鉄鋼業と化学工業で産業の二酸化炭素排出量の半分以上を占める

この内訳をみると、鉄鋼業と化学工業で半分以上を占め、その製造プロセスから致し方ないという印象、果たしてこのプロセスを電化できるのか、また生産工程上避けられない二酸化炭素の排出をCCS(Carbon dioxide Capture and Storage)などで対応できるのかといった疑問が出てくる。

この点に関して、同閣議決定のレポートでもすでに把握しており、以下のようにコメントしている。

高温の熱利用や還元反応などの化学反応によって発生する大量の二酸化炭素排出の存在である。金属や化学、セメント産業をはじめとする多排出産業の多くは、数百~1千℃を超える高温の熱利用が必要である。そのエネルギー源となっている化石燃料は多くの場合、経済的・熱量的・構造的な理由によって容易に二酸化炭素フリー電力等によって置き換えられない。さらに、還元などの化学反応については、既存の工業プロセスを前提とする限り、原理的に二酸化炭素の発生は避けることができない。

よほどの技術革新がない限り、日本国内での生産量を大きく引き下げるといった状況という、あまり考えたくないシナリオなしでは、大きくは二酸化炭素排出量を引き下げるということが難しいというメッセージがうかがえる。

また、同閣議決定レポートは続く議論も先読みする形で、この製造を国内から海外に移した際のケースも次のように想定している。

輸出入を通じた海外との取引が可能であるため、国内で生産の減少とそれに伴う温室効果ガス排出量の減少が生じても、その分の生産を他国に移転すれば、そこでの生産とそれに伴う排出を増加させることとなり、地球規模での根本的な課題解決に資さず、むしろ国内で一層効果的な排出削減を図りながら生産を継続した方が有効である可能性もあるという点についても留意が必要である。

繰り返しになるが、生産量を仮に一定にしながら二酸化炭素排出量を削減しようとすると、生産プロセスの変更やCCSの展開が必要となる。ただ、こうした施策も直接的な二酸化炭素排出量を減らすことはできても、それらを維持するための電力が必要で、その電力の電源は何かというループに陥ってしまう。