欧州委員会(EC)は7月19日、「プロセッサーおよび半導体テクノロジー」と「産業用データ、エッジ、クラウド」の2つの産業分野アライアンスを発足させたと発表した。これにより、次世代マイクロチップと産業用クラウド/エッジコンピューティングを進歩させ、欧州のデジタルインフラ&サービスを強化する。

欧州で2nmプロセスの実現目指す

 プロセッサーおよび半導体テクノロジーアライアンスでは、2030年までに世界の半導体製造における欧州比率を現在の10%から20%へ引き上げることを目指す。また、現状のニーズを満たせる16~10nmプロセスだけでなく、将来の需要に対応した5~2nmプロセスを欧州でも製造できるようにする。

 一方、産業用データ、エッジ、クラウドアライアンスでは、エッジおよびクラウド技術について業界内で欧州の競争力を高めるのが狙い。エッジで処理されるデータの割合は25年までに現在の20%から80%へ高まると予想しており、公共部門や軍事などでセキュリティーを高め、機密性の高いデータを安全に処理できるようにする。

大手半導体メーカーを誘致へ

 プロセッサーは多種多様な経済活動を支える要であり、エネルギー効率やセキュリティーレベルの決定に重要な役割を果たすが、半導体の製造については現在、生産能力の大半がファンドリーを中心としたアジアに偏在しており、欧州や米国は供給リスクを軽減するため、自国や域内で生産能力を拡大する取り組みを推進している。

 これに関連して、欧州連合(EU)が台湾TSMCや韓国サムスンに欧州で半導体工場を建設するよう要請したという報道や、独バイエルン州が米インテルと半導体工場の新設について協議し、進出に際してインテルが80億ユーロの助成を求めているといった報道がなされている。

設計・製造強化へ財政支援

 EU 18カ国は1月、半導体をはじめとしたエレクトロニクス分野の設計・製造能力を強化する共同宣言を行い、最先端の半導体設計能力や製造プロセス設備の強化に今後2~3年間で最大1450億ユーロを投入する方針を打ち出している。

 またECは、21~27年に実施するイノベーション研究「Horizon Europe」で、マイクロエレクトロニクス分野の技術的主権確保と競争力強化を目指すプログラム「Key Digital Technologies(KDT)」を採択している。KDTはECが100億ユーロ近くを投資する10件のパートナーシッププログラムの1つ。対象は、プロセッサーを中心とした半導体とシステム&ソフトウエアで、ECは27年までに総額18億ユーロの財政支援を提案している。

電子デバイス産業新聞 編集長 津村 明宏