増税するなら他の税で

以下は、なぜ筆者が消費税を好まないかという話です。将来増税が必要なら他の税を増税すべきで、消費増税は2度とすべきでない、と考えているわけです。具体的には相続税と固定資産税を増税すべきだと思いますが、その話は別の機会に。

財務省は、少子高齢化時代には現役世代だけではなく皆が税を負担すべきだから所得税等よりも消費税が好ましい、と考えているようですが、それには異論があります。

消費税が上がると消費者物価が上がります。高齢者に支払われている公的年金は原則として物価スライドですから、消費者物価が上がると年金支給額も上がります。

高齢者の多くは年金生活者でしょうから、消費税が上がっても、それほど困らないのです。結局、年金保険料を払っている現役世代だけが実質的に税等々を負担する構図は消費増税によっても変えられないのです。

財務省はもうひとつ、消費税は景気に影響されずに安定した税収が見込めるから良い税だとも考えているようですが、そちらの問題の方がさらに深刻です。

ビルトインスタビライザーという言葉があります。所得税には景気の自動安定化装置としての役割があるという意味です。所得税は累進課税なので、景気が落ち込んで所得が落ち込んだ時には納税額が大きく減るために、景気の落ち込みを和らげてくれるということなのです。

財務省は、所得税の持つ景気自動安定化装置の役割を無視して税収の安定性の話を消費税のメリットとしているわけですが、日本経済のことより税収が気になるのはセクショナリズムとしか言いようがありませんね(笑)。

本稿は以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

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塚崎 公義