自賠責保険料が2008年以来9年ぶりに引き下げ

金融庁の保険審議会は2017年1月19日、自動車や二輪車を保有する人が加入を義務付けられている自動車損害賠償責任(自賠責)保険について、2017年4月からの保険料を、すべての車種の平均で6.9%引き下げることを決めました。

自賠責の保険料の引き下げは2008年以来9年ぶりです。自家用車の場合、2,010円下がって2万5,830円になり、軽自動車は1,300円下がって2万5,070円になります(いずれも2年契約、沖縄・離島を除く)。

自賠責保険は事故で重い障害が残った場合に、最高4,000万円、死亡した場合には最高3,000万円の保険金が支払われます。自賠責の保険料は、収入と支出(保険金の支払い)などを考慮して、毎年決まります。

損害保険会社は、自賠責で利益を生み出すことは禁じられています。このため、余った保険料は業界共通の積立金として蓄積されます。おおざっぱに言えば、積立金がなくなると保険料が上がり、余ると保険料が下がります。

最近では、2008年度に、それまで積み上げてきた剰余金を還元するために平均24%の大幅引き下げが行われました。しかし、その後は赤字が続き、11年、13年には引き上げられました。その後、据え置きが続いていましたが、17年度からは逆に引き下げられることになりました。

ちなみに、自賠責だけでなく、任意で入る自動車保険の保険料についても、2018年から下がる見通しです。損害保険各社でつくる損害保険料率算出機構は、基準となる料率を最大1割程度下げることを検討しています。実際に料率が下げられれば14年ぶりになります。

自動安全ブレーキなど、運転支援技術の普及により事故が減少

自賠責保険料や任意の自動車保険料が引き下げられている理由は、保険収支が改善されていることですが、その要因となっているのが自動安全ブレーキなど、運転支援技術の普及により事故が減っていることです。

運転支援技術市場をリードする存在なのが、運転支援システム「アイサイト」を開発した富士重工業(7270)です。公益財団法人・交通事故総合分析センター(ITARDA)のデータを基に同社が算出した結果によると、アイサイト(ver.2)搭載車は、非搭載車と比較し、追突事故発生率は約84%減、歩行者事故発生率は約49%減となることがわかったそうです。

同社は16年11月、「アイサイト」搭載モデルの世界累計販売台数が100万台を達成したと発表しました。08年5月に日本で発売して以来、8年7か月での達成となります。特に、米国での販売が好調で、2018年3月期は、9年連続で米国の自動車販売が過去最高を更新する見通しです。

センシング技術などでは日本企業が優位性を発揮できる

先進運転支援システム(ADAS)は、自動運転や電気自動車(EV)などとも関連し、有望なマーケットです。チャンスも大きいことから、自動車メーカーはもとより、デンソー(6902)などの大手部品メーカー、車載マイコン大手のルネサスエレクトロニクス(6723)などもADASに力を入れています。

センサーやカメラなどもADASには欠かせません。ソニー(6758)、パイオニア(6773)、クラリオン(6796)、アルパイン(6816)のほか、レンズメーカーのタムロン(7740)などが、画像、音声、振動など、さまざまなセンシング技術を生かして、ADAS市場に参入しています。半導体商社の萩原電気(7467)も、自動運転やADAS関連銘柄として名前が挙がっています。

自動車販売会社の業界団体が1月5日に発表した2016年の新車販売台数は、15年比で1.5%減の497万260台となり、5年ぶりに大台の500万台を割り込みました。国内市場は成熟気味ですが、ADASや自動運転などの領域では、日本の自動車メーカーや部品メーカーが競争力を発揮できる場も多いと考えられます。期待したいところです。

 

下原 一晃