2021年10月27日に行われた、サイバートラスト株式会社 2022年3月期第2四半期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:サイバートラスト株式会社 代表取締役社長 眞柄泰利 氏
2022年3月期第2四半期決算説明会
眞柄泰利氏:サイバートラスト株式会社、代表取締役の眞柄でございます。本日はオンラインという形式ではございますが、第2四半期の決算説明会にご参加たまわりまして、誠にありがとうございます。
本日は、昨日、私ども並びに東証のサイトで開示した資料を用いて、四半期の業績概要、通期の業績予想、そして私どもの現在の成長戦略についてご説明します。
2022年3月期 第2四半期 連結業績(6か月累計)
はじめに、第2四半期の業績概要です。スライドに記載の数字は上半期の累計です。売上高、営業利益、経常利益、純利益、EBITDAのいずれも前年同期比で2桁、あるいはそれ以上の成長となりました。
売上高は前年同期比で18パーセント増、営業利益は前年同期比で45パーセント増という結果となりました。
サービス別売上高(6か月累計)
ビジネスの中身についてです。以前、「私どもの事業は大きく分けて3つある」とご説明しました。その3つの事業のいずれも、前年同期比で成長しています。
サービスの中身を少しだけご説明します。まず、認証・セキュリティサービスについてです。コロナ禍の中でテレワークあるいはDX(デジタル・トランスフォーメーション)の浸透が加速しています。
そのため、電子証明書を使った端末の認証、マイナンバーでの本人確認、電子署名による契約書の締結などのニーズが非常に旺盛でした。引き続き需要はありますが、こちらを的確に捉えた半年だったと認識しています。
Linux/OSSについては業界に変化がありました。「CentOS」という非常に多くのお客さまが使用しているLinuxOSについて、昨年12月から1年以内にサポートがなくなるというアナウンスがありました。
私どもは、我々の技術力、サポートの能力、経験を活かして昨年12月のうちに「CentOSを使われている方は、我々が延長サポートを引き受けます」という対応を迅速に行いましたところ、延長サポートの案件が現在も非常に大きく伸びています。
また、自社OSのLinuxを開発、キッティングする能力があるため、先月にこちらを無償で配布することとしました。「将来に向けたサポートを取り込む」という目論見があり、そのような施策も打っているところです。後ほど、成長戦略のところで詳しくご説明します。
IoTについては、新型コロナウイルスの影響を直接受けました。先般も「Apple社が減産する」というアナウンスがありましたが、市場での半導体の供給不足によって、特に製造業では生産調整を行っています。これにより、受託関係のビジネスが苦戦しました。
ただし、IoTについては従前、「リカーリングサービスでこの成長を担うんだ」とお伝えしたとおり、「EM Linux」「SIOTP(セキュアIoTプラットフォーム)」というリカーリングサービスの導入につながる「国際基準に照らし合わせたモノづくりはどんなものか」というコンサルティングの案件で挽回し、前年同期比で9.5パーセントの成長となりました。
いずれにしても、新型コロナウイルスによる明暗、あるいは業界の変化に適応させたことで、この6ヶ月累計はすべての事業で前年同期を上回る結果となりました。
サービス提供分類別売上高(6か月累計)
リカーリングの中身を少しご説明します。まず、プロフェッショナルサービスは受託サービスになり、コンサルティングもこれに含まれます。ライセンスはOSのライセンス販売などが該当します。
リカーリングサービスは、デバイスID、「iTrust」による認証、あるいはOSの保守が該当しますが、このような区分けを行い、その成長の具合を見ています。私どもとしては、このリカーリングサービスを伸ばすことによって安定成長を目指すことに重点を置いています。
このリカーリングサービスが、前年同期比で25.1パーセント増となりました。こちらについては、認証・セキュリティ、Linux/OSSともに、先ほどお伝えしたサポートも含めてデジタルトランスフォーメーションの流れに乗りました。セキュリティ商材、認証商材、サービスがリカーリング売上として計上された結果、前年同期比25.1パーセントの伸びとなりました。
IoTについては先ほどお伝えしたとおり、リカーリングを数年かけて3割くらいの割合に持っていきたいという目論見があるのですが、現在は新型コロナウイルスの影響を受け、リカーリングサービスにつながるコンサルティングが増えました。
スライドの棒グラフに記載のプロフェッショナルサービスの伸びの要因となっています。詳しくは、後ほどご説明します。
サービス別概況 (1)認証・セキュリティサービス①
3事業について、それぞれのポイントをご説明します。「デバイスID」「iTrust」「SureServer」が認証・セキュリティサービスの根幹となっているビジネスです。
「デバイスID」については先ほどお伝えしたとおり、リモートアクセス、テレワーク、DXなどいろいろな言葉がありますが、その流れに乗り、引き続き力強く成長しています。リカーリングサービスの増加に寄与しているところです。
「iTrust」についてです。私どもは「iTrust」というブランドで2種類のサービスをまとめて提供しています。マイナンバーカードを使って本人確認を行ったり、電子契約書のサービスの中に組み込んでいただき、その契約書が電子的に法に則った原本だと真正性を証明するサービスです。
こちらもリカーリングサービスとしてトランザクションが増え、伸びているところです。リカーリングサービスの伸び率は前年同期比で約14パーセントとなりました。
一方で、年間10億円弱のビジネスとなっているサーバー証明書については、昨年のちょうど今頃に業界規制があり、販売の形態を一部変更する必要が出てきました。
その後、約1年間影響を受けています。新型コロナウイルスの中でテレワークを推進したことにより対面での営業ができず、目論んでいた新規顧客獲得による成長が難しい上半期だったと思います。
ただし、私どもは新しいライセンス形態を提供させていただきました。スライドに記載の「マルチドメイン」「ワイルドカード」についてはAPPENDIXで用語解説が出ていますので、ぜひ後ほどご覧ください。
減収の影響は限定的です。下半期については業界規制の影響がなくなるため、期初に描いていた目論見で成長していくと理解しています。
サービス別概況 (1)認証・セキュリティサービス②
スライドのグラフは、認証・セキュリティサービスの中のリカーリングビジネスに占めるそれぞれの商材の割合を半期ごとに示したものです。
「デバイスID」は順調に事業の柱となりました。2年ほど前まではリカーリングサービスの半分くらいを占めていた「SureServer」というサーバー証明書を、近々抜きそうな伸びを示しています。
「iTrust」は昨年から本格的にスタートしましたが、非常に堅調に伸びています。こちらは後ほどご説明しますが、成長戦略によって多くのパートナーと一緒に市場拡大、獲得を進めている最中です。
サービス別概況 (2) Linux/OSSサービス
Linux/OSSのサービスです。「CentOS」が昨年12月末から1年以内にメンテナンスが終わるということで、迅速に市場の変化を捉えて我々が延長サポートを行っています。
また、自社のLinuxを投入しましたが、CentOSの延長サポートからつながるサービスを将来考えています。こちらは後ほど成長戦略でご説明します。
もう1つの「MIRACLE ZBX」は、システムが動いているかをモニタリングするサービスです。「CentOS」のサポート延長切れとともにシステムを変更する事情も含め、こちらも堅調に伸びました。
これらの伸長具合について、実は我々も期初の予算では予測できていませんでしたが、前年同期比で7割弱ほどリカーリングサービスが伸びました。来年度以降もこれを一気に成長させるべく、現在取り組んでいるところです。
サービス別概況 (3) IoTサービス
IoTサービスは、先ほどよりお伝えしている半導体不足で、製造業のお客さまの開発スケジュールの見直しや修正、凍結等々の影響で、非常に苦戦しました。
他方で、将来につながるグローバル企業の製造業、あるいは「NISCの定める重要インフラ14分野」に含まれる製造業などのお客さまのほうから、「利用あるいは開発している機器が、国際安全基準に適合しているかどうかをチェックしてほしい」というコンサルティングの依頼が非常に増加しました。
我々はこれを踏まえて半年を振り返り、1年、2年という若干の遅れはあるものの、今後数年以内にIoTサービスのリカーリング率も高めていけるのではないかと認識しました。
2022年3月期 通期業績見通し
半年の業績を踏まえて、通期業績を変更しました。スライド上に青く示しているものが修正後の数字です。期初からの増減額や増減率は右側の2列に記載しています。縦列は上から売上高、営業利益、経常利益、純利益として、それぞれ修正後の数字を記載しています。
スライド右側の期初予想比では、売上高がプラス2.9パーセント、営業利益がプラス15.9パーセントとなっています。これについては受託系のビジネスは利益率が低いものとなっており、その流れは続くものと見ています。
一方、現在我々がフォーカスしているリカーリングサービスは伸長すると考えています。リカーリングサービスは利益率が高いビジネスのため、売上高に対して営業利益が上回るという読みをしています。
なお、2020年度の経常利益7億1,500万円の中には経済産業省からの助成金の事業利益が1億2,900万円と非常に大きな割合を占めています。そのため、我々内部の評価としては、他の指標どおり前年比で伸長していると理解しています。
認証・セキュリティサービス - 成長戦略
成長戦略についてご説明します。それぞれの3事業部門において提供している商材、認証・セキュリティサービスは、すべて「素材」です。我々がサービス全体を開発して、お客さまあるいはパートナーに届けているわけではなく、コンポーネントとして提供しており、かつ非常にコアな部分を担っています。
「デバイスID」や電子署名・本人確認の「iTrust」についても、スライド右下にあるとおり、Value-Added-Reseller、VARと呼ばれるパートナーとの協業で、お客さまにサービスとして提供しています。
パートナー方々がいろいろな業種、業態の顧客にリーチすることで、我々のビジネスをスケールさせていこうと考えており、こちらは順調に進んでいます。スライド右側に社名の記載がありますが、上半期の実績としてさまざまなパートナーとのお付き合いも始まりました。IIJさま、ネオキャリアさま、アイテック阪急阪神さまをはじめ、順調に増えており、ビジネスもそれに併せて伸びています。
これらのパートナーとの連携により、引き続き成長を加速させていきます。それぞれの得意分野の業種業態にパートナー経由でリーチし、我々のサービスをお届けするということです。
デバイスIDのパートナー企業との連携強化
デバイスIDのパートナー企業との連携強化についてです。エンタープライズ領域については、企業規模で考えた場合、中小企業への浸透がまだまだ可能であり、デバイスIDもさらに伸びていくと認識しています。
文教領域では「GIGAスクール」が始まりました。生徒向けのものは無償提供のレベルだと思いますが、今後は教職員向けのビジネスが立ち上がっていきます。こちらでも生徒向け同様、HENNGEさま等々と連携して、厳密に端末を認証して使っていただく環境をお届けしたいと考えています。
また、エンタープライズ領域ではKDDIさま、HENNGEさま、IIJさまと連携して、我々の提供するデバイス認証サービスの成長を継続させていきたいと考えています。
iTrustのパートナー企業との連携強化
「iTrust」のパートナー企業との連携です。先ほどお伝えしたとおり、「iTrust」は2つの大きなサービス、言わばコンポーネントで成り立っています。1つはオンライン上で本人を確認するもの、もう1つは電子契約等々で電子署名を行うものです。
上半期は、こちらもアイテック阪急阪神さま、TRUSTDOCKさま、ネオキャリアさまをはじめ、新しくパートナーとなった方々との協業を通じて、スライドに記載しているとおり、銀行の口座開設、スマート決済等々のサービスを提供していきます。
今後は、さまざまな業種業態においてオンラインで導入され、非対面でいろいろなビジネスが行われるトランザクションが発生するところに、我々のサービスを提供していきたいと考えています。
引き続き成長していく中で、現在は新規パートナーも含め数多くの引き合いをいただいており、今後も的確に対応していきたいと考えています。
Linux/OSSサービスの成長戦略
Linux/OSSサービスです。「CentOS」のサポートが終わったことにより、我々にとっては特需の状況になっています。アクションとしては、まず今期中は継続サービスとして、既存の「CentOS」を使っているお客さまが安心してその仕組みを使い続けられるサービスを提供していきます。
Linuxをキッティングできる国内ベンダーとして、自社製品である「MIRACLE LINUX」の無償提供も始めました。数年以内に移行していただきたいという目論見のもと、今回は無償提供という施策を始めています。
パートナー企業としては、以前からSBテクノロジーさま、NECさま、日本電気さま等と連携していましたが、この半年で新たにさくらインターネットさま、IDCフロンティアさま等が加わりました。パートナー企業とMIRACLE LINUXへの移行を数年以内に広げて、継続してお客さまに我々のサービスを安心して受けていただく仕組み作りを行っているところです。
このサービスについては、OSSのコミュニティと連携して、長期的なサポートをお約束しています。我々は日本のお客さまに向けて、長期にわたり安心できるメンテナンスサービスを提供できるということです。
「MIRACLE ZBX」についてです。今回のCentOSサポート終了は、業界に非常に大きな変化や問題を投げかけた出来事で、これによりシステム監視やセキュリティに関する需要が高まるものと考えています。スライドにあるように、我々は伊藤忠テクノソリューションズさま等と一緒に「MIRACLE ZBX」を展開し、我々の市場を拡大していきたいと考えているところです。
CentOSからMIRACLE LINUXへの移行推進
自社のOSについて少しご説明します。スライドの図は、時系列が左から右へ進んでいます。「CentOS」のサポート終了がきっかけとなり、迅速にアクションを起こしてサービスを提供してきたことはこれまでにご説明したとおりです。
こちらでお伝えしたいのは、国内はもとよりアジアを中心とした海外の市場で、長期にわたって質の高いサービスを求めているお客さまにも、このサービスを提供していきたいということです。
MIRACLE ZBXの成長加速
「MIRACLE ZBX」は、「CentOS」のサポート終了によってお客さまが困っているところに対してのソリューション、あるいはサービスとなります。死活監視、あるいはセキュリティ対策に向けた脆弱性の管理など、機能を拡張していきます。
このようなところで我々のお客さまやパートナーの支援を得て、今期の上半期は複数の通信キャリアへの大型案件を獲得しており、大手の電気メーカーでも長期のサポート案件を獲得しています。
今後もこのようなところからの横展開が始まるということで、「MIRACLE ZBX」の成長については力を入れています。先ほどの自社のOSとともに力を入れて成長させていきたいと考えているところです。
IoTサービスの成長戦略
IoTサービスは、現在は組込受託開発がメインの事業部門です。したがって、利益率も低く、人工商売(にんくしょうばい)となっています。こちらを質的に変えていくため、他の2つの事業部門と同様にリカーリング率を数年で3割程度に上げたいと考えているところです。
新型コロナウイルスの影響で当初描いていたプランからは若干遅れていますが、そのつなぎとなり得るセキュリティコンサルティングの需要は非常に旺盛です。
グローバルでビジネスを展開している企業や、米国市場を睨んでモノづくりやサービスを提供している企業からコンサルティングの依頼があります。このコンサルティングでは、「国際安全基準の『SP800』『IEC62443』などに自社製品が適合しているかチェックをしてほしい」という依頼が増えています。依頼される方は、適合していないと米国市場にアクセスしにくくなると理解しています。
私どもが提供している「EMLinux」という開発環境をベースに、運用段階において基準に則ってライフサイクルマネジメントを行う「SIOTP」は、先般に一般社団法人から国際基準適合評価をいただきました。
これにより、私どもが目指しているところは国際基準に照らし合わせたモノづくりのコンサルティング、あるいはそれに基づいたサービス、開発環境の提供ということになります。
今の需要の状況から考えると、当初のプランからは若干の遅れがありますが、半導体不足が解消されたらもとどおりになっていくのではないかと考えています。
IoT分野でのセキュリティコンサルのニーズ
IoT分野でのセキュリティコンサルティングのニーズについてです。先ほどお伝えしたとおり、基準としてもおそらく策定されている、あるいはその途上にありますが、『SP800』『IEC62443』については多くの方が注目しており、米国の調達基準にもなっています。
この3月には、ガイドラインを守るという動きでアメリカ商務省が引き受けているため、こちらについては今後、国防や政府機関以外の民事にも転用されていくのではないかと理解しているところです。
いずれにしても、このコンサルティングについては理解していないとできないものです。他社との差別化要因としては、このようなセキュリティの適合等に関するコンサルの経験や知見を持っているところだと考えています。これらをフルに活用して、今後の成長につなげていきたいと考えています。
パートナーシップによるIoT事業の展開
パートナーシップについてです。我々は認証・セキュリティとLinux/OSSの会社であり、サービスやデバイスの開発そのものは手がけられません。例えば、国際安全基準の中には「使用開始時は半導体の中に電子鍵を組み込みなさい」「使用期間が終わったら、その電子鍵を失効させなさい」という旨の記載があります。
それは我々の認証の技術でできるのですが、このようなものを一緒に作る半導体メーカーが非常に重要になってきます。スライドの左側に記載のあるルネサンスエレクトロニクスさま、quadric.ioさまについてはすでに共同でアナウンスを行いましたが、この上半期で新たに、台湾発のメーカーであるヌヴォトンテクノロジージャパンさまとの提携が決まりました。これにより、製造業をはじめとするモノづくりに関わるみなさまへの半導体のオプションが増えるということになります。
サービス提供に関しては、先ほどリカーリングのお話でお伝えしたように、今後はクラウドでさまざまなデバイスを、モニタリングや監視、あるいはデバイスのファームへアップデートすることになります。こちらについては、SBテクノロジーさまや日本電気さま等々とパートナーシップを組んでいきます。
我々はどのようなターゲットにリーチしているのかということについて、「NISCの定める重要インフラ14分野」というものが定義されています。そこに含まれる分野に加えて、自動車メーカー、建設・建機、「スマートシティ」と言われている分野、産業機器のほうにもアプローチをしています。こちらを通じて、将来の成長を見込むリカーリングサービスにフォーカスして、我々がパートナーのみなさまと一緒に成長していこうという考えです。
スライド右側に上半期の進捗を記載しています。ヘルスケアサービスの領域で、「SIOTP」の商用運用がいよいよ今期からスタートしました。大手ゼネコンのスマートビル向けの商用案件、車載機器関連については、実証実験のレベルですが獲得しました。他、今後につながるビジネスを上半期で対応しました。
眞柄氏からのご挨拶
今回の決算説明会はオンライン形式で開催させていただきました。今後も、我々は成長を目指して取り組んでまいります。本日は決算説明会にご参加いただきまして、誠にありがとうございました。引き続きよろしくお願い申し上げます。