「青梅を食べるな」の理由

少々脱線しますが、熟していない青梅そのものについても解説しましょう。

青梅は昔から食べるなと言われています。頭痛、めまい、発汗、けいれん、呼吸困難などの中毒が起こるとされていますが、理由は極めて化学的で、青梅の中に存在する青酸配糖体(シアンCNを含む化合物)のアミグダリンという化学物質のせいです。

この物質自体には毒性はありませんが、酵素により分解されて青酸(シアン化水素、HCN)を出し、中毒を起こします。青酸は極めて毒性の強い気体物質で、かつてサリン事件で知られるオウム真理教により、新宿駅の地下トイレで青酸ガスを発生させるテロ未遂事件が起こりました。

アミグダリンは青梅のほか、スモモ、ビワ、アンズなどにも含まれます。とはいえ、アミグダリンは梅が熟すと分解されて濃度が減り、同時に青酸も消失します。また仮に青梅を食べたとしても、致死量に至るには青梅100個~300個を食べなければならないので心配はありません。

まとめ:身の回りの生活と化学の近しい関係

梅酒の作り方と氷砂糖を題材に、そこに浸透圧が関係していることを紹介しました。

身の回りの生活と化学は、意外にも密接に関係しています。日常生活ではほとんど気に留めることはないでしょうが、身近で応用されている化学についてちょっと意識し、お子さんと一緒に考えたり観察すると、毎日の暮らしに楽しみが増すかもしれません。

私たちは科学や科学技術がこれだけ進歩した時代に生きていますが、「温故知新」というように、先人の知恵に思いを馳せることにも意味があるでしょう。

和田 眞