半導体後工程を受託するOSAT(Outsourced Semiconductor Assembly & Test)各社の業績が好調だ。2020年後半からスマートフォンや自動車向けの需要が大きく回復したほか、高付加価値のSiP(System in Package)分野が大きなドライバーとなっている。21年も堅調な成長が期待されるなかで、ワイヤーボンダーをはじめとする製造設備の納期が延びており、事業運営を左右するポイントになりそうだ。

上期低迷を下期で取り戻す

 20年は新型コロナや米中摩擦の影響で上期は全体的に低調だったが、下期から大きく好転。スマホはアップルや中国系各社が生産・販売レベルを引き上げたことに加え、自動車市場も想定よりかなり早く回復基調に入った。結果、上期の低迷を取り戻すかたちで、年間ベースでは台湾ASEテクノロジーの半導体後工程売上高は前年比10%増、米アムコーテクノロジーは同25%増の高い伸びを示した。

 目立ったのがSiP分野の拡大だ。スマホでは5Gスマホへの移行を契機に、RFフロントエンドを中心にSiPのようなモジュール実装が増加。IoTやコンシューマー用途でもアプリケーションが広がっており、ASEは21年のSiPビジネスが同50%増の35億ドル、アムコーは同75%増の19億ドルといずれも高い成長を記録した。

WB工程「年間通じて不足感」

 複数ダイを混載するSiPのような高付加価値パッケージの拡大に加えて、自動車向け需要の急速な回復により、主要OSATにおいてはワイヤーボンディング(WB)工程が非常に逼迫している。ASEは従来、WB工程は21年上期まで逼迫した状況が続くと示唆していたが、直近の20年第4四半期決算カンファレンスコールにおいて、「年間通じて不足感が続く」(COOのTien Wu氏)と述べた。

 旺盛な需要に応えるため、ワイヤーボンダーの追加導入も進めているが、20年導入予定だった1800台の新規台数のうち、約300台が納期遅れを起こして、まだ納入できていない状況にあるという。

 一般的にワイヤーボンダーは納期が短いことで知られるが、現状は「(発注から納入まで)6~9カ月のリードタイムを要している」(同氏)状況だ。アムコーも同様にWB工程の逼迫感を解消するために、21年上期中にワイヤーボンダー台数を10%引き上げる予定だが、納入スケジュールがボトルネックとなる可能性がある。

後工程装置メーカーの業績も好調

 ワイヤーボンダーを手がける後工程装置メーカーの業績も好調だ。キューリック&ソファの20年10~12月期売上高は2.68億ドル(前四半期比51%増/前年同期比86%増)となり、大きな伸びを記録。当初、2.3億~2.5億ドルを見込んでいたが、LED分野の回復や自動車市場からの強い引き合いを受けて、1月中旬に修正ガイダンス(2.65億ドル)を発表している。

 OSATが注力するSiPなどのマルチダイパッケージの増加も装置出荷の拡大につながっている。21年1~3月期も2.8億~3.2億ドルとさらなる増収を見込むほか、21年度(21年9月期)の通期売上高も前年度比75%強の成長となる11億ドルを計画している。

 過去3年間、後工程分野に対する投資は抑制基調にあったが、K&Sでは今後数年間の半導体の伸び(数量ベース)を年率6~6.5%増になると予想。HPC(High Performance Computing)分野に用いられるようなヘテロジーニアスパッケージなどの高付加価値領域の拡大も加わって、後工程装置の活況は当面続きそうな状況だ。

電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳