このような中、日系企業にとってベトナムの価値はさらに飛躍するだろう。
中国の人件費が高騰し、バイデン政権下の米中対立とそれに伴う日中関係への不安が高まる中、日系企業の中にはいわゆるチャイナリスクを回避すべく、生産移管先としてベトナムへシフトする企業も少なくない。
H&M不買運動につながった反中感情
4月に入り、ベトナムではスウェーデンの衣料品大手H&Mに対する不買運動を求める声がネット上で広がった。しかし、先月、中国のネット上で拡散したH&M不買運動と事情は違うようだ。
中国とベトナムは南シナ海の西沙諸島や南沙諸島の領有権を争っているが、中国当局は4月2日、H&Mがホームページ上に掲載した中国の地図に西沙諸島や南沙諸島が含まれておらず違法だと主張し、H&Mはそれに応じて修正した。
しかし、今後はベトナム側から反発の声が広がって今回の事態になったという。
ベトナム国内でも反中国の声は少なくなく、今後も政治や安全保障の問題を巡って対立が深まり、それが経済分野に影響を与える可能性がある。
だが、その分、日系企業には多くの可能性がある。ベトナムも経済発展や国民所得アップを目指すにあたっては主要国を中心とする外資を必要としており、中国・ベトナム間で生じた摩擦の部分を日系企業が補っていく戦略的チャンスがあると言えよう。
和田 大樹