会社・組織で、メディアや社会に向けて広報活動を行う際、基本となるのが「プレスリリース」です。一方「ニュースレター」という言葉もあり、この2つの違いが明確にわからないという方も多いのではないでしょうか?

 この記事では、拙著『サニーサイドアップの手とり足とりPR』をもとに、意外と知られていない「プレスリリース」と「ニュースレター」の違いや、それぞれの特徴、また作成するときに入れることで、メディアが「思わず取り上げたくなる」代表的な切り口などについて解説します。

「プレスリリース」ってどんなもの?

 企業や団体が新商品や新サービス、イベント、経営情報など「未発表のニュース」を届けるための報道発表資料がプレスリリースです。オウンドメディアでの自社からの発表と同じタイミングで、テレビ・新聞・雑誌・Webなど複数のメディアに情報を伝達します。

 それぞれのメディアでは、部署や役職、年齢やキャリアによって、知識やスキルも異なるさまざまな担当者が受け取る可能性があるため、プレスリリースについては、正確性・客観性はもちろん、誰が読んでもわかりやすいことが大切です。

「事実を正確かつ簡潔に伝えること」「結論を先に書くこと」「専門用語は極力少なくすること」「広告的な表現や余分な形容詞は避けること」などを心がけましょう。

 また、著名メディアには、1日で約400通ものプレスリリースが届くと言われているので、読んで報道したくなる「切り口」も重要です。目に留めてもらうには、タイトルと見出し、リード文が勝負の決め手になります。1つのネタに対して何度もリリースを配信することはないため、よく精査してください〈別図版1・2参照〉。

・POINT 01 報道資料の種別を明記
 プレスリリース、報道用資料、イベントレポート、参考資料、個別アプローチ資料など種別を明記します。

・POINT 02 数字データやエビデンスを記載
 客観視できる数字データ(開業年月、敷地面積、数量など)やエビデンス(根拠)を積極的に記載します。

・POINT 03 箇条書きでプランを視認しやすく
 3つ以上紹介する場合は箇条書きなどでわかりやすく記します。

・POINT 04 ボイラープレート(繰り返し使う定型的な概要説明の文章)の挿入
 毎回、商品の歴史・特長・コンセプト・数字データを入れ、理解が深まるようにします。

図版1 プレスリリースのポイント(その1)


図版2 プレスリリースのポイント(その2)

「ニュースレター」ってどんなもの?

 社会ニーズやトレンド、季節性などを踏まえて、「メディア担当者が記事化したくなるネタ」や「生活者の興味関心をそそるネタ」をまとめて提供する資料がニュースレターです。プレスリリースとは異なり、発表済みの情報であっても、切り口や編集によって露出が見込めます。

 また、定期的に情報を発信することで、さまざまなメディアと継続的な関係を構築することも期待できます。

 ニュースレターを書く際は、テーマを明確にし、「メディアがどんな企画で使えるか、なぜいま取り扱うべきネタなのか」をわかりやすく書きましょう。そのためには、ひとつの商品やサービスの紹介にとどまらず、たとえば以下の3つの観点で、同じテーマで複数の情報を盛り込み、企画に厚みを持たせます〈別図版3参照〉。

(1)生活者ニーズ/市場環境
 客観的な裏づけに基づいた社会的ニーズやトレンド感を提示します。

(2)調査データ/ランキング
 自社で保有している取引に関する調査データ、消費特性に関するランキングを紹介することで、市場環境の情報や生活者のニーズといったものに信憑性を付加します。

(3)「並び」となる事例の紹介
 類似や競合となるエリア・施設・サービスなどと、自社サービスをまとめて紹介することで、ひとつの企業や団体に限定しない「世の中的なムーブメント」を提示します。

図版3 ニュースレターのポイント

 社会ニーズやトレンド、季節性を加えることで、取り上げてもらえる可能性は高くなります。画像なども積極的に活用し、担当者が企画を具体的にイメージできるようにしてください。

効果的な「プレスリリース」と「ニュースレター」の書き方

 このように、それぞれ特性が異なるプレスリリースとニュースレターですが、PR活動の一環として「発信する情報に興味を持ってもらいたい」という狙いは同様です。メディアや生活者が知りたくなる・読みたくなる具体的な制作のコツを押さえ、ぜひ実践に活かしてください。

 また、プレスリリースもニュースレターも、じっくり読んでもらえるものではないので、タイトルにおける「スピード感」はとても大切な要素です。効果的なタイトルを作るためには、次の3つのルールを覚えておきましょう。

(1)固有名詞と数字を使い、具体的に書く
(2)30文字以内にする
(3)誰でもわかるタイトルにする

 またリード文は、次に示す「6W5H」を基本に、「背景と将来性」を盛り込みます。背景とは、新商品や新サービスの開発の経緯やプロセス、将来性とは今後の展望やビジョン・経営方針などを指します。

・6W:Who(誰が)、What(何を)、Why(なぜ)、Where(どこで)、When(いつ)、Whom(誰に/誰を)

・5H:How(どのように)、How much(金額/売上目標)、How many(数/販売目標)、How long(時/いつから)、How is future(将来/今後の展望・経営方針・ビジョン)

メディアバリューを高める8つの価値

 プレスリリースおよびニュースレターに入れるべき付加価値は、主に次の8つです。

(1)希少性:限られた「時・場所・人・数」など、ここでしか展開していない要素
 例)赤坂に1日限定10名のみのレストランがオープン

(2)市場性:サービスや商品の売れ行き、ユーザー数の急成長などといった要素
 例)発売開始わずか2カ月でアプリの登録ユーザー数が10万人を突破
 例)オープン前からTwitterで動画再生回数が200万回超えの話題のお店がついにグランドオープン

(3)新規性:「世界初」「日本初」といえる要素
 例)海外で話題のファッションブランドが日本にも上陸
 例)世界で初めての技術がついに飲食業界においても実用化

(4)至上性:「No.1」「最も」(ワーストも含む)などの要素
 例)日本一早い紅葉が見られるアドベンチャースポットがオープン

(5)季節性:季節や時事的なイベントに合わせた要素
 例)クリスマス限定フレーバーのフルーツティーが発売

(6)将来性:より良い社会やビジョンが見える要素
 例)大豆で人々の健康を支える、特保のお菓子が登場
 例)海藻で地球を救う、海藻ベンチャーが10億円の資金調達に成功

(7)意外性:一般的にイメージされていない真逆のものが特徴になる、「縁遠いサービスやブランド」とのコラボレーションなどの要素
 例)小学校の授業で、メイクの仕方を導入
 例)アパレル大手メーカーが電車内にてファッションショーを開催

(8)信頼性:第三者や公的な評価やお墨つきの要素
 例)A王室御用達のサービスが、リーズナブルなプランを提供開始

 その商品やサービスがいかに手に入りにくいのかや、数値で伝えられるポテンシャルなどをフックにし、伝えたくなるような内容になるよう情報を編集しましょう。

筆者の吉田誠氏による共著書(画像をクリックするとAmazonのページにジャンプします)

記者が「思わず食いつく企画」6つの切り口

 メディアが「思わず取り上げたくなる」代表的な切り口としては、次の6つが挙げられます。

(1)企業姿勢
・ニーズ:おうち時間の増加で運動不足を訴える人が増え、家でもできる手軽な運動が求められる中、スマホでフィットネストレーナーとつながるトレーニングアプリをローンチ
・課題解決:急なリモートワークと育児の両立が困難な中、時間単位で安心して子どもを任せられるサービスを開発
・挑戦:エネルギー源の自由化を掲げて、より自然エネルギーを選びたくなるサービスで地球温暖化をストップさせる

(2)技術革新
・新技術の採用:特別な調理技術で、ミドリムシが持つ栄養素の吸収効果を飛躍的に高めた世界初のミドリムシレストランがオープン
・技術応用:時計メーカーの細かく精緻な技術が、宇宙開発分野にも参入

(3)好評
・大ヒット完売:限定販売でプレミアムモデルのパーカーが、予約開始からわずか3時間で完売
・急成長:感染症対策の流れもあり、昨年対比200%でポータブル空気清浄機の売上が増加
・お墨つき:e-sports選手がこぞって愛用するヘッドフォン

(4)協業
・他社とのコラボレーション:オフィス用不動産の会社が、環境に優しいオフィスを増加させるために、造園設計の会社とコラボレーションし、リノベーション済みクリーンオフィスの物件を提供開始

(5)世代
・特定の世代が支持:70年代・80年代ファッションがティーンの間で流行に

(6)歳時
・季節:ゴールデンウィークを目前に、車の長距離運転での帰省時に子どもが飽きずに過ごせるバラエティグッズが発売

 内輪ではなかなか切り口が見つけにくいが、取材をされたいという場合、第三者の視点から見ることで「自分たちでは気づかない魅力」を発掘してもらい、新鮮な切り口を作るというのもひとつの方法です。こうすることで、取材してもらえる確率が上がることもありますので、ぜひ活用してみてください。

 

■ 吉田 誠(よしだ・まこと)
 株式会社サニーサイドアップ PRプランナー、アカウントプランニング局 プランニング部部長。2008年入社。BtoBからBtoCまで幅広い企業の広報・PR企画を立案。社会的課題や生活者インサイトを捉えたストーリー性のあるPR戦略の策定を得意とし、実績も多数。企業向けの広報セミナーなども数多く行っている。

 

吉田氏による共著書:
サニーサイドアップの手とり足とりPR