SMICの米国による制裁リスク
米商務省は2020年9月、中国ファンドリー大手SMICに対して輸出規制を実施しました(※7)。米国企業などがSMICに対して特定製品を輸出する場合、同省の許可が必要なったのです。これによりSMICの生産に支障が出ることは間違いなく、このリスクを避けるために別のファンドリーに注文を振り替える動きが加速しました。
さらに震災などの災害時に備えた在庫確保の動きも加わり、世界的に半導体不足が強くなっている状況といえます。またコロナ禍によるテレワーク普及がPCなどの需要を高めており、依然として他製品の不足感が強いのは変わりません。車載半導体の不足も長引くことが予想されます。
半導体不足解消は世界的な課題
韓国の産業通商資源省では3月4日、車載半導体の安定供給を確立するため、官民からなる協議体を発足しました。完成車メーカーの現代自動車やファンドリーのサムスン電子、DBハイテックなどが参加しています(※8)。海外調達はSMICの米国制裁からも見て取れるように、政治的な影響もあります。自国で研究開発を進めていく、安定供給を目指す動きは加速するといえるでしょう。
参考資料
- (※1)THE WALL STREET JOURNAL「フォード「F-150」減産へ、半導体不足の影響」
- (※2)日本経済新聞「トヨタ、米国で1車種を減産 半導体の調達不足で」
- (※3)ロイター「ホンダ、2月もフィットなど国内で減産 半導体不足続く=関係筋」
- (※4)NHK NEWS WEB「SUBARU 半導体不足で4万8000台減産へ 営業利益下方修正」
- (※5)ニュースイッチ「半導体不足で日産が3月まで減産、1万台減の可能性。スバルも日米で調整」(株)日刊工業新聞社
- (※6)Bloomberg “Carmakers Face $61 Billion Sales Hit From Pandemic Chip Shortage”
- (※7)電子デバイス産業新聞「SMIC制裁と米中ハイテク戦争~踏み絵を前にしたベンダー企業と漁夫の利のライバル企業」LIMO
- (※8)NNA ASIA「車載用半導体の安定調達へ、官民協議体発足」
- 電子デバイス産業新聞「半導体供給 車載分野などで不足感」2020年1月21日号
尾藤 ちよ子