2016年版「家計の金融行動に関する世論調査」が発表
金融広報中央委員会は、11月4日、2016年版の「家計の金融行動に関する世論調査」(2人以上世帯)を発表しました。それによると、金融資産の平均保有額は1,078万円で昨年の1,209 万円から131万円減少した一方、中央値は400 万円と昨年と同じでした。
また、 金融商品別の構成比をみると、預貯金(郵便貯金を含む)は 55.3%と前回の53.2%から2.1%ポイント上昇しましたが、有価証券(債券・株式・投資信託)は 16.1%と前回の17.7%から1.6%ポイント低下しました。また、生命保険は 17.6%となり、前回の 16.9%から0.7%ポイント上昇しました。
ちなみに、金融広報中央委員会は日本銀行内に事務所を置き、中立・公正な立場から金融に関する様々な啓蒙活動を行っている団体です。
こうしたデータを見ると、やはり「貯蓄から投資へ」という政府の掲げるスローガンは掛け声倒れだと感じられる方が多いと思います。米国の家計の預貯金比率が13.6%(出所:日本銀行「資金循環の日米欧比較」2016年9月29日)であることを考慮すると、やはり日本人は投資嫌いで、相変わらず貯蓄好きのように見えます。
細かく見ると変化の兆しが
ただし、今回の調査をもう少し細かく見ると、やや異なる見方もできます。たとえば、「今後の金融商品の保有希望 」という質問に対する結果です。そこでは、「預貯金」を選んだ割合が2012年の53.3%から2016年では47.2%に減少している一方で、「株式」と答えた割合が6.0%から8.0%へ、また、「株式投資信託」については1.9%から4.1%へ急上昇しています。
2012年といえば、アベノミクスがスタートした年です。その当時と比べると、「貯蓄から投資へ」というマインドが、少しだけですが高まったということが読み取れます。
日本人は貯蓄好きであり、健康好きである
とはいえ、絶対水準で見ると投資を検討している家庭はまだまだマイノリティです。では、別のデータから日本人がなぜ貯蓄好きなのかを見てみましょう。注目したいのは「 経済的な豊かさ・心の豊かさの実感」に対する回答です。
興味深いのは、「経済的な豊かさを感じているか」という質問に「ある程度実感している」と答えた割合が34.1%しかないのに対して、「心の豊かさを感じているか」という質問に対して「ある程度実感している」という答えは51.4%に達していることです。つまり、心の豊かさは必ずしも経済的な豊かさと100%一致しないということになります。
さらに興味深いのは、「心の豊かさを実感する条件、3つまでの複数回答」です。ここでは「健康」と答えた割合が73.2%、「経済的豊かさ」が54.1%となっています。
経済的豊かさよりも健康にプライオリティを置く、これが、現在の日本人の平均的な姿であることがよくわかります。また、「貯蓄から投資へ」のスローガンを実現させるためには、こうした日本人の姿を理解して対策を考えることが重要であるとも感じられます。
LIMO編集部