第13期全国人民代表大会(全人代)の年次総会(3月5日~10日)では、国家の現状が評価されるとともに、今後の行動方針が決定された。中国共産党創立100周年となる2021年の全人代では、第14次5ヶ年計画(2021年~25年)が示され、特に重要なイベントとなった。

李克強首相は毎年恒例の「政府活動報告」を発表し、困難な1年を乗り切ってきた政府の成果を再確認するとともに、2021年に達成すべき具体的な経済目標を提示した。中でも重要な項目は、GDP成長率6%以上、都市部調査失業率約5.5%、消費者物価指数(CPI)の3%程度の上昇、そして都市部での新規雇用1,100万人以上である。

また、今回の全人代では、2021年以降を見据えて、中国政府の長期戦略である経済成長の「量」から「質」への転換と、2035年までに「先進国」の地位を確保するというビジョンを定める第14次5ヶ年計画の最終草案が採択された。

この包括的な枠組みの下で、政策課題としていくつかの優先事項が特定されているが、その中でも、投資に大きな影響を与える重要分野としては、①内需主導型経済、②産業の高度化と技術面での自立、➂都市化、④気候と環境の保護が挙げられる。

内需主導型経済

中国は将来の経済成長を推進するため、国内需要の創出を目指し、双循環経済モデルの下での国内循環に焦点を当てている。国内循環の強化に向けては、地域の商品とサービスを販売促進することで消費を押し上げることを目指している。

「商品」の分野では、家電製品や自動車などの耐久消費財への消費が奨励される。計画では、電気自動車の購入を促進するために、充電設備やその他必要なインフラ整備が行われることが具体的に言及されている。

一方、「サービス」の分野では、医療、文化、観光、スポーツの促進が企図されている。中国の経済戦略におけるこうした重点の変化は、最近の地政学的な動き、すなわち新型コロナウイルスによって誘発された脱グローバル化の動きと、現在進行中の米中間の経済競争を考慮すると、賢明な指針であると言える。

産業の高度化と技術面での自立

製造業の活性化を目的として、中央政府は産業基盤の高度化とサプライチェーンの近代化を引き続き追求する。この取り組みの成功は、科学技術力の基盤の上に成り立つ。そのため、基礎研究能力の向上に重点が置かれており、中央政府は2021年だけでこの分野の支出を10.6%増加させる計画である。

中国は、5G、人工知能、半導体、電気自動車など、21世紀の最先端技術に着目している。次世代のモバイル技術で世界の先頭に立つことを目指し、5Gの導入に多額の投資を行う構えである(図表2参照)。

また、現代の最新技術の根幹がマイクロチップにあることを踏まえ、当局はこれまで、2025年までに国内のチップ需要の70%を国産で賄うことを目標としてきた。しかし、2020年現在では、その割合が16%程度に留まっており、目標実現に向けた道のりは依然として遠い。

 

都市化

貧困を減らし、国民の幸福度を引き上げるために、政府は「ヒトを中心とした都市化」戦略を実施しており、都市の収容能力を超えないように調整しながら農村部から都市部へと人々を移動させている。都市部に移住することで、農村に住んでいた人々がより生産的な仕事に従事する機会を得られることとなり、彼らの経済的な潜在能力が引き出される。

過去5年間では、1億人が農村部から都市部への居住権を与えられた。この政策を補完するために、政府は都市部の古い住宅地を改築し、新しい住民の流入に対応するために2,100万戸の新しい住宅を供給している。この政策の継続で、中国は2025年までに都市人口比率を65%にすることを目指しており、これにより中間層の拡大と経済成長率の上昇が期待されている。

気候と環境の保護(グリーンエコノミー)

中央政府は、中国の気候変動対策において、高い目標を掲げている。2030年までに炭素排出量をピークとし、2060年までに実質ゼロの達成を目指している。また、この国の「澄んだ水と緑豊かな山々」を守り、汚染から保護することも重要な政策目標となっている。こうした目標は、化石燃料から再生可能エネルギーへの、エネルギー政策の転換がなされたことを示している。

実際、中国では今後5年間で、単位GDPあたりのエネルギー消費量を13.5%、炭素排出量を18%削減するという目標を掲げている。最近の政策例として、中国国家電網公司は、再生可能エネルギーの利用と貯蔵に対応するために、今後5年間で電力網をアップグレードする計画を発表している。計画実現には、関連する技術、特に電力貯蔵のためのインフラ構築に向けた政府の積極的な投資が必要となる。