住宅ローンや子どもの教育費といった大型固定費も落ち着き、定年退職金でまとまったお金を受け取る人も多い60代。
さらにいうと、各企業で定年延長の動きが高まり、定年退職後の再雇用や再就職で働き続けるシニア世代も増えているこんにち。60代は気持ちの上でも、お金の上でもほんとうの「余裕」が生まれる人が多い時期であるともいえそうです。
そんな背景から、出費が落ち着く「還暦前後」から貯蓄のエンジンをかけ始めればいいのかな、などと考えている人もいらっしゃるかもしれませんね。
老後に働き続ける選択肢が増えているとはいえ、「資産形成は60代以降に」と安易に考えるのはちょっと待ったほうがよさそうです。
そこで今回は、老後生活の入り口である「60代のお金事情」をひもときつつ、貯蓄額ゼロの60代世帯にフォーカスしていきます。
60代の「預貯金額」
さいしょに「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](2019年)」をもとに、60代の預貯金の状況をみてみましょう。
60代(60~69歳)の預貯金の平均額・・・1464万円
60代の預貯金の平均額は、1000万円を大きく超えています。退職金をもらえるケースがあるとはいえ、本当に60代の方の多くが1000万円以上も貯めているのでしょうか。また、その貯蓄を切り崩さずに生活できているのでしょうか。
60代で「資産が減る場合」理由
「教育費や住宅ローンに悩む必要もなくなり、退職金や年金収入もある。だから、60代で資産が増えるだろう」と計算している人もいるかもしれませんね。しかし、現実はそうも断言できないようです。
ここで、同調査より、60代における「前年度と比較した資産の増減」に関するデータをみていきます。
- 増えた・・・13.7%
- 変わらない・・・48.3%
- 減った・・・32.9%
- 無回答・・・5%
ご覧のように、「増えた」と答えた人が13%であるのに対し、「減った」と答えた人はその2倍以上の32%となっています。
では、「増えた」人、「減った」人の理由、上位3位についてもみていきましょう。
資産が「増えた」理由 上位3つ
- 定例的な収入が増えたから・・・28.4%
- 相続、退職金等による臨時収入があったから・・・27.4%
- 定例的な収入から貯蓄する割合を引き上げたから・・・25.3%
資産が「減った」理由 上位3つ
- 定例的な収入が減ったので金融資産を取り崩したから・・・53.2%
- 耐久消費財(自動車、家具、家電等)購入費用の支出があったから・・・31.2%
- 株式、債券価格の低下により、これらの評価額が減少したから・・・23.1%
これらの理由をながめると、現役引退によって定期的収入が減り、金融資産を切り崩すフェーズに入っている人が多いことが分かります。
65歳(原則)から年金受給がスタートするとはいえ、その年金収入だけで生活費をすべてカバーできるか、というと、実際は難しいところなのかもしれません。