2017年1月27日現在、過去一年間でロシア株式は大幅に上昇しています。今後のロシア株式市場見通し、米国のトランプ新政権の誕生とロシア経済への影響について、HSBC投信ファンドマネージャーであるダグラス・ヘルファーに話を聞きました。
ーロシア株式市場は2016年に大幅上昇となりましたが、その背景に何があるのでしょうか?
理由は、主に2つあります。
1つ目は原油価格の回復です。原油価格の動向は、産油国であるロシア経済を大きく左右します。また、ロシア株式市場は、エネルギーセクターの構成比率が非常に高くなっています。最近では、石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアを含む非加盟主要国が減産に合意し、原油価格が一段高となったことが、ロシア株式市場を押し上げています(図表1参照)。
2つ目は、通貨ルーブルの上昇です。2016年には、ルーブルは対米ドルで約20%上昇しており、これがインフレ抑制に繋がったことも、ロシア株式市場の投資環境改善に繋がりました。
-米国大統領選挙でのトランプ氏勝利は、ロシア 経済にどのような影響を及ぼすと考えますか?
トランプ新政権は、保護貿易主義的な政策を打ち出すと公言していることから、米国への輸出比率が高い一部の新興国経済には大きな打撃を与える恐れがあります(但しロシアの対米輸出比率は相対的に低い)。
一方、新政権下でインフラ投資拡大、減税、規制緩和などが実現した場合には、商品価格が上昇する可能性が高く、ひいてはロシア経済にプラスに働くと見られます。
もう1つ特筆すべき点として、米露関係が改善した場合に、ウクライナ問題を巡る対露制裁が解除される可能性が考えられます。米国は制裁の一環として2014年以降、ロシア企業による米国株式市場での資金調達の禁止や資産凍結などの制裁を課しています。
現時点で制裁措置の行方を判断することは時期尚早ですが、解除または緩和された場合には、ロシア金融市場への資金流入、通貨ルーブルの上昇、ロシア企業の資金調達コスト減などが期待でき、これらはロシア株式市場にプラスに働くと考えます。
ー2017年のロシア株式市場の見通しを教えてください。
ロシア経済は、過去2年間に亘りマイナス成長が続いてきましたが、ここにきて底入れの兆しが表れています。足元では、製造業購買担当者指数(PMI)が上向いており、実質国内総生産(GDP)成長率は2016年を底に、2017年は+1.0~1.5%程度のプラスに転じると予想されています(図表2参照)。
また、インフレ率については、2015年のピーク(約16%)から2016年12月は約5%へと低下傾向を辿っています。こうした中、ロシア中央銀行は2016年に2回の利下げを実施しており、2017年も1.5~2.0%程度の利下げ余地が生じると予想されています。金融緩和の継続は、引き続きロシア経済を下支えすると見込まれます。
さらに、直近の経常収支は、原油価格上昇を背景に黒字を維持しています。そのため、ロシアルーブルは、米国の財政出動観測に伴う米ドル高などの外部要因に対して耐性があると見ています。
ロシア株式のバリュエーションは他の新興国と比べて相対的に割安な水準にあります。政治イベントなどには引き続き留意が必要ですが、2017年のロシア株式は、妙味のある投資機会を提供すると考えます(図表3参照)。