年末は何かと忙しいが、投資の見直しの好機
今年も残すところ1週間。クリスマス、仕事納め、大掃除、年賀の準備、帰省など慌ただしく過ごす方も多いのではないでしょうか。特に2017年は仕事始めもすぐですので、「時間がない」と感じる方も多いかもしれません。
そんな忙しい時期ではありますが、年末は「投資の見直し」をする好機なのです。理由は大きく二つあります。
- この時期はいわゆる「相場予想」情報が活発に発信されることもプラスです。自分に必要な情報をしっかり消化する余裕がこの時期にあるはずです。
- 経験則的に言って、海外投資家の多くが年始から新たな投資方針(投資シナリオ)を作成し、それに沿って物色対象を変えてきます。これに柔軟に対応するためには、歳末に準備をすませておくのが望ましいのです。
新年の目標や計画を立てる中に、資産運用も是非入れていただきたいと思います。
断捨離こそ手軽に投資を見直す勘どころ
では効率的に投資を見直すにはどうすればいいでしょうか。
忙しい方が最優先するべきは、いま現在の投資内容を見直して自信のある銘柄(株、投資信託など)に集中投資することです。
先ほど、この時期にはさまざまな投資情報が溢れるといいましたが、新しいストーリーや新しい銘柄に目移りするよりも、少しでもなじみのある「今持っている銘柄」の投資方針を再確認することが優先です。よく知らない話を理解するよりも、少しでも知っている(なじみがある)銘柄について理解を深めるほうが、効率が良いのです。
新しい家具を買う前に、一旦部屋を掃除し不要なものは処分するのと同じことです。新しい銘柄を探す前に、まず今の投資先を見直してみてください。
投資の断捨離①:リターン・リバーサルの経験則を活用するのが第一歩
筆者の経験則によれば
- 高パフォーマンスを2年続けるのはむずかしい。3年続けるのはとても難しい
- 低パフォーマンスでも良い企業は復活することが多い
ということが言えます。これを一般に「リターン・リバーサル」といいます。特に株式市場では物色対象が循環するため、ある年に高パフォーマンスの銘柄はその次の年はぱっとしないことが多い(その逆もある)、という現象を意味しています。
海外投資家はこの傾向を熟知して物色対象を新鮮な目で選んできます。皆さんも歳末の機会に一度この経験則を投資に活用してみて下さい。
投資の断捨離②:リストを作って、具体的に「売り」「買い増し」の判断をする
もう少し具体的に投資の断捨離の方法を見ていきます。
はじめに、投資先の株式、投資信託などの名前と時価ベースの保有金額を列挙しましょう。含み損益は一旦忘れます。目標は、総投資額の30%(ひとつの目途です)を現金化し、その現金を使って既に保有している有望銘柄を買い増すことです。現金が余れば新しい投資先を考えましょう。
具体的には次のようなリスト(例)を作ります。過去1年のリターンは概算で結構です。ヤフーファイナンスなどの株価チャートをみて算出しても構いません。
銘柄名 | 投資金額(時価) | 過去1年のリターン |
東芝 | 90万円 | +80% |
トヨタ | 140万円 | ▲5% |
リコー | 50万円 | ▲20% |
次に、このリストのなかで「今から買い増したい銘柄」を選びます。
最後に、売るべき銘柄を決め、その代わり金でさきほどの買い増し銘柄を買い増します。
例えば「東芝株は2016年に頑張ったが、2017年はしんどいかな」と思えば売却しましょう。この時含み損があっても気にする必要はありません。含み損が解消されるまで待ってみるよりも、これから一番株価が上がりそうなものに投資を振り向けたほうが効率的だからです。
リコーはどうでしょうか。「リコー株は2016年は冴えなかったが2017年はこれまでの経営努力の成果が出そうだ」、仮にそう考えるなら買い増しをしましょう。ポイントは2017年に良くなるための兆しや改善点が企業を取り巻く外部要因や企業努力のなかから多く見つかるかです。少しだけ時間を割いて丹念に調べてみてください。仮に十分なプラス材料がみつからないなら、含み損があったとしても思い切って売却してしまう必要があります。
いかがでしょうか。このようにして、2016年の高パフォーマンス銘柄と低パフォーマンス銘柄を重点的に洗い出し、いまから買い増す理由があるのか考えてみましょう。そうであれば他の銘柄から現金を作って買い増しすべきです。そうでなければ断捨離あるのみです。
投資信託も同じ方法で断捨離してください。
現在のポートフォリオをスリム化し、なじみがあって自信のある銘柄に投資を集中し、さらに現金が余ればしめたものです。この現金で新しい銘柄を発掘し投資しましょう。
ぜひ投資ポートフォリの大掃除を手早く済ませて、新しい年をお迎えください。
椎名 則夫