車載用の半導体が世界的にひっ迫しています。

 米自動車大手メーカーのゼネラル・モーターズ(GM)は2月3日、世界的な半導体不足のため、8日から米カンザス州フェアファックス、カナダ・オンタリオ州インガーソル、メキシコ・サンルイスポトシの3工場で生産停止、また韓国の富平第2工場では生産規模の半減を発表しました。そして9日には、北米3工場の生産休止を3月中旬にまで延長するとしています。
 
 すでに独フォルクスワーゲン2020年12月時点で生産量を抑えており、米フォード・モーターにおいてもピックアップトラック「F-150」の減産が報じられました(※1)

 日本の自動車メーカーも同様で、トヨタ自動車は米国で生産するピックアップトラック1車種の減産(※2)、ホンダは「フィット」や「Nシリーズ」を中心に国内生産を減らす方針を明らかにし(※3)、SUBARUは日米工場において4万8,000台の減産(※4)、日産自動車も「ノート」などの主力小型車の減産に踏み切りました(※5)

 ブルームバーグの記事によると、アドバイザリー会社のAlixPartners(アリックスパートナーズ)が2021年の自動車メーカーの損失は約610億ドル(約6兆6,500億円)になる可能性を指摘しています(※6)。とくに損失が大きいのは中国の自動車メーカーで、年間200億ドル(約2兆2,000億円)以上の損失になると予測しています。

ひっ迫理由とは

 そもそも、なぜこれほどまでに自動車産業で半導体不足が深刻な状況になっているのでしょうか。

 半導体とは、電気をよく通す「導体」とあまり通さない「絶縁体」の中間の性質を持つ物質のことで、シリコンなどを指します。これを材料に用いた半導体デバイス、例えばマイクロコントローラは、情報を記憶したり計算、論理的演算などをする、いわば「頭脳」部分といっても過言ではありません。

 車の進化は、この半導体デバイスの技術進化によるところが大きいといえます。例えば、先進安全運転支援システムなどの高性能機能を加えるにも、やはり半導体デバイス技術はカギとなります。一般乗用車でも約30個、高級車になると80個ほども搭載されているといわれる半導体デバイス。さらに電気自動車(EV)やハイブリット車(HEV)のような次世代車での半導体デバイスの役割は、大きくなっていると言わざるを得ません。
 
 しかしこれは自動車に限った話ではなく、パソコンやスマートフォン(スマホ)、家電製品などにおいても半導体デバイスの需要は高まっています。ただ自動車産業ほどの供給不足に陥っていません。なぜこれほどまでに不足感が強いのでしょうか。

ファンドリー主体の生産体制

 コロナ禍により、世界的に需要が激減する中、自動車メーカーの組み立てラインも停止しました。そのため半導体の調達も調整することになったのですが、このような動きの中でスマホやPC、家電などの需要が早々に回復。もちろん、半導体メーカーは自動車よりも需要回復が早いスマホやPC向けなどに供給を始めたようです。また収益率の高い高性能品を買うスマホメーカーは、優先したい顧客ともいえます。

 半導体メーカーは40nm以降、台湾の大手ファンドリーのTSMCなどに生産を委託しています。様々な製品の需要が強くなっている中で、順番待ちまで発生しているような状況です。出遅れてしまった車載半導体メーカーがファンドリーの供給を確保するのは難しいといえます。