老後の「ねんきん格差」にどう立ち向かう?
ではいったんここまでの内容を整理しましょう。
現在の年金受給額は、厚生年金の平均年金月額は全体で14万4268円(男性:16万4770円、女性:10万3159円)、国民年金の平均年金月額は全体で5万5946円(男性:5万8866円、女性:5万3699円)であることが分かりました。
冒頭でも触れたよう、加入する年金制度の違いによって、老後の受給額は「厚生年金>国民年金」となり、大きな年金格差がある状態がお分かりいただけたかと思います。
意外に少ない「国民年金」の受給額はこうして増やす!
国民年金のみを受給することになる人の場合は、少しでも年金を増やす工夫を知っておきたいところですね。
公的年金制度のしくみを使う場合は、以下のような制度の活用を検討をおすすめします。
「繰り下げ受給」
老齢年金は「原則」65歳以降から受け取ることができますが、これはあくまでも「原則」のお話。老齢基礎年金と、会社員がもらえる老齢厚生年金に関しては、最長70歳まで受け取る時期を繰下げることができます。また、2022年4月からは、受給開始時期が「75歳」まで広がります。
受け取る時期を遅らせると、そのぶん受給額が増えます。
繰下げ請求時の年齢と増額率(1941年4月2日以後に生まれた方)
- 66歳0カ月~66歳11カ月・・・8.4~16.1%
- 67歳0カ月~67歳11カ月・・・16.8%~24.5%
- 68歳0カ月~68歳11カ月・・25.2%~32.9%
- 69歳0カ月~69歳11カ月・・・33.6%~41.3%
- 70歳0カ月・・・42.0%
出典:「老齢基礎年金の繰下げ受給」日本年金機構
つまり、「年金受給のスタートを遅らせることで、年金受給額を最大42%まで増額できる」ということになります。
「付加保険料の納付」
毎月支払っている年金保険料(2020年度は月額1万6,540円)に加えて月額400円の「付加保険料」を支払うことで、将来の受給額の増額が可能です。
付加保険料を納めると、65歳以降に「付加年金額」を受け取ることができます。その金額は「200円×付加保険料納付月数」から算出できるため、20~60歳の40年間納めた場合だと
付加保険料の納付総額:19万2,000円(400円×12カ月×40年)
付加年金額(年間):9万6,000円(200円×12カ月×40年)日本年金機構「付加保険料の納付のご案内」
となります。つまり、毎年の年金受給額を9万6,000円も増やすことができるわけです。2年経てば納めた付加保険料の金額を超えるので、年金受取額を少しでも増やしたい方は活用を検討してもよいでしょう。
ただし、付加保険料を納付できるのは「国民年金第1号被保険者」と「国民年金の任意加入被保険者(65歳以上の方を除く)」のみである点に注意が必要です。
「国民年金基金への加入」
「国民年金基金」は、厚生年金に加入していない自営業者やフリーランスの人などが、国民年金(老齢基礎年金)に上乗せできる公的な年金制度です。
国民年金基金に加入できるのは「国民年金第1号被保険者」「任意加入被保険者(65歳以上の方を除く)」です。また、「国民年金基金」は、先述の「付加年金」との併用ができません。
国民年金基金の保険料に付加保険料相当が含まれていることが理由です。よって、国民年金の付加保険料を納めている人が国民年金基金に加入する場合は、「付加保険料の納入を停止」する手続きが必要です。