「景色が変わってきた」

決算発表翌日の2016年10月26日、日本電産(6594)の株価は前日比+6%で引けました。2017年3月期上期実績(4-9月期)の営業利益は2桁増益と過去最高益を更新し、また、通期会社予想や配当予想についても上方修正を行うという好決算でしたので、このポジティブな株価の反応に全く違和感はありませんでした。

ただし、短期的な株価の動き以上に気になったのは、永守重信会長兼社長の「景色が変わってきた」というコメントです。実際、今決算をよく見てみると、短期業績の好調以外に、同社が新たなステージに入ったことを感じさせる3つの変化がありました。

利益水準が切り上がった

第1の変化は、利益水準の切り上がりです。今決算で大きく注目されたのは、直近のQ2(7-9月期)の営業利益が375億円と、四半期ベースの営業利益が初めて300億円台後半に達し、過去最高益を更新したことです。

ちなみに、同社の四半期営業利益は構造改革の実施により営業赤字となった2013年3月期Q4(1-3月期)をボトムに、2014年3月期および2015年3月期は四半期ごとに水準を切り上げてきました。しかし、2016年3月期から2017年3月期Q1(4-6月期)までは300億円前後で推移し、やや停滞感が見られました。これが今Q2には一気に300億円台後半の水準にまで達したのです。

さらに注目すべきは、この変化について永守氏は、「過去の取り組みが数字に表れてきた」とコメントし、一過性のものではないことが強調された点です。

具体的には、買収した海外子会社の分散していた事業所を集約・同床化し、重複していた機能を集約化し、情報共有を円滑化したこと、工場の自動化等を推進したことなどがコスト削減に寄与しています。このように、外部環境の一時的な好転ではなく、自助努力が収益改善の背景にあることが理解できたため、今後も実力値として300億円台後半の営業利益を確保できそうだという印象も持つことができました。

つまり、2017年3月期の会社予想の通期営業利益は1,350億円で、単純に4で割ると338億円(300億円台前半)になりますが、実際の同社の実力はこれを上回る可能性があるということになります。

モーレツ経営からの脱却が進む

第2の変化は、働き方改革の浸透です。永守イズムといえば、「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」が有名です。また、過去には同氏自身も「1日16時間労働」を公言していました。そうした同社が、今決算では、「(残業を抑制する)働き方改革が奏功してきた」と発言したのは大きな”景色の変化”でした。

モーレツ経営からの宗旨替えは昨年から取り組みが開始され、成果で評価する従業員管理へと転換しています。背景にあるのは急速な事業のグローバル化で、日本流のハードワークが海外では通用しないという点です。また、人口減の日本で優秀な従業員の確保を行うのに女性の活用は不可欠であり、そのためには長時間労働の社風は改める必要があったのです。

この意識改革は急速に進展しており、残業時間も大幅に削減された一方、就業時間内での業務効率も改善しており、このことも販売管理費の削減に寄与しています。

ちなみに、削減された残業代の半分は社員に報酬として還元され、残り半分は語学研修費用などの自己啓発活動に充てられているとのことです。このため、残業代の削減が直接、利益増に結び付くわけではありませんが、仕事の効率性アップ、従業員のスキルアップによる収益向上が期待できそうです。

モータ単品販売からの転換が進む

第3の変化は、製品構成の変化です。これまではモータ単品の販売が中心でしたが、車載・家電・産業用の事業拡大に伴い、モータに付随する制御ソフト、ギアユニット、熱交換器などを一体化したモジュールでの受注が増加してきていることです。これにより、販売単価が上昇し付加価値の拡大が見込めるようになっています。

余談ですが、最近、同社が元シャープの従業員を積極的に採用しているのも、こうした変化に対応するために家電の開発で経験を積んだ技術者や管理職が大量に必要になったからだと推察できます。こうした動きも、もはや、日本電産は旧来型の部品メーカーではなくなりつつあることを象徴する大きな変化として注目できます。

まとめ

決算説明会で永守氏は、これから発表される電機メーカーの決算発表では減収減益の厳しい結果が相次いで発表される可能性を示唆しました。実際にどうなるかはこれから明らかになりますが、いずれにせよ、現在の局面で「景色が変わった」と言えるのは、自助努力を行ってきた企業だけに与えられる特権であるということを頭の片隅に入れながら、今後の決算を見ていきたいと思います。

 

和泉 美治