2021年8月30日に行われた、株式会社ココナラ スモールミーティング(大和証券主催・コーディネーター 大和証券アナリスト 石原太郎 氏)の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:株式会社ココナラ 代表取締役会長 南章行 氏
「ココナラビジネス」について
南章行氏(以下、南):最近の決算発表後の動きをいくつかご説明します。大きな動きとして、1つはTVCM、もう1つは「ココナラビジネス」をスタートしています。
「ココナラ」はもともとCtoCと言いますか、個人間のやりとりでスタートしたマーケットプレイスです。特に9年前の当初は、サイトを立ち上げる上で500円均一でスタートしているため、どうしても個人の方中心でずっと行ってきたという経緯があります。
しかし、あとからじわじわといろいろな機能を追加したり、値段の上限を撤廃して、今では100万円のものでも売れるようになってきています。
そのような機能の開放や売れる出品者が出てきたことで、だんだんと優秀な出品者が現れました。それに呼応して、ビジネス用途でけっこう高い金額を払う購入者の方が増えてきたというのが昨今の流れです。
決算説明資料でもご案内のとおり、ここ数年は特にビジネス領域の伸びが非常に強いところがポイントになってきています。そちらをより加速するため、「ココナラビジネス」という、法人の方が専用に使うサイトをリリースしました。表向きは別サイトになっています。
法人の方からは、例えば「恋愛相談やメイクのアドバイスなどが並んでいるところでは、なかなかビジネス用途のものを買いにくいよね」といった、選びやすさのお話もあります。また、「請求書払いにしたい」「1つのトークルーム、1つのコミュニケーションに、プロジェクトに関連する複数の人が入れたらいい」など、さまざまなビジネスの慣習があると思います。
それらをなるべくオンラインで表現できるように、本体とは別のかたちでサイトを作ろうということで「ココナラビジネス」をスタートしました。
ただし、新しく作ったばかりのため、今後少しずつお客さまを増やしていく段階にあります。ですので、今この瞬間にビジネスが突然、非連続で成長するかと言いますと、そのようなことはありません。しかし、当面はこのようなビジネス用途に力を入れていこうというのが足元の動きです。
TVCMについて
8月に入ってからの大きな動きのもう1つは、TVCMです。決算発表でも「TVCMを放映して、第4四半期の終わりから大型のキャンペーンを一部開始していきます」とお伝えしたと思いますが、こちらが8月14日にスタートしました。
来年度も通年で流しっ放しにするのではなく、流して、その効果を検証することを繰り返しながらになると思います。そのように、9月1日から始まる来年度も継続的に行っていこうと考えています。
TVCMのキャンペーン自体は、2017年、2019年、2020年、2021年と、通算で4回目になります。毎年、年度末に放映することが多いです。今までマーケティング上は特に購入者を増やしたいということがメインの目的ではありましたが、そうは言いつつも、スキルマーケットというもの自体もしっかり伝えないといけません。
つまり、「売り手と買い手が両方いるよ」ということを伝えることも目的としてあったため、過去のTVCMはスキルマーケットの機能も伝わるようなかたちで行ってきました。
そのように、過去には出品者と購入者が両方増えるようなTVCMが多かったのですが、今回は特に「ココナラビジネス」を始めたことに呼応するかたちで、「ビジネスユーザーの購入者を増やしたい」という意図があります。
ですので、過去よりも少し質感高く、特に30代、40代の有職者に響くようなかたちで試してみようと思い、スタートしました。このあたりが大きなトピックだと思っています。
来期に向けてということですが、みなさまの関心は、「IRなどで、ビジネスの基本的な強さは非常に確認しやすいが、成長率ではどうなっているのか」「TVCMはどのように寄与してくるのか」「10億円規模でTVCMを行うという発表はあったが、どのように考えたらよいのか」などがあると思っています。そのあたりを少しお話しできたらと思っています。
質疑応答:TVCMキャスティングの目的および反響について
石原太郎氏(以下、石原):ビジネスユースを拡大されたいということで、今回、30代から40代の有職者をターゲットにTVCMを始めたとのことですが、私はTVCMを見て「吉岡里帆さんだ」と、ビックネームをキャスティングできたことにすごく驚きました。
そもそも、吉岡里帆さんというビックネームを使ってTVCMを行っていくということは、やはり30代、40代の有職者に一番刺さる方だと見込んでキャスティングされたのでしょうか?
先ほど、30代、40代の有職者がターゲットであると言われましたが、これだけメジャーな方を起用されたため、このTVCMの目的として、あらためてターゲット層や、どのようにビジネスを強化していきたいかについてTVCMの効果を教えていただきたいです。また、すでに8月14日から放映されているため、実際の反響や手ごたえについても解説をお願いします。
南:吉岡さんをキャスティングした目的はおっしゃるとおりです。30代、40代有職者からの好感度が高い方を選ぶという意図がありました。当然、さまざまな候補の方がいらっしゃいましたが、その中でも非常に好感度が高くてよいと思っています。
今年に入り上場していますが、今までは未上場のベンチャーであったため、TVCM全体のイメージとしては、売上規模もよくわからない上にどのような状況なのだろうと見られていたと思います。
いよいよパブリックになることで、世の中でいくらかは認知度が上がり、より一層の安心感と、「ココナラ」が持っていた親しみやすさの両方を表現できると思います。信頼と親しみやすさのバランス、かつ徐々にビジネス用途にシフトしてきている現状を踏まえると、吉岡さんがよいのではないかとなり、お願いしたところご快諾いただけました。
視聴者の反応については、今のところは非常に好意的な反応を得られていると思っています。世の中にいくらか出ている好感度調査のようなものでは、非常によかったです。30代、40代有職者がターゲットとお伝えしましたが、やはりその層からの反応は非常に強く、認知の獲得という意味では非常によい滑り出しができていると思っています。
一方で獲得する広告としては、まだまだ効果を見定めている状況です。実はTVCMにはいくつかパターンがあるのですが、それにより効果に細かい違いがあります。素材と番組の組み合わせを見ながら効果を上げていく部分は、我々は得意であるため、粛々と分析を繰り返しながら進めています。
質疑応答:TVCMにより変化する指標およびKPIについて
石原:TVCMを打つと、どの指標において一番変化が出るのでしょうか? 例えば、流入数や有料購入数にすぐ反映されるものなのか、あるいは問い合わせが急増するのか、それとも流通額に影響してくるのかをお聞きしたいです。また、購入までにタイムラグがあると思いますが、御社はどのKPIでTVCMの効果などをチェックされているのでしょうか?
南:当然時間軸に沿っています。ユーザーの獲得コストと、獲得したユーザーがいくら購入するかというLTVのバランスで、とにかくユニットエコノミクスを回すことが究極の目標となっています。そのような意味では、世の中においてTVCMを打つときは、「なんとなく認知や印象が上がればよい」といったゆるさではなく、獲得したユーザーがしっかりとお金を使い、「これであればどのくらいで回収できる」という目処を立てていくことが基本的な目的になります。
ただ、TVCMを見た初日に買うわけではないため、ここにはやはりタイムラグが多少あります。流した直後であれば、「どのくらい訪問したか」「会員登録に至った人はどのくらいか」などが指標になります。我々の過去の経験則では、「1週間以内でどのくらいの金額を使えば滑り出しがよい」「どのタイプのカテゴリ、あるいはどのくらいの単価のものを買っていればよい」と日々解像度を上げながら、クリエイティブごとにTVCMを評価していくかたちになります。
ただ、我々はとにかく投資した資金を回収できるかどうかを指標にしているため、CAC(顧客1人あたりの獲得コスト)として、「購入者1人あたり獲得するのにいくらかかっているのか」「購入者が利益をいくら落としてくれるのか」のバランスを見て管理しています。
質疑応答:法人向けの広告により効果が出るまでのタイムラグについて
石原:TVCMは、指標に動きが出るのが1ヶ月後、2ヶ月後くらいになるのではと思います。法人向けの広告においては、まったく違う業種ですが、弁護士ドットコムさまが以前「クラウドサイン」というサービスのTVCMをけっこう大々的に流しましたが、目先では結果が出ていませんでした。
しかし、半年くらい経つとかなり効果があったようで、一気に結果が出たように感じたのですが、消費者向けだとすぐに効果が出そうなものでも、法人向けだと時間がけっこうかかるのではと思います。そのあたりはどのように見ておけばよいのでしょうか?
南:おっしゃるとおり、そのあたりはおそらくあると思います。個人であればパッと見てパッとダウンロードするなど、その場で買う方が一定数いますが、法人向けではやはり多少は遅くなると思います。
もちろん法人以外の個人の方も見て買う機会があると思うため、指針としてまったく排除しているわけではないのですが、今回、特に狙っているのは法人であるため、効果が確定するまでにはいつもより少し時間がかかる可能性があります。しかし、平均で見ると、どうしても法人のほうが購入回数が少なく単価が大きい傾向にあります。
我々は、最初にどのカテゴリーを買った人がどれくらいの利益を落としていくのかに関する過去のデータを持っているため、初速でもある程度イメージすることができます。実際はどうだったのかについては、1週間、2週間、3週間と毎週追いながら微修正していくかたちになると思います。
質疑応答:広告投資と売上の関係および考え方について
石原:広告投資と売上の関係についてお聞きします。今回は10億円ほど投資されますが、例えば、以前10億円くらい投資した時はトップラインでどれくらい寄与したのでしょうか?
あるいは来期10億円を投資する背景として、トップラインは中期的に最低3割の成長を続けるのか、または投資に対するリターンや過去のトラック、会長の目線ではこれくらい伸ばしていく、などの回答でも問題ありません。今回10億円以上を投資されたいとのことですが、それに対するリターンとして、トップラインでどれくらい獲得していきたいとお考えなのでしょうか?
南:我々は、そもそもTVCMやWeb広告であっても一緒なのですが、まず広告を打つ規模を考えるとき、そこから回収ができるかどうかがスタートラインになります。「成長率をなんとなくこのくらいに上げていきたいため、それに見合うだけ打とう」「売上に対して何割かは広告費で使おう」というようなざっくりとした決め方はしていません。我々の中では「とにかく使ったものは回収する」ことが強烈なディシプリンとして持っています。
もちろん、ファイナンス的に調達できなければ規模の限界はありますが、ディシプリンとしては「その範囲内で最大限使いましょう」という考え方になります。例えば、数年後に売上が3倍になると広告費も3倍になるという話ではありません。あるいは、成長率の目標を到達するために常に打とうという考え方でもありません。
大きなマーケットに対して、我々はまだまったく小さな存在だと思っているため、とにかく可能な範囲で取り組んでいくところから逆算すると、今は10億円強くらいが効率よく取れる金額だと思っています。「ひょっとして、もっと打つとより取れるのでは」ということが見えているわけではないのですが、場合によっては倍打つかもしれないというところで、効率をより重視して行っています。
その結果、「来期はどれくらい効くのか」ということが考え方としてあると思っています。そのような意味では、売上規模が小さい時の10億円と、大きくなってからの10億円だと、当然成長率に寄与する分母が違うと思います。
「今の我々の売上規模では、10億円強のTVCMを打った時に何パーセントくらい押し上げ効果があるのか」については1つ気になる点だと思うのですが、ここは明確にお伝えすることがなかなか難しい部分です。初年度で見ると、おそらく数パーセント後半くらいがちょうどよいインパクトだとは思っています。
我々のお客さまであるユーザーは、「CMで知って使って終わり」というわけではありません。過去の決算発表資料でもお見せしたことがあると思うのですが、継続率が非常に高い特徴があり、1回買った方はけっこうな確率でその後もずっと使い続けてくれる状況です。だからこそ、我々はTVCMのような大型キャンペーンを打ち、さすがに半年、1年では回収できなくても3年の期間で見れば回収できる、といった算段が立ちやすい状況です。
獲得コストとその人が落とす利益のバランスを見ながら、「これであれば回収できる」ということを試算してTVCMを打っているわけですが、これを言い換えると、比較的長期で効果を回収するかたちになってきます。
そのため、初年度に10億円打つと10億円分売上が上がるのか、利益がのってくるのかと言いますと、必ずしもそうではなく、やはり「初年度はこれくらい」で、「2年目以降にこれくらい」のようなかたちで、数年間に渡って使った分の効果がじわっと出てくるものになります。
TVCMの良し悪しにもよるとは思うのですが、計算する時は、数パーセント後半くらいの押し上げ効果だと思っています。特に10億円を使う時は、年度の頭に一気に使うのではなく、特に今回は年間を通じて効率がよい番組やTV局、エリアを見定めながら実施していくため、初年度にダイレクトに全部効くかというとそうではありません。
2年目以降にじわっと効いてくる部分も含めての判断になっていきますので、大型のTVCMを流すと、9月から始まる新年度は爆発的にCM効果で伸びるのかと思われるかもしれませんが、必ずしもそうではなく、2年目、3年目にも積み上がって効いてくるイメージになります。
質疑応答:回収期間のイメージについて
石原:フォローアップとして少しおうかがいします。先ほど回収することが一番のディシプリンであるとお話しされましたが、これは投資に対しての流通高ではなく、そこから得られる手数料、営業収入などを回収するという意味合いなのかをお聞きしたいです。例えば、広告投資が1億円だとすると、これを3年以内に回収する、あるいはもう少し長めで回収するといったように、回収期間はどのようにイメージするとよいのでしょうか?
南:まず、回収は流通高ではなく、営業収益である手数料収入による回収を意味しています。最終的には3年経ってみないとわからないところがあるのですが、過去に行った中で一番古いのは2017年になります。当時は実際にユーザー単位で見ており、TVCM放映前と後の差分として、TVCMにより獲得した人数や、認知度向上によりオーガニック検索からの流入が増えた部分などをある程度試算できます。そのようなところを考えると、3年弱で回収できたと言えます。それ以降は、まだ効果を見定めながら進めるかたちになっていますが、かなり超長期で回収するということではなく、見える範囲内においての回収を意識しながら取り組んでいます。
質疑応答:認知度向上による回収期間および獲得行為の変化について
石原:認知度も上がり、ユーザー利用数も増えていくと、回収期間がだんだん短くなっていく、投資効率がよくなってくるという理解でよろしいでしょうか? または、ユーザーもだんだん広く使われるため獲得効率は落ちてくるものなのでしょうか?
南:両方あるとは思うのですが、認知がいきわたることにより、獲得の効率が悪くなるようなところには、まだまったく届いていないと思います。そのため、当社においては、もっと将来の話だと思っています。
効率がよくなるところをどのように捉えているのかと言いますと、例えば獲得単価が下がってくるという捉え方をするよりは、当たり前なのですが、たくさん打てば打つほど効率が悪くなるため、規模が小さいとまったく効率的ではありません。一定の規模を超えると、獲得行為を増やせば増やすほど効率が悪くなる側面は、WebマーケットでもTVCMでも一緒だと思います。
例えば1年で回収する、3年で回収する、などの基準を持った場合、その基準において獲得する人が増える感覚に近いと思っています。Webではもっとわかりやすく説明できるのですが、例えば2017年に初めてTVCMを打った時になにが起きたのかと言いますと、Webにおいて通常、リスティング広告などで獲得できる単価が一気に激減しました。要は、認知度がすごく上がったことで、1人あたりのコストがかなり安くなったということです。
ただ、それ以降は下げることが目的ではないため、もっとWeb投資を増やすことで、同じ単価でたくさんとれるようになってきたという経緯があります。1年で回収しているものをなんとか3ヶ月で回収したいとする理由は特になく、同じ1年回収でもとれるボリュームをどんどん増やしたほうがトップラインの成長に寄与すると考えています。我々はどんどん効率化していくという意味において、単価を下げたいという志向ではなく、同じ単価でより多くのボリュームをとりたいと思っています。
2回目以降のTVCMで認知が広がった時には、Web広告およびTVCMもそうなのですが、同じ単価でよりたくさんとれるかたちでの効率化が進んでいるということを先ほどお伝えしました。
質疑応答:現在の認知率と目標値について
石原:TVCMを打つにあたって、御社の中で認知率がすごく大事な指標になると思います。例えば、現状で御社のサービスがどれくらい認知されており、広告を続けることで将来的にどこまで上げていきたいと考えているのか、一定の目標値などがあれば開示可能な範囲で教えてください。
南:認知率を初めてとったのが、2019年のTVCMの時です。CM前は一般の認知率は7パーセントでしたが、CM直後では20パーセントになりました。また、昨年のCM後は26パーセントでした。こちらは徐々に上げていきたいと思っています。
昨年は一般だけではなく、ビジネス属性、つまり働いている方のみの認知率も併せてとっていますが、そちらは40パーセントくらいでした。働いている方のほうがすべての人を含めるより認知率がやや高かったということです。
どこまで上げるかというのはなかなか難しいのですが、例えばビジネス認知で80パーセント、一般認知で50パーセントから60パーセントを越えてくると、一般的には効率が落ちると言われているラインだと思っています。今のところ、そこまではじわじわと積み上げられるのではないかという印象です。
質疑応答:テイクレートを修正した目的とその効果について
石原:決算前に遡ってしまいますが、今まで課金していなかった購入者からも5パーセント取るということでテイクレートを修正したと思います。以前のご説明を聞くと、日本国内ではそれほど気にするような競合もまだ出てきていないため、テイクレートを上げたり下げたりする必要はあまりないと思ったのですが、今回は修正されました。どのような目的でテイクレートを調整したのか、今回のテイクレートの調整によって、今すぐでなくても中期的にどのような効果が見込めそうなのかを教えてください。
南:例えば、「競合観点でテイクレートを変えなければいけない」ということがあったわけではありません。テイクレートは一般的なECに比べると高いと見えているかもしれませんが、売っている方、特に売れている方ほど「この水準でお客さまをとってくれるなら安いもんだよ」とおっしゃっていただけたため、水準感で大きな問題があるという認識はありませんでした。
我々のサービスを購入者と出品者の両方に提供している中で、購入者から手数料を取っても購入者は気にしませんし、その分出品者の手数料を減らしてあげたほうが出品者は喜ぶということが一定程度あります。
購入する人は年間で平均5回から6回購入します。「気にしない」というのは、たまに買う時にシステム手数料のようなかたちで5パーセント乗っていても、購買行動は特に変わらないということです。
一方で、出品者は生活がかかっているため、5パーセント手数料が変わるのは手取りの観点で非常に大きなことです。競争の観点上、他のところには逃げてしまうことはない、という見立てがある一方で喜んでいただけるというのがありました。
以前から、トータルで25パーセントは変えずに、購入者から5パーセント、出品者から20パーセントに変えてみようと思っていたため変えました。
「単に変えただけではなく、中長期的にも意味があるのか」という点においては、出品者の負担を軽くした代わりに、出品者から別のかたちでフィーをいただくようなサービスを提供できる余地が増えたと思っています。
これは今後のお話のため、いつどのように進めるかはわかりません。あくまでも例えばのお話ですが、他のサイトでもあるパターンとしては、出品者がサイト内で広告を出したり、自分のサービスを目立たせるためにお金を払うというのはよくある機能だと思います。
そのようなところに出費しやすくなるという効果は期待できると思っています。長い目で見た時に、今回の形式に変えたほうがトータルでのテイクレートを上げていく余地がより上がるのではないかという判断で、手数料率を変えています。購入者と出品者のバランスにおいて変えたというところです。
石原:高額なサービスですと、今までは手数料率を減らしていたと思うのですが、それも今回のテイクレートで一本化すると、結果として、金額が高いものが売れた際の収入が上がるのかと思うのですが、いかがでしょうか?
南:今までは高額になればなるほど手数料率を少し減らしていました。それが今は一律になっています。トータルでは、「25パーセントが5パーセントと20パーセントに分かれただけ」とざっくりお伝えしていますが、厳密に言いますと、出品者のほうも全部25パーセントではなく、例えば5万円を超えると20パーセント、10万円を超えると15パーセントになるなど、高額な取引については減っていました。
そこが全部フラットで20パーセントになったため、高額のものばかり売っているごくごく一部の人の手数料がやや上がったかたちにはなっています。ですので、それをもって「収入が増えた」と言うのか、「ご不便をおかけしています」と言うのかは見方次第です。
質疑応答:「ココナラビジネス」のターゲットや特徴について
石原:先ほど「ココナラビジネス」についてご説明がありましたが、あらためて御社の法人向けサービスの特徴を教えてください。この分野は「ランサーズなど既存の事業者との競合になるのではないか」「あまり儲からないのではないか」というイメージもあります。あくまで御社の法人向けのサービスがどのようなものをターゲットとしているのかや、ランサーズなどとの違いを教えてください。
南:クラウドソーシングと非常に近い分野でサービスを提供しているため、競合になるのではないかというお話だと思いますが、もちろん競合となる部分はなっていると思います。クラウドソーシングとの違いとしては、もともとの出自として、コンペ型かEC型かの違いが使い勝手などに出てきていると思っています。
クラウドソーシングのように人を選んで買うことは機能としてはできると思いますが、成り立ちが違うため、使い勝手や慣習はけっこう違うと思っています。クラウドソーシングの基本形は、公募をかけて、そこに個人が応募して、そこからよいものを選ぶというパターンだと思います。
一方で、我々はEC型のため、「いくらで、これこれをしますよ」というのがあらかじめ並んでおり、そこから選んで買うというのが特徴になっています。それぞれ特徴があるため、一概にどちらがよいかは言えません。
「法人向けが伸びているのはどうして?」ということについては、我々のサービスの使い勝手のクオリティがけっこう上がってきたことによるものだと思っています。サービス購入の難しさは、買う前にクオリティがわからないことがけっこう大きいと思います。ですので、選んで買うことに不安があります。
そのため、ユーザー視点で考えるとコンペのほうが納得感があると思います。50個や100個のアイデアが送られてきた中で一番を選べるからです。
クオリティが高いか低いかという絶対水準を持ち合わせていなくても、100個ある中のトップ3から選んだと思うと、「これでよかったんだよね」という納得感がすごく持ちやすいことがコンペ形式の一番の特徴だと思っています。
ECの強さは、まずスピード感だと思っています。コンペは公募をかけてから応募が来て選ぶため、すごく手間と時間がかかります。最初に要件を作って公募にかけますが、ここまででもひと手間かかります。それからいろいろな人が応募してくるのを待つ時間もあるのです。
「ココナラ」を使っている法人の方が満足していることは、もちろん安さと言う方もいらっしゃいますが、実はスピードがけっこう大きいです。「並んでいるものから選んで買ったらすぐに納品された」「まさか当日にくるとは思わなかった」ということでファンになったという方が多くいます。
CtoCの個人のみの頃は、法人クオリティで満足させられる出品者がなかなかいなかったため、必然的にクラウドソーシングが使いやすかった時期があったと思います。しかし、今では「ココナラ」にも非常に優秀な出品者が増えてきています。
逆にコンペに超一流の人は出品しません。イメージしたらおわかりになると思いますが、「優秀な方がどうしてコンペに出さなきゃいけないの?」と思いますよね。出したところで自分に返ってくるかわからないし、「自分が提案したものが他の人にパクられたらどうしよう」と思うこともあります。
ですので、一定のクオリティを超えてくると、優秀な人ほど「ココナラ」のほうが出しやすくなってくるのです。我々も知見が非常に貯まってきて、見えないクオリティを表現するノウハウが出てきました。
レビューもそうですが、例えば返信スピードなども我々は科学してきたため、ぱっと選んでぱっと買いやすくなってきています。そのような意味では、クオリティの納得度も高くなっており、スピード感も早いということで、法人の方も「実はこっちのほうが使い勝手がよいのではないか」という域に達してきたというところが今の状況だと思っています。
質疑応答:各ジャンルの違いによるお客さまからの評価について
石原:御社の場合、デザインやクリエイティブ系のジャンルが強く、また各分野に自信のある人たちが集っているため、よいサービスを提供できているのではと思います。各分野の「ジャンルの違い」もお客さまからの評価につながるのでしょうか?
南:まず、ジャンルは我々のほうが確実に広いと言えます。出品者はさまざまなニッチなものを出しているため、メジャーなものはどちらもあるとは思うのですが、我々は「実はこれが欲しかった」というニッチなものを持っており、けっこうな強みになっていると思います。ニッチでよいものがあるからこそ、メジャーなものも売れると思っており、やはり「ここにしかないもの」であることがすごく重要だと思います。
先日、「ココナラビジネス」を実施する時の記者会見などで法人事例を少しお話ししました。事例としての公開を許可いただいた大手ゼネコンからは、使用してよかったのは翻訳サービスだというお声をいただきました。翻訳はどこにでもありそうなイメージがあると思いますが、きちんとした翻訳会社に頼んでも、建設用語に詳しい翻訳者を見つけるのはかなり大変なことです。
「建設用語に詳しい」という売り出し方をしていないため、翻訳してもらったものの、専門用語がわかっていないような状態で納品されることがあります。しかし「ココナラビジネス」では、プロフィールなどにおいて「建設用語に強い」とあらかじめ明記している翻訳者がいます。
使用された方より「大手の翻訳会社などに比べると圧倒的にスピードもクオリティも高かった」「安いから使っているわけではなく、本当に欲しいものが可視化されているため便利で使っている」とおっしゃっていただき、法人の方でファンになっていただいた方は、そのようなところを評価しています。
要するに、スピード感や「ピンポイントで欲しい」を叶えるニッチな要件を満たすために必要な人が、我々の中でもきちんと揃ってきたと思っており、これが40万種類もあるサービスの強さになってきていると思います。
質疑応答:メディアとしての今後のマネタイズについて
石原:先ほど少しお話しいただきましたが、広告についてです。テイクレートを少し下げたため、サービスも広がる可能性があるという説明でしたが、売り手だけではなく、やはりECでユーザー数が広がるとメディアパワーも発生し、どのような人が利用しているかについてもわかるため、Cookieが使えなくなる今後は価値がすごく上がる気がします。
そのような意味で、今後純粋なメディアとしてのマネタイズはお考えでしょうか? また、売り手向けの広告はいつくらいから本格的にマネタイズしようとお考えかを教えてください。
南:メディアとしての広告は、私自身はあまり考えておらず、おそらくチームも考えていないのではと思います。来て眺めるところではないため、もちろん訪問者数は非常に増えてきています。実施すれば多少の小金にはなると思うのですが、そこに時間を割き、それでユーザビリティが落ちるくらいなら、本丸となる機能の使い勝手をしっかりとよくすることに100パーセント集中したほうが絶対的に収益がプラスになると考えています。
メディアのマネタイズとして広告をとることは、私自身は基本的に行わない前提だと理解しています。また、出品者の広告をいつ行うのか、それはマネタイズになるのか、あるいは収益に効くのかについて、具体的にはお伝えできません。
ここで1つコメントすると、もちろん収益源になるとは思うのですが、本質的に儲けることに全振りするつもりはありません。どのようなことかと言いますと、そこからの収益を最大化しようとすると、売れている人から広告費をなるべくとる仕組みになってしまいます。
ただ、もちろん収益を上げる目的もなくはないのですが、どちらかというと後から入ってきた優秀な人がきちんと売れるためのツールも提供したいというところも一定数あります。先ほどお伝えしたとおり、やはりサービスは買うまでクオリティがわからないという性質が一定程度あるため、レビューにより過去に売れた人がすごく強い状況になります。
どれほど優秀な人が来ても、プロフィールを見るだけで「すごい」となるくらいならともかく、レビューがないと後から来た人は若干不利になります。もちろんモノの世界でもレビューはあるのですが、画像を見れば「なんとなくクオリティが高そう」となり、判断材料がサービスに比べれば多い状態です。
そうすると、後から来た優秀な人は「何をしたらよいのか」となりがちです。当然、我々としてもクオリティをジャッジし、なるべく目立つところに置く、つまり、ライジングスターをきちんとライジングさせることを考えてはいるのですが、その人自身が売れるために努力できるツールを提供したいということに近い状況です。
それを実現しようと思うと、稼いでいる人にバンバン広告費を出してもらうか、まだ稼いでいないがなんとか這い上がりたい人に機会を提供するかという、どちらか100パーセントではない側面もあるため、すごく収益源になるかというと、そこはまだ我々も将来的にどうなるかがわからない状況です。
ただ、今みたいに収益を上げていくというところと、後から来た人がしっかり売れるようにサポートし、健全なマーケットとして、5年後10年後を見据えた出品者のクオリティアップ環境とのバランスを見ながら、おそらく導入していくと思います。しっかりと収益源としてどこまで見込めるかを我々もまだ印象の域を超えていないくらいになります。
質疑応答:トライアルの開始について
石原:トライアルの開始について、例えば新年度からはこのようなことでトライアルしていきたい、など時期的にこのあたりで考えていることはありますでしょうか? あるいは現時点では検討中なのでしょうか?
南:おっしゃるとおりです。少し検討中とさせてください。具体的に検討はするという意志があることまではお伝えできるのですが、一方で今は取り組みたい機能が強烈にリストアップされている状況です。どこから実施するかは社長の鈴木の頭の中に一番入っているとは思うのですが、そこをいろいろと検討しながら順次新しい機能の優先順位を決めています。検討することは間違いないものの、時期については非常に言いづらい状況です。
質疑応答:テイクレートの今後の調整について
石原:中長期的にテイクレートをどのようにコントロールしていく、あるいはコントロールしていきたいと考えていますか? 今回、決算前にテイクレートを調整しましたが、結果はそれほど変わっていないと思います。
「サービスを売ったり買ったりするなら『ココナラ』」ということで多くの方が「ココナラ」で取引するようになったら、テイクレートをさらに上げるという考えもあると思います。例えば、商談系電話相談のカテゴリは、上場後にアクセルをぐっとふかしていくと、テイクレートは上がると思っています。
今後のテイクレートは今の水準のままなのか、それとも中長期的には上げていきたい、あるいは上がってしまうのではないかなど、見方を教えてください。
南:足元では上がって見えるかと思いますが、理由は2つあります。1つは会計上の理由です。今、我々は正確なテイクレートを出していません。流通高は流通高として出しています。一方で、営業収益と呼んでいるものの中には、「ココナラ法律相談」の収益が入ってしまっており、そちらが伸びています。
我々は「これは厳密には営業収益率としか呼べない」と思っていますが、この比率が上がってきているように見えています。ただし、ここは法律相談の効果があるため、来年度以降は分離して開示していこうと思っています。
「ココナラ」のみで見た場合についてもご説明します。先ほどご説明したテイクレートの変更により、高額販売者からのテイクレートが上がっているなどの効果で、足元では営業収益率が微増しています。
今後はじわじわと微減していくとは思っていますが、大きく下がるようなことはないと思っています。
微減する理由としては、先ほど石原さんもおっしゃっていた電話相談が、ざっくり50パーセントのテイクレートなのですが、電話相談の流通高の伸びより、制作・ビジネス系の伸びのほうが大きいと思っているため、そのミックスにより微減するということです。
ちなみに、微減と言っても、うっすら微減すると言いますか、1年から2年で見るとシミュレーションするのに影響があるほどの下がり方はしないと思います。しかし、どちらに傾くかと言いますと、やや減っていく方向だと思っています。
そのやや減っていくものを、先ほどお伝えしたとおり、どこかのタイミングで出品者から広告手数料をいただく施策を打ち出したり、その他の考えているアイデアなどで穴埋めしながらトータルで維持していく、あるいは場合によっては上げるなど、どのようになるかはわかりませんが、考えてはいます。
あまりテイクレートの下げを気にしなければいけないようなことはないと思っていますが、ものすごく厳密に計算するのであれば、微減だと思っています。
質疑応答:個人によるマネタイズの影響について
石原:いわゆるECサイトではなく、「BASE」のような個人でマネタイズしていく動きは中期的には警戒しておかないといけないでしょうか? それとも、そもそもそのようなことは相当困難だから御社のようなサービスが出てきたため、そちらの動きはあまり見ておかなくてよいのでしょうか? 考えを教えてください。
南:直接的には影響はないです。そのようなものは今後も確実に出てきますし、使われると思います。「オンラインでのサービスも理解できるよね」ということが、我々がいることで一般化してくれば、自分専用のホームページの中で売買できるようにしたいという欲求を持つ人が一定数出てくるとは思います。
「BASE」も確かそのようなベンチャーに出資しているはずですので、動きとしては少しあります。ただし、そのような個人や法人も、結局のところ一番困っていることは集客です。
昔は個人で決済はできませんでした。「ココナラ」が出てきた当初は、決済、集客機能、サポートを得られるなど、いろいろな便利なことがあったため「ココナラ」を使っていたと思います。しかし、究極的に個人が持ち得ないのが集客力です。自分のところにお客さまを連れてくるために広告費を払った瞬間、「『ココナラ』の手数料のほうがぜんぜん安いじゃん」となってしまいます。そこがマーケットプレイスの強さだと思っています。
モノであれば、1人の力でも大規模に売れるため、広告を出してショップを出していくことはサービスに比べてできやすいとは思います。サービスはその名のとおり、役務提供・労働集約のため、広告を出してざっくり進められる人は本当にごくごく一部です。たまたま有名になった人が、その人向けに売るためにサイトを持つくらいのことでしか使われません。
ですので、もちろんそのようなものは今後便利サービスとして出てくるのは間違いないと思いますが、我々にとって脅威になるかと言ったらならないと考えています。
質疑応答:中期的な経営計画や成長戦略に関する考え方について
石原:TVCMを打ってしっかりとユーザーを伸ばしていくという局面で、来期に関しては投資は10億円以上ということでした。今後はトップラインの成長がより大事になってくると思っています。そのような意味では、中期的なトップラインの目線があれば、投資家の方にとってもすごく有意義だと思っています。
次の本決算後に、例えば中期的な経営計画や成長戦略などをあらためて出していただくのもよいのではないかと思っていますが、そのあたりの考え方について、現時点ではどのように整理していますか?
南:中期的な数値を出すかについては社内でも検討中のため、現時点では結論は出ていません。数字を出すと独り歩きしてしまうため、なかなか悩ましいと思いつつ、IR的にはどのような出し方がよいのかを考えています。
一応前提として、我々のビジネスの成長をどのように捉えているかをお伝えします。強いところと弱いところがあると思っており、強いところはモノ以上に2番手が1番手を抜きにくいマーケットだと思っているところです。
マーケットプレイスのため、売り手が多いところに買い手が集まり、買い手が多いところに売り手が集まるため、規模で差をつけてしまえば、1番のところが1番であり続ける作用が働きやすいです。モノのマーケットプレイス以上にそれが働きやすいと思っており、そこはよい部分だと思っています。
また、売り手が他に移りにくいことも挙げられます。過去にもお話ししたことがあるかもしれませんが、サービスはレビューがないと売れません。モノはどこかで売っていた人が別のところで売ることが簡単にできますが、レビューをプラットフォームから他のプラットフォームに持っていけませんので、レビューが重要なサービスの場合は他に移ることが非常に難しいです。ロックイン効果が働くがゆえに、モノのECに比べて圧倒的に1番手が1番手であり続けます。
もう1つの強みとしては、我々は結果として他になかなかないマーケットプレイスになっているため、継続率が非常に高いことです。新規を取れば取るだけ売上がアドオンで乗ってくという構造になっています。ですので、1番であり続ける確率が高いマーケットプレイスで、確実に成長していけることが強みです。
他社と比べてやや難しさを感じる点があるとすると、爆発的に成長率を上げることが簡単ではないところだと思っています。モノはすでにオンラインで売り買いすること自体が当たり前になっているため、例えば「メルカリ」のような使い勝手がよいサービスが出てくると爆発的に伸びます。
過去に「ヤフオク!」などが切り開いてくれたところもあり、多くの方はオンラインでモノを売る経験が一定程度あります。しかし、サービスはオンラインで買う経験がない人のほうが圧倒的で、我々がフロントランナーです。
ですので、マーケットメイクは啓蒙に近い面が一定程度あり、経験のない人に経験してもらう時期はすごく時間がかかると思っています。だからこそ、TVで認知をとることもすごく重要になっていく側面があります。モノのサービスに比べると、成長率がやや迫力がないのではないかと見られる可能性は今後も出てくると思っています。
ただし、先ほどお伝えしたとおり、流行り廃りもなく確実にアドオンされていく強さがあると思っているため、そのような視点で今後どのようなガイダンスを出していくかを社内でも検討します。そのような側面で見守っていただけるとありがたいと思っています。
石原:もし開示できるのであれば、ぜひ積極的な投資など、どのようなかたちで成長するのかについての見通しを出していただけたらと思います。
南:我々も投資家のみなさまが「ビジネスの強さそのものはよく理解しているから、あとは率をどう見るかだよね」ということを気にしていることはよくわかっていますので、次の決算までに社内で検討していきたいと思っています。