この記事では、某商社ニューヨークオフィスに勤務するビジネス書大好き人間が、日々通う書店のビジネス書コーナーで感じたことをお話ししていきます。

暦の上では春かもしれませんが、まだまだ寒い日が続くのがNYの3月。実際に住んだことのある日本人は、日本と比べて「冬が長い」「春が遅くて短い」とよく口にします。とはいえ、氷点下前後の日も多い2月と比べると、季節が確実に進んでいる実感があるのもこの時期。コロナなど暗いニュースが多いだけに、個人的には例年より余計に春が待ち遠しく感じられます。

それでは、先月のランキングを見ていきましょう。

バーンズ&ノーブル(BARNES & NOBLE)の2月のビジネス書売れ筋ランキング

※ 順位/タイトル/邦題(翻訳書がないものは編集部で独自に訳した仮題)/著者

1.Nomadland: Surviving America in the Twenty-First Century/(邦題)ノマド:漂流する高齢労働者たち(春秋社)/著:ジェシカ・ブルーダー

2.Think Again: The Power of Knowing What You Don't Know/(仮題)もう一度考えよう:知らないことを知る力/著:アダム・グラント

3.Rich Dad Poor Dad: What the Rich Teach Their Kids About Money That the Poor and Middle Class Do Not!/(邦題)金持ち父さん貧乏父さん:アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学(筑摩書房)/著:ロバート・キヨサキ

4.Money: The True Story of a Made-Up Thing/(仮題)マネー:作り物の実話/著:ジェイコブ・ゴールドスタイン

5.The 48 Laws of Power/(邦題)権力に翻弄されないための48の法則 上・下(パンローリング)/著:ロバート・グリーン

6.How to Win Friends and Influence People/(邦題)人を動かす(創元社)/著:デール・カーネギー

7.Dark Towers: Deutsche Bank, Donald Trump, and an Epic Trail of Destruction/(仮題)ダーク・タワーズ:ドイツ銀行、ドナルド・トランプ、そして桁外れの破壊の爪跡/著:デイビッド・エンリッチ

8.Atomic Habits: An Easy & Proven Way to Build Good Habits & Break Bad Ones/(邦題)ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣(パンローリング)/著:ジェームズ・クリアー

9.The Intelligent Investor Rev Ed./(邦題)新賢明なる投資家~割安株の見つけ方とバリュー投資を成功させる方法~(バンローリング)/著:ベンジャミン・グレアム、ジェイソン・ツヴァイク

10.The Laws of Human Nature/(仮題)人間性の法則/著:ロバート・グリーン

新たな貧困層「高齢車上生活者」と大企業の欺瞞に迫る

まずは、1位となった『Nomadland』です。

「ノマド」とは遊牧民の意味で、本書ではキャンピングカーやワゴン車で移動しながら暮らす人たちのこと。日本でも「ノマドワーカー」という言葉があるように、どこか先進的で明るいイメージもありますが、この本でいう「ノマド」は、若くて自由気ままな人たちではなく、「高齢の車上生活者」なのです。

大企業の元社員や技術職などもいる彼ら「ノマド」はなぜいま、その日暮らしの過酷な労働の日々を送っているのか。アメリカの新たな貧困層の実像や、彼らを「便利な低賃金労働者層」として使い倒す大企業の姿勢に、気鋭の女性ジャーナリストが迫った本書は、日本語版も発売されています。

「新しい思考習慣」と「人間の本性」に迫るベストセラー

続いて2位に入ったのは『Think Again』です。

発売されたばかりの本書は、日本でも『GIVE & TAKE』などのヒット作で知られるアダム・グラントの新作です。現在のように変化の速い時代を生き抜くには、いったん下した結論をあえて「もう一度考え直す」ことや、あえて「反対意見を仔細に見る」ことなど、「自分にとってあまり気持ちのよくないこと」を意識的にすることが必要になってきます。2020年代を生きる私たちが知っておくべき「新しい思考習慣」について述べた本です。

最後に紹介するのは10位の『The Laws of Human Nature』。

5位の『The 48 Laws of Power』と同じベストセラー作家のロバート・グリーンによる著作です。古代から近代・現代まで、さまざまな文献やエピソードを引きながら、書名の通り「人間の本性」に鋭く迫り、よりよい人間関係を構築するための方法を解きほぐした一冊です。

まとめにかえて

バーンズ&ノーブルは、やはり根っからの「本好きなお客さん」が多いため、新刊書籍が圧倒的に強い日本の多くの書店さんと比べると、ランキングにもかっちりした古典や不朽のベストセラーが入ることが多いのですが、その中で「新顔」の本も出てきました。次月はどんな本がランクインするのでしょうか。

それでは次回のランキングもお楽しみに!

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