バブルは繰り返す

「東京都心のマンションがバブルだ」「人口減少社会で貸家が建ち過ぎていてバブルだ」といった話を耳にします。バブルというと、「オランダでチューリップの球根が現在の貨幣価値にして何千万円にまで値上がりした」といった話に始まって、「平成バブル」で大きな痛手を被った人もいるでしょう。

歴史上、バブルは何度も繰り返して来ました。平成バブル以降でも、米国のITバブル、同じく米国の不動産バブル(リーマンショックの源)がありました。ということは、遠からずバブルが起きる可能性はあるわけで、上記のように東京都心等で既に発生しているのかも知れません。

今回は、バブルが再発した時に巻き込まれて損をしないために注意すべき4条件について考えてみました。

バブルには「合理的バブル」と「惚れ込み型バブル」あり

バブルには、2種類あります。1つはオランダのチューリップ・バブルのように、「誰が見ても今の値段は高すぎるが、明日は今日より値上がりするだろうから、今日買って明日売るのは合理的な行動だ」と強欲な人々が考えて欲の皮を突っ張らせているバブルです。これを経済学では「合理的バブル」と呼んでいます。もっとも、今ではこうしたバブルは見かけません。こうしたバブルが仮に発生したとしても、政府がバブルだと気付くので、直ちにバブルを潰してしまうからです。

したがって、最近のバブルは「惚れ込み型バブル」ということになります。これは、人々が「日本経済は素晴らしいから、日本の土地と株が高いのは当然だ。今までが低すぎたので、今でも低すぎるくらいだから、今のうちに買っておこう」と考えて買い上がって行く、というバブルです。こうしたバブルは、バブルであることに人々が気付いていないので、全く強欲でない普通の人も巻き込まれる場合があります。

実際、日本のバブルの時には、「これ以上地価が上がると、一生自宅が買えずに借家に住む事になる。それは嫌だから家を買おう」と考えて、住宅ローンを借りて自宅を購入した人が大勢います。こうした人々は、決して強欲でバブルに踊ったわけではないのに、結果としてバブル崩壊により巨額の損失を被ったわけです。

しかも、巨額の損失を被ったのが「経済を知らない愚か者」ばかりではなく、政府などで経済運営に携わっていた人の中にも少なからずバブル期に住宅ローンを借りて自宅を購入した人がいた、という事が、問題の深刻さを物語っています。

こうしたバブルは、政府も潰しにかからないので、かなり大きくなる場合があります。政府としては、「確証は無いが、バブルの可能性が高いから、今のうちに潰しておきたい」と考えるかも知れませんが、バブルの時は人々が皆ハッピーなので、政府がバブルを潰そうとすると「これはバブルではない」という大合唱が起きるわけです。政府が「バブルである」ことを証明できない限り、簡単にはバブル潰しには動けないのです。

そうした中で、一般の庶民がバブルに踊らないために、何に注意したら良いかを考えてみました。以下の4条件が揃ったら、「バブルではないかも知れないが、バブルである可能性も高いので、素人は近づかないようにしよう」と考えるようにすれば、大けがは避けられると思います。大もうけのチャンスは逃すことになりかねませんが、そこは安全策を採りたいところです。

条件1:不安な人が増えるが、説得する理屈が登場する

平成バブル時は、「日本経済は世界一、21世紀は日本の時代だから、株価や地価が高いのは当然」とされ、米国ITバブル時は「ITは夢の技術だからIT関連株が高いのは当然」とされ、米国不動産バブル時は「米国は移民流入が多いから不動産需要は旺盛だ」と言われていたのです。こうして、それらしい理屈が説かれる時には、要注意です。

条件2:景気が好調なのに金融が緩和されている

不況期には惚れ込み型バブルは起こりません。好況期には、通常は金融が引き締められるので、惚れ込み型バブルが起きても潰されてしまいます。そこで、惚れ込み型バブルが成長するのは「景気が良いけれども金融が緩和されている時」ということになります。たとえば平成バブル時は、プラザ合意後の円高により物価が安定していたので、金融は緩和されたままでした。

条件3:素人が大量に参入して来たら危険

主婦の井戸端会議で隣の奥さんが株でもうけた話を聞いて来た貴方の奥さんが「私も株を買ってみようかしら」と言い始めたら、御主人は株を売るべきです(笑)。

条件4:部外者との温度差が出て来たら要注意

日本人は「日本株が高いのは当然」と思っていても、外国の人は「最近の日本は何かおかしい」と思っていたようです。つまり、部外者との温度差を意識していれば、バブルの匂いに気付きやすい、という事になります。

上記は到底完全とは言えませんが、読者諸兄がバブルに踊らないための一助となれば幸いです。

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塚崎 公義