしていますが、2019年に新川・アピックヤマダをM&Aで買収し、その後この事業も取り込んで売上も急伸長しています。
ロボティクス事業 ~ 半導体後工程・産業用ロボット~
野田:半導体後工程は、先ほどお伝えした買収先の会社が扱っている分野なのですが、この市場規模が約3,500億円と言われており、現在、新しく買収したこの2社で10パーセント程度の金額シェアを持っています。
先ほど半導体を載せるところをご紹介しましたが、半導体はウエハーに印刷して切り取リ、1個1個のチップにしていきます。そのウエハーは私どもは扱いませんが、1個1個に細かく切った半導体をまたチップの上に置き、それを結んで固める「後工程」と呼ばれる工程にも参入しています。
また、最近の人手不足により、どの企業も自動化に非常に力を入れていますが、当社の産業用ロボットはまさにこのような分野でご利用いただいています。半導体の後工程、できた半導体を基板に載せる、そこからさらにいろいろな組み立てを行う、その一連の流れのすべてで私どもの商品を提供できることを強みに、現在事業展開を進めています。
坂本:こちらの半導体後工程について、市場規模が3,500億円、御社のシェアが10パーセントです。御社は、今までの領域で買収を行い事業を広げられましたが、今後の半導体製造装置分野の成長や市場拡大のイメージを教えてください。
野田:みなさまご存知のとおり半導体不足が盛んに言われている中、当社も調達に苦戦しています。しかしながら、そのおかげで半導体は全世界的に増産がかかっています。用途も従来のスマートフォンなどの機械だけでなく、最近は車も自動運転やCASEなどいろいろと言われており、1台あたりに使う半導体の量がものすごく増えています。
また、スマートフォンも5Gがより一層進んでいるため、半導体需要は今後も相当増えると考えています。当社は半導体の工程の一部を担っているため、将来に向けて非常に期待している分野になります。
坂本:過去に新川・アピックヤマダをM&Aし、現状利益率が上がっていると思います。市況がよいこともありますが、御社が行った施策を教えてください。
野田:当社はもともと表面実装機を展開しており、それと新しく買収した会社の商品とのシナジー効果を活かしています。私ども1社にお声がけいただくと、いろいろな商品を1回で提供できます。このようなかたちは、クロスセルと呼んでいます。我々のお客さま並びに株式会社新川とアピックヤマダ株式会社のお客さまにお互いの商品を使っていただくマーケティングを一生懸命行いました。
また、コストダウンを図っています。共同購買などを一生懸命行い、コストがだいぶ下げられました。比較的順調にシナジー効果や買収した効果が出ていると考えています。
成長戦略と創出する社会価値
野田:当社の成長戦略です。当社は企業目的を「感動創造企業」と掲げています。創業の二輪車から始まり、その後にマリン事業やロボティクス事業あるいは電動アシスト自転車など、いろいろな事業領域を増やしてきました。
もともと当社はこのような小型の乗り物、パーソナルモビリティに非常に強い会社であり、さらにいろいろな研究開発を通じて新しい価値をお客さまに提供していくことを考えています。
例えば、スライド下部の中央に「新型自動運転EV 搬送サービス」と書いていますが、これはもともと当社のゴルフカートです。それを少し改造し、特に工場において無人でいろいろな部品を運ぶことを開発しており、ほぼ実用化が見えています。
スライド下部の左側に「ハイエンド電動アシスト自転車」と書いています。従来日本での電動アシスト自転車は、子どもを乗せて買い物などに行く用途でした。しかし、これはマウンテンバイクに近く、オフロードを走れる高性能な電動アシスト自転車です。このような製品はアメリカやヨーロッパで今非常に人気が出ています。価格は相当高く、オートバイと変わらないくらいです。このような分野にも積極的に参入していきます。
少し変わった分野ではスライド下部の右側の「果菜農業 省人化」があります。これは、従来は手作業でしか収穫できなかったぶどうやいちごなど柔らかい果実を、ロボットで自動的に採れるようにするもので、実用化に向けて一生懸命取り組んでいます。
これは当社のチップマウンターという、半導体を掴んで乗せる技術を応用したものです。ぶどうやいちごがきちんと熟しているかどうかをまず判定し、そこに正しくロボットの手を当てて収穫します。なかなか難しく、まだ完全に実用化までは至っていませんが、一生懸命進めています。
また、従来の二輪車の電動化などを一生懸命進めます。このようなかたちで当社の得意とする技術を活かし、新しい価値を提供していきたいと考えています。
ヤマハ発動機らしいカーボンニュートラル戦略
野田:最近カーボンニュートラルについていろいろと言われています。当社も今年、2050年までに製品ライフサイクル全体のカーボンニュートラルを目指す計画を公表しました。その中でいろいろな分野において、当社らしい方法で電動化やカーボンニュートラルを進めていきます。スライドで示したとおり、当社の扱っている商品は電動自転車や二輪、マリンと幅広くあります。
BEVはバッテリーEV、HEVはハイブリッド、FCVは燃料電池です。このようにいろいろな技術を組み合わせ、それぞれの商品に最適なかたちで電動化に取り組み、カーボンニュートラルを達成していきます。
坂本:電動化によるゲームチェンジが行われる可能性があると言われていますが、御社が確固たる地位を築いている二輪やマリンのEV化の対応について教えてください。EV化にすると部品点数が削減され、将来的にコスト削減につながるかもしれませんが、その分値段が下がる可能性があったり、現状のパーツメーカーとのお付き合いを変えることが必要だと思います。そのあたりは御社としてしがらみなく行っていけるのでしょうか?
また、トヨタ自動車株式会社の水素のようなかたちで現在の技術に応用できるEV以外の機構は考えていますか?
野田:まず当社はもともとトヨタ自動車株式会社に自動車のエンジンを納めている関係があります。したがって四輪のエンジンの知見もかなり持っています。先日、水素エンジン開発の共同研究について発表しました。今トヨタ自動車株式会社が一生懸命レースに使っている水素エンジンも当社が一部技術的な部分をお手伝いしています。
基本的にはバッテリーEVが向いているところにはバッテリーEVを使います。それ以上の大きな出力が必要なところには、例えば水素エンジンを使います。あるいはバイオ燃料のように内燃機関のよさを活かせる研究開発を行います。つまり、全方位でバッテリーや内燃機関の新しい燃料、燃料電池など、できるだけ多様なパワーソースをきちんと提供できるようすることが目標です。
最初の質問で言われたように、電動化に向かうと今までのエンジンの部品が劇的に減ってしまいます。サプライヤーとの関係がいろいろと変わってくる可能性はあると思います。
逆に新しい部品も、特にバッテリーを中心に出てくると思います。そのようなかたちではいろいろなサプライヤーとの関係や取引が変わってくる可能性はあります。スライド左下に「40年以上前から電動商品を開発・販売」と書いていますが、当社は「意外と電動は得意」とあえて言わせていただきたいです。
先ほどゴルフカーを紹介しましたが、電動アシスト自転車も1993年に当社が世界で一番早く実用化し市場に出してきました。電動車いすや電動スクーターはテレビ番組でも使っていただくかたちで、意外と古くから電動の小型の乗り物は手掛けています。
特に電動アシスト自転車では、モーターやバッテリーは台数でいうと数十万台に該当するボリュームになっています。そのような意味でモーターやバッテリーなどの調達や製造はだいぶ前から手掛けており、このあたりは我々の過去からの取り組みを活かしていけると考えています。
まとめ
野田:まとめです。現在コロナ禍の中、全世界でアウトドアレジャーが非常に盛んになっています。また生活様式の変化もあり、特に米国では家族と一緒に過ごしたり、都会を避けて田舎でのんびり過ごしたりする人々が増えており、それが当社にとって非常に追い風になっています。
欧州・日本・ASEANでは密集を避けるパーソナルな乗り物として二輪車のよさがあらためて見直されており、免許の取得者がさらに増えるなど、引き続き非常に高い需要が出ています。これも当社にとって非常に追い風だと思います。
このような追い風を精一杯受け、特に基幹事業であるモーターサイクルあるいは高収益体質のマリンでトップラインの向上を目指します。
将来に向けて、成長戦略のところでお伝えしたとおり、当社が昔から得意としている技術を使い、世の中の新しい価値や課題解決に貢献していきます。その中で当社自身も成長していきたいという思いです。以上が私どもの企業紹介です。ご清聴ありがとうございました。
質疑応答:自己株式取得の目的について
坂本:「御社初の自社株取得でしたが、その主な目的として敵対的買収などを想定していましたか?」というご質問です。
野田:今年初めて当社は自社株買いを実行しました。その目的は株主還元の充実および資本効率の向上の2つです。背景の1つとして、今年当社は保有していたヤマハ株式会社の株式を一部売却しました。その売却利益を原資の1つに、初めて自社株買いを行いました。今後も自社株買いについては、キャッシュフローの状況を見ながら機動的に実施していきたいと思っています。そのような経緯がありましたが、目的は株主還元の充実です。
質疑応答:ASEAN諸国の発展に伴う二輪車需要の変化について
坂本:「ASEAN諸国では道路渋滞事情から二輪車需要が根強いです。今後、鉄道や道路整備が進んで渋滞が解消されたら二輪車需要は縮小に向かうのでしょうか?」というご質問です。
野田:確かに可能性としては、そのようなことはありえると思います。しかしながら、私も以前タイに駐在していたことがありますが、公共交通機関の発達は時間がかかっており、交通渋滞は一朝一夕では解消しない印象を持っています。そのような意味で当分は二輪車の利便性は続くと思います。
飯村:私もタイに行った時、都心部の大通りでも非常に多くのバイクが走っているのを見て、他の交通手段に変わる世界は当分先だと思いました。
坂本:公共交通機関の輸送能力がいろいろなところで発達しないと渋滞は解消しないと思います。
野田:もう1つの例として、台湾もオートバイが非常にたくさん走っています。台湾は本当に発展していますが、オートバイが川のように流れる状況が続いているのを見て、利便性は今後も高い乗り物だと思います。
質疑応答:トヨタ自動車との連携について
坂本:「トヨタ自動車株式会社との連携について、今後相互補完が増えますか?」というご質問です。
野田:当社は従来からエンジンの一部について納めている実績があり、この関係は現在も進行中です。最近はエンジンだけでなく車体に付けて乗り味を改善するものなど、取り組みを広げており、トヨタ自動車株式会社の車に採用いただいているパーツも出てきています。また、技術開発という面では四輪の知見をぜひ我々も取り入れたいと思っているため、引き続きこの関係を強化していきたいと思います。
質疑応答:インドにおける二輪車ローカルブランドに対する優位性について
坂本:「インドの二輪車のローカルブランドに対する優位性を教えてください」というご質問です。
野田:インドは非常に強く大きなローカルメーカーがあり、HERO MotorsやBajajなどのブランドが3つから4つあります。そのようなメーカーはどちらかというと普及価格帯のオートバイ・スクーターが得意で、台数も非常にたくさん売っています。
当社はどちらかというとスポーツイメージで、高級車を得意としており、商品構成もYZFシリーズというスポーツタイプがあります。スクーターもASEANで売れている少し高価格帯の商品に注力しており、ブランドイメージもそれなりにあります。そのようなスポーツモデルあるいは中価格帯や高価格帯の商品は、比較的インドのローカルメーカーに対して優位性があると考えています。
質疑応答:マリン事業のプールの技術力について
坂本:「マリン事業の中でもスイミングプールに注目しています。例えば、公立学校に設置されたプールにヤマハのロゴを見かけます。改修工事も御社の技術を活かしているのでしょうか?」というご質問です。
野田:当社はもともとボートを長く手掛けています。このボートはFRP素材を使っており、その技術を活かしてスイミングプールにも参入した経緯があります。FRP製プールの中では、国内ではダントツのマーケットシェアだと思います。オリンピックの練習用プールを手掛けるなど、かなり技術力は高く、ここは隠れた当社の強みが活かせる商品となっています。
坂本:あまり発動機と関係がない分野のため、意外な印象があります。プールはきれいに作るのが大変だと思います。
野田:私どもも最初に手掛けてた際は相当苦労しました。均一に成形し、水が漏れたり傾いたりしないように作っていくのにはけっこうなノウハウが必要です。例えば、25メートルプールはそのまま25メートルのものを作り設置するのではなく、現地で少しずつ、ある大きさの板を成形し、ペタペタと作っていくイメージであり、意外と難しいです。
飯村:9ページのスライドで、プールの上にボートがある写真がありましたが、お話を伺ってそのつながりがわかりました。
質疑応答:総還元性向の予想について
坂本:配当性向についてお伺いします。連結配当性向は30パーセントが目安となっていますが、今期の配当性向は24.1パーセントになっており、自社株買いを加味した今期の総還元性向の予想は31.7パーセントとなっています。
投資家としては自社株買いを勘案した総還元性向は、自社株買いと配当を合わせたものが30パーセントと考えるほうが違和感がないです。自社株買いについて説明いただいたのですが、そこを含めてあらためて教えていただきたいと思います。
野田:当社はスライドに載せているとおり「安定的かつ継続的な配当」ということで、配当性向の目標を30パーセントと置きました。ただし、今年初めて自社株買いを実施したこともあり、今後は総還元性向という言い方で示したほうがよいと考えています。また、その水準もできれば少しずつでも改善していきたいと考えています。ぜひご期待いただきたいと思います。
坂本:自社株買いは初めて行われましたが、確かに自社株買いの還元もあります。
野田:今までは取り組めていませんでしたが、今回をきっかけに今後もオプションとして考えていきたいです。
坂本:こちらのほうが機関投資家受けがよいと思いますが、個人投資家は「配当ください」という方のほうが多い印象があります。
野田:両立して行っていきたいです。
坂本:それはとても機動的でよいと思います。
質疑応答:日本のアウトドアレジャー市場の展望について
坂本:「アウトドアレジャーについて日本は後進国だと思います。市場拡大を予想されていますか?」というご質問です。
私もアウトドアは好きですが、どうしてもキャンプなどに偏ってしまい、御社が得意とされている四輪のバギーなどは国土的に厳しいという印象があります。山は多いのですが、開発規制も厳しく、持ち主が健在していたり異様に急斜面であったりすることもあります。
御社はトップランナーのため、将来的に育てていくかたちにしないと、なかなか日本では欧米のようなアウトドアの品目が増えないと思っています。そのあたりについて、この市場がどうなるかという予測と御社の取り組みを教えてください。
野田:おっしゃるとおり、国土の問題や場所の問題があり、北米のような大平原で乗り回すかたちは正直難しいと思います。ただし、期待しているのはマリン分野です。今日のプレゼンでも「Sea-Style」という会員制のシェアリングを紹介しましたが、こちらはかなり順調に会員数も増えており、申し訳ないのですが、東京では予約が取りにくい状況にもなっています。
このようなシェアリングは比較的ハードルが低く、手頃な価格になっています。当社は全国にマリーナを展開しているため、旅行先で少し乗ってみるなど、とても使い勝手のよい仕組みになっています。このようなところから少しずつマリンレジャーに親しんでいただければよいと期待しています。陸よりは海のアウトドアレジャーのほうが当社としては可能性があると思っています。
坂本:マリンレジャーのほうをまず育成していくのだと思います。シェアリングを行っている方がそこから「買おうかな」という人もいるかもしれません。マリンは駐艇料がけっこう高いのですが、私の周りでも何人かは自分で持っている人がいます。私は車の運転もすごく好きなため、マリンレジャーにもいきたいと思っています。また、釣りを行う方が御社のシェアリングを使われている話もよく聞きます。
飯村:バイクだけと思っていてはいけません。
野田:当社はいろいろなところで楽しんでいただける商品がたくさんあるため、ぜひ楽しんでいただければと思います。
野田氏からのご挨拶
飯村:ご覧になっている方にメッセージがありましたらお願いします。
野田:本日はご清聴いただき誠にありがとうございます。ご紹介したとおり、当社は非常にいろいろな商品を陸海空で展開しています。また、海外にも非常に積極的に展開している会社であるため、世界中で当社の製品をご覧いただけると思っています。ぜひ当社製品を扱っていただいたり、乗っていただいたりして楽しんでいただきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。
飯村:今は「リターンライダー」も非常に増えていますし、ぜひみんなでツーリングした先で船に乗って釣りをしてほしいです。
野田:ぜひお願いしたいです。
飯村:エンジョイしてもらいたいです。みなさま、ぜひホームページもご覧いただければと思います。