国民年金(老齢基礎年金)の場合、満額でも年金額は78万円ほどです。月にすると6万5000円程度なので、これ以上の生活費がかかれば赤字になってしまいます。
そこで、国民年金だけしか受給できない人が、効率よく年金額を増やす方法をご紹介します。老後を安心して過ごすためには早めに対策を始めることが肝心です。
国民年金「だけで」生活できる?
厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況(令和元年度)」によると、国民年金受給者の平均年金月額は、5万6000円となっています。
これに対し、厚生年金保険(第1号)受給者の平均月額は14万6000円となっており、国民年金受給者は厚生年金受給者よりも9万円も少なくなっています。
老後の生活費って、どのくらい必要?
一方で、老後の生活費はどのくらいかかるでしょうか。
総務省「家計調査/家計収支編(2020年)」によると、65歳以上の単身世帯の生活費(消費支出)は13万8542円、65歳以上の二人以上の世帯の生活費(消費支出)は24万1724円となっています。
平均月額の5万6000円の年金だけで生活すると仮定すると、単身世帯の場合は約8万円の不足、二人以上の世帯(二人とも国民年金の場合)では、約13万円の不足となります。
この調査は厚生年金受給者も含めた平均なので、国民年金受給者の場合はもう少し生活費を抑えている可能性はありますが、それでも大きく不足しているといえるでしょう。
「使わないと損!」国民年金を増やす4つの制度
ここからは、主に国民年金受給者の年金額を増やす方法をご紹介します。
① 付加年金制度を利用する
付加年金は国民年金第1号被保険者(自営業者など)に認められている老齢基礎年金の上乗せ制度です。保険料に月額400円上乗せすると、老齢基礎年金に「200円×付加保険料納付月数」分が上乗せされて支給されます。
例えば、20年間付加保険料を払うと
200円×240カ月=4万8000円
老齢基礎年金に4万8000円(年額)上乗せされた金額を生涯受け取ることができます。これに対し、払った金額は
400円×240カ月=9万6000円つまり2年で元がとれる計算です。
毎月400円保険料の上乗せを20年続けるだけで、老後、年に5万円近い上乗せ年金を「一生涯」受け取れるわけですから、費用対効果が大きい方法といえるでしょう。
デメリットとしては、物価の変動に対応していないため、インフレになったときに払った保険料分の利益が得られない場合があります。
しかし、人生100年時代といわれる中で、長生きすることの経済的リスクを考えると、年金額を増やすための制度は利用する価値があると思います。
② 国民年金基金に加入する
国民年金基金は国民年金第1号被保険者が加入できる基礎年金の上乗せ制度です。次に紹介するiDeCoと合わせて月額6万8000円の掛金を拠出でき、その全額が所得控除の対象となります。
特徴としては、確定給付年金であるため、将来もらえる年金額が事前に分かります。また、年金額や給付の型を加入者が選択することができ、1口目は終身年金のみ、2口目以降は終身年金と確定年金から選ぶことができます。
デメリットとしては、最初からもらえる年金額が決まっているため、インフレに対応できないこと、一度加入したら、途中で解約できないことがあげられます。
※ただし、国民年金基金に加入している方は、付加保険料を納めることはできません。
③ iDeCoに加入する
iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)は基本的に20歳以上60歳未満の全ての人が加入できる制度です。
掛金の上限は加入者の区分によって異なります。国民年金第1号被保険者は国民年金基金との合算で6万8000円となり、全額所得控除の対象です。
先述の国民年金基金と異なる点は、掛金を加入者本人が運用し、運用成績によって受け取る金額が変化する点です。これは将来の年金額が確定しないというマイナス部分にもなりますが、一方でインフレには対応できる制度となります。
iDeCoも原則として途中で解約することはできません。一定の条件を満たした場合のみ解約ができます。受け取り方法は一時金受け取り、年金受け取りがありますが、年金受け取りの場合は5年以上20年以下の有期年金が多く、一部の金融機関では終身年金とすることも可能です。
②+③ 国民年金基金とiDeCoを併用する
国民年金基金とiDeCoは併用することができます。
それぞれのメリット
- 国民年金基金:将来の年金額が確定している点
- iDeCo:インフレに対応できる点
によって、その逆であるデメリットを相殺することができるので、併用してみるのもいいと思います。その際、掛金の上限6万8000円は二つの制度の掛金を合算したものであることに注意しましょう。
④ 年金の繰下げ受給をする
国民年金受給者は定年退職がない自営業者が多いと思います。つまり、65歳以降も働き続けることによって、年金の受給開始時期を遅らせる「年金の繰下げ受給」が活用しやすくなるでしょう。
年金の受給を繰下げると年金額が増額され、その増額は生涯にわたって続きます。
現在、66歳以降70歳までの間で受給開始時期を繰下げることができます。1ヵ月の繰り下げで0.7%分増額され、最大で42%年金額が増額されます。
※2020年の年金制度改正によって最長75歳まで繰下げられるようになります。(2022年4月以降に70歳に到達する人から適用)。75歳まで繰下げた場合の増額率は84%になります。
国民年金「ならでは」のメリットを活用しよう!
国民年金受給者は基礎年金のみとなるため、厚生年金受給者に比べて年金額が少なくなります。
しかしそこだけを見て悲観するのは早計です。そうした問題に対処するための制度が作られているからです。年金を増やすための制度は税制面で多くのメリットがあるので、利用できる制度は積極的に利用しましょう。むしろ利用しないと損といえるかもしれません。
もう一つ、国民年金受給者である自営業者は定年退職がないので、気力体力があればいつまでも働き続けることができます。これは一番のメリットといえるでしょう。
経歴をリセットされずに働き続けることができれば、精神面、経済面で豊かな老後を過ごすことが可能です。また、年金をもらう時期を遅らせて年金額を増やす「繰下げ受給」も検討しやすくなるでしょう。
今回紹介した制度の利用は早ければ早いほどいいので、ぜひこの機会に検討してみてください。
参考資料
- 厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況(令和元年度)」
- 総務省「家計調査 / 家計収支編 二人以上の世帯 詳細結果表(2020年)」
- 総務省「家計調査 / 家計収支編 単身世帯 詳細結果表(2020年)」
- 日本年金機構「付加年金」
- iDeCo公式サイト「iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)【公式】」
- 国民年金基金連合会「国民年金基金」
- 日本年金機構「年金の繰下げ受給」
石倉 博子
