今回は、起業を志したことのある人なら一度は聞いたことのある金融機関「日本政策金融公庫」について取り上げます。スタートアップ時期の経営では、何かと頼りになる存在です。どんな金融機関なのか、あらためて確認しておきましょう。
1.日本政府が100%出資する株式会社
日本政策金融公庫(以下、日本公庫)は株式会社です。ただし一般にある営利を求める株式会社と違い、日本政府が100%出資する株式会社です。
政府が株主の会社ですから、国の政策目的である、中小企業や小規模企業、農林水産業などの経営の成長・安定や地域経済の活性化、金融安定などを支える金融支援を行っています。
2.補完金融
日本公庫は民間の金融機関を補完する役割を担っています。起業家は一般に業歴のある事業者に比べ信用力で劣ります。民間の金融機関は、信用力の劣る起業家への融資は相対的にリスクが高く消極的です。
民間がやりにくいと考える融資にも積極的に対応してくれるのが日本公庫です。
3.預金は預からない
一般的な金融機関は地域の個人や法人から預金を集め、その預金を原資に融資を行います。日本公庫は金融機関ですが預金は預かりません。
預金がないのであれば、何を原資に融資しているのかというと、財政投融資や国の一般会計など、ざっくりわかりやすく言うと国のお金を原資に融資しています。
4.公庫の前身
日本公庫は平成20年10月1日に設立された新しい会社です。元は政策金融を行っていた国民生活金融公庫と中小企業金融公庫、農林漁業金融公庫が統合され、日本政策金融公庫が誕生しました。
統合前の各公庫は、国民生活事業、中小企業事業、農林水産事業として引き継がれました。起業家向け創業融資を行うのは、多くの場合国民生活事業になります。
5.こっきん?
創業融資なら「こっきん」と聞いたことはありませんか。
これは国民生活金融公庫を略して言っているのです。旧国民生活金融公庫で融資を受けていた方には馴染みある言い方です。今は日本公庫の国民生活事業となっています。
6.沖縄にはない
なぜか日本公庫は沖縄に本支店がありません。沖縄では補完金融をする金融機関がなく、融資が受けにくいのではないか、と心配される方もいらっしゃると思いますが、沖縄の方ご安心ください。
沖縄には「沖縄振興開発金融公庫(以下、沖縄公庫)」という沖縄地域の中小企業や小規模企業、農林水産業、住宅、医療などを一元で支える金融機関があります。沖縄公庫が日本公庫と同様の融資を行っています。
まとめ
日本公庫は資金力の乏しいスタートアップ企業にとって、最後の砦とも言える金融機関です。税理士や中小企業診断士といった専門家と連携していることも多いので、資金調達を検討している際は顧問税理士などに相談してみてはいかがでしょうか。
参考:ベンチャー企業向け融資制度、日本政策金融公庫の「資本性ローン」のメリットは?
中野 裕哲