2021年3月20日にログミーFinance主催で行われた、第19回 個人投資家向けIRセミナー Zoom ウェビナーの第1部・株式会社サイバーリンクスの講演の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:株式会社サイバーリンクス 代表取締役社長 村上恒夫 氏
元ファンドマネージャー/元ディーラー 坂本慎太郎(Bコミ) 氏
フリーアナウンサー 八木ひとみ 氏
経営理念・経営基本戦略
村上恒夫氏(以下、村上):サイバーリンクスの村上と申します。本日はどうぞよろしくお願いします。
まず、サイバーリンクスのご説明をさせていただきます。当社は5年ごとに中期経営計画を作成し、それを対外的にも発表しながら、事業を進めていく体制を取っています。ちょうど今年、中期経営計画を新しく策定し、対外的に発表していますので、今回はそちらを中心にお話しさせていただきます。
まず、サイバーリンクスはどのような事業の体制を取っているか、簡単にお話ししたいと思います。当社の経営理念は「気高く、強く、一筋に」で、中心に「事業とは崇高な社会活動である」と置いています。
経営の基本戦略は大きく3つあります。まず「市場選択戦略」ということで、「No.1戦略」を取っています。これは業種や地域をセグメントし、そこでNo.1になれるように資本を集中投下するということです。
流通業では食品流通業を中心に日本でNo.1になる、官公庁については和歌山でNo.1になるといったランチェスター戦略に基づいた「No.1戦略」を取っているのが、1つ目になります。
2つ目は「サイバーセル経営」と言って、「全員経営戦略」を取っています。これはあまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、セルと呼んでいる組織単位の時間あたりの収益を追いかけるというかたちになります。当社では1つのセルが7名から8名くらいです。そのような小さな単位のセルで、売上から経費を引いたものを総労働時間で割り、時間あたりの収益を算出します。
セルのメンバー全員がいかに売上を上げ、経費を下げ、時間効率を上げていくか、この3つを全員で追いかけるのが、「サイバーセル経営」という手法です。これはご存知の方もいると思いますが、京セラの「アメーバ経営」そのものです。
3つ目の「安定化戦略」の中心軸は、「定常収入重視」を一番重要な戦略としており、情報処理料や保守料等、毎月定常的に入ってくる収入の増加を、経営の中心に置いています。後ほど、定常収入の増加等についてはご説明します。
サイバーリンクスのビジネスモデル
村上:ビジネスモデルについてです。当社は共同利用型のクラウド事業者で、我々の言葉でお伝えすると「シェアクラウド」となります。
IT業界には、個別のお客さまの要求に合わせたシステムを作るシステムインテグレートが多いのですが、我々はSI、システムインテグレートは行わないということで、業界特化型、食品流通業界に特化したシステムを一生懸命作っています。機能もたくさん搭載し、よいものを作りますから、みなさまにご利用いただきたいと思っています。
スライドには当社のビジネスモデル「シェアクラウド」を記載していますが、同じものをみなで利用するということです。高機能で本当に使いやすいシステムを安価で使うためにはこの方式しかないと感じていますし、将来的にはすべてのシステムがこのようなかたちになると考えています。食品系のスーパーで使われる仕組みも、独自のものを個別で作っていく時代ではありません。
業界で一番よいシステムをクラウド上に置いて、みんながそれを利用していく、これが業界、情報化社会にとってもよいということで、2002年から取り組んでいます。
主要サービス 流通クラウド 流通食品小売業向けクラウド
村上:1つの例として、食品流通小売業、スーパーの基幹系、販売管理の仕組みである「@rms(アームズ)」は、クラウド小売基幹系のシステムでは、導入実績No.1です。「シェアクラウド」の中心軸になっています。
これ以外に、生鮮発注システムがあります。食品業界では、魚や野菜の発注等は特殊な構造が必要ですが、こちらも業界No.1のシステムとなっています。
ネットスーパーのシステムも業界No.1、小売業向け棚割システムもNo.1です。単品分析システムはNo.3程度で、インターネットEDIは、No.1、2を争うポジションにあります。
主要サービス 流通クラウド 流通食品卸売業向けクラウド
村上:食品卸業界には、「クラウドEDI-Platform」というサービスを提供しています。
少しわかりにくいかもしれませんが、食品スーパー・小売業は、いろいろな通信手段で卸に発注データを送ります。卸はそれらを一身に引き受けないといけません。
このような環境だったのですが、2007年に当社が、小売業から来るさまざまな通信手段をプラットフォーム上で統一化するサービスを開始しました。
加工食品卸の売上トップ10のうち、トップ3を含む7社にこのサービスを導入いただいています。そのような面では、小売業と卸の間の受発注のプラットフォームとして、当社の共同利用型のサービスが市場に認められたということです。
主要サービス 官公庁クラウド、モバイルネットワーク
村上:官公庁では、和歌山県における地域防災など、行政系のシステムで圧倒的なシェアを持っています。また、校務クラウドサービスや医療連携のプラットフォームなどは全国に進出しています。
特に校務クラウドは、和歌山県下の市町村全校で共同利用されていますし、京都府、神戸市、高槻市、川越市でも使っていただいています。
モバイルネットワーク事業では、和歌山県下に7店舗のドコモショップを展開させていただいています。
新規事業 トラストサービス
村上:2021年度から新しくトラスト事業に参入します。これは後ほどご説明します。
事業構成(連結ベース)
村上:当社の事業は、ITクラウド事業とモバイルネットワーク事業がありますが、前期の売上実績としては、ITクラウド事業が約100億円、モバイルネットワーク事業はおおよそ27億円となっています。
ITクラウド事業については、流通クラウド分野と官公庁クラウド分野があり、流通クラウド分野が約37億円で、官公庁クラウド分野が62億円です。こちらについては、2019年10月1日に、大阪府貝塚市にある南大阪電子計算センターという官公庁向けのシステム会社を100パーセント子会社にしたため、その売上が24億円ほど加わったことにより官公庁クラウド分野が大きくなっています。
なお、これまではITクラウド事業とモバイルネットワーク事業の2つのセグメントでしたが、今年から流通クラウド事業と官公庁クラウド事業、それから新しく追加されたトラスト事業と、モバイルネットワーク事業、以上の4つのセグメントに分けて、事業の戦略性や、売上などの推移を開示させていただく予定です。
2.中期経営計画
村上:それでは、中期経営計画についてご説明します。今回、一番説明したいのは、流通クラウドが高収益な体質に変わることですが、新規事業としてトラスト事業にも参入するため、この2つを中心にご説明させていただきたいと思っています。
前中期経営計画(2016年度~2020年度)の振り返り <総括>
村上:まず、2016年から2020年度までの中期経営計画を総括します。スライドには2015年と、2020年12月期の売上を記載しています。
計画上、2020年度の定常収入は49.5億円でしたが、実績は64.2億円となり、計画比129.7パーセントとなりました。定常収入比率は46.1パーセントの計画でしたが、実績は50.3パーセントとなり、4.2ポイントアップしました。売上高は計画比118.9パーセントと、中期経営計画を大きくクリアできました。
1つだけ、経常利益計画は11億円としていたのですが、実績は9.5億円で、計画比86.5パーセントとなり、少しマイナスになりました。ただ、2020年度の9.5億円というのは、当社始まって以来の経常利益で、過去最高益を達成しています。
前中期経営計画(2016年度~2020年度)の振り返り <取組みと成果>
村上:こちらはこの5年間で行ってきたことですので、ご覧いただけたらと思います。
新中期経営計画(2021年度~2025年度) <時流の先読み>
村上:当社はいつも「時流、世の中がどう変わっていくのだろう」と読んでいます。現在は新型コロナウイルスが暴風雨のように吹き荒れて、テレワークが導入されました。当社も、流通部門においては、97パーセントのテレワーク率になっており、今後もテレワークを続けます。そのような面で、社会全体のDXの大きなきっかけになりました。
また菅内閣が発足し、デジタル庁において自治体をもっと効率よくしようということで、こちらも社会全体のDXにつながっていきます。そのような面では、もともと動いていた「Society5.0」への動きが、この2つの大きなうねりによって急加速しています。
2002年、IT業界の最大の潮流は「チープ化」でした。安く高機能なものを使いたいということで、それを実現する「シェアクラウド」は当社のビジネスモデルとなりました。
2012年には企業間連携に着目しました。食品流通業界も個別企業の効率化を進めてきましたが、企業間連携によるさらなる効率化が必要になったということです。こちらが今年の6月から提供する「C2PF商談支援サービス」です。あとでご説明します。
2016年には、判断は「人」から「AI」へと変わっていくと考えました。我々は、「@rms」基幹系に自動判断機能AIを組み込んでいく研究開発を2023年からスタートします。
2020年は「Society5.0」に備え、「徹底した労働生産性向上」を掲げています。先ほどお伝えした「C2PF商談支援サービス」は、企業間連携プラットフォームの中で業界のDX、生産性向上を図る大きなツールになると思っています。また、社内業務の自動化・効率化については、2020年より取り組みを始めています。
新中期経営計画(2021年度~2025年度) <新中計の成長イメージ>
村上:過去の中計5ヶ年・新規の中計5ヶ年について、一番訴えたいところは、流通クラウドが高収益の事業体になることです。またトラストサービスへの新規参入もありますので、この2つを中心にご説明します。
新中期経営計画(2021年度~2025年度)<骨子>
村上:まず、中計5ヶ年の骨子です。定常収入は90億円、2020年度比141.4パーセントを目指します。定常収入比率は62.5パーセント、2020年度比12.2ポイントのアップです。
売上高は145億円で、2020年度比113.7パーセントです。経常利益は16億円、2020年度比168.1パーセントです。経常利益率は11パーセント、2020年度比3.5ポイントアップで、これらが数値計画の中心軸となります。
新中期経営計画(2021年度~2025年度)<流通クラウド>①
村上:流通クラウドについてご説明します。まず、先ほどご説明した食品小売業、「@rms」基幹系と、その周辺の商品の市場規模についてです。市場全体の規模は、情報処理料ベースでだいたい年間200億円ですが、現在売上高は21.1億円で、2025年の計画は26億円としています。最終的に、10年、15年かかるかもしれませんが、シェア35パーセント、70億円を目指しています。
加工食品卸向けには「クラウドEDI-Platform」があります。市場規模は約40億円です。現在売上高は7.8億円ですが、5年後に11億円、最終的には、シェア80パーセント、32億円を目標としています。
あとで説明する「C2PF商談支援サービス」は、市場規模が60億円です。2020年度の実績は3,000万円で、2025年度は4億円を目指します。最終的には、シェアは80パーセント、48億円を目指しています。
食品小売業向け基幹システム「@rms」は、競争のある市場に投下している商材です。競争市場の中でNo.1になることを目指しています。他方、「クラウドEDI-Platform」、「C2PF」については、プラットフォーム型のビジネスになります。プラットフォームというものは業界に1つしか存在しにくく、2つあるとかえって不便です。したがって、我々は圧倒的なオンリーワンになるつもりで、80パーセントのシェア獲得を目指していますし、そうなっていくと思っています。
食品流通市場全体の規模は300億円です。2020年の実績は29.2億円ですが、2025年に41億円、最終的には150億円まで獲得する計画になっています。
新中期経営計画(2021年度~2025年度)<流通クラウド>②
村上:小売業については作業の効率化や、卸売業界については既存顧客の導入を自動化するなど、社内の効率化を図りながら、収益性を上げていこうという計画となっています。
新中期経営計画(2021年度~2025年度)<流通クラウド>③
村上:6月から新しく参入する「C2PF商談支援サービス」についてご説明します。
食品スーパーは、みなさまもご存知のとおり、毎週のようにチラシを打って特売をしていますので、家電量販やDIYと比べると、小売と卸・メーカーの間での商談が多く行われています。
見積書を作成し、商談後に価格を決定して取り扱いを決める、このようなことが行われています。商品を扱うことが決まると、小売業は自社の基幹系のシステムに、商品のマスターデータを登録することになりますが、その際、卸・メーカーに対して、「このフォーマットで登録して」と要求します。
また、見積書も小売業によって指定のフォーマットがあります。見積情報や商品情報が小売各社固有の様式であるため、業界では卸・メーカーが大変な思いで対応しています。
これを効率化する仕組みを、当社と大手卸とで現在共同開発中です。「食品卸・メーカーは標準のフォーマットですべて作成し、小売業への見積書は、小売業のフォーマットに合わせて変換してお渡しする」ということで、見積書や商品情報などを全部変換してお渡しします。
これにより、卸・メーカーは非常に楽になります。これが「C2PF商談支援サービス」で、食品流通業界のDXを推進し、当社の収益の大きな柱に育つものだと思っています。これが今年の6月1日にスタートします。
新中期経営計画(2021年度~2025年度)<流通クラウド>④
村上:もう少し流通についてご説明します。スライドのグラフは、青色の棒グラフが売上で、オレンジ色の棒グラフが流通の部分の定常収入です。売上と定常収入の差が非定常収入となります。これはシステムを入れる際の導入費等の一時的な売上であり、毎年、あまり大きく変わらないことがおわかりいただけると思います。定常収入の増加により、我々の事業が成長しているということです。
緑色の棒グラフは経常利益です。2021年の経常利益は3.6億円、2022年は4.3億円ですが、2023年には7.8億円となり、売上高経常利益率が17パーセントに上がります。2025年には流通単独で11.1億円の経常利益を上げて、売上高経常利益率は22パーセントになり、非常に高収益な体質となっていきます。
なぜ経常利益率が2023年に17パーセントまで上がっていくかご説明します。定常収入は毎年積み上がっていますから、収益は確かに伸びていきますが、特に2023年から利益が上がる理由については、スライド下部の積み上げグラフをご覧ください。
一番下の紫色の部分がソフトウェアの償却費で、2021年は3.7億円です。「@rms」基幹は、従来、年商300億円までの顧客に向けたタイプとして提供してきましたが、2016年頃から年商1,000億円を超えるクラスに対応できるタイプを開発し、2020年に完成しました。この開発投資が想定の倍以上かかってしまい、ソフトウェア償却費が2018年、2019年とかなり多くかかりました。ようやく下がってきましたが、それでも2021年時点では3.7億円となります。
それが2023年には落ち着いて、他の開発投資も含めて1.6億円ぐらいで安定します。2億円ぐらい下がる見込みで、これが経常利益を大きく押し上げる要因です。
その上の水色の部分は減価償却費で、サーバーやデータを貯めるストレージなどの設備投資の利用によるものです。こちらはあまり大きく変わっていません。
その上の黄色の部分は研究開発費です。2020年から、C2PF商談支援の研究開発投資を行っておりますが、それが2021年の半ばで終わりますので、いったん落ち着きます。その後、2023年から「@rms」基幹の中に自動判断機能を組み込んでいく研究開発を行っていきます。
こちらが2024年に3.2億円、2025年に3.9億円と、約4億円の規模になります。投資を行った年の費用として処理される研究開発費が4億円ありながら、2025年は経常利益11.1億円、売上高経常利益率22パーセントになります。流通クラウドは非常に強い事業になるとご理解いただきたいと思います。ストック型ビジネスの高収益モデルになると思っています。
新中期経営計画(2021年度~2025年度) <官公庁クラウド>
村上:官公庁については、デジタル庁発足により、我々に大きなチャンスが来ると思っています。自治体デジタル化の分野に進出したいと考えています。また、校務クラウドサービスを2,000校まで伸ばしていきたいと思っています。
新中期経営計画(2021年度~2025年度)<新規事業 第3のトラスト>①
村上:最後に、トラストについてお話をします。サイバーリンクスはトラストという分野に進出していきます。この分野は、認定認証局という、厳格で安心ですが、スピードが遅く、コストが高いタイプのものが従来からありました。アメリカ、ヨーロッパではこれが中心です。また、最近は「立会人型」という弁護士ドットコムやGMOなどが行っているタイプが賑わっています。
こちらについては、厳格さや安心面が少し弱い面がありますが、コストは低く、スピーディーで、どちらかと言いますと「認印」的な要素を持ちます。当社は、その中でマイナンバーカードを使った「実印」的な認証サービスを提供します。
我々は2017年にタイムスタンプ「時刻認証業務認定事業者(TSA)」、また、「公的個人認証サービスプラットフォーム事業者」の認定を取得いたしました。
去年2020年は総務省・経産省から「電子委任状取扱業務」の認定を受けました。我々は、国が全国民に認証基盤を提供するマイナンバーカードをベースに、トラストを世の中に提供していく事業を始めます。
新中期経営計画(2021年度~2025年度)<新規事業 第3のトラスト>②
村上:まず第一は、政府の電子調達です。各省庁は一定額以上の調達をする場合、「GEPS」という電子の調達機能を使わなければいけません。現在当社は、マイナンバーカードを使って電子委任状を作成、認証できる仕組みを、「GEPS」で実証実験を行っています。少し遅れるかもしれませんが、5月に実本稼働する予定で動いています。
その後、司法書士の申請の仕組み、不動産取引、企業の電子契約サービス等、実印がいる分野に限って、トラストを提供していきたいと思っています。
新中期経営計画(2021年度~2025年度)<モバイルネットワーク>
村上:モバイルネットワーク事業については、「ahamo」がオンラインでしか契約を行えないということで、「リアル店舗の代理店事業にはマイナス影響では?」と思っている方もいるかもしれません。しかし現実は、ドコモが先進的にローコスト商材を出して、価格的にも先行性を持ったことで、コンシューマーのみなさまの評価を得て、auやソフトバンクからのポートインが増えています。
ドコモショップも非常に活況していますし、これからも事業を強く継続させていくことができると思っています。
新中期経営計画(2021年度~2025年度)<内部戦略>
村上:これは内部戦略です。
新中期経営計画(2021年度~2025年度) <定常収入・売上計画>
村上:こちらのグラフは2016年からのもので、黄色の折れ線グラフが定常収入比率、青色の棒グラフが流通、赤色の棒グラフがモバイルです。流通はずっと定常収入を積み上げてきましたが、これからも積み上げていきます。官公庁はあまり大きな変化はありませんが、少しずつ伸びています。
2020年に大きく伸びたのは、先ほどもお伝えした南大阪電子計算センターを子会社化したためです。紫色の棒グラフはトラスト事業の部分です。
新中期経営計画(2021年度~2025年度)<利益計画>
村上:経常利益の計画です。2016年は、モバイル事業の収益が全体の半分ほどありました。そこから管理部門の経費を引いて、当社の経常利益は5.8億円でした。
流通は2016年、2017年は順調に伸びたのですが、2018年、2019年は、年商1,000億円クラスの小売業向けの基幹系システムの開発投資が想定以上に膨れ上がり、その償却が大きな負担となりました。
当社の場合は「経営を安定化する」「先の不安をなくす」ということで償却を3年で行っています。一般的には5年で処理されることが多く、税務上も5年で処理していますが、経営の安定のために会計上は3年で処理しています。
このような背景もあり業績に大きな影響が及びました。2018年、2019年にかけて、流通単独では下手をしたら赤字になるところまで来ていました。
それが少し回復したのが2020年です。この後も流通は順調に伸びて、先ほどご説明した償却の負担減少により利益を伸ばし、流通単独で見ると、2025年は22パーセントの売上高経常利益率となる見込みです。
前期は、特に官公庁が伸びました。この中には、南大阪電子計算センターの経常利益が1億円ほどプラスされていますが、それ以外に、防災無線と言われている、災害時に住民に情報伝達するシステムの特需がありました。
国から自治体に対し、補助金を出すので「アナログの無線で行っていたものをデジタル化しなさい」という指示がありましたが、2020年度がその補助金の最終年度となっています。「2021年3月末までに工事をしなさい」ということで、最後の駆け込み需要が増加し、その収益が大きく貢献したかたちです。前期の経常利益は9.5億円でした。前中期経営計画目標には届かなかったのですが、当社始まって以来の経常利益を出すことができたことになります。
新たな中期経営計画の経常利益です。2021年の計画は、官公庁については3月末までは需要が続くのですが、それ以降は通年に近い収益体質に戻ります。さらに、トラスト分野の投資がおおよそ1.7億円ありますので、2021年の経常利益は、6.5億円という目標になっています。
仮にこの1.7億円がなければ経常利益は8.2億円であり、防災無線デジタル化の特需がなくなることを考慮したならば、利益水準としてはよい線だと思います。トラスト分野は、2021年、2022年はマイナスですが、2023年くらいからようやく少しプラスに転じる計画にしています。
2025年の経常利益は16億円で、売上高経常利益率は11パーセントです。その中で一番貢献しているのは流通分野で、経常利益11.1億円、売上高経常利益率22パーセントの高収益体質になることが、我々の目指す方向性です。
流通の分野は、先ほどお伝えしたように、今回、毎年の売上・経常利益の計画を公表することにしました。前中期経営計画では、流通の開発投資が大きくかかってしまい、目標どおりの数値が出せなかったという反省のもと、今回は対外的にも毎年の数字を発表させていただき、流通が本当に高収益体質になっていくか、チェックしていただこうと考えています。
配当方針と配当金
村上:株主還元、株価の推移もご覧いただきたいと思います。経常利益だけを見ると去年は非常によくて、株価も上がりました。
株価の推移
村上:今回の中期経営計画は、トラストにチャレンジするということで、少し利益がへこんだところから始まる数値計画になります。これまでの株価の推移と対応させたスライドをご覧いただき、終わりたいと思います。ご清聴ありがとうございました。
質疑応答:食品流通に目を付けたきっかけについて
坂本慎太郎氏(以下、坂本):本日はご説明ありがとうございました。非常に多岐にわたる事業内容をお話しいただきました。おそらく疑問に思っている方もいらっしゃると思いますが、流通と官公庁の仕事に注力されているということで、ここに行き着くまでのきっかけは何ですか? 特に、食品流通に目を付けたいきさつを教えてください。
村上:我々にとっては、官公庁系のビジネスが一番最初の事業でした。松下通信工業(現在のパナソニック)とのタッグのもと、官公庁系の防災行政無線等からスタートしました。私も10年ほど在籍していた松下通信工業は、今は残念ながら撤退してしまったのですが、ドコモへの折りたたみ式携帯ではNo.1の事業者でした。
そんな関係から、ドコモが全国に代理店を作るという時に、携帯のトップメーカーであった松下通信工業に「代理店をどこか紹介して」という話があり、我々が紹介を受けて、ドコモショップの事業がスタートしたということです。これが官公庁事業とモバイル事業の流れになります。
流通のほうは、少し系統が違います。和歌山という地域は、経済的にかなりつらい環境でした。港湾立地型の産業では、鉄鉱石を運んできて鉄を作る、原油を運んできて石油を作るような時代、和歌山の半島は非常に発展した地域でした。しかし、産業の立地が機械産業や電子産業ということで、国土軸が中心になり始めました。
そのようなことから、和歌山は経済的に衰退しましたが、私が松下通信工業を辞めて帰ってきて、地域の方とお話をする中で、「それはなんとかしないといけない」ということになりました。ITとは物理距離を問わない社会です。ですので、「いち早くIT化したら、和歌山は発展するだろう」ということで、勉強会を始めました。そして、その時に紹介されたのが流通のベンチャービジネスになります。
坂本:過去のパターンが今のお仕事につながっていて、非常に勉強になりました。
質疑応答:校務クラウドの導入について
坂本:和歌山でけっこうなシェアがある校務クラウドについてお聞きします。和歌山以外にも関西を中心に、導入されているということですが、特に校務クラウドを中心とした学校へのシステムの営業は、学校に行くというより、教育委員会や市・県に営業に行くかたちでしょうか? 採用になると、そこの傘下の学校は全部採用になるイメージでよろしいでしょうか?
村上:和歌山県では全市町村、県と話して、県下統一ということで、和歌山県下の市町村の小中学校全部がこのようなかたちです。すでに入っているところは別ですが、京都府も全部まとめて同じものを使っています。
また、神戸市は1つの自治体に入ると、そこにある学校は全部一緒になります。
坂本:そういうことですと、特に大都市では1つ決まると大きいですね?
村上:そうですね。神戸市は、数としてもかなり多いです。
質疑応答:開発費について
坂本:今日のお話のポイントは、中計だと思っています。「最近、開発費等々もかかった」という話もあり、流通クラウド事業は当然、開発もしなければいけないと思いますが、収穫期に入り、中計では利益ベースで伸びていく見通しとなっています。
開発費については、「過去何年かは開発費がかかり、利益を出せなかった」とされていましたが、これまで流通クラウドの事業をずっと行っているので、ある程度基盤があり、新しい開発を行ってもそれほど研究開発費がかからないイメージでいます。ですので、プラスして使うところが増える、といったかたちでしょうか?
村上:現行の小規模顧客向けの「@rms」は2002年から開発を始め、2005年にサービスインをして、現在もずっと続けて改造しています。いったん作り上げたものに対しする改造は大きな工数もかからず、安定しています。開発費が増えた中・大規模向けの「@rms」基幹は、小規模向けとは違った機能が必要であったのと、時代に合うように開発言語も変えたため、予想外の工数がかかってしまいました。
一般の周辺のサービスや、商談支援などは、それほど大きな開発工数はかかりません。今回の中・大規模向けの基幹はボリュームがもともと大きいですが、このような大きな開発は、十数年に1回程度発生するものだと思っています。前中計経営計画を対外的に発表しながら、つまずいたことは申し訳なく思っています。
質疑応答:「C2PF」開発の経緯について
坂本:実は、私も新卒で食品業界に入りました。商流などがけっこうあり、当然、請求書も各社違うといったところで、そこでのご苦労はすごくわかります。ですので、大手の卸と「C2PF」を開発しているのは、すごく大きなことですし、今後、こちらのプラットフォーム化に期待しているところだと思います。
こちらに関して、御社から大手卸に働きかけたのか、もともと向こうから「開発しましょう」という話だったのか、教えていただけるとありがたいです。
村上:今回も、我々が何年か前から「このようなことをしましょう」とお話をして、構想も作り始めました。卸が見積書のフォーマットを持っているので、それを「共通化しましょう」ということで巻き込んでいる環境です。サイバーリンクスはお客さまから「こんなものを作ったら?」と言われて作るタイプの会社ではありません。
先ほどの小売のクラウド型も自分たちが発想しました。自分たちで小売のシェアクラウド型も作りますし、卸のEDIプラットフォームも、卸から「作って」と言われたのではなく、我々が先に作って「どうですか?」と持っていったものです。
我々はそのようなお客さまの顕在化していない欲求を見つけます。「こんなものはできない」といったところを見つけて、先にサービス化をしていくというのが、我々の特色です。このことにより、食品流通業界の中で、このポジションまで来られたと思っています。
坂本:そうですね。それがあるからこそ、使いやすいシステムになってシェアが伸びるのですよね。
八木ひとみ氏(以下、八木):まさに時流の先読みですよね。
村上:結果がないものを先に「どうですか?」と提案してこそ、卸も「それ、いいね!」と一緒に乗ってくれるのです。そのエネルギーがなかったら、なかなかそうは乗ってくれません。先週、ビッグサイトで展示会を行ったのですが、メーカーも「これはぜひやろう」と言ってくれました。
小売業の方からも、「このようなものを作りたいが、独自で作ってもまた卸やメーカーに『うちのシステムを使え』ということになりご迷惑をかけるから困ったなと思っていた。でも、これだったら小売も便利になって、なおかつ卸・メーカーも楽になるから頼みやすいね」と言われ、非常に心強く感じました。
坂本:その展示会は僕も行って御社のブース見てきましたが、賑わっていましたね。
八木:それだけ注目度が高いということですよね。
村上:長く出続けているのですが、今年は高評価でした。
質疑応答:「@rms」の他業界への展開について
坂本:次は、会場からの質問です。「『@rms』は食品流通、食品関係を含めて広く展開されていますが、他業界の展開はできるものでしょうか? また、お考えでしょうか?」ということです。
村上:生鮮発注などは、ドラッグストアでも生鮮を扱うようになったため、ドラッグ業界にも少し展開しています。また、小売の発注の仕組みについては、4月までにツルハHDというドラッグでNo.1のチェーン店、こちらのグループ全社に入っています。
そのような面で、周辺については他の分野に展開しています。ただ、当社が取っている戦略は、「No.1戦略」です。業種を絞らないと勝てません。ですので、「いろいろな会社や周辺のサービスとご一緒して、共同でつながったシステムを作ろう」という発想のもと、一緒に行ってきました。
「食品流通業界に限って、そこを中心に戦う」これが当社の基本姿勢です。そうしないと富士通やNECなどの日本の超大手ITベンダーと、量販小売業の市場で、同じ土俵で戦うことになります。「食品流通業界では必ず勝つ。富士通、NEC、その他の超大手ITベンダーありといえども、食品流通業界では必ず日本のNo.1になる」というのが、当社の取る戦略です。
このようなことから食品流通業界に特化しています。小売の中で、食品系は、生鮮や日配品という日持ちしない商品も扱うため一番難しいところです。その一番難しいところに特化して、必ず日本一になる、これが当社の取っている戦略になります。
質疑応答:資本提携、M&Aについて
八木:会場からの質問になりますが、「言える範囲で、資本提携やM&Aを考えていらっしゃいますか?」とあります。いかがでしょうか?
村上:当社は700数十名ほどの会社です。合併などでたくさんの会社と一緒になってきました。お客さまにとってよいサービス提供するには基幹システムだけでは駄目ですし、周辺システムがバラバラでも駄目です。周辺システムの会社のうちNo.1の会社と一緒になり、それが難しいときはNo.2と一緒になってきました。
これは、規模を大きくしたいといったことではなく、基幹システムと周辺システムの機能がつながった状態でお客さまに使っていただける、このような環境を作ることが、ローコストで高機能なものを安心して使える構造となります。そのような面から、たくさんの会社と提携していますし、一緒になった会社もたくさんあります。
これからもお客さまのために、提携、合併などを行いながら、会社のかたちを作っていきたいと思っています。