2019年、金融審議会 「市場ワーキング・グループ」が公表した報告書「高齢社会における資産形成・管理」の中の調査結果が話題となりました。

「高齢夫婦無職世帯の平均的な姿で、毎月の赤字額は約5万円となる」という、いわゆる「老後2000万円問題」です。

「2000万円」と聞くと、ほとんどの人が「大きなお金」と考えるのではないでしょうか。

「高齢夫婦無職世帯の実収入と実支出の差額(約5万円)を毎月保有金融資産から取り崩すと30年間で2000万円(約5万円×12カ月×30年≒2000万円)となる」

これが2000万円の算出根拠です。

一時金で見ると大きく見える金額も、毎月の単位でみると、より「現実的」に感じる人も多くなるかもしれませんね。

私は以前、生命保険会社に勤務し数多くの老後のお金のご相談を受けてきました。今回はその経験もふまえ、現在のシニア世代を参考に「60代の貯蓄事情」について、お話ししていきたいと思います。

60代「貯蓄2000万円」以上世帯の割合は?

では、さっそく60代のみなさんの貯蓄額を確認していきましょう。

金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和2年)」によると、60代の貯蓄額別の分布は以下のようになっています。

60歳代・二人以上世帯「金融資産保有額」

(金融資産を保有していない世帯を含む)

平均:1745万円
中央値:875万円

◆貯蓄額の分布◆

  • 金融資産非保有:18.3%
  • 100万円未満:3.5%
  • 100~200万円未満:4.0%
  • 200~300万円未満:4.0%
  • 300~400万円未満:3.3%
  • 400~500万円未満:4.0%
  • 500~700万円未満:5.3%
  • 700~1000万円未満:7.5%
  • 1000~1500万円未満:7.5%
  • 1500~2000万円未満:6.3%
  • 2000~3000万円未満:13.3%
  • 3000万円以上:19.6%
  • 無回答:3.3%

平均値は、上位の大きな数値に全体の数値が影響を受けてしまうため、中央値のほうがより実態を反映しているといわれています。

「2000万円」という金額をひとつの目安として結果をみてみると、全体の32.9%がこの金額以上の金融資産を保有していることになります。

しかしその反面、中央値が875万円、18.3%が「金融資産を保有していない世帯」である事実をふまえると、貯金が「ある世帯」と「ない世帯」の格差が見てとれる結果ともいえるのではないでしょうか。