2021年7月29日に行われた、日華化学株式会社2021年12月期第2四半期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:日華化学株式会社 代表取締役 社長執行役員 江守康昌 氏
2021年12月期第2四半期決算説明会
江守康昌氏(以下、江守):みなさま、こんにちは。今日はリモートでの参加ということで、カメラがございますので座ったままご説明させていただくことをお許しいただきたいと思います。
まず、本日は福井県嶺北地方が大変な大雨でお足元がお悪い中、当社までお越しいただきまして誠にありがとうございます。また、日頃は大変お世話になっており、重ねて厚く御礼申し上げます。
それでは、私から2021年の半期決算についてご説明します。
2021年度 上期 経営環境
我々の市況です。コロナ禍の中でそれぞれよかったり悪かったりありますが、主力の繊維加工は衣料品がなかなか売れないため、特に中級から高級なアパレルにおいて厳しさが続きました。これは日本が一番得意としている市場ですが、なかなか回復してこないと言いますか、大変厳しい状況です。
一方、海外については中国を中心として、アパレルの生産拠点の一つであるベトナムなど一部で回復が見込まれてきています。また、2020年全般に言えることですが、アパレル各社で在庫調整が行われました。
お客さまも我々も在庫をきわめて低いレベルとしてきましたが、2020年の後半から2021年にかけて市況が徐々に回復傾向に向かってきました。特需と言いますか、この半期はいろいろなところでそれが出てきたというのが1つの特徴です。
自動車については販売台数は回復基調ですが、最終的に半導体供給不足で若干厳しい部分もありました。製紙については、特に当社の主力の新聞紙、リサイクル関係は新型コロナウイルスの影響などで駅で新聞が売れなかったり、全体的な紙離れの需要もあって厳しい状況でした。
クリーニングは在宅勤務の影響が非常に大きく、また、なかなかお出掛けしにくい状況ですので、クリーニングの利用が激減し、ホテルリネン、宴会は軒並みキャンセルがありました。クリーニング関係は「雨」ということで、大変厳しい状況です。
一方で、電子関係は非常に好調です。また、抗ウイルス剤、抗菌剤、手指用の消毒剤も好調に推移しました。ヘアケアについては、緊急事態宣言などもあって美容室市場がまだ振るわない状況ですが、ODM需要は大変堅調に回復しました。海外も厳しい状況で、韓国の美容室市場については日本同様の状況です。
ナフサや原材料の価格が非常に上がってきており、こちらも今後の1つの懸念材料となっていくのではないかと思っています。
2021年度 第2四半期 決算サマリー
そのような中、昨年と比較すると大幅な増収増益を達成することができました。昨年が壊滅的な状況でしたので、そちらと比べると大幅な増収増益は当たり前のことではありますが、それにも増して非常に力強い伸びを示すことができました。
売上高については22パーセントのアップ、営業利益については約4倍、経常利益も3.4倍、純利益については約9倍となりました。昨年が比較の対象にはならないような状況でしたが、2019年と比べても増収増益を確保することができたのは、非常に大きなポイントだと思っています。
セグメント別業績
セグメント情報ですが、化学品・化粧品ともに増収増益を達成することができました。数字については、ご一読いただければと思います。
売上高 増減要因(対前年)
特に化学品は、すべての地域において増収増益を達成することができました。また、化粧品の伸びが非常に大きく、特に日本で大きな伸びを示しました。
経常利益 増減要因(対前年)
経常利益ですが、これも昨年と比較すると、このように大幅な増収増益となりました。
化学品セグメント 業績詳細
特筆すべきことは、やはり中国を中心とした海外で需要が回復したことと、自動車分野が回復している中、半導体の供給が不足した影響がありました。また、各地域で増収増益でしたが、クリーニング分野が厳しい状況です。そして環境関係については、特殊樹脂モノマーやフッ素化成品の販売が堅調に推移したため、化学品は増収増益となりました。
化粧品セグメント 業績詳細
化粧品も繰り返しになりますが、ヘアケアブランドの拡販、また、ODM事業の大口顧客の需要増、さらに韓国も状況が厳しい中で、新規取引や新製品効果で増収増益を達成しました。
連結キャッシュフロー
連結のキャッシュフローですが、昨年コストダウンを行い、その体質が2021年に継続して市況が少し上がってきたことにより、利益が大幅に増加した状況です。これにより、キャッシュフローも大幅に改善しました。特に、有利子負債が前年度末に比べ約28億円減少しました。前年の第2四半期末に比べると1年間で約67億円の削減を行っています。
主な経営指標
このことにより、自己資本比率が5.2ポイントグッと跳ね上がり、44.7パーセントとなりました。その他の指標についても、このように大幅に改善しました。
2021年12月期 第2四半期決算 総括
総括すると、化学品・化粧品ともに増収増益となりました。コロナ禍による在庫調整の反動が、流通在庫の積み上げという特需となり、需要回復が見られました。化学品は、中国国内あるいはベトナム、自動車分野、特殊樹脂モノマー、環境衛生関連薬剤、フッ素化成品が牽引しました。
化粧品においても、山田製薬がODM事業で新商品の増産や新規顧客獲得増で売上が大幅に増え、日華化学単体も堅調に推移しました。それにより、利益も大きく向上しました。
トピックス(2021年度上期)-1
トピックスとしまして、抗ウイルス剤を加工した繊維素材に、新型コロナウイルスへの抗ウイルス効果があることがわかりました。今までは、新型コロナウイルスと同等のウイルスで検査をしていましたが、今回ようやく新型コロナウイルスそのもので効果を確認することができました。今後不織布や合成皮革、フィルム、塗料・コーティング等の繊維以外の分野にも展開を図っていこうと考えています。
トピックス(2021年度上期)-2
そして、我々のヘアケア化粧品最高峰のブランドの「EraL」ブランドを全面リニューアルしました。これはSDGsに向けたと申しますか、環境配慮の容器と資材を採用し、またここで得られた利益については、美容関係の分野に還元していこうと思っています。
美容を目ざす若者をバックアップしていこうということで、奨学金制度などを設立したり、植物を主体とした処方や、女性が美しく輝き続けるための最先端のエイジングケアということで、サステナブルなブランドを目指して「EraL」の全面リニューアルを行いました。
トピックス(2021年度上期) -3
こちらは8月1日からですが、福井県の本社・鯖江工場で当社が使用する電力について、北陸電力と提携してグリーン特約を活用し、水力電源100パーセントの電力利用に全量切り替えを行っていきます。
我々の研究開発および生産で使用される電源は、すべて再生可能エネルギー、言わばグリーンエネルギーでまかなっているということです。これにより、CO2排出量の約半分が削減される状況です。
トピックス(2021年度上期) -4
コロナ禍での地域協力の取り組みです。通常の修学旅行は一泊旅行など楽しく行うものですが、相部屋で泊まることはできなくなり、日帰り旅行にとどまっています。
そのような福井県内の中学校に少しでも協力しようと、スライド左下の写真のとおり、当社が生徒のみなさまを受け入れて、化学の楽しさを学んでいただいています。
福井県内の飲食店におけるマスク会食について少しでもサポートしようということで、福井県へマスク10万枚を提供しました。また、ワクチン接種センターに向けて、当社の「エコルセ」という手指消毒剤の無償提供も実施しました。
2021年度 下期 経営環境想定
2021年度の通期ですが、引き続き、新型コロナウイルス感染拡大中のため、極めて大きく市場が好転することは想定していません。むしろ、原材料価格の高騰や、世界で感染が再拡大する中で、厳しい状況が想定されると思っています。
2021年12月期 通期業績・配当予想
今年度の通期予測は、スライドの赤枠内にあるとおり、本日7月29日時点として立てています。以前よりはるかにプラスの予測ですが、上期の勢いがそのまま下期に反映されるかと言いますと、先ほどお伝えしたように、いろいろなハードルがあり厳しい環境が予測されます。
上期にあったような大幅な在庫の積み増し等による特需などは予測できないため、それを踏まえてかなり抑えたかたちになってはいますが、2021年度の予測は、売上高が465億円で、対前年12.9パーセント増、営業利益は22億円で、対前年55.3パーセント増としています。
経常利益は23億円で、対前年約40パーセント増、当期利益は19億円で、約82パーセント増という予測を立てています。
2021年12月期 セグメント別 通期業績予想
セグメントについては、後ほどスライドをご覧いただきたいと思いますが、化学品、化粧品ともに増収増益を予測しています。
私からのご説明は以上です。本日はどうもありがとうございました。
質疑応答:2019年度比での増収増益の要因について
質問者1:増収増益は、中間決算のプレスリリースで3期ぶり、3年ぶりということでしょうか? また、2019年度のコロナ禍前の中間決算よりも増収増益となった大きな要因について、どの分野が伸びているのかなどを教えてください。
澤崎祥也氏(以下、澤崎):まず、2018年以来の増収ということになりますので、3期ぶりです。営業利益で考えても2018年が増益になっていますので、3期ぶりの増収増益になります。
江守:2019年と2021年との比較についてですが、まず2020年がコロナ禍であることが非常に大きく影響しています。私も途中で若干ご説明しましたが、2020年に全社を挙げて非常に大きなコストダウンを行いました。また、不良在庫の一層の見直しや在庫の圧縮を行い、絞れるところは全部絞ったというのが2020年です。
2020年の大変な災難はリーマンショック以上になるかもしれないと覚悟していましたので、それをなんとか乗り切っていこうということで、大幅な減収ながら増益を確保しました。高効率、低コスト体質を保持しながら2021年を迎えたということです。
コスト体質と言いますか、企業の利益体質を圧倒的に変えています。2017年にニッカイノベーションセンターを竣工するなど、近年はいくつかの大きな投資を行ってきましたが、2021年はこれまでとはまったく違う内容になったということです。
ただし、新たな事業を創出して新しい日華化学を作り、増収増益を目指していくという攻めのスタイルは変わっていません。しかし、内容については2019年と2021年ではまったく異なるということです。
質問者1:2019年から変わった点は、例えば山田製薬のODMや抗ウイルス製品になるのでしょうか?
江守:少し言葉足らずで申し訳ありません。1つは低コスト体質で、会社の利益体質が変わりました。もう1つは、売上高のポートフォリオが変わっています。
化粧品の割合が増えたと同時に、海外も繊維も、低コストでより収益性の高いものが売れました。例えば、抗ウイルス剤、抗菌剤は、わりと利益幅が大きいもので、それらを多く販売できたため、この2つが同時にきたということです。
質疑応答:中期経営計画の進捗と新設事業部の伸びについて
質問者2:質問を2つ失礼します。1つは、今年2月に新しい中期経営計画「INNOVATION25」を発表されて、以前もおっしゃっていましたが、全事業のベクトルをEHDに向かわせるということで、半期決算に対する今の進捗状況を教えてください。
もう1つは少し細かい話ですが、社内に新しくスペシャリティケミカル事業部を新設されたと思います。その事業部自体が2020年時点で確か68億円前後の売上高だったと思いますが、これが半期でどのくらい上振れしたかを教えてください。
江守:「INNOVATION25」については、もちろん数値目標があり、また中身の目標もあります。数値目標は、2023年までに売上高500億円、営業利益25億円を確実に達成する体制を作っていこうと取り組んでいますが、今はその想定以上に確実に推移しており、オーバーアチーブしています。
スペシャリティケミカル事業部については、環境、健康、デジタル・先端材料という3つのベクトルで、EHD売上高比率を2019年の25パーセントから2025年に50パーセントに持っていくことを目指していますが、着実に推移しています。
澤崎:この上期では、連結に占めるEHD売上の比率が30.0パーセントになります。売上高で73億円、前年同期比でプラス24パーセントが今の状況です。
質問者2:事業として伸びてはいますか?
澤崎:はい、相当伸びています。
江守:スペシャリティケミカル事業でも、上期で24パーセント伸びています。
質疑応答:下期の事業成長への影響について
質問者3:12月期通期の見通しで、下期は上期にあったような流通在庫の積み増しなどの特需がないということで、「かなり堅めに見ている」という理解でよろしいでしょうか?
江守:おっしゃるとおりです。
質問者3:見通しが7月時点に、足元ですでに現れているような実感はありますか?
江守:7月時点の足元は、非常に好調に推移していますが、原材料の高騰については我々の想定と同じくらいの勢いで、大きな影響を受けてしまうと考えています。そちらについては、間違いなく「大きな影を落とす」ということです。
質問者3:年末にかけて、まだしばらく続きそうということでしょうか?
江守:原材料の高騰に加えて、サプライチェーンに関しても「フォース・マジュール」があります。今回の第2四半期にも影響がありましたが、原材料が一部入ってこない状況です。また、BCPの観点で、やはり購入先を今までよりも増やしていかなければとも思っており、それによるコストアップは間違いなく起こると想定しています。
原材料の高騰については、ナフサ由来で上がっている材料、需給バランスが崩れて上がっている材料と2つの影響を受けており、かなり上がっていくという予測を立てています。昨年と比べると、今年下半期で約5億円の原材料の高騰が見込まれるのではないかと思っています。
質問者3:上期はそれほど影響がありませんでしたか?
江守:5月、6月くらいから影響はありましたが、上期を通しての影響となるとそこまで大きくはありませんでした。
質問者3:かなり保守的にと言いますか、厳しく見てこの数字にしたということでしょうか?
江守:そうです。なかなか値上げを認めていただけない業界のお客さまが多く、一部のお客さまは認めてくれている中ですが、左から右にさっとシフトできるような状況ではありません。
質疑応答:抗ウイルス効果を確認した薬剤の展望について
質問者3:新型コロナウイルスへの抗ウイルス効果が確認された薬剤ですが、通期で見えている数字や来期に向けて期待できる数字などがありましたら教えてください。
江守:売上に関する数字についてはお答えを差し控えさせていただきますが、隣の研究所ビルの4階に1週間あたり40件の抗ウイルス性試験ができる設備があります。お客さまの中でも「ウイルスを確保したが、実際にその生地でウイルスに効果があるのか」を知りたいということがあります。
例えば「何パーセント乗せたらきちんと発現するか」というのは、生地と状況によってまったく変わってきます。そのようなものを我々がフォローアップして、きめ細かくサービスできる体制ができています。
ですので、従来の繊維関係でのフォローアップに加えて、今ここにあるような合成皮革、フィルム、不織布など、実は我々は未知の世界ですが、そのようなところにもリーチして、抗ウイルス性試験ができるのを強みにしながらお客さまに提案していきたいと思っています。
数字については急にガッと上がるものではないと思っていますが、コロナ禍が終わったら抗ウイルスや抗菌という市場がなくなるのかというと、私は決してそうは思いません。今できあがった抗ウイルスや抗菌という意識は今後も続いていくものだと思っています。
質疑応答:「CO2排出量ゼロ」の内容について
質問者4:CO2排出量削減の取り組みで北電との契約で水力を利用するということですが、CO2排出量の約半分がゼロになるというのは、この部分だけでゼロになるということでしょうか?
江守:我々グループ全体のCO2排出量全量の半分が日本で、さらにその半分が電力、さらにその半分が福井です。「2分の1×2分の1×2分の1」で、だいたい12.5パーセント、8分の1はこちらで削減できますが、それ以外の分が残っています。
ですから、これを行えば全部終わりというわけでは決してありません。また、我々は再生エネルギーを使った電力を使うことを福井以外の地域で展開する、あるいは日本以外でも展開するという方法が1つあります。
同時に省人化や工程削減、お客さまの水の削減、あるいは今まで溶剤系のウレタンを使っていたところを水系にしていただくなど、我々だけではなくてお客さまのCO2の削減やVOCの削減にも貢献していきます。
また、先ほどの「EraL」の容器包材をサステナブルに変えたり、原材料を石油由来から植物由来に変えていくことを進めながら、2030年にはCO2実質排出量を30パーセント削減していきたいと思っています。ですから、この北電で終わりということでは決してありません。これは削減の始まりの中の始まりです。
質疑応答:通期の業績予想について
質問者5:通期の業績予想について、もう少し詳しくうかがいたいです。セグメントで言うと、化粧品が当初の予想から増収増益予想に修正されていると思います。もちろん、前期で伸びたことをご説明いただきましたが、通年として、どこが想定以上になるのかということをもう少し、「今までこう考えていたけれど予想以上にこうなる」などのように教えてください。
江守:まず、今回の2021年度の業績予想は、基本的には2020年の11月、12月に立てたものを中心として展開しています。最終的には、2021年の1月から2月で、最終的にもう1回見直して予算としているわけです。
その時は「緊急事態宣言」が発令されていたり、美容室に人が来たり来なかったりと、予想が非常に難しい状況でした。また、2020年はいろいろなODMプロジェクトが進捗していましたが、全部中止になりました。
ところが、2020年の後半から、その中止になったプロジェクトが、すべてリアクティベートして、この上期はいろいろなビッグプロジェクトが実を結びました。
では下期はどうなのかということですが、特にこの化粧品の需要については、極めて予測が困難な状況です。ただし、今進行しているODMプロジェクトは、ある程度先が読める案件で、もうすでにご注文いただいている部分もかなりあるため、その部分の伸びは非常に大きいと思います。
質問者5:現在示されているこの通期の数字は、そのODMのプロジェクトはある程度見込んでいる数字なのでしょうか?
江守:そのとおりです。
質問者5:ただ、衛生用品など、さらに伸びるような状況になれば、また上乗せされてくると考えているのですか?
江守:おっしゃるとおりです。また、ここに入っているのが「フローディア」という、年間10億円くらい売れているヘアケアブランドです。こちらが下期にリニューアルされますので、これもかなり大きなプラスを見込んでいます。また、先ほどの「EraL」もリブランドでリニューアルしましたので、伸びが大きいことを予測しています。
質疑応答:増配予想について
質問者5:もう一点、配当ですが、今回増配予想にされていると思います。こちらの考え方について、今後、利益がさらに上乗せされたらというところも含めてお聞かせください。
江守:私どもの基本的な考え方はやはり安定配当です。厳しい時にもなんとかこの配当をするということで、2020年も本当はもう無配に近い状況に陥るかと思いましたが、なんとか配当することができました。
2021年は業績予想の利益レベルを踏まえると、我々が基本としている16円の配当はお約束できるのではないかと思っています。
利益がさらに上振れした場合については、また増配も視野に入れたいと思っていますが、ここの部分については、なんとかお約束できるレベルで開示させていただきました。
質疑応答:化学品の利益の上振れ要因について
質問者6:スライド21ページのところで、もともと化学品の利益について「年間で10億円ちょっと稼ごう」と予想されていたところが、この上期だけでも約9億円と、相当前倒しで収益確保されたという理解です。こちらについてどのように上振れしたのか、何か想定以上によい受注をした分野があったのかなど、教えていただけますか?
江守:回答が繰り返しになり恐縮ですが、我々もお客さまも昨年在庫を相当絞りました。海外の各社も在庫をかなり絞りましたが、それは2021年がどのような年になるかわからないという理由からです。
少しずつ世界の状況が好転してきて、具体的には売上も上がってきたため、我々は一気に大増産を図り、対前年約13パーセントプラスの増産を日本で行いました。
当然もともとの在庫は少なく、増産をして在庫を若干積み増せば、利益も上がっていくため、そのプラスアルファの利益が特に化学品では堅調だったということです。それが下期はなく、その分上期に比べてマイナスになるということが1つあります。
もう1つは、先ほど原材料が約5億円上がるというお話をしましたが、5億円丸々利益が損なわれるわけでは決してなく、我々がコストダウンをしたり、あるいはお客さまにそれを若干転嫁させていただいたりという取り組みを行います。5億円のうちおそらく60パーセントくらいはお客さまに負担してもらい、約40パーセントの約2億円は我々のほうで少しマイナスになることを予測しています。
特需がなくなったこと、原材料が高騰していくことという主に2つの理由で、化学品の下期の収益性は少々厳しい見方をしています。
質疑応答:繊維化学品の上期の売上高について
質問者6:化学品の中の繊維化学品の売上高について、上期の実績がわかれば教えていただけますか?
澤崎:第2四半期の繊維関係は連結で110億円です。前期が92億円です。
質疑応答:CO2削減の取り組みとその背景について
質問者6:先ほどの水力発電の件ですが、企業姿勢として遂行される部分や客先から要請される部分など、いろいろな背景があると思いますが、どのようなことが大きく影響したのでしょうか?
江守:先ほどご紹介した「INNOVATION25」という中長期計画の中で、「2030年までにCO2実質排出量を30パーセント削減しよう」という目標があります。政府の目標を鑑みるとまだまだ甘いかもしれませんが、まず実質30パーセントの削減は我々にとって非常に高いハードルであり、そこで1つの選択としてグリーンエネルギーの購入を決定しました。
また、我々の繊維関係などの主力のお客さまが、それぞれSDGsを策定して、環境にいかに配慮していくかという計画書を出されたり、現在の状況を報告したりということに取り組む状況が増えてきました。そのようなお客さまの求めに沿って、我々としてもきちんとサステナブルな取り組みを実施していこうと考えています。
最近の若年層の採用においても、環境に配慮しないような会社にはなかなか関心を寄せていただけないという背景もあるため、我々としては積極的に取り組んでいこうと思っています。
質問者6:中国や韓国の拠点も、それぞれCO2排出削減に取り組まれますか?
江守:はい。これからですが、国内・海外各社含めグループを挙げてCO2削減の取り組みを行っていきます。我々は繊維加工において現在「Smart Dyeing Process」という取り組みを行っており、既存に比べて節水や作業工程削減に貢献するソリューションを活用した工程薬剤を提案していくところから、お客さまも巻き込んだCO2削減を展開しているところです。
もちろん我々自身も、グリーンエネルギーを使う等々の取り組みにより、CO2削減をさらに行っていきたいと思っています。
質疑応答:東証からの判定結果と今後申請する市場について
質問者7:決算とは少し離れますが、来年の東証の市場再編に絡んで、東証から最上位のプライムに対して株式の流動性などのいろいろな判定項目の結果が届いたと思います。外から見ていると御社はやや厳しいと思われますが、どのような判定結果でしたか? また、今後はどのような市場に申請していくのか、方針が決まっていたら教えてください。
江守:こちらについては然るべき時期にきちんとお答えしたいと思っていますが、基本的には最上位のプライムを目指していきたいと思っています。その方策についても現在展開中です。これ以上はお伝えできない部分もありますので、今日はこのあたりでご勘弁いただければと思っています。
質疑応答:繊維産業の動きや見通しについて
質問者8:繊維産業のグローバル展開の中で、日本の小売がまったく盛り上がっていないのはよくわかりますが、アメリカやヨーロッパの経済はわりと動き出している印象があります。どのような動きが出ているか、見通しも含めて教えてください。
江守:アメリカやヨーロッパの市場は動いていますが、今はそれらの地域では作っておらず、ほとんどアジアで作っています。結果的にはアジア地区からアメリカやヨーロッパに行くことで、全体的に回復しているというシナリオです。日本の市場は引き続き冷えたままですが、中国市場は非常によい状況です。
2019年と比較しても6パーセント以上と、かなり回復しています。そのような意味では、中国の市場を狙ったベトナムの市場などが好調です。ベトナムの市場はもちろんアメリカやヨーロッパの市場も狙っています。こちらも日本ではあまり作っていませんが、日本ではファストファッションを中心としたカジュアル分野は好調です。
質問者8:足元のアジアの感染拡大の影響はこれから出そうでしょうか?
江守:今は本当に予測ができない状況で、悪い予測で考えておくべきと思っています。
質問者8:それは下期の見通しには多少反映させているのでしょうか?
江守:上期とそれほど大きく変わらないと予測しています。
質疑応答:水力電源への切り替えによるコストアップについて
質問者8:水力について、切り替えによる電力の若干のコストアップなどは伴うのでしょうか?
江守:それはもう致し方ないですが、全体の電力量を削減することも含めて、それほど大きなコストアップになるとは思っていません。
質問者8:「単価は少し上がるが、省エネ努力などでそれを抑える」という理解でよろしいでしょうか?
江守:北電との取り決めもありますので、なかなか具体的に開示しにくい部分もありますが、電力を削減したりサステナブルな電源に変えることで、調達コストが大きくプラスにはならない考えということでご勘弁いただければと思います。
質問者8:この契約は様子を見ながら比率を増やしていくのでしょうか?
江守:それもあり得ます。例えば、我々は鹿島工場などいろいろなところで電気を使っていますから、北電にするかどうかは別として、それをサステナブルなものに変えていくために国内の電源はサステナブル電源に変えるということはあると思います。
今は「うちから買ったらこれだけ安くなりますよ」「うちから買ったらこれだけサステナブルになります」など、新電力はそれが売りになっていますから、そのようなセールスがひっきりなしに来ます。
質疑応答:新型コロナウイルスへの抗ウイルス効果を確認した製品について
質問者9:確か記者発表の資料でも出していると思いますが、「新型コロナウイルスへの抗ウイルス効果を確認」のスライドについて質問です。新型コロナウイルスに対するさまざまな効果があるのは御社の製品系では、いわゆる「エコルセ」「ニッカノン」などだと思いますが、これらを対象にしているということですか?
江守:こちらは「ニッカノン」です。「エコルセ」はアルコールですので、間違いなく一時的な効果です。「ニッカノン」は10回洗濯したあとに99.99パーセントというレベル3以上を達成できるかどうかというところであり、我々はいろいろな手法を用いて達成できるところまで持っていけるのではないかと思っています。そのようなレベルの話です。
質疑応答:新型コロナウイルスに対する試験について
質問者9:NICCAイノベーションセンターの中で、新型コロナウイルス自体に対する試験はできるのですか?
江守:それはできません。我々が行えるのは、新型コロナウイルスに似たエンベロープ型のウイルスに対する試験です。今回非常によくわかったと言いますか、我々も理解できたのが、このエンベロープ型のウイルスをやっつけられれば、新型コロナウイルスに対しても非常に効果が高いということです。相関性が非常に高いことはもともとわかっていましたが、今回で証明できました。
フィルタリングで新型コロナウイルスに効くとは言えませんが、いろいろなものをフィルタリングして「これだったら大丈夫だ」ということで、例えば公の試験にお願いしたり、当社調べで「エンベロープ型のウイルスについてはこれだけの効果があります」と資料に載せることはできるのではないかと思っています。
質問者9:その設備自体をこちらに持っているのですよね。
江守:ここにあります。去年11月に増強しました。
質問者9:御社は中国にも大きなセンターを持っていますが、今後アジアでも同じような試験設備を順次入れていく流れはありますか?
江守:実は、抗菌試験はNICCAイノベーションセンターと中国の両方でできるようになりました。むしろ、比率にすると中国のほうが3倍から4倍の能力があります。今回新たに抗ウイルスの試験をこちらに入れたということで、抗菌と抗ウイルスの両方のブースがあるというかたちになっています。
質問者9:海外で抗ウイルスの試験自体を行うことはまだないのですか?
江守:それはまだこれからです。ウイルスの扱いなどの問題で我々も相当時間がかかり、公の試験とあわせながら2ヶ月から3ヶ月フルに試験を確立して、まったく同じ結果が出ることが確認できるまでは3ヶ月から4ヶ月かかりました。これは海外でもなかなか展開できないと思い、こちらを増強したほうがよいのかもしれないと思っています。
質疑応答:インドネシアやベトナムの工場の状況ついて
質問者10:海外のインドネシアやベトナムの工場ですが、現時点では新型コロナウイルスの影響もなくフル稼働しているのでしょうか? また、インドの取り組みはもう始まったのでしょうか?
江守:まず、今、アジアで新型コロナウイルスの感染が急拡大しており、特にインドネシアは大変厳しい状況です。正直、インドネシアの子会社も感染者がかなり出ており、PCR検査を全員に受けさせ、検査で何回か陰性と確認できた人たちで稼働しています。フル稼働とまでいきませんが、お客さまにご迷惑をおかけしないようなレベルで稼働できています。
一方、ベトナムですが、もう街をロックダウンさせており、大変な厳戒態勢となっています。我々、日華ベトナムは現在、1人も新型コロナウイルスの感染者を出さずに稼働しています。そのようなこともあり、感染防止には最善を尽くしていまして、ベトナムにはまったく支障なく、昨年にも増した生産量で対応しています。
今お話ししたとおり、インドネシアだけが厳しい状況です。タイでも一部厳しい時期がありましたが、しっかり感染防止の取り組みを行っていきながら、お客さまにはまったくご迷惑をおかけしないようなかたちでオペレーションができています。
質問者10:下期の生産について、販売には影響はないという理解でよろしいでしょうか?
江守:販売についてはどのようになるかわからないのですが、生産活動に関しては今のところ問題ないのではないかと思っています。
質疑応答:インドの状況について
質問者10:インドの現場は活動をスタートしましたか?
江守:インドもかなり大変な感染状況で、駐在予定の社員も行くことができず、今すべてリモートで業務を行っています。当社のお客さまも、かなりロックダウンしており、なかなか商売を展開するのが難しい状況ですが、粛々とリモート営業を行っていきながら展開しています。ただ、我々のスピード感とは少し違った状況です。
質疑応答:原材料不足による品薄の影響について
質問者10:もう一点お聞きします。市場の繊維加工などについて聞いていると、水系ウレタンが足りなくなってきており、品薄感が出ているものがあると思います。御社もその原材料が入ってこなくなっていることによる品薄感があるアイテムは出てきているのでしょうか?
江守:まずは、テキサスのフォース・マジュールで、水添MDIなど、MDIまわりがまったく出てこない状況に陥っています。我々もいろいろな策を講じているのですが、特に今現在までが一番厳しい状況です。
後半からはフォース・マジュールも解除されて、少しずつ好転していくのかと思っています。ただ、100パーセントお客さまのお求めにお応えできるかというと、なかなか難しいですが、お客さまと納期調整をしながら、今も対応しています。しかし、これは好転していくため、後半に向けてはよい方向に行くのではないかと思っています。
質疑応答:好調な産業資材について
質問者10:最後にもう一点お聞きします。日本の繊維加工で、産業資材や衛材材料が好調と書いてあるのですが、どのくらい伸びたのか、また、今後比率を高めていくと考えているのでしょうか? そして産業資材でもいろいろな資材がありますが、好調なため、どのような分野を狙うかなどの考えはあるのでしょうか?
江守:今はデータがないため数字の話はできませんが、やはり自動車関係の難燃材や合成皮革のコーティング剤、また水系ウレタンも非常に伸びを示しています。
建設関係の産業資材や不織布関連も非常に好調に推移しています。我々も一部で不織布関係のいろいろな薬剤を担当していますが、非常に堅調な伸びを示しています。
質問者10:今後も伸ばしていくという理解でよろしいでしょうか?
江守:そうですね。今後もアパレルの一本足ではなく、そのような分野へもさらに注力していきたいと思っています。