給与デジタル払いが議論されるようになった背景

日本では現状、労働基準法24条において「賃金は、通貨で直接労働者にその全額を支払わなければならない」と規定されており、モノなどの現物支給は禁止されています。

厳密にいうと、「1. 通貨」で、「2. 直接」、「3. 全額」を、「4. 毎月1回以上」の頻度で、「5. 一定期日」に、賃金は労働者に支払われなければなりません。これは「賃金支払いの5原則」として労基法に定められている内容です。

ただし、「企業と労働者間の同意などがあれば、労働者が指定する銀行その他の金融機関の口座や、証券総合口座への振り込みなどで給与を支払うこと」が例外的に労基法の施行規則で認められています。

今や給与支払いというと銀行口座への振込が主流ですが、実は労働基準法の観点からは、この支払い方法は例外であるのです。

このような中、なぜ給与デジタル払いが議論されるようになったのでしょう。その背景には、菅政権が掲げる政策の目玉の1つとして、行政サービスや社会全体のデジタル化推進を挙げていることがあるといわれています。

給与は国民が生活していくうえで欠かせない重要な基盤となるため、給与デジタル払いを解禁することで社会のキャッシュレス化を加速させるとともに、国全体のデジタル化を促したい狙いがあるというわけです。

また、日常の買い物シーンでは、コロナ禍の影響もあってQRコードなどを使用したキャッシュレス決済が増えていることもあり、現状を踏まえた顧客の利便性を考慮した面もあると考えられます。