厚生労働省の「平成30年就労条件総合調査 結果の概況」によると、勤続20年以上かつ45歳以上の退職者の会社都合の退職金は大卒・大学院卒の場合で2000万円強となっています。これに加え、パナソニックのように4000万円の割増退職金が支払われることになれば、恐らく総額にして約6000万円もの退職金が一度に手に入ることになります。
しかし、実際には所得税が差し引かれますから、退職所得控除等があったとしても1000万円ほどの税金が引かれることになり、手取り額は5000万円前後になると思います。5000万円と聞くとかなりの額のように思えますが、実際どうなのでしょうか?
厚生労働省の「平成30年雇用動向調査 結果の概況」によると、転職して給料がアップするのは約3人に1人。一方、転職者の約3割は給料の減額に甘んじながら転職をしているというのです。
仮に運良く同じ給料で転職できたとしても、結果が出なければ1年で給料はガクッと下げられてしまい、すぐに退職に追い込まれてしまう・・・などということは珍しくありません。
ここで、年収1000万円の人が50歳で早期退職をした場合としなかった場合のシミュレーションをしてみましょう(図表1参照)。
早期退職しなかった場合
50歳から60歳までで1億円を稼ぎ、その後は段階的に給料を減らしながらも70歳まで勤め上げたとすると、50歳からの20年間でざっと1億4000万円を稼げることになります。そこへ退職金が2800万円(税引前3000万円)とすると、合計で1億6800万円ほど稼ぐことができるという試算になります。
早期退職して転職した場合
前述のように、50歳前後の一般的な退職金2000万円に4000万円を上乗せした退職金が計6000万円。ここから税金1000万円が引かれて、実際に手にする金額は5000万円程度。
仮に、新しい会社ではこれまでの半分の給料で60歳まで勤務し、その後段階的に給料を減らしながらも70歳まで勤め上げたとすると、50歳からの20年間でざっと9000万円を稼げることになります。
早期退職した会社の退職金5000万円と合わせると、合計で1億4000万円ほど稼ぐことができるという試算になりますから、転職をしない方がお得ということになりますね。給料がいくら上がるかもわからない転職をすることは、リスクでしかないようにも思えてしまいます。