2021年12月11日にログミーFinance主催で行われた、第28回 個人投資家向けIRセミナー Zoom ウェビナー 第2部・デクセリアルズ株式会社の講演の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:デクセリアルズ株式会社 経営戦略本部 IR部 統括部長 富田真司 氏
元ファンドマネージャー/元ディーラー 坂本慎太郎(Bコミ) 氏
タレント/ナレーター 飯村美樹 氏

第28回 個人投資家向けIRセミナー

富田真司氏(以下、富田):みなさま、こんにちは。デクセリアルズの富田でございます。本日はご視聴いただき誠にありがとうございます。昨年の12月から「ログミーファイナンス」で会社説明をさせていただくようになり、1年が経ちました。これまで視聴してくださったみなさま、誠にありがとうございます。また、前回の説明は9月でしたが、今回はその後の動向も含めてお話しします。

当社の製品は、普段目にする機会がありませんので、本日は、当社製品が使われる用途などもご紹介いたします。そして、初めてご参加いただく方にも、当社へのご関心を持っていただけるよう、説明してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

株価とEBITDA*の推移

富田:まず初めに、当社が上場した2015年7月以降の株価と、年度ごとのEBITDAの推移です。EBITDAは一般に償却前利益などと呼ばれており、現金の支出を伴わない費用を営業利益に足し戻したものです。当社では、我々の「稼ぐ力」を表す指標としてみなさまにお示ししています。

このEBITDAと、投資家のみなさまの当社への評価である株価は、スライドのグラフのとおり、ほぼリンクしています。特に今回、ご注目いただきたいのは、グラフ右側の、背景に色のついた期間です。デクセリアルズではこの直前、2019年3月から社長を含む経営陣の世代交代を行い、2019年度、つまり2020年3月期からスタートした「中期経営計画2023」に取り組んでいます。

この中期経営計画で立てた戦略に基づき、施策に取り組んだ結果、2年目の2020年度には最終年度の営業利益目標を前倒しで達成することができました。今年5月には中期経営計画のアップデートとして、リフレッシュ版を発表しています。本日は、当社の事業概要とともに、この中期経営計画の現在の進捗についてもご説明します。

どんな会社?①

富田:当社の概要説明です。まず、当社の製品がどのようなシーンで使われるかをご紹介します。オフィスや学校、街の中ではパソコンやプロジェクター、スマートフォン、タブレット、電動スクーター。住まいではテレビや電動工具、コードレス掃除機。自動車ではメーターやカーナビのディスプレイに使われています。そして、医療現場では、そこで働く方々を守るアイシールドなど、当社製品が広く使われています。普段はなかなか目にすることはありませんが、当社の技術・製品は、実はみなさまの暮らしや産業をさまざまな場面で支えています。

製品例:異方性導電膜(ACF)

富田:ここで、主力製品の1つである異方性導電膜についてご紹介します。略称でACFと呼んでいますが、これはディスプレイやセンサーなどに使われる電子材料で、半導体やセンサーモジュールと、基板を導電接続するフィルムです。スマートフォン、タブレット、パソコン、ICカードなどのアプリケーションで使用されています。

スライド右下の写真にあるように、ディスプレイに表示されているような画像は、当社のACFがなければ映し出すことができません。ACFは、液晶、有機ELに関係なく、世界のほぼすべてのフラットパネルディスプレイで使われるデファクトスタンダードの製品で、画像を映し出すために不可欠な材料です。

ACFはほんの一例ですが、当社はこのようにみなさまの身近な製品に欠かせない電子材料・光学材料を提供しています。

どんな会社?②

富田:スライドの上段にお示ししているのが、代表的な主力製品です。当社は世界シェアNo.1のユニークな製品を生み出す、ということにこだわり、事業を展開してきました。こちらに挙げた代表的な3製品の売上の合計は、全体の売上高の約65パーセントを占めています。

下段をご覧ください。当社の設立は1962年です。もともとはソニーの化成品を担当する子会社のソニーケミカルとして設立され、50年以上にわたってユニークな特徴のある製品をいくつも生み出しながら成長を続けてきました。

当社の製品を使ったアプリケーション、最終製品の大半が国外で製造されていることから、海外売上高も全体の6割を超えています。海外拠点も多く、グローバルに事業を展開しています。

どんな会社?③

富田:当社の年間の売上高は約650億円、資本金は160億円程度です。この7月に東京から事業所のある栃木県下野市に本店を移転しています。東証一部に上場しており、時価総額にして2,500億円程度の会社です。

また、来年から始まる東証の新市場区分としてプライム市場を選択し、11月には東京証券取引所に申請する旨も公表しています。

当社の経営理念は「Integrity 誠心誠意・真摯であれ」です。お客さまから信頼されるパートナーとなるべく、何事にも誠心誠意・真摯に向き合うという我々の心のよりどころのような考えとして、社員一人ひとりが大切にしているものです。

企業ビジョン「Value Matters」には、機能性材料メーカーとして、常に新たな価値、お客さまの期待を超える価値や製品を提供する会社でありたいという思いが込められています。

社名の「Dexerials(デクセリアルズ)」は、聞き慣れない言葉だと思います。これは2つの言葉から成る造語で、前半に「巧みな・機敏な」という意味を持つ「Dexterous(デクスタラス)」、後半に「材料・素材」を表わす「Materials(マテリアルズ)」という2つの言葉から成る造語です。

私たちは、お客さまの課題やニーズに対して誠心誠意を尽くして考え、優れた技術開発力に基づいた解決策をスピーディーに提供し、お客さまの期待を超えるような価値・製品を提供する会社でありたい、と考えています。

当社の得意技

富田:そして、お客さまの期待を超えるような価値・製品を提供するためのベースとなるのが、スライド左側にお示ししている当社のビジネスモデルです。

私たちは、化学・素材メーカーから購入した原料で製品を製造し、お客さまに提供します。ディスプレイメーカーや組み立てメーカーなど、当社製品を使われる直接顧客だけでなく、その先の完成品メーカーである最終顧客とも対話し、製品を開発・提案しています。その結果、最終顧客から新製品の量産時に使用する部材に当社製品を指定していただくという流れを作っています。また、直接顧客に対しても、量産の支援やカスタマイズ品、改良品の提供によりお客さまの工場での生産性向上といったメリットや付加価値を提供しています。

特に、最終顧客との対話では、営業担当者だけでなく当社のエンジニアも同行し、顧客がまだ気がつかないような技術課題を見つけ出し、それを解決する製品を開発・提案しています。

坂本慎太郎氏(以下、坂本):御社の特長としては、非常にシェアの大きい高付加価値製品を、独自に開発および販売されているということでした。これは最近、株価のほうにも如実に反映されており、みなさまも認知してきたところだと思います。

独自の技術開発に至るまでには、研究されている方々のアイデアもかなり求められると思いますが、メーカー側の要望なども巻き取らなければならず、当然、ニーズの掘り起こしも必要になってくるのではと思います。

御社から先回りするような提案もおそらく必要で、例えば「こんなものもありますよ」という提案から始めて十分に要望を掘り起こすものと思いますが、開発を行うためのサポートとなる情報をしっかりと受け取れる提案事例のようなものがあれば教えていただけますか?

市場・技術トレンドを先回りした製品開発・採用の例①

富田: 私たちは、営業担当とエンジニアがお客さまのところに行き、お話を聞いて、今抱えている課題などを見つけ、それを解決する製品を開発します。現在は、それだけではなく5年、10年先の将来も見据えて、お客さまに「将来どのようなものを作りたいのですか?」というお話も伺います。

私たちはそれを持ち帰って、今後、技術のトレンドがどう変化し、どのような課題が出てくるのかを検討し、そのようなトレンドの変化の中で、課題を解決しながら自社が優位性を持てる製品は何かを考えて、開発・提案しています。

製品の具体的な例としては、ディスプレイのところで、スマートフォンのフレキシブルOLEDディスプレイがあります。現在、ハイエンドのモデルでの採用が増えていますが、数年前の時点で、このようなディスプレイが増えていくこと、さらにその性能が上がる、つまり画質が上がるということを予想しました。

その際、当社が関わっている、ドライバICを実装する技術的な難易度が上がることが、お客さまの新たな課題になるだろうと考えました。そこで、粒子整列型ACFというものを当社で開発して、実装方法を含めて提案しました。

現在では、このフレキシブルOLEDディスプレイの実装は、当社の粒子整列型ACFでしか対応できないということで、いろいろなお客さまからご評価いただき、各社で採用が進んでいます。現在、フレキシブルOLEDディスプレイのドライバICの実装では、当社の粒子整列型ACFが実質的に世界のデファクトスタンダード製品になっています。

坂本:確かに、このようなものを作りたいと思っても材料が揃っていないと作れません。御社はそこを先回りして開発しているということですね。

富田:そのとおりです。我々が勝手に考えて提供する、提案するということではなく、お客さま、特に完成品メーカーの方々との対話を通じて、将来の方向を的確に見出した中で、我々の技術力を用いて新しいところを開拓していく、このような手法でお客さまに開発品を提案できることが我々の強みだと思っています。

今お話ししたとおり、顧客の現在の課題を解決するだけではなく、将来の社会課題を解決するような、技術トレンドを先回りした製品を開発・提供できることが当社の強みだと考えています。

中期経営計画2023「進化への挑戦」リフレッシュ

富田:続きまして、中期経営計画の現在の進捗状況です。まずは、5月に公表した中期経営計画のアップデート、私たちが「リフレッシュ版」と呼んでいるものについてご説明します。

この中期経営計画を最初に公表したのは、2019年4月でした。その後、みなさまもご存知のとおり、米中貿易摩擦のような地政学的なリスクに加え、世界的なパンデミックの影響で社会は大きく変わってきています。

このような中でも、当社では、新製品の開発や生産性の改善、さらに、会社そのものを変革するための施策に取り組んできた結果、事業の「稼ぐ力」が向上し、EBITDAが拡大しました。スライドの右端にオリジナルの最終年度の目標が記載されていますが、2020年度の営業利益はこれを3年前倒しで達成することができました。

このため、次の成長に向けて、5月に新しい業績目標を設定しました。当初から掲げてきた3つの基本方針は変更していませんが、それに紐づく施策をアップデートしています。本中期経営計画の「リフレッシュ版」では、さらなる成長を実現するとともに、2024年度にスタートする次の中期経営計画において、持続的に成⻑していくための準備もしっかりと行っていきます。

以上が、5月に公表した中期経営計画の見直し版の概要でした。

FY21.1H 連結業績サマリー

富田:そして、この11月には上期の業績を発表しました。5月に公表した先ほどの年間の業績見通しを上回り、上期で過去最高の売上高と利益を更新することができました。その理由について、次のページ以降でご説明します。

FY21.1H 主要最終製品の市場動向(前年同期比)

富田:まず、当社の事業環境について振り返ります。スライドの表は、当社の製品が使われている主要な最終製品の市場動向について、前年同期からの変化を示しています。第2四半期から少し減速感がみられますが、ハイエンドモデルのスマートフォンとノートPCを除いて、上期としては最終製品の需要はほぼ前年同期並みだったのではないかと考えています。

FY21.1H アプリケーション別売上増減*(前年同期比)

富田:スライドのグラフは、上期の売上高をアプリケーション別に分けて、それぞれの前年同期比の動きを示したものです。先ほどお伝えしたとおり、最終製品の市場はほとんど伸びなかった、という状況の中で、それぞれのアプリケーション向けで当社製品の売上は伸びています。

スライド右側に今回の増収要因を、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の拡大による追い風的な好影響と、当社の取り組みに起因するものに分けて、お示ししています。

好影響というのは、COVID-19により巣ごもり需要、在宅需要からノートPCやタブレットといったモバイルIT製品の需要が押し上げられ、当社製品もその恩恵を受けたということでございます。当社の取り組みに起因するものとしては、高付加価値製品による新規案件や新規顧客、新規アプリケーションの獲得、車載領域での増収、そして蛍光体フィルムを含め2019年度以降に量産を開始した新製品の貢献によるものです。

今回の増収の大部分は、先ほどご説明した、お客さまの将来の課題を解決する技術トレンドを先回りして開発した製品の採用拡大がしっかりと業績に結びついて、成果として表れたことによるものであると考えています。

坂本:お客さまのニーズに合わせた製品というところで、新たな柱とも言える製品が蛍光体フィルムだと前回お話しいただいたと思います。こちらの立ち上がりはかなり垂直気味というお話でしたが、その後も堅調が続いているのでしょうか? 今日初めての方もいるため、蛍光体フィルムがどのようなものか、イメージなどを教えていただけたらと思います。

富田:蛍光体フィルムは、今期からタブレットおよびノートPCの液晶ディスプレイのバックライト部分に採用された新製品であり、この上期から急速に立ち上がったものです。具体的にはバックライトの性能を上げ、画質をよくする、薄型化に貢献するなどの機能を持っています。

今後について、タブレット向けは立ち上げが一段落していますので、下期はいったん落ち着くと思っていますが、第2四半期から始まったノートPC向けの量産は、この下期もまだ好調が続くものと考えています。

差異化技術製品の売上高と営業利益

富田:上期業績の説明に戻ります。スライドのグラフは、当社の差異化技術製品の売上高と営業利益の推移を示したものです。製品ごとにみてもしっかりと伸びており、利益を大きく押し上げる要因になっています。

世の中の技術のトレンドを先回りして開発・提案してきた製品が、デファクト化、新規案件や新規顧客の獲得、新製品の導入に結び付き、その結果、この数年間で当社の「稼ぐ力」が着実に上がってきた、と考えています。

坂本:グラフを見ると、ほぼ全製品が伸びている状況にあると思いますが、その中で、反射防止フィルムについてお伺いします。

前回、前々回もお話しいただきましたが、電装化の中でも、ディスプレイの電装化が非常に進んできているということでした。EV車も例外ではなく、車載ディスプレイの加工メーカーも多く存在します。今後はサイドミラーが空気抵抗を抑えるためになくなり、それがカメラに置き換わることで2つ分のモニターが増えるとも以前伺いました。

最近の自動車業界の状況として、半導体不足による落ち込みがあるものの、今後生産の予定は増えてくると思うのですが、現在は引き合いが増えてきているのでしょうか? また、この反射防止フィルムはノートPCと車載ディスプレイ、両方に使われると思うのですが、それぞれの売上の割合なども教えていただけたらと思います。

富田:ご指摘のとおり、当社の反射防止フィルムは自動車のディスプレイやノートPCの最表面に使われています。特に今大きく伸ばしているのは売上構成比で20パーセントを占める車載ディスプレイ向け製品です。前回からお話ししているとおり、EV化が追い風となって自動車の電装化も進んでおり、その流れの中で案件も着実に増えています。

加えて、車載ディスプレイの画面サイズは当初、8インチから9インチくらいのものが多かったのですが、今は横長のものが増えています。これは我々にとって「嬉しい誤算」と言えそうですが、想定外に数量が伸びていく方向にあります。結果として、この上期の反射防止フィルムの売上高は、前年と比較すると、車載向けのものは約80パーセントの増収、ノートPC向けは約20パーセントの増収となっています。

FY21 連結業績見通し:上方修正

富田:プレゼンに戻り、次は通期見通しです。今回、為替の前提レートを含めて下期全体の業績を見直しました。スライドに記載のとおり、通期見通しを7月時点から上方修正しています。売上高および利益は、それぞれ上場来最高を見込んでいます。

配当は中間、期末それぞれ1円ずつ増配して30円ずつの、年間60円に変更しています。ご参考までに、スライド右側の表では、今期に計上する特別損益額約8億円を除いた業績の数値・指標をお示ししています。

FY21 営業利益要因分析(前期比)

富田:また、今期の営業利益を前年と比較しますと、これまで注力してきた差異化技術製品の拡大効果だけではなく、昨年来おこなってきた中計施策の効果もしっかりと出ています。その上で、社員への還元拡充や増産に対応する経費の増加もこなしながら、利益成⻑を図れるようになってきました。

坂本:差異化技術製品の拡大が収益に大きく貢献しているということですが、これは単純に販売数量が増えたのでしょうか? もしくは、御社は独自技術を用いた高付加価値、オンリーワンの製品が多くを占めていますが、そのような製品のマージン増加があったのでしょうか? 背景をお伺いできればと思います。

富田:スライドのグラフで示している差異化技術製品の拡大の部分を、価格と数量とで分けた場合についてご説明します。割合としては数量増加の部分が確かに大きいものの、その一方で、高付加価値製品の増加や新製品の採用拡大、歩留まり向上、また、既存の製品に関しても改良品を出すことにより値段を維持、あるいは一部値段を上げるということができており、これらによるマージン上昇の効果もしっかりと含まれています。

中期経営計画2023「進化への挑戦」リフレッシュ

富田:プレゼンに戻ります。今回修正した2021年度の業績見通しは、5月に公表した中期経営計画最終年度の目標をさらに超える水準となっています。

中期経営計画の基本方針に基づき、強化に取り組んできた差異化技術製品が刈り取り期に入り、最終製品市場の動向に大きく左右されることなく、我々の製品を確実に伸ばしていけるようになってきました。これによりEBITDA創出力も高まりました。

私たちは中期経営計画2023のテーマに「進化への挑戦」を掲げていますが、当社の社員および株主のみなさまへ還元をしながら投資もしっかり行い、成⻑を続けられる企業体質への進化が始まったと考えています。

2023年度末までの残り2年半については、成⻑の目線をもう一段上げた業績成⻑とともに、次の成⻑に向けた仕込みの強化を図り、企業価値向上に向けて取り組んでいきます。

差異化技術製品の供給能力向上により事業成⻑を実現

富田:さらなる業績成長に向け、差異化技術製品の供給能力を拡充し、着実に事業成⻑を実現していきます。

最初に、スライド左側にある「反射防止フィルム」の生産体制増強についてご説明します。先ほどお話したとおり、車載ディスプレイ向けに新規採用が順調に拡大しており、特に画面サイズの大型化が我々の想定以上に進んでいることから、相当大きな需要が前倒しで見えてきました。

そこで、増産投資を1年前倒しで実施することを決定しました。約80億円の投資のうち約50億円で、新製品「HDシリーズ」等の最先端製品を高効率かつ高品質に製造できる設備を導入し、2023年度上期中の量産開始を目指しています。

そして、スライド右側の「表面実装型ヒューズ」ですが、リチウムイオン電池搭載のアプリケーションの広がりとともに、それを安全に使っていただくために当社製品の需要増加が続いていると前回もお話ししましたが、それだけでなく、法規制によりこうした保護回路の搭載を義務化する地域も出てきています。

坂本:海外では「爆発する」という話もたまにあります。

富田:アプリケーションが大型になればなるほど、電圧・電流も大きくなり、それに伴い危険度も高まるため、実際にEUでは「リチウムイオン電池で作動する電動工具には保護回路を必ず入れてください」という法規制が昨年に施行されました。

当社の製品は、リチウムイオン電池の過充電・過電流によるアプリケーションの事故を防ぐためのヒューズとして、特に今お話ししたような大電流向けを業界に先駆けて製品化しており、特許も含め技術的な優位性も有しています。

今回、2ラインの生産設備の約10億円を新規に導入します。来期中に供給能力を2倍に増やし、特に需要の強い大電流向け製品を中心に拡大を図っていきます。

このように、お客さまや需要が見えている、成⻑確度の高い設備投資を行い、当社が優位性を持つ、差異化技術製品の持続的成⻑を図っていきます。

反射防⽌フィルム「ARフィルム HDシリーズ」

坂本:先ほどの「反射防止フィルム」の部分において「HDシリーズ」というワードが出てきたのですが、これはどのようなものでしょうか? また、上位機種というイメージはありますが、競争の優位性について教えてください。

富田:「反射防止フィルム」の新製品「HDシリーズ」についてご説明します。従来より、当社「反射防止フィルム」は、光の反射を抑える機能が高いだけでなく、傷つきにくく、汚れにくい点をお客さまからご評価いただいています。

特に「HDシリーズ」は、傷への耐久性を従来の製品に対し40倍以上も高めた製品になります。これにより、引っ掻きなどへの高い耐久性を求められる自動車内のディスプレイ、最近増えているノートPCのタッチパネルに最適な製品と考えています。

坂本:先ほどの20ページについて、今回は生産設備の強化があったと思います。これは数量増についてのご対応ですが、一方、高品質というお話もありました。主眼はどちらなのでしょうか?

富田:両方になります。今回の「反射防止フィルム」の増産投資は、主に車載ディスプレイ向けの需要増加が我々の想定以上に早くなっているため、前倒しで実施するものです。

そのうえで、特に車載用ディスプレイ向けに「HDシリーズ」の製造に適した製造ラインを導入し、従来のラインより効率よく高い精度で作ることができるようにする予定です。

株主還元・資本政策

富田:プレゼンに戻り、株主還元の考え方について、資本政策とあわせてご説明します。まず、「のれん償却前当期純利益の40パーセントを目処に利益還元」という従来の方針に変更はありません。配当は、安定的な現金配当を維持するという考えのもと、2円増配の年間60円としています。

さらに今回、取得上限30億円を上限とする、自己株式の取得を取締役会で決議、実施しています。

当社は企業価値向上に向けた成⻑投資として、先ほどご説明した差異化技術製品の生産能力増強だけでなく、持続的な会社の成⻑を支える「人財」、「知財」、「環境」「BCP」といった、いわゆる非財務資本といわれる部分の強化も図ります。さらに非連続の成⻑も狙ってあらゆる手段の検討を行っていきたいと考えています。

このような成⻑投資の手段の1つとして、資本政策を機動的に遂行するため自己株式の取得を決定しました。

なお、今回の現金配当と自己株式の取得を合わせ、総還元性向は約46パーセントを見込んでいます。今回修正した業績目標を着実に達成し、持続的な成⻑に向けてこれらの取り組みを実行していきます。

もっとよく知る デクセリアルズ1

富田:プレゼンテーションは以上になりますが、最後に当社のWebサイトについてご紹介します。当社のホームページでは、より詳しく、動画も使いながら、わかりやすい説明を心がけています。IRのサイトでは、個人投資家専用ページも作って皆さまをお待ちしています。

もっとよく知る デクセリアルズ2

富田:また、昨日(2021年12月10日)ですが、直近の財務情報と非財務情報をまとめた「デクセリアルズ統合レポート2021」を当社のサイト上にて公開しています。そして、スライド右側にある「TECH TIMES」において当社の技術や製品をわかりやすくご紹介しています。こちらは以前、坂本さまにもご紹介いただきました。

坂本:私も一通り拝見しました。元々は技術者向けに作られたポータルサイトのようなものです。細かい部分は難しいかもしれませんが、一般の人が見ても「こんなものだ」とわかります。

また、デクセリアルズさまが作っている製品について「こういう使い方ができますよ」「こういうものですよ」と深掘りしており、ワードがわからない部分も細かく説明されています。「こんな使い道があるんだ」といったイメージが湧くと思いますので、ぜひアクセスしてみるとよいのではないかと思います。

富田:我々も新しいコンテンツを続々と掲載しています。投資家のみなさまには業界分析等にもご利用いただきながら、当社の技術や製品へ理解を深めていただければと考えています。是非、一度ご覧ください。

個人投資家のみなさまへ

技術情報ポータルTECH TIMES

持続可能な成⻑を続ける企業へ

富田:最後にまとめとなります。私たちは、社会課題を解決するデジタルテクノロジーの進化を支える、他社にはマネできないような技術やソリューションを提供する存在として、世界から選ばれ続ける企業になりたいと考えています。

そして、社員や株主のみなさまへ利益還元を行いながら、必要な投資を続けることにより、持続的に成⻑できる企業を目指していきます。

世の中には数多くの企業があり、それぞれ独自の考え方、方向性、方針をもって経営しています。我々も投資家・株主のみなさまに対し、このような機会を通じて、デクセリアルズの経営方針や考え方をお伝えしていきます。本日の説明で、当社に少しでもご関心を持っていただければ大変ありがたく思います。引き続き、デクセリアルズをよろしくお願いいたします。

質疑応答:「異方性導電膜」納入時における形状について

坂本:過去の動画や書き起こしを見るとわかりますが、今日は総まとめとなっており、大変わかりやすかったです。私も「ここがわからない」と製品に関する疑問をいただいていたのですが、そこについてかなり理解できたと思います。

ただ細かいところは、やはりBtoBのためわからない部分があります。スライド7ページにある「異方性導電膜」は、半導体やモジュールの接点部分に使われると思いますが、メーカーに納入する際は、リールのまま、もしくはある程度カットして持っていくのか、どのように納入しているのでしょうか?

飯村美樹氏(以下、飯村):形状が気になります。

富田:この製品の構造等もお示ししながらご説明しますが、最終的な形状として、フィルムを細切りにして、それをリールに巻いた状態で納入しています。

スライド左下の画像がわかりやすいのですが、ICチップをガラス基板に接着するところのオレンジ色の部分がフィルム状の接着剤、「ACF」になります。これをICチップと基板の間に挟み、熱で圧着します。お客さまの使用するICチップの幅に合わせて細くカットし、それをリールで巻き取ったかたちで出荷しています。

坂本:切り取り線のようなものがリールに付いているのでしょうか? それともペタペタと1個ずつ貼るのですか?

富田:フィルムは続いているもので、お客さまの工場でICチップの長さに合わせカットされます。

坂本:横幅だけは合わせるということですか?

富田:そのとおりです。この横幅はお客さまが使われるICチップの仕様により異なり、一番細いもので0.5ミリメートルとなります。実に、シャープペンシルの芯と同じ細さですね。フィルムをあの細さにカットしたものをリールに巻き取るわけです。

巻き取った「ACF」をリールから出すと、最長で数百メートルになります。薄いフィルムを0.5mmの幅にカットして一定の力をかけながら数百メートルも巻くのは、かなり難易度の高い工程であり、簡単には真似できないのではないかと考えています。

坂本:リールが大きいと交換しなくてよいですし、機械も止まらないですね。

富田:お客さまにとって効率よく使えるため、ディスプレイを大量に製造されるお客さまからは、長尺のリールを指定されることが多いです。

質疑応答:「反射防止フィルム」の納入時における形状について

坂本:それでは「反射防止フィルム」はいかがですか? 形状は同じようなかたちで、カットして出しているのですか?

富田:「反射防止フィルム」については、工場でロール状のベースフィルムに反射防止加工を施しています。それを検査し、問題ないものをお客さまにロール状のままでお渡しし、お客さまのところで必要なサイズにカットし使っていただいています。

飯村:ラップのような形状になっているということでしょうか?

富田:そうですね。ロールの幅は1メートルを超え、長さも1キロメートルをゆうに超えますので、かなり大きなラップだと思ってください。

質疑応答:今後の継続的な大型投資計画について

飯村:チャットでもご質問をいただいています。「先ほどの『反射防止フィルム』投資80億円と大きなものとなっておりますが、今後も継続的な大型投資は計画されていますか?」とのことです。

富田:反射防止フィルムについては、現在私たちは車載ディスプレイに注力しているとお話ししていますが、まだまだ自動車ではアナログメーターのものが多くあります。これがどんどん電子ディスプレイに変わるだけでなく、ミラーも電子化されていくだろうとみています。

そうなると、我々の「反射防止フィルム」が求められる機会がさらに増えていくため、お客さまの需要を見ながら必要なタイミングで必要な投資をしっかりと行い、チャンスは確実に取り込んでいきたいと考えています。

質疑応答:日本市場におけるEV普及の見込みと海外との比較について

坂本:「日本市場にEVが普及する見込みについて、追い風になる部分、逆風になる要素を伺いたい」とのご質問です。

「追い風」は補助金等かと思います。メーカーですらなかなか難しそうな質問ですが、イメージがあればぜひ教えてください。また「日本より海外のほうが伸びますよ」といったことも、あわせて教えていただけたらと思います。

富田:自動車の電装化を後押しするものとして、EVの普及は、さらなる追い風になることは間違いないと思っています。

「国ごとに見たらどうでしょうか?」という部分については、海外の方が一歩進んでいることは、みなさまもご存知のとおりです。

ただし、日本政府も2050年までにCO2排出量を実質ゼロにすることを目標に掲げていますので、日本においてもEV普及の流れは間違いないと考えています。もちろん、そのためのインフラ整備等、いくつかはハードルになるかもしれません。しかし、大きな流れでは、EVは必ずこれから大きく普及していき、当社の追い風になるだろうと考えています。

坂本:東京都においても補助金の噂があり、実施すればテスラが300万円台になるのではないかといった話も出ており、実現すればかなり増えると思われます。御社にとってはパネルの量の関係も含めると、おそらくガソリン車よりEVのほうが儲かるのではないかと思います。

富田:ただし、今のガソリン車も電装化がどんどん進んでおり、ディスプレイだけでなく、車内に使われる半導体も多くなってきています。そのため、今、半導体不足の影響により車が作れないという話が出ているかと思いますが、半導体不足が解消に向かえば再び電装化も加速するだろうとみています。

質疑応答:SDGsの取り組みについて

飯村:そのような中でSDGsの取り組みについてはいかがでしょうか?

富田:こちらは当社が5月に公表した「中期経営計画リフレッシュ」の資料になります。我々も、メーカーとして色々なかたちでSDGsへ貢献し、社会、地球をよりよくしていきたいと考えています。

例えば、スライド右上にある「環境への取り組み」において、2030年までに「事業由来の電力消費によるCO2排出ゼロを目指す」という目標を今回新たに設定しました。

従来、2030年のCO2排出量目標として、2013年度比半減を目指していましたが、この目標の前倒し達成が視野に入ってきました。そのため、今回、もう一歩進めて、我々の使用している電力の大部分を占める事業に由来する電力消費によるCO2排出量ゼロを目指すと宣言しています。

スライド上段中央は働き方改革に関する部分です。COVID-19の拡大を受け2020年から国内の事業所および海外拠点のリモートワークを実施し、さらに今年4月からは、国内の全事業所においてリモートワークを制度化しました。このような取り組みが評価され、総務省が公表している「令和3年度『テレワーク先駆者百選』」にも選ばれました。

質疑応答:中期経営計画のアップデートの有無とその時期について

坂本:19ページの中期経営計画についてお伺いします。5月に中期経営計画をリフレッシュされましたが、すでに現状において2023年分も達成できそうな、むしろ達成しているではないかという進捗になっています。そこで、再リフレッシュはいつあるのでしょうか? 昨年のパターンでは5月かと考えられます。決まっていない部分もあるかと思われますが、1点目としてその時期を伺いたいです。

また、5月にリフレッシュされた段階は「いけるのではないか」という考えがあったのでしょうか? チャレンジングだったのか、保守的だったのかということで、まだ中期経営計画期間中ですが、すでに達成されているため、簡単な総括もお願いします。

富田:5月における中期経営計画のアップデート版では、実現確度の高いものを中心に計画に織り込んでいました。一方、これまで取り組んできた、技術のトレンドを先回りして開発した製品の販売が、予想以上に進んだと思っています。

そして、この先についてですが、現在は、まず来期の業績を中心に精査を進め、来年の春にみなさまにご説明する予定です。現行の中期経営計画の扱いについても、あらためて来年の春にご説明させていただきます。

坂本:ぜひ、またお聞かせ願いたいと思います。

質疑応答:M&Aの構想について

坂本:M&Aは御社のビジネスモデル的に意味があり、最近は利益のパターンや設備投資額を考えると、実施できると思います。かなり大きい話になりますが、そのあたりのイメージがあれば教えて下さい。独立独歩で進んでいくのか、それとも「このような分野があれば検討したい」といったイメージで構いませんので、教えていただきたいです。

富田:この中期経営計画が始まった2019年に、経営陣の新たな方針として、もう自前主義にこだわらず、必要なものはどんどん外から獲得し必要なリソースをもって成長に挑もう、という考えで進めています。

すでに、オープンイノベーションやアライアンスは進めていますが、これから5年、10年先を見た時、我々がこのまましっかりと成長を続けるためにどうしたらよいか、現在社内で議論しています。

そのような中で「この領域に事業を展開したい」もしくは「このような技術を持ちたい」といった時に、自前でスピーディーに立ち上げることができないのであれば、選択肢としてM&Aも排除せず、必要であればきちんと取り組んでいきたいと考えています。

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